2018/06/30:高等工科学校生徒について一部追記しました。(重要な部分を見落してました)
クリスマスを終えて、年末の宮戸島鎮守府。
公務員とはいえ、前線の鎮守府の仕事納めは大晦日である。
今日ばかりは、直哉も怠惰の衣を脱ぎ捨てて、掃除用具片手に鎮守府の大掃除をやっている。
これは宮戸島鎮守府に限らず、鎮守府の仕来りのようなもので、
全国どこの司令官もやっている。
そして艦娘は、エリア内の艦娘達が合流して、仕事納め出撃をするのだ。
今回の指揮官は、階級が一番上の電が務める。
海域の深海棲艦を、気仙沼エリアから南下して連合艦隊で掃除して行くのだ。
これも、一つの大掃除である。こちらは羽佐間一佐発案の、宮城管区の仕来りである。
提督達は、そんな艦娘達の帰る場所をキレイに維持しよう、と大掃除をしている。
もちろん、妖精さん達も工廠や執務室のお掃除を手伝っている。
小さい妖精さん達が、小さいモップを片手に至るところでお掃除している。
51㎝連装砲ちゃん改二も、工廠妖精さんの改造を受け、今日は工廠のお掃除を手伝っている。
だが、工廠妖精さんは艦娘達が帰って来てからが本番なのだ。
皆の艤装をピッカピッカにメンテナンスするのも、大掃除に含まれている。
副官の配属されている鎮守府は、二人で掃除できているが、一人鎮守府は司令官の頑張りどころなのだ。
「こんにちはー!!うちの大掃除終わったから、お手伝いに来ました!」
元気良く、名誉副官こと愛ちゃん名誉士長がやって来た。
今日も、プレゼントで貰ったネームと階級章を付けての出勤である。
「おお、有り難い。窓拭きお願いできるかな?」
「了解!」
きちんと足を揃えて敬礼すると、直哉も笑って答礼する。
「あれから、健太君と仲はどうなんだい?」
クリスマスのキス事件の後、健太君には照れ臭さが残っているように感じたので、誂い半分で訊いてみると、愛ちゃんは照れながら答える。
「提督、お人が悪いですよぅ。昨日、キスしてくれましたよ?」
「そうかそうか、結構結構。クリスマスの夜は眠れなかった、って健太君言ってたからね?」
「あれは、勢いというか……」
そう。買ったは良いが、使わなくなった卯月の部屋のベッドで、クリスマスの夜は二人一緒に眠ったのだ。
翌朝夕立が、
「昨夜はお楽しみでしたね?」
と誂うと、健太君は、
「何もしてないよっ!寧ろ眠れなかったよっ!」
と、顔を真っ赤にして反論していた。
愛ちゃんは、六年生にしてはちょっと発育が良い為、思春期前の男子には目の毒で、そんな子が目の前で無防備に眠っている姿にドキドキして、眠れなかったのだ。
「勢いは大事だけど、傷つくのは女の子だから。そのなんだ、しっかり考えて行動するんだよ?」
「了解です!」
既に愛ちゃんは、中学卒業後の進路を決めている。
両親や直哉はまだ早いだろう、と話半分で聞いているが、女子に門戸が開かれるなら陸上自衛隊 高等工科学校への進学を志望している。
そしたら、卒業すれば三曹からのスタートである。
ただ、現在のところ受験資格は男子のみなので、第二志望は高校を出て、防衛大学校進学を考えている。
因みに愛ちゃんは、妖精さんが見えるので、自衛隊に入隊すれば大本営への配属が約束された人材となるだろう。
残念ながら、健太君やお騒がせトリオには、妖精さんが見えない。
妖精さんと、楽しそうに会話をしているのを見ると、健太君がヤキモチを焼くのでこうやって一人の時は、妖精さんと会話をしながら、お掃除をしている。
「たいちょー、たかいところおねがい」
妖精さんからも、隊長扱いされている愛ちゃんは、「了解」と答えると踏み台を持って来て、窓の高いところを洗剤を使って綺麗に磨いている。
その間に、直哉は年末の書類をどんどん決裁している。
そして机の上には、紙袋が八つ置いてある。
そのうちの三つは、『賞与』と書かれている。
そう。振込至上主義の宮戸島鎮守府でも、年末賞与は別なのである。
それに加え、今年は名誉隊員となった愛ちゃん達にも「お小遣い」の名目で、自分の賞与からお年玉扱いで渡すことにした。
頑張り度合いで中身も色を付けており、愛ちゃんのには特別に諭吉さんが入っている。
「執務室と応接室はだいたい良いかな?それじゃ、愛ちゃん士長。妖精さんと一緒に、艦娘寮の掃除をお願いして良いかな?」
「艦娘寮って、あのままですよね?」
「うん。ガラスだけ直してもらったけど、明石のせいでメチャクチャになったままかな?」
