宮戸島の提督と仲間達のお気楽日記   作:SAMICO

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やるかじじい!
―――三遊亭圓楽(6代目)―――



査察がやってきた!Ⅱ~足立将補の査察~

「ああ、疲れた………」

 

宮戸島の民宿に辿り着いた足立将補は、大きな溜め息を吐いた。

行く先々で、鎮守府運営《以外》のトラブルに巻き込まれていたのだ。

今回は、宮本東北警務隊長に地本業務に専念してもらう為、警務隊員も連れず、副官と夫人で行ったのが大失敗だった。

 

トラブルが無かったのは、南三陸と気仙沼くらいなもので、

それも、真っ先に行ったのが大失敗だった。

 

武藤提督と艦娘達の熱愛を目の当たりにした、足立早苗夫人が激発して、その日滞在した旅館では、娘が鼾を掻いて寝ているところへ、それはもう激しい夫婦の営みがあった。

娘から、『ゆうべはお楽しみでしたね?』とニヤニヤしながら言われると、夫婦揃って赤面する事になった。

 

気仙沼では、大村奈々海が幼女化している、ということを除けば問題はなかった。こちらも、丁度日本に帰って来ていた大村奈々海の旦那とのアツアツぶりを、胸焼けがするほど見せ付けられたのだ。

その晩の、旅館での出来事は言うまでもない。

 

次に赴いた岩沼鎮守府では、羽佐間夫人の紗花が両手に匕首を持って、鎮守府から出ようとしているのを、羽黒が必死で止めている、と言う騒動に巻き込まれてしまった。

聞くところによると、羽佐間眞一郎陸准将補がチョット一回のつもりで、逆ナンされた女子大生と一夜を共にして、朝帰りしたところに丁度足立が査察に入ったのだ。

 

執務室内では修羅場が発生しており、艦娘達に説教されている眞一郎と、あらゆる手段を尽くして突き止めた住所に、匕首二刀流で殴り込みに行こうとするヤンデレ紗花を必死で止めている羽黒、と言う信じられない光景を目の当たりにしたのだ。

「うふふ。ちょっとあの女を、バラバラにしてくるだけですよぉ」

「駄目です!紗花さん!!お腹の子に障ります!!」

 

早苗夫人は度胸のある人だが、秋奈は腰を抜かしてしまっていた。

「何と言うか、極道の妻ですわね」

とは、早苗夫人の言である。

 

足立将補・秋奈が、紗花に10時間ほどお説教と云う名の説得をして、何とか納得させて旅館に帰って来た時には、父娘共々ぐったりとなっていた。

 

次に向かった女川では、夫婦喧嘩真っ最中の桐山提督と神通の仲裁に入った。

最終的には、仲直りすることになった。

そして、その足でやって来た宮戸島鎮守府である。

何が起こったかは、お察しである。

 

 

その日には鎮守府には入らず、旅館で一泊してから査察に入ることにした。

旅館から出ると、電と薄雲が待っていた。

「閣下、お出迎えに参上したのです」

「鎮守府までご案内します」

 

「なぜこの民宿にいると?」

「民宿の親父さんから聞いたのです」

「「ゆうべはお楽しみでしたね?」」

 

にんまりと笑う艦娘達に、固まる足立夫妻。

 

「「!?」」

「あははは。お父さん達、年考えてくださいよ?」

と、大爆笑している副官で娘の秋奈。

 

「全く……守秘義務とかはないのか……?」

ブツクサ言いながら、鎮守府にやって来る。

 

鎮守府前では、直哉と卯月そして番長と愉快な仲間達オールスターズがお出迎えする。

「「……え?」」

 

人数の多さにキョトンとしていると、タクシーがやって来る。

タクシーからは、大荷物を持った神通が降り立った。

「高菜提督、家出して来ました。今日からお世話になります!」

「………」

昨日の説得が、無駄に終わった瞬間だった。

 

