宮戸島の提督と仲間達のお気楽日記   作:SAMICO

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なんというか、明石暴走回です。

人は何故暴走するのか



その名も連装砲ちゃん

雪の降っている12月下旬。

明石がやって来た。唐突に。

「こんにちはー!」

「こんにちはなのです。直哉は今、お昼寝中なのですよ」

秘書艦の電は、だるまストーブに薪を焚べながら声を掛ける。

直哉はエグゼクティブチェアに座ったまま、気持ち良さそうに眠っている。

窓の外、つまり埠頭では、健太と愛ちゃんとお騒がせトリオが、卯月と薄雲と楽しく雪合戦をしている。

子ども達は冬休みに突入して、空手の練習と宿題を、鎮守府でやるのが日課になっている。

電が屋内にいる理由、簡単である。直哉と同じく、寒いのが苦手なのである。

 

「ところで、どうしたのですか?」

「いや、新兵器を開発したんですけど、試射する場所がなくて」

宮城地方協力本部は仙台合同庁舎にあって、街のど真ん中である。

いつも、仙台駐屯地に勝手に作った工廠と、宮城地本を行き来する毎日である。

こう見えても、工廠部の責任者なだけあって階級は三佐であり、『偉い』のである。

 

「はぁ。それでうちを選んだと。それで何を作ったのですか?」

「連装砲ちゃんですよ」

連装砲ちゃんとは、島風が連れている自律砲台のことである。

「あら、可愛いものを作ったのです。それで、今どこにいるのです?」

「今、トラックに積んでるので、ちょっと待ってくださいね」

「トラッ……ク?」

 

ストーブの火の番を事務員妖精さんに任せると、手袋とコートとマフラーと耳あてを付けて外に出る。

因みにスカートだが、タイツを履いており怒涛の210デニールと、防寒装備は万全である。

無骨なブーツも忘れてなく、万事ザ・防寒である。

 

そして、1トントラックに鎮座まします連装砲ちゃんを見ると、動きが固まった。

全長は2~3mくらいはあり、全幅も1mくらいある巨大な『連装砲ちゃん』なのだ。

浮袋の下には、足の代わりにキャタピラが付いている。

何というか、ガン○ンクである。

「水陸両用で、海にも連れて行けますよ」

「お……おうなのです」

トラックに付いている、パワーゲートに連装砲ちゃんを乗せるとリフトで地面に降ろし、連装砲ちゃんがキュラキュラキュラとキャタピラを動かして、電の前にやって来る。

「キュ」

片手を上げて、可愛い鳴き声で挨拶する連装砲ちゃんに、電も、

「あ、どうもなのです」

と頭を下げて、見上げる。

でかい。

圧倒的にでかい。

「ところで、明石さん。この連装砲ちゃんは、何て言う名前なのですか?」

「51㎝連装砲ちゃんですよ」

 

ひゅるるるる

 

真冬の吹雪が吹き渡った。

口径にして、島風の連装砲ちゃんの四倍超である。

キュラキュラキュラと、51㎝連装砲ちゃんは、埠頭へと向かって行くので、

二人も、その後に従いて埠頭へと向かった。

 

埠頭では雪合戦も飽きたのか、雪だるまを作って遊んでいる。

因みに、愛ちゃんはスキーウェアで、ニット帽を被っており、

健太君も、お揃いのニット帽を被っている。

お騒がせトリオは省略で、卯月と薄雲は制服のスカートに生足――所謂タイツなし、である。こんな寒いのに頑張っている。

電曰く「若い子はいいのです」と言っているが、自分も見た目はちっちゃい娘である。

「わー、なになに!?」

「おっきい!可愛い!」

健太君と愛ちゃんが、真っ先に51㎝連装砲ちゃんへ駆け寄るが、

『かわいい……?』ぴょん?」

お騒がせトリオと薄雲と卯月は、その可愛い発言に首を傾げる。

「何か、新兵器らしいのです。いっちょぶっ放してみるのです」

「キュ!」

51㎝連装砲ちゃんが可愛く鳴くと、がっしょん、がっしょんと、内部で装填が始まる。

そして海と平行に身体を向けると、首だけ海の方向に向け、腕が伸びてがしっと接地する。

クレーン車のサイドアームと、同じ原理である。

「準備OKです、いつでも発射命令をしてください。あ、連装砲ちゃんの後ろには行かないでね?」

明石が耳栓を付けると、子ども達と艦娘達は、耳を抑える。

「愛ちゃん、銀河英○伝説のやつ、やってみようよ?」

「うん。ちょっと待ってね……」

愛ちゃんは腰に手を当てて、びしっと海を指をさす。

健太君は、愛ちゃんの耳を抑えてあげている。

そして、大きな声で発射号令を下した。

「ファイエル!」

 

ズッガァァァァァァァン!!

