―――電二尉―――
悲観的に準備し、楽観的に対処せよ
―――瀬島龍三―――
特撮のスーツアクター半端ないって(流行に便乗)
―――高菜ニーサン―――
明日6時に投稿する予定が寝ぼけて日付間違えました。
これは火曜日分です。
「避難訓練で艦娘の参加を、ですか?」
12月に入った昼下がり、小学校の先生がやって来た。
宮戸島小学校には、六年生に健太達が在籍している。
その縁で、直哉は月毎の防災訓練に、何度か顔を出しているのだ。
「はい。普段、海で戦っている艦娘さん達に触れ合える機会を、と思いまして……宮城地方協力本部の方にご相談したら、提督の判断に任せる、とのことでしたので」
神通が、二人にお茶を出して脇に控える。
神通の家出も、とうとう二桁に到達した。今度は、桐山二佐がAVを見ているところに遭遇して、大揉めしての家出である。
いつもながらの「実家に帰らせていただきます」との宣言の下に、宮戸島鎮守府にやって来るのだ。
繰り返すが、宮戸島は決して神通の実家ではない。
「そう言うことでしたら、協力は惜しみませんが……ただ参加させるのも面白くないですねえ?」
「そこで、地本の明石さんから一つ提案をいただきまして……これが計画書と台本です」
「ふむふむ、これは使えそうだな……」
その計画を聞いて乗り気な神通を見ながら、悪い企みを考え付いた直哉だった。
―――――――――――
訓練当日。
『深海棲艦襲来、深海棲艦襲来、児童の皆さんは校庭に避難してください』
ジリリリリリリリリ
健太達の六年生の教室でも、ベルが鳴り響く。
「はい。皆、帽子被ってランドセルを背負って、廊下に整列!!」
学級委員の愛ちゃんが前に出て言うと、皆学帽を被りランドセルを背負うと、ぞろぞろと廊下に出て整列する。
この学校では生徒の自主性を尊重して、先生はある程度学級委員に任せているのである。
電以下四名(神通含む)は、避難場所に並んでいる。
警察の駐在さんや、本土の消防署からも見に来ている。
愛ちゃんと健太達は、自分の師匠たる直哉の姿が無いことに、疑問を覚えていた。
校舎から、六年生を先頭に児童達が順番に学帽を被ってランドセルを背負って、整然と避難をしている。
宮戸島では万一の為に、学校では月一回、地域では隔月で避難訓練を実施しているのだ。
もう何年もやっている月の恒例行事で、ちょっと緩んでいるところもある。
ガヤガヤと私語が聞こえて来るのを、児童指導の怖い先生が、
「静かに!!」
と怒鳴ると、私語がパタリと止んだ。
そして校長の評価と、消防署の方のお話、警察の駐在さんのお話があった後、艦娘達が自己紹介を行う。
その後、
「それでは、陸上自衛隊高菜二佐がもうすぐ来られるので…」
と言い終わる前に、ガサガサと、校庭の茂みの方から、深海棲艦がのっしのっしと歩いて来る。
だが、その深海棲艦は恐竜か怪獣の類にしか見えない。過日の全島避難時に、明石の製作したダミー深海棲艦を改造した物体なのだ。
「キャーーー!!」
女の子達が悲鳴を上げるのを、電がマイクを持って、
「今から私達で倒すので、落ち着くのです!」
と、座らせる。
《いつも海を守ってくれる艦娘の言うこと》だからと、皆腰を下ろす。
神通が艤装を展開すると、のっしのっし歩いてくる深海棲艦に正対する。
「ガオー!」
棒読みなボイスチェンジャーのような歪んだ声で、両手を広げて襲い掛かる深海棲艦。
「行きます!」
神通が上段受け身を取りながら、回し蹴りを叩き込もうとした……が、
深海棲艦は華麗にバック転をして躱した。
「な!?台本と違……!?」
そのまま深海棲艦が、尻尾を使って神通を足払いする。
「っ……!」
足を掬われた神通も、バック転して構え直す。
深海棲艦は、そのまま踏み込んでバックブローを放つ。
神通は、それをガシッと受け止める。
ポカーンとなっている児童達……愛と健太とお騒がせトリオを除いて。
『あー………先生ェ……』
自分の師匠の、動きの癖くらい解る。
健太君や愛ちゃん、お騒がせトリオは、生暖かい目でその激闘を見守るのだった。
神通はバックブローを受けると、回し蹴りを放つ。
深海棲艦は、その短い足で軸足を払うと、転倒した神通の顔面を踏み付けようとする。
「シネェーイ!」
「っ!!」
それを転がって躱すと、すぐに起き上がる。
「今助けるのです!」
電が駆け込むと、一気に距離を詰める。
バシッ、バシッとガチの殴り合いが始まる。
電が、手数を使って殴って来るのを、深海棲艦が両手で受け止める形である。
「コノチビメ、シッポヲクラエ!」
そして電に、尻尾が容赦なく襲い掛かる。
「うぐっ………」
尻尾の強打を受けて吹っ飛び、派手に児童達の前に転がって、ぐはっと血糊を吐いて、動かなくなる電。
「いなづまさーん!!!」
児童達の、悲鳴に似た声が響き渡る。
「傷は深い、しっかりして」