その言葉に、愛ちゃんは目を丸くする。
「うわぁ、大変そうだなぁ。皆来たら、手伝ってもらおうっと」
そんなことを言いながら、事務員妖精さん達を引き連れて艦娘寮に向かう。
よく見たら、愛ちゃんの靴はミリタリーブーツになっている。これはきっと、親のクリスマスプレゼントかな?と思いながら、
どんどんミリタリーマニア化して行く、未来の
書類決裁の続きに取り掛かるのだった。
昼が終わった頃、やっと家の大掃除から解放された健太君とお騒がせトリオも合流して、
放ったらかしにしてあった、艦娘寮の掃除に取り掛かる。
彼等も、愛ちゃんに感化されて迷彩服を着用している。親にねだったそうな。
因みに直哉と愛ちゃんは、馴染みの食堂の出前を取って一緒に食べた。
書類整理を終えて、一旦ボーナス袋を鍵の掛かる引き出しにしまい、直哉も艦娘寮に足を運ぶと、完全に大破したものが外に出されていた。
中に入ると、散らばったガラスや壊れた家具の片付けが終わっており、
やっと大掃除に取り掛かっている。
直哉が現れると、愛ちゃんが作業を止めて、
「司令官殿に敬礼っ!」
と敬礼すると、健太くんとお騒がせトリオも、ビシッと敬礼する。
「大掃除ご苦労さま」
笑顔で答礼すると、直哉もポケットに入れていた軍手を付けて、大掃除のお手伝いに入る。
「しかし、テーブルも椅子も壊れちゃったかぁ。初売りでホームセンターで揃えて、明石の借金に加算しておくかぁ。しかし、テーブルどうすっかね?」
外に鎮座しているテーブルに、目を遣りながら考えると、
「薪にすれば良いんじゃね?」
と言う圭一のアイデアで、燃やしてはいけない部分だけゴミ袋に詰めて、直哉は
途中から、慎も薪割りを手伝ってくれた。
夕暮れ時になって、六人の力で艦娘寮もピカピカになった。
次にやるのは、掃海作業を終えて帰って来る艦娘達のお出迎えである。
三人手を繋いで帰って来る艦娘達を、敬礼でお出迎えである。
埠頭に上がって来ると、三人共直哉達に向かって整列する。
「報告!電二尉以下三名、大晦日大掃除任務を終了して帰還しました、小破1、以上!」
電の報告に直哉は、
「了解。高菜直哉二佐以下六名大掃除部隊、破壊された艦娘寮修復作業も終えて、任務完了しました!」
「了解なのです!それでは、早速儀式なのです!」
電の言葉に首を傾げる、直哉以外のメンバー。
「まあ、従いてくればわかるよ」
そう言って、二人で執務室に向かうのに、残りのメンバーも従いて行く。
執務室に入ると、机から封筒を八つ取り出す。
皆は電の、「整列!」と言う号令で横一列に並ぶ。
「それでは、仕事納めの会を始めます。電二尉、年末賞与です。ご苦労様」
「ありがとうなのです!」
電に賞与袋が手渡されると、電は初売りで何を買うか期待が膨らむ。
「次に、卯月三曹、年末賞与です。ご苦労様」
「ぴょん!」
初めてもらう賞与は分厚かった。目を白黒させて受け取る卯月。
「次に、薄雲三曹、年末賞与です。ご苦労様」
「有難うございます」
いつもの、抑揚のない声で受け取る。
「次に、笹野 愛名誉士長。ちょっと早いけどお年玉だよ、今年もいろいろありがとう。ご苦労様」
「はいっ!」
貰えることを期待していなかった愛ちゃんは、満面の笑顔である。
「次、大石健太名誉一士。愛ちゃんのことを守る、ナイトになるんだよ?」
「はい!」
同じく笑顔で受け取る。彼等以下四人は、同じ一葉さんが入っている。
「次、原 圭一名誉一士。あんまり大人を困らせないようにね」
「おうっ!」
嬉しそうに受け取る、お騒がせトリオのリーダー。
「次、富永寛太名誉一士。圭一くんの暴走を、きちんと止めてあげてね」
「はい!って、開けるの早いよ!」
同じく受け取って、早速開封しようとする圭一を止める。
「最後に齊藤 慎名誉一士。薪割りご苦労様、ありがとうね」
「有難うございます!」
最後に慎も受け取る。
それから全員の前に戻ると、皆を見回して、
「本時刻を以て、2018年の全ての任務を完了したことを確認した。ご苦労様」
「全員敬礼!」
ビシッと全員が敬礼をする。直哉も答礼する。
「直れ!」
「今年は、愛ちゃん達も来てくれて賑やかになって、良い一年を送れたと思います。来年は、愛ちゃん達も中学生になるし、より一層勉強や遊びに、艦娘達は一層の任務の達成に励むよう祈念して、一本締めを行います。お手を拝借、よぉーっ!」
パン!