お互いに自己紹介を終えると、足立将補は多少混乱し始める。

「愛くんの所のお友達は覚えておる。それで、その彼女がいるというのも判る。寛太くんの彼女は、この間の刃物娘の妹さんなのも判った。慎くんは、なぜ彼女が三人もいるのかね?」

「それは、もうあたし達、慎じゃないと満足できないカラダにされちゃったからぁ」

「それな」

「うん」

あっけらかんと、白昼堂々そんなことを言うギャルズの頭を、ぺしぺしぺしと叩く慎。

「やん!」

「いたっ」

「きゃっ!」

「足立将補、申し訳ありません。コイツラには、後で厳しくお仕置きしときますので」

お仕置きと聞いて、何故か喜んでいるギャルズを尻目に、慎が深々と頭を下げる。

「う……うむ……」

苦笑いしか出て来ない足立将補。

「まあまあ、あなた。高菜さんのお弟子さんなら、三人くらいいても問題ないでしょう」

「羽佐間准将補なんて、七人いますからね」

嫁と娘が、真っ先に適応している。

 

「そんな訳で、この子達は宮本さんから名誉隊員に任命されて、子供達の勉強の面倒を見たり、島でのPR活動をしたり、ボランティアをやってもらったりしてるんですよ」

「ほう。民間人交流としては、モデルケースとすべきだな」

 

応接のソファーに座ると、史絵がお茶を出す。

可愛い史絵は独り占めしたい、と言う圭一の意向により、瓶底眼鏡の地味子モードである。

 

番長と愉快な仲間達は、今日も勉強用の大テーブルで勉強中である。

今日は、皆学校創立記念日でお休みなのだ。

 

「うん、お茶も丁寧に出していて、いいお嬢さんだな」

「そうですわね」

ソファに座っている足立夫妻は、微笑ましくその様子を見ている。

副官である秋奈は、その後ろに立って控えている。

その対面には、直哉と電と卯月が座っており、薄雲が後ろに立って控えている。

 

「俺の彼女だからな!」

自分のことのように自慢する圭一に、顔を赤らめる史絵。

それを見て、微笑ましげに笑う足立夫妻。

 

「ねー、オジサン達って、エッチとかしてんのぉ?」

「「!?」」

 

礼儀のかけらもない、望の爆弾質問に固まる足立夫妻。

直哉は頭を抱え、三人の艦娘は溜め息を吐く。

 

ばしっと、慎が再び頭を引っ叩くと、

 

「足立夫妻、失礼しました」

 

と、頭を下げる。

そんな中、大爆笑をしているのは娘の秋奈だった。

 

「そう言う、JC達はどうなのよ?」

秋奈は冗談半分で返すと、優花は、

「まだだよぉ?」

とほんわか答え、史絵は顔を真っ赤にする。

そしてギャルズ達は、

「してるに決まってんじゃん、何言ってんの?」

「それな。昨日は、学校でしたよね」

「だね。その後、公園の雑木林でもしたよね」

と答えて、また慎に頭を叩かれる。

 

「全く君達は。師匠の上官の方がお見えになってるんだから、きちんとしなさい」

「「「はぁーい」」」

慎が、ツッコミ役でお説教をしている。

 

気を取り直した足立将補は、直哉と真面目な話に入る。

「まあ、最近はどうなんだね?他の警務隊では東北は緩い、どんどん攻め込め、と言う声も上がっているが?」

「それこそナンセンスですよ。近海防衛とシーレーンの確保さえしておけば、深海棲艦はトドや海獣と一緒です。それに、自衛隊の専守防衛に反します」

「確かに………」

「他の地方では、警務隊とのトラブルが起きてるみたいですね。愛ちゃんは、自衛隊の有り様に不信感を持ってますよ」

「あの一件は、直ぐに私がやめさせるように命令を出した。東北出発前に、各地方の警務隊には提督の自由裁量を尊重するよう、訓令を出しておいた」

「足立閣下も大変ですね。組織が大きくなるとコントロールも難しくなるし、組織は末端から腐って行きますからね?」

「全くだ。だが、これ以上提督を更迭しては、日本の防衛も覚束無くなる。微罪は、見逃さざるを得ないのが実情だ。それに、大罪を犯したものは《何故か》天罰のように消えて行くしな」

