宮戸島の提督と仲間達のお気楽日記   作:SAMICO

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※注意※
闇深女×能天気ビッチ=カオス

お下品注意

50回の節目がカオス回で良かったのか……


兄と妹の狂想曲

『二度と電話を掛けて来ないでください』

 

――――――――

愛弟子の言葉が、何回もリフレインする。

 

「はぁ……」

 

直哉は、ジメジメしている梅雨の中、陰鬱な気分で昼過ぎを過ごしていた。

敢えて誰にも、愛の置かれている窮状を伝えていない。

足立暴走事件の後、大貫から四国は何とかするから手出し無用、との連絡も入ったのだ。

 

「世の中何をやっても駄目なことばかり、どうせ駄目なら酒飲んで寝よか」

 

いつもより多く、ブランデーを紅茶にトポトポ入れていると、電が見咎める。

 

「直哉、最近酒の量が多いです」

「そうかい?」

「それに、使途不明金が発生してるのです。まさかとは思いますが、全部酒ですか?」

「まあ、そんなようなもんさ」

「飲み過ぎなのです」

 

腰に手を当てて、ぷんすかしている。

そういう自分も、今日のおやつはモンブラン(1ホール)なのだ。

 

「そういう君は、何でモンブランをワンホール食べてるんだい?」

「女子は甘いものは別腹なのです。艦娘は糖尿病知らずなのです。人間と一緒にしないで欲しいのです」

「まあ、堕落はしていくけどね」

 

偉そうに言っている電にツッコミを入れたところで、執務室の扉が開く。

 

「昼間から飲酒に、おやつとはいい身分だねぇ」

「電ちゃん、お久しぶりですわ」

 

入って来たのは『必殺仕事人』こと村上兄妹である。

 

「何だ、浩助に有紀か。何しに来たんだい?」

 

紅茶入りブランデーを飲みながら出迎えると、浩助は肩を竦める。

 

「随分なご挨拶だね。休暇を取ったから、宮戸島に骨休めに来たんだよ」

「皆さんお変わりありませんか?」

 

村上兄妹は、遠慮なくソファーに腰掛ける。

そんな中、ギャルズWith慎がやってくる。

慎は、短ランの前ボタンを外して黒Tシャツに、対ギャルズツッコミ用プラバットを持っている。

ギャルズ達は、いつものパンツが見えるくらいの超ミニスカセーラー服である。

 

「師匠こんちわ。あれ、神谷騒動の時に怪我してた人……確か有紀一尉」

 

神谷騒動の時、慎は診療所で有紀に出会ってたのだ。

 

「あら、お久しぶりですわね、たしか健太さんの友達の…慎くん?」

「はい、お久しぶりです。お怪我はどうですか?」

「おかげ様で、よくなりましたわ」

 

そう会話を交わしてると、ギャルズ達が割り込んで来る。

 

「シンくんの新しい彼女?」

「もうやった感じ?」

「浮気はだめだよ」

 

その瞬間、場がピシッと凍り付いた。

 

「うふふ、私は兄様以外はあり得ませんわ。変なこと言うと、ぶち殺しますわよ?」

「ゆ、有紀、取り敢えず銃を向けるのはやめようか?」

 

そう、ギャルズ達に銃を向けていたのだ。

 

「ひぇっ!!」

「撃たないで!!」

「ヘルプ!」

 

ギャルズ達は、三人共両手を上げてフリーズする。

 

「うわ、紗花さんよりおっかねぇ」

 

慎はぼそっと呟いた。

 

「おいおい、有紀。うちの鎮守府で殺傷沙汰はやめてくれ」

 

直哉が他人事のようにそう言うと、有紀はニコニコしたまま銃を下ろす。

 

「ところで、お隣の人はその有紀さんのお兄さん?」

「もうやった感じ?」

「キンシンソーカン?」

 

「おい!こら!お前等!」

懲りてないのか、またデッドボールな質問を投げ込むギャルズ達の頭を、ぽかっぽかっぽかっとプラバットで叩く慎。

最近は遠慮が無くなったのか、割と強めにぶっ叩いている。

 

「きゃん!」

「やん!」

「いたっ!」

 

三人共、頭を抑えて慎に抗議する。

 

「「「何すんのよぉ!」」」

「アホか、お前等?近親相姦なんてある訳ねーだろ?有紀一尉達に失礼だろ?」

 