薄雲が抑揚のない声で抱き起こして、ガクガクと過剰に電を揺する。何故か無線式ヘッドセットを着用している為、声はスピーカーから校庭に響き渡っている。
「大丈夫じゃないのです!!頭が揺れる!やめて!!台本と違う!きぼぢわるっ」
こちらの声は聞こえていない。その揺すりで本当に脳震盪を起こして、ぐったりとなった電。
「残念ながら………電さんは、やられてしまいました」
「う……薄雲に……がくっ」
卯月は、児童達を守るように両手を広げている。
「子ども達はやらせないぴょん!」
児童達の悲鳴が聞こえる。
神通はそれを見ながら、もう訳が判らなくなっている。中に入っている筈の直哉と周囲の艦娘達は、台本にないことばかりやり始めてる。
深海棲艦は火を噴いて子ども達を威嚇したり、無駄に光る眼で目がぎょろぎょろ見回したり……何故か、火災訓練でもないのに用意してある消火器をぶっ放したり、やりたい放題である。
児童達は恐怖で泣き出す子達もいる中、健太君と愛ちゃんとお騒がせトリオは、師匠の暴走を生暖かい目で見守っている。
『高菜先生ェ………』
「グハハ、ヨワヨワシイカンムスメ、オレサマノテキデハナイワ」
「この
取り敢えず怒りの形相になり、再び深海棲艦に立ち向かう神通。
「神通おねーちゃーん!!負けないでー!!」
児童達の、悲鳴に近い黄色い声援を背に受けて、強烈な回し蹴りを放つ。
深海棲艦はそれを受け止めると、強烈な尻尾を放つ。
神通は、その尻尾をすばやく脚を戻し受け止めると、そのまま蹴り込みに移行する。
背後から、ガツンと蹴り込まれた深海棲艦は、少し蹌踉ける。
そして振り向くと、口を開いて炎を吐く。
「ガオー!」
その炎をしゃがんで躱す。普通のガスバーナーの為、チリチリっと髪が焦げる。
神通はそのまま懐に潜り込むと、強烈なアッパーを叩き込む。
更にリバーブロー、正中線乱打でボコボコにして行く。
「熱いですってば!!この怪獣め!!」
そのまま神通は、∞の字を描きながら、アッパーやフックを叩き込んで行くと、深海棲艦は何とか受け止めているが、次第に受け止め切れなくなり、神通のデンプシーロールでボッコボッコにされ始める。
深海棲艦は、よろよろと後退りながら、
「オボエテロ!シロパンツ!」
そう捨てゼリフを吐き捨て、逃げて行った。
さっきから蹴りを多用して、パンツ丸見えだったことを思い出すと、ばっとスカートを抑え、顔を真っ赤にする神通だった。
「わー!凄い!!神通さん!!」
パチパチと拍手が沸き起こる中、漸く台本の笑顔で、児童達にVサインを決めるのだった。
数分後、深海棲艦の首を持って、汗びっしょりの直哉が戻って来る。
「いやあ、やられかけの深海棲艦を退治して来たよ」
そんなことを言いながらやって来る。
「わー、すごい!高菜提督!」
何も知らない児童達は、お目々キラキラになっている。
美味しいところを、総取りである。
「自作自演とは……」
「このことだよね……」
「だな」
「酷いね」
「だね」
「高菜提督、貴方って人は……全部美味しいとこを持って行って……」
健太と愛ちゃんとお騒がせトリオと神通は、ジト目で直哉を見ているが……
そんな中、直哉は朝礼台に立ち、マイクを片手に敬礼する。
「はい、陸上自衛隊の高菜二佐です。皆さん、訓練お疲れ様でした。皆さんの熱い応援のおかげで、深海棲艦を退治することができました。皆さんの避難もバッチリですが、ちょっと私語が多かったり緊張感が欠けているかな?と思いました。次回からは、毎回本番のつもりで避難訓練を行ってください。以上」
そう講評を終えると、電もよろよろと起き上がって整列する。
「酷い目に遭ったのです……」
「それでは皆さん、残りの時間は教室に戻って、授業を受けてください」
『はーい!』
教室に戻って行く児童達を見送りながら、ウンウンと満足そうに頷きつつ眺めてから、朝礼台を降りる直哉に、
「台本と話が違うじゃないですか!」
と、食って掛かる神通。
「いやあ。これは、うちの嫁達提案のサプライズでねえ、学校の先生も承知済みでね。鬱憤は晴れたかい?」
「あ………」
そうなのである。台本と違う行動で、神通も全力で体を動かしたところ、最早夫婦喧嘩のこと等、吹き飛んでしまったのである。
「あの、私、女川に帰りますね?」
「それがいいのです」
「早く帰ってあげるぴょん」
「桐山提督が心配してます」
神通の言葉に、笑顔を向ける艦娘達。
「まあ、夫婦喧嘩もあってもいいけど、程々にね?」
「そう言う高菜提督は、夫婦喧嘩するんですか?」
「するのですよ。仕事はスキを見つけてはサボるし、昼寝はする。いっつも電達が注意してるのです」
「いやあ、喧嘩と言うより、一方的に叱られて終わるだけだけどね?」
そのやり取りに、肩を竦める直哉だった。
こうして神通は、十数回の家出で初めて、お迎えの前に、自分の意志で帰宅を果たした。
ここから更新ペース落とします。