「全く困った話ですよ。抑々、深海棲艦が全面戦争を望んでいるかもまだ分かってないのに、全面戦争しよう等とはナンセンスですよ」

「確かに。全面戦争を望んでいたら、今頃焼け野原だからな」

 

足立が感慨深げに語ると、外からバイクの音が聞こえて来る。

そして、

「原 圭一を出せぇ!」

と、声が聞こえて来る。

 

「あっちゃあ、この間ヘッドをやっつけた暴走族か」

圭一は、溜め息を吐きながら立ち上がり、学ランを羽織る。

「どういうことなのだね?」

 

足立が同じく立ち上がり、圭一に問い質す。

 

「いやあ、ギャルズの先輩の女の子にちょっかい出す暴走族がいたから、ヘッドをシメたんですよ。そしたら報復かな?ちょっと潰して来ますんで」

「待ちなさい。私が退去するように、警告を出そう」

 

そう言うと、圭一を制して外へと出る。

 

「君達!私は、自衛隊大本営警務部長足立昭彦陸将補である。ここは自衛隊の敷地内である。速やかに退去しなさい!これは警告である。退去しなさい!」

 

数台のバイクに跨って、鎮守府の門を囲んでいる暴走族に向かって、足立将補が毅然と警告を与える。

 

「うるせえ!!やるかじじい!?

「何だと!?」

 

次の瞬間、一番先頭のバイクに跨っていた暴走族は、一気に距離を詰めた足立に、見事な背負い投げを決められていた。

「ゲホッ、ゲホッ!!」

 

他の皆が出て来た時には、暴走族を一人無双で片付ける、足立昭彦陸将補の姿があった。

 

 

「あいたたたたたた……」

暴走族を駐在さんに引き渡した後、足立は腰の激痛を訴えて、ソファーに横たわっている。

「明らかにぎっくり腰ですね」

往診にやって来た笹野先生が、腰に湿布薬をぺたりと貼る。

「お歳なのに、無理するんだから」

娘の秋奈が、苦笑いしながら声を掛ける。

「全く。柔道六段だとは言え、無理はしないでくださいまし」

早苗夫人が、暴走した夫を諌めるように声を掛ける。

 

『じゅ、柔道六段!?』

番長と愉快な仲間達が驚く。

「そうだよ。足立さんは柔道六段で、師範も務めている。格闘上級徽章を付けてる時点で、気づくべきだったねぇ」

執務机の、エグゼクティブチェアに座りながらふっと笑う直哉。

 

「いやはや。骨休めのつもりが、ドタバタでしたねえ」

副官の秋奈が、くすっと笑うと、

「どうも私にとっては、仕事が骨休めのようらしい。東京に戻って、各警務隊長をいかにコントロールするかに腐心しよう」

そう苦笑いを浮かべながら、漸く起き上がる。

 

こうして、足立昭彦の休暇にならない休暇は終わりを告げた。

 

 

――――――――

『……という訳で、各警務隊は足立陸将補の厳重命令で、今までどおりになったよ』

東北警務隊長を兼任する、宮城地本本部長宮本一佐が連絡をくれたのは、その数日後だった。

「宮本さんも大変ですねぇ」

直哉は、苦笑いを浮かべる。

『私は、広報ごときが、と言われるだけで済むからいいのさ。君達が不正をやるなんて思っちゃいないからね。今までどおり、提督の自由裁量に任せるよ。それが一番の道だと思う』

「そうですね………助かります」

『では失礼するよ』

 

宮本一佐は温和な声でそう言うと、電話を切った。

 

「ところで、神通はいつまでここに居るつもりなのかね?」

 

神通の家出は、未だに続いている。

 

 




今回と前回のお題「宮戸島鎮守府の査察(toshi-tomiyamaさん提供)」
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