宮戸島の提督と仲間達のお気楽日記   作:SAMICO

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そして我々は、(飛行機は)きっと空を飛ぶと確信していた。


追記
明石・夕張の階級に関する記述ミスを修正しました



season1/2019年編
アイキャンフライ


「明けましておめでとうございます!」

お正月三が日を過ぎた1月4日(仕事始め)、またあの女が顔を出した。

明石である。

「明けましておめでとうございます、なのです。直哉は今日はお休みを頂いて、小学校で子供達に格闘術の手解きをしているのです」

「それは丁度良いです。新装備を持って来ましたので、試射しようかと」

「はぁ……今度は、どんな物体を作ったのです?」

既に会議机の席に着いている明石に、お茶を出しながら呆れた顔をして問うと、

「薄雲さんがエラー艦娘(ロストナンバー)だ、と言うことはご存知のとおりですね?」

「はい、薄雲さんからお伺いしてるのです」

そう言いながら電も、自分のお茶を持って秘書艦執務机のワーキングチェアに腰掛ける。

「薄雲さんは、装備種別の制限を受けずに装備が可能、と言うことです。そこで、大和改二でも装備できなかった装備を持って来ました」

「………はぁ」

全容が解りかねている電は、生返事をするしか無い。

「いやあ、今回のは強烈ですよ。何せ、深海棲艦を吹き飛ばす最強砲を持って来たんですから」

「最強砲……」

「はい、史上最強砲です」

自信満々に言う明石に、嫌な予感しかしないが、自分が責任を取らないなら別に止める理由がない電は、その話を詳しく聞くことにした。

「どういう砲なのです?」

そんな薄雲は今、卯月と哨戒中である。

「80センチメートル三連装砲です!」

 

ピュオオオオオオオオ

 

北風が外で吹いて行った……

「は、80センチメートル三連装砲!?」

危うく、湯呑を取り落としてしまうところだった。

その80センチメートルという単語で、すぐにデスクに置いてある、直哉お下がりのノートパソコンでカタカタと調べる。

「ま、まさか、ナチス・ドイツの列車砲、グスタフ・ドーラなのです!?」

「いえす!ざっつらいと!」

「…………それは、まともに撃てるものなのですか?」

「分かりません!」

「……………」

電は絶句していた。

「何、間抜けそうな顔をしているのですか?」

「呆れて物が言えないだけなのです」

「いやあ、今度はちゃんと洋上で発射しますし、大丈夫でしょう」

「大丈夫とは思えないのです」

ジト目で見ている電に、明石は笑いながら、

「科学には犠牲が付きものですよ」

「いやいやいや、半深海棲艦だからと言って、薄雲を矢鱈滅多に扱わないで欲しいのです」

その苦情に、明石はニヤリと笑う。

「大丈夫です、一発だけなら沈まない保護装置を付けて試射させます。それに錨を下ろして固定モードで撃てば大丈夫でしょう」

「は…………はぁ」

どこから、その自信の根拠が生まれて来るのか解らない電は、大きな溜め息を吐いた。

「わかったのです。それでは直哉が戻って来る前に、薄雲達のところに向かうのです」

 

 

――――――――

宮戸島沖。

 

薄雲が応急修理女神を乗っけて、砲身が数メートルある三連装砲を肩に取り付けた補強パーツと、腰のベルトパーツから何本も伸びてるサイドアームが砲身を支えている状態で、海に立っている。

「これ、死ぬほど重いです」

装備カードから薄雲の装備スロット装置に取り付けると、薄雲は膝まで水没する状態だった。

「大丈夫ぴょん?」

「まあ、ドカンと一発!やってみましょうか?」

「薄雲、良いのですか?」

「まあ、やってみましょう。責任は明石三佐が取ってくださるんでしょうから」

ジト目で明石を見ると、明石は自信満々に、

「大丈夫、今度は市街地に被害は与えません」

「いや………」

電が、突っ込もうとした直後だった。

「発射します」

 

ズッガァァァァァン!!