そう、バット片手に腰に手を当ててギャルズ達を叱るが、

 

「あるよ、やった感じだよ」

「ですわね、もう毎日」

 

平然と応えるこの兄妹に、今度は慎がフリーズする。

助けを求めるように直哉の顔を見ると、直哉は肩を竦めて、

 

「こいつ等、病的なブラコンでシスコンだからね」

と、遠慮なく物を言う直哉。

 

ギャルズ達と有紀と電は、ケーキを食べながら猥談で盛り上がってる中、男子達は勉強テーブルでおやつタイムだ。

 

「兄様の****は***で***に**して……それで、首を締めてもらうと***が**って……」

「うわぁ、えぐいのです」

「ちょーやばい感じ」

「それな」

「うん」

 

女子達の会話内容は非常にエグいものであり、ギャルズ達が却って勉強になる、と言わしめるほどだ。

慎は、ギャルズ達が悪い影響を受けそうで、先が思いやられるなあ、と思いながら聞き流している。

 

「しかし、鎮守府運営はいいのかい?」

「ああ、大丈夫。最上と三隈とボノがいるから」

「そうなのか?まあ、それならいいか」

 

浩助の答えに、納得仕掛けている直哉に横から、

 

「ちゃあんと、『旅に出ます。探さないでください』って書き置き残しましたわよ」

 

と、どこかズレた回答をする有紀に直哉は、

 

「それ大丈夫なのか?」

 

と、疑問を呈さずには居られなかった。

 

「哨戒終わったぴょん」

「今日は賑やかですね」

 

扉を開けて、哨戒組も入って来る。

「卯月、久しぶりだね」

「お、村上提督に、有紀一尉。今日はどうしたぴょん?」

「うん、骨休めに旅行かな」

「卯月の顔を見に来たんですわよ」

 

有紀の言葉を聞くと、卯月はぱあっと明るくなる。

「おー、それは嬉しいぴょん!」

「よかったですね、卯月」

ぴょんぴょん飛び跳ねる、卯月の頭を撫でる薄雲。

 

「ところで、他の連中はどうしたんだ?」

「ああ、圭一と史絵さんは史絵さんちでおうちデート、泊まるってさ。寛太と優花は寛太んちでゲームやるってさ」

肩を竦める慎に電は、

「寛太はおこちゃまなのです」

 

と冗談めかして言うと、ギャルズ達も同調する。

 

「ねー、ドーテーと処女が許されるのは小学生までよね―」

「それな」

「だね」

 

その言葉に、有紀がフリーズする。

 

「えっ……?」

 

「どうしたのですか?有紀さん」

 

電がフリーズしている有紀を覗き込むと、目に大粒の涙を溜めている。

 

「うっ、うわああああん!!!」

 

突然の大号泣である、おいおいと泣き出したのを、慌てて浩助がソファまで行って抱き寄せる。

 

「ど、どうしたんだよ?」

「だってぇ、私達初めてしたのハタチの時ですもの!!!兄様が優し過ぎて、振り向いてくれないのがいけないんですの!!」

 

兄である浩助を、ぽかぽか叩きながら泣き続ける有紀。

ギャルズ達は、最初は意外と清純だったんだ、と三人共認識を改めている。

 

「おいこら!お前等!!アホか!?」

「「「やんっ!!」」」

当然ながら、ギャルズ達は慎からのバットの刑を食らう。フルスイングでど突かれる。

 

「いや、あの?」

「ちょっと待て!」

 

困惑している浩助に、はっと思い出したようにツッコむ直哉。

 

「お前等、防大でやったんかい!?」

「うん、そうだけど?リネン室で……」

 

さも当然のように答える主席卒業生に、直哉は大きな溜め息を吐いた。

そんな中、有紀はおいおいと泣き続けている。

 

「あ、で、でも有紀さんは目が可愛くて素敵なのです」

「そ、そうチョー可愛い。青と黒で」

「それな」

「うん」

 

困ったように、有紀の金銀妖眼(ヘテロクロミア)を褒める電とギャルズ達。

 

「「あっ!」」

 

それが、地雷であることを知っている直哉と浩助は、顔を見合わせた。

そして、地雷であることに気づいた慎は、

 

「あのバカ共……」

 

と苦い苦い顔をして、フルスイングの準備をする。