「お疲れ様でしたー!」
直哉の言葉に、
『お疲れ様でしたー!』
と、皆も挨拶する。
愛ちゃん達は、ちょっと早いお年玉を手に、それぞれの家に帰って行く。
直哉達は、鎮守府を施錠してから家に帰るのだ。
家の冷蔵庫には、ネット注文したおせちやお寿司等が入っており、
高菜ファミリー四人で、ゆっくりテレビを見ながら夕食が始まる。
「よし!アッパーだ!いけー!」
「そこ!ぶっ潰すのです!相手のガードが下がってるのです!」
ダイニングテーブルに置いてある、持ち運び可能の小さいテレビで、年末特番の格闘技を直哉と電が見ている。
既に二人共、アルコールがたっぷり入ってる。
リビングの大きいテレビでは、下町という芸人コンビと仲間の芸人達の、年末恒例の笑ってはいけないシリーズを見ながら、
卯月と薄雲が大爆笑している。
デデーン
「「あははははは!!!!」」
感情の薄い薄雲が大爆笑している、貴重なシーンである。
もちろん、こっちの二人もお酒を飲んでいる。
皆ご馳走を食べながら小休止したり、テレビの移動をしたりして、好き勝手に過ごしている。
ゴーン ゴーン
除夜の鐘が鳴り出すと直哉が、
「そろそろ行こうか?」
『はーい!』
宮戸島にある五十鈴神社に、お参りに出掛ける。
「あー!司令官!」
その声の方向を向くと、愛ちゃんと健太君とその家族がいた。
「いつも、愛がお世話になっています」
愛ちゃんのお母さんが頭を下げると、
「いえいえ、こちらこそ色々助かってます」
直哉も頭を下げる。
「それじゃあ、お母さん、私健太くんと一緒に行くね!」
そう言うと、二人仲良く鳥居を潜って行く。
健太君と愛ちゃんがお付き合いを始めたので、笹野家と大石家も家族ぐるみでのお付き合いが始まっている。
二人の父親も幼馴染の知り合いで、多少酒が入ってるらしく楽しく話をしている。
「それじゃあ我々も」
そう言って、四人で鳥居を潜る。
神社の本殿に向かい、四人並んでお賽銭を投げ込み、
パンッパンッ
と手を合わせる。
((((今年もいい年になりますように))))
四人とも同じ願いを込めて………
そして家に帰ると、スマホに大量のあけおめメールが入っている。
防大の同期や、同級生達からのメールである。
「お、今年は村上兄妹からも来てるな。今は浜松で提督してるのか?情報保全隊からも人材引っ張ってきたのかぁ?」
「誰なのです?」
「ん?同期でね、いい男だよ。正義感がもの凄く強くて学年主席。妹は何というか、ブラコン?同じく主席の優等生兄妹。まあ、そのうち会えるだろう」
「そうなのだぴょん?」
「居場所が判れば、浜松旅行序でに顔を見に行ってもいいだろうしな?」
「そうですね」
それから、それぞれメールを返し終えると、四人で年越しそばを食べて眠りに就く。
残念なことに、仕事始めは4日からだが、
直哉達は、どうせ愛ちゃん達がやって来るだろう、と思って鎮守府を開けるのだ。
2018年が終わり、2019年がやって来た。
season1が最終回でした。
Tips《村上兄妹》
次話の異譚『裏の仕事人』編の主人公たちです
※追記※
Tips《高等工科学校生徒》
受験資格は15~17の男子
なんで気づかなかったんだぁ。