ズッガァァァァァン!!

ズッガァァァァァン!!

 

その直後、薄雲の姿が消えた。

「えっ?」

「薄雲ちゃんが消えた!?」

「あれ?」

 

――――――――――

それから少し後のことだった。

その先の洋上で、神通率いる女川鎮守府艦隊が、戦艦棲姫に追い回されていた。

「振り切れないデース!」

「くっ、だから進撃はやめろと言ったのに……!私が殿を務めます、五人は逃げてください」

神通が、撃沈覚悟で戦艦棲姫に相対した直後だった。

 

ザッボォォン!!

遠くで、大きな水柱が上がった。

「嫌な予感デース!」

「また、明石ですか?」

「ひえええ……」

「また何か飛んで来ます!!」

「じ、神通、どうするの!?」

金剛型姉妹と陸奥が、口々に声を上げた。

戦艦棲姫は、その水柱に気を取られていた。

「ぜ……全艦退避ぃぃぃぃぃぃ!!!!」

『きゃああああああああああ!!!!!!』

真っ青な顔をした神通が悲鳴のように叫ぶと、女川艦隊は悲鳴を上げながら蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。

 

バァァァァン!!!

バァァァァン!!!

 

空中を飛翔していたニ発が炸裂した。

無数の子弾が、雨のように降り注いで来た。

「ク……クラスター弾ですかぁぁぁぁぁ!?!?」

神通達と戦艦棲姫は、雨霰のように降り注ぐ子爆弾によって、ズタボロにされるのだった。

「み…皆生きてます?」

「大破で済んでマース」

「眼鏡が粉々になってしまったわ……」

「ひえええ、ズタボロです」

「いたたたた……」

「酷い目に遭ったわ……」

必死で子弾範囲外縁まで逃げたのに、全員揃って大破である。

そして前を向くと、密集して降り注いだ範囲に棒立ちだった戦艦棲姫が、蜂の巣にされた無残な姿で、海の底に沈んで行った。

プカプカと、光に包まれた霊子結晶が浮かんでいる。

「これ、貰って良いのでしょうか?」

神通が拾い上げると、はっと我に返った。

そして、女川鎮守府に通信を送る。

「こちら女川旗艦、女川本部どうぞ!また明石にやられました!」

 

――――――――――――――

それと同じ頃。

直哉は、小学校の体育館で護身術教室を開いていた。

小さな子供から、中学生まで護身の方法を教えていた。

「中休みにして雪合戦でもするかい?」

『おー!』

と、皆で外に出た時だった。

 

沖合の方から、大きな爆発音がした。

「何だ!?」

もの凄く嫌な予感が過りながら沖合の方を向くと、愛ちゃんが空を指差した。

「提督!空から女の子が!!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

指差した先には、絶叫中の薄雲が飛んで来ていて、もの凄い勢いでグラウンドに向かって、ぐんぐん高度を落として降って来る。

「薄雲ぉぉぉぉ!?何があったぁぁぁぁ!?」

直哉の絶叫の後、

がっしゃぁん!!!

どっかぁぁん!!!

降ってきた薄雲は、グラウンドにある野球のバックネットを突き破って、倉庫のドアを突き破り、倉庫に飛び込んで行った。

「薄雲ぉぉぉぉ!!!」

皆で慌てて倉庫に駆け込むと、薄雲がぐったりしている。

「薄雲、大丈夫か!?」

直哉が抱き起こすと、うっすらと目を開いた。艤装は応急修理女神のお陰で完全修理したが、薄雲の本体は擦り傷と火傷だらけである。因みに強烈過ぎる反動で、装備は強制解除されて、装備カードに戻って薄雲が手に持っている。

艦娘でなかったら、即死である。

「あ、明石さんが………明石さんが……がくっ」

薄雲は気を失った。それと同時に艤装も解除された。

「薄雲さぁぁん!!!」

愛ちゃんも駆け寄る。

そのまま、皆で学校の保健室に担ぎ込むことになった。

 