ズッガァァァァァァァン!!

 

ドサドサッ!!!

鎮守府周辺の、建物の屋根の上に積っていた雪は、全て落ちた。

更に連装砲ちゃんの後方にあった、庁舎と艦娘寮のガラスは、背部から出た反動軽減用のバックブラストの衝撃で、全て割れた。

そして直哉は、熱を帯びた爆風が庁舎に飛び込み、吹き飛ばされた。

「な、何だ!?ってアチいっ!!!」

執務室も応接室も、メチャクチャである。

 

キャタピラを発射方向と平行にして、サイドアームまで降ろして、反動軽減装置まで付いているのに、

51㎝連装砲ちゃんは、反動で5mはズザザザザっと下がっている。

「み、耳がキーンとなった!」

耳を抑えていない健太君は、悶絶している。

「だ、大丈夫!?」

「う、うん……ちょっと、頭ガンガンするけど……」

涙目の愛ちゃんに、苦笑いの健太君。

 

「何かあったのか!?何だ、コレはぁ!?」

「あ、あはは……」

慌ててやって来る直哉に、全員が苦笑いだった。

 

 

二時間後……

「どういうことか、説明してもらおうか?」

ガラス屋さんが窓を交換している中、正座している明石は、エグゼクティブチェアに腰掛けた直哉から尋問を受けている。

因みに、いろいろ吹き飛んだ部屋は、皆と妖精さん達の頑張りで、何とか元通りに戻っている。だるまストーブがしっかり固定されていた為、火事にならなかったのが不幸中の幸いである。

因みに51㎝連装砲ちゃんは、海沿いの建物から落下した雪を除雪する為、ブルドーザーモードで融雪剤を撒きながら除雪作業をしている。

鎮守府庁舎内の片付けを終えた、子ども達と薄雲と卯月も、各地に散らばって雪掻きのお手伝いである。

艦娘寮の片付けは、明日以降の予定である。

幸い、人的被害はなかったものの、雪を舐めてはいけない。

「何か、ここだけじゃなくて、他のところでもガラス修理の依頼があったんだよね?」

ガラス屋さんがそう言うと、直哉は苦笑いで、

「ああ。修理代、全部こっちに回してください」

そう言うと、再び明石に向き直る。

「今回の51㎝連装砲ちゃん試射で受けた損害は、君に弁償してもらうからね?」

「ええっ!?そんなぁ」

「なら、足立一佐に報告するか?」

「それは、もっとご勘弁ください!!」

土下座の勢いで懇願する明石に、二人で大きな溜め息を吐いた。

「判ったのです。直哉が立て替えるので、分割で払うのです。あと、宮戸島鎮守府宛に顛末書を差し入れるのです」

「わ、分かりました………」

 

