Q:更新ペース落とすんじゃねえのか
A:1本しか書けてない、ちゃんと落ちてる。
明日病院、書けるかどうかわからない、
「起きるのです!」
微睡んでいた直哉に向かって高角砲を向けると、直哉は目を覚ます。
その声の主を探ろうと辺りを見回すと、電が立っていた。
「もう、書類は終わったのですか?」
大きな溜め息と共に、扉を閉めて執務机に近づく電。
外は雪が降っており、愛ちゃんや健太君、お騒がせトリオそして卯月達が、雪掻きついでに工廠妖精さん達と一緒に、キャイキャイと雪だるまを制作している。
「てーとくのしょるいはおわってます!」
事務員妖精さんがビシッと敬礼すると、電は決裁箱にある書類に目を通す。
きちんと、サインをすべきところはサインがされ、終わっている。
「よろしいのです」
「ん。電は、皆と雪遊びしなくていいのかい?」
軽く背伸びをすると、外の様子を一瞥してから、問い掛ける。
「直哉は、どうせ寒いのが嫌いだから、って温かいこのお部屋に籠ってるに決まってるのです。電も温まりに来たのです」
部屋にはだるまストーブが置いてあり、煙突が天井に伸びている。
ストーブの上にはやかんが載っていて、注ぎ口からは湯気が揺らめいている。
「そう言えば、二人で着任したのも、こんな雪の日だったかな?」
「最初にやったのは、周りの雪掻きと、ストーブ設置だったのです……」
―――――――――――――
高菜三佐と電が、教えられた道どおりに、東京から業務車三号でやって来た、雪の宮戸島の鎮守府。
建築されたばかりの建物が二つ、雪に埋もれていた。
庁舎も官舎も、それぞれ所謂オーダーメイドのコンテナハウスと言うものである。
庁舎は、執務室と応接室が用意されており、執務机や司令官パソコン等の最低限の備品が設置されていて、
いつのものだか判らないだるまストーブが、部屋の隅に置いてあった。
官舎もコンテナハウスで、無駄に広いコンテナハウスと、広めのコンテナハウスを連結させて、1LDKと言う体裁を整えた建物である。
いかにも急ごしらえで作りました、そんな代物である。
駐車場には、オリーヴドラヴ色をした軽トラックが停めてあり、雪に埋もれている。
「……取り敢えず。ホームセンターで、雪掻きと薪を買いに行こう」
「了解なのです」
高菜三佐と電は、業務車でホームセンターへと向かった。
ホームセンターは、深海棲艦の侵攻の爪痕がまだまだ残っていて、建物も駐車場も荒れていた。
営業自体はしているものの、店員の数も少なく、復興が始まったばかり、と言った様相を呈していた。
「高菜二尉じゃないかね!?」
声を掛けられると、その方を向く。
年老いた婦人が、ブーツと杖の姿で歩いて来ていた。
「やあ、先日はありがとうございました。昇進して三佐になりました」
そう。全島脱出の際、村の古株として纏め上げてくれたおばあちゃんである。
「それはおめでたい事で。そちらのお嬢さんが、艦娘とか言う人?」
「電なのです。階級は三曹なのです」
電は、ここ宮戸島に赴任する直前、三曹試験と呼ばれる艦娘の技術試験を通過している。さすがはチート艦である。
本来、士長が実力を十分に蓄えて受ける試験なのだが、電は
試験合格後に一等海士、そしてその四時間後に海士長、更にその四時間後に三等海曹への昇進、と言う扱いとなった。
「私はね、真っ先に宮戸島に戻りましたよ。息子夫婦から、リフォームのプレゼントを受けてね。前より住みやすくなったよ。残念だけど、中学の子供がいるから宮戸には行けない、と言われてしまったけどねえ」
そう。人口は、全島避難前の半分くらいになってしまったのだ。
小学校は何とか残ったものの、中学校は本州の方に統合され、未来中学校に行かなくてはならない。
片道七キロもある、遠い道のりである。
「おばあさん、何か手伝うことはありませんか?」
「そうね。お買い物に、付き合ってもらえないかしら?」
「了解しました。電、おばあさんのお荷物を持ってあげなさい」
「そうそう、私は加納美代。改めてよろしく頼むわね」
「了解なのです!」
ホームセンターで、美代おばあさんは調理器具などを新調して、高菜三佐が車に載せる。
薪と着火剤とマッチと軍手、やかんと雪かきを二つ購入してそれも車に載せて、美代おばあちゃんの家まで車を走らせる。
車内では、美代おばあちゃんと電が楽しそうに会話をしており、孫と会話をしているような感覚を感じながら、高菜三佐はハンドルを握る。
美代おばあちゃんの家で別れると、鎮守府に戻って来る。
早速、周辺の雪掻きを始める。コンクリートが打たれた埠頭には、やはりコンテナガレージで作られた工廠が設置されている。
工廠の周辺は、早速工廠妖精さんが着任して、雪掻きを始めている……と言うより、雪だるまを作っている。
雪掻きだけで数時間掛かってしまった。身体はガタガタで、寒くて仕方がない。
二人は、再び降り出した雪を見上げながら、大きな溜め息を吐いた。
執務室に戻ると、だるまストーブの設置を始める。
天井の煙突口はすでに設置されており、そこにパイプを差し込んで完成である。
だるまストーブの口から、薪を鉈で割りながら放り込んで着火剤を投入し、マッチをシュッと擦って放り投げる。
着火剤に火が着くと、薪に火が着いて、部屋がだんだん暖かくなって来る。
「さむいぞー」
外にいた工廠妖精さんが、中に飛び込んで来る。妖精さんなだけあって、テレポートして部屋に入って来る。
暖かくなった部屋の火の番を妖精さんに任せると、二人は次に官舎に向かった。
「ここで、共同生活する訳だけど、年頃の娘とおじさんが一緒に暮らすのも問題があると思うから、コンテナハウスの追加申請をするまでは、私がLDKに暮らそう。ふかふかのベッドがあるからねえ、それで寝るといいよ」
「そうなのですか?」
何気なく聞き返したが、そこで、電は気づくべきだった。その結果、高菜三佐が金持ちのボンボンだと言うことを、数年間も気づけなかったのであった。
「官舎からの荷物は、引越し業者が入れたみたいだね?」
ダイニングテーブルにソファ、キッチンはガスが引いてない為、電磁調理コンロが置いてある。
お湯も電気温水器である。
そして、連結したコンテナの先の部屋に入った。
ものすごく大きなベッドと、書斎机、その上にダンボールが置いてあり、あまり荷物は多くない印象だった。
「高菜三佐、変なことしなければ一緒に寝るのです」
「えっ?」
「電にはベッドが広すぎるのです」
「電がそう言うなら……」
そんな会話をしながら、そこから連結されているユニットバスを開ける。
LDKではなく、居室にトイレと風呂が連結されているのを除けば、二人で暮らすには十分な広さである。
最初のうちは、それぞれが遠慮をしながら生活をしていた。
それから年数を重ねるに連れ、だんだん夫婦化して行くのだが、この時の二人はそんな事は知る由もない。
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「いやあ、あの時どうして、一緒に寝るなんて言い出したんだ?」
「そうですね……直哉は悪い人じゃない、って直感で思ったのです。電は、直感は悪くない自信があるのですよ」
直哉の問い掛けに、悪戯っぽくぺろっと舌を出して答える電。
『さむーい!!!』
雪だるまが完成した一同が、執務室に入って来る。
「あれあれ、風の子達もギブアップかな?」
そう言いながら椅子から立ち上がり、壁際にある薪を手に取って、いつものように鉈で薪を割って投入口に放り込む。
電が、ストーブの上にあるやかんを踏み台を使って取ると、皆の分のお茶を淹れ始める。
「皆、お菓子を持って来ましたよ」
美代おばあさんが扉を開けて、何時ものりんごパイを持って来ると、皆大喜びである。
会議用テーブルを組み立てるとそこに乗せて、美代おばあちゃんも交えてのおやつ会である。
美代おばあちゃんには執務机を譲り、他の皆は立ってりんごパイを頬張る。
お騒がせトリオは美味しそうに食べて、健太君と愛ちゃんは仲睦まじそうに食べている。
そんな二人を卯月と薄雲が誂って、御代おばあちゃんはそんな皆を楽しそうに見守っている。
そんな姿を眺めながら、電と直哉は寄り添って笑みを浮かべているのだった。