――――――――――――

「薄雲さんを探さないと……」

青い顔をしながら、取り敢えず明石は鎮守府に戻って来ていた。

薄雲のレーダー反応が陸にあることは分かっていたが、途中でレーダー反応が途絶えてしまったのだ。

薄雲が気絶してしまって艤装が強制解除されたからであるが、電も卯月も顔が真っ青である。

「知らないのです。電は知らないのです」

「薄雲が死んじゃったぴょん……うわぁぁぁん!!!」

卯月に至っては、薄雲が死んでしまった、と勘違いして泣き始めている。

その直後、遠くから車の音が聞こえ、ドアが開いて閉まる音が聞こえた。

最初に現れたのは、愛ちゃんだった。

「あー!!やっぱり明石さんだ!!!薄雲さんに何をしたんですか!?」

愛ちゃんが、明石を指差して叫んだ。かなり激おこである。

そして、次に現れたのが直哉と薄雲だった。

「明石!これはどういうことか、説明してもらおうか!?」

応急処置を受けて、意識を取り戻した薄雲と一緒に来た直哉も激おこである。薄雲は、いつもどおりの冷静な顔である。

「いや、その……」

『薄雲ちゃぁぁぁん!!』

更に真っ青になる明石に、薄雲が生きてたことに安心して、薄雲に抱き付いてワンワン泣いている電と卯月。

トゥルルルルルル

業務用の電話が鳴り出した。電話の主は足立一佐である。

「はいもしもし、こちら葬儀屋」

厭そうな顔をして、電話に出る直哉。

『女川鎮守府から連絡が入ったんだが、今度は何をやらかしたのだ!?』

「えー、明石のバカが80センチ三連装砲なんぞを製作して、薄雲に取り付けて試射をさせた結果、薄雲は数キロほどアイキャンフライして、小学校のバックネットを突き破り、倉庫のドアをぶち抜いて負傷しました」

『……明石に減給期間の延長と、薄雲のモニタリングを夕張一尉にやらせるから東京に戻れ、と伝えなさい』

「了解しました」

電話を切ると、直哉は青筋を立てながら笑みを浮かべた。かなり獰猛な笑みである。

「明石」

「ひゃいっ!」

「減給の期間延長と、明石の主任務は、夕張がやるから即刻東京に戻るように、と。あと、破壊した学校の備品は私が立て替えておくから、ちゃんと分割で給料から返すように」

「……そ、そんなぁ……」

「まあ、私が監視されてるのは分かっていましたから、ぼかさなくても大丈夫です。それに、今回の実験については私は怒っていません。ただし……」

薄雲は冷静に語ると、抱き付いて泣いている二人の頭を撫でる。それから、再び明石に向き直った。その瞳は真紅と怒りに染まっていた。

「私の大事な二人を泣かせた罪は海よりも深く、地球より重いです」

「えっ、ちょっ……待ってください」

そう言うと、明石を引き摺るように工廠に連れて行って、シャッターを閉めた。

「ぎゃあああああああああ!!!!!」

お正月の海辺に、明石の悲鳴が響き渡った。

お仕置きが終わった、明石の目からはハイライトが消えていた。

「ごめんなさい、ごめんなさい」

そう譫言のように繰り返しながら……よほどの恐怖があったのだろう。

 

結局、小学校のバックネットと倉庫の修理代は、直哉のポケットマネーから立て替えて支払い、明石の借金に加えられることとなった。

今回ばかりは明石もタダでは済まず、異例中の異例である一尉への降格処分となった。

工作艦と言う、失う訳にはいかない工廠部の中枢をクビにはできないものの、今後は足立一佐と大貫空将の目の届くところで、大人しくしていることだろう。

その結果、解毒剤を作れずに大村奈々海は大人に戻れる機会を当分の間失うことになろうとは、誰も気づいていない。

……本人も夫も周囲も戻す気がない以上、あまり関係のない話ではあるが。

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