そんな中、ザザッと艦娘無線が入った。

『こちら、女川艦隊神通。ル級フラッグシップに追い回されていたのですが、謎の砲弾の直撃を受けて、ル級が木っ端微塵になりました。どうぞ?』

『こちら、女川本部。何を訳の判らないことを言っている?どうぞ?』

『だから、今言ったことが全てです!だから言ったじゃないですか!?無理な進軍命令ばっかりするから!!』

『ええい!私のせいだと言うのか!?』

『はい!崇のせいです!いい加減にしないと家出しますよ!?』

『何だと!?神通、もう一度言ってみろ!?』

夫婦で罵り合いが始まったので、堪らず無線機を取って、送信ボタンを押す。

「えー、こちら宮戸島本部。女川本部、女川旗艦、夫婦喧嘩を無線でやるな、どうぞ?」

その直後、数秒間沈黙して神通から、

『もっ、申し訳ありません。どうぞ?』

と、お詫びの通信が入った。

「女川旗艦、了解。先輩は何か言うことは?どうぞ?」

『す、すまん……どうぞ?』

「女川本部、了解。謎の砲弾は、こちらからの明石謹製の新兵器の試射と思われる。迷惑を掛けて申し訳ない。援護射撃になっていたようで安堵している、どうぞ?」

『ル級が、肉塊と化して四方八方に吹き飛んでいきました、どうぞ?』

「『…………』」

神通の報告に、全員が沈黙した。

『と、とにかく、神通達が無事なら良かった』

そう桐山が言うと、神通の、

『全然無事じゃありません……ル級と砲弾『の』破片が直撃して、全員大破で返り血塗れです、どうぞ?』

その言葉に、全員が絶句した。

『えっ?』

「えっ?」

「『………』」

視線が、明石に集中する。

「あー、これから明石を謝罪に向かわせます。どうぞ?」

『う、うむ。待っていると伝えてくれ、どうぞ?』

通信が終わると、業務用の電話が鳴り響く。足立一佐からである。

それをスピーカーホンにして、電話に出る。

「はいはいもしもし、こちら葬儀屋」

『高菜二佐!!たまたま、東北方面の通信をモニタリングしていたが、今のは何だ!?』

初っ端から激おこである。艦娘本部では、各地方の通信を光回線で転送しており、モニタリングができるのだ。大抵は、無線の私語を戒めたり、不正の温床を確認する為のものである。

「いやあ、明石が51㎝連装砲ちゃんを開発しまして。うちで、勝手に試射して行きました」

「直哉は、食後のお昼寝をしていたので」

「ちょ」

会話に加わる電に、直哉が慌てて声を掛けるが、電はしれっと続ける。

「電が、代理で許可したのです。そしたら、反動で鎮守府庁舎のガラスは割れるわ、周辺のガラスにもヒビが入るわ、ついでに屋根から雪がザザザーッと落ちて、怪我人死人は出なかったけど、今皆手分けして、『雪掻きなう』なのです」

『明石に、減給すると、伝えたまえ』

「ええっ!?そんなぁ」

『そんなぁ、ではない!貴官は、佐官でありながら何をやっている?大体、本部工廠を夕張一尉に丸投げして東北で何をやっている?本当に薄雲のモニタリングだけか?私の目の届かないところで、存分に趣味をやっているだけではないのか!?』

「そ、そんな事は決して」

『だいたい貴官は……』

 

足立一佐の説教は、二時間続いた。

真っ青で、小さくなって正座のまま説教を聞いている明石を見ながら、電と直哉は肩を竦めるのであった。

 

明石が、51㎝連装砲ちゃんをここ宮戸島に置き去りにして、女川に謝罪に向かったのと入れ替わりに、

子ども達と薄雲達が帰還して来た。

『さむーい!!』

愛ちゃんを先頭に、温まりに戻って来た子ども達。

「報告!雪掻き部隊隊長笹野愛『名誉二等陸士』、以下六名、雪掻き任務完了しましたぁ!びしっ」

愛ちゃんの元気のいい敬礼と共に、敬礼する子ども達と艦娘達。

宮城地本と相談して、艦娘達と子ども達の交流の為に、軍港内立ち入り許可証に地本の計らいで『名誉二士』と付けてくれたのだ。

愛ちゃんは特に喜んで、肌身離さず付けている為、あだ名が『愛ちゃん二士』になった。

宮本地本本部長から、名誉なら士長までだったら、好きに昇進させていいよ。とのお達しなので、そのうち一士をあげようか考えている。

それに、笑顔で答礼する電と直哉。

「ご苦労さま。それじゃ、今日はうちで夕食会にしようか?」

『わーい!!』

子ども達の喜ぶ声を横目に、子ども達の保護者に連絡を入れる直哉であった。

 

その後、足立一佐から電話があって、直哉もまた説教を食らったのは言うまでもない。

尚、どさくさに紛れて51㎝連装砲ちゃんは、未だに宮戸島にいる。

今は、工廠内で主人の帰りを待っている。

時折出動しては、融雪剤を撒きながら雪掻きをしたりしている。




《こぼれ話というより愚痴》

今まではネタが降りてきたら文が降りてくるんですが
最近はネタからプロットを組み立てないと文が降りてこなくなりました。
人、それをスランプという。

明日は文降りてくるかな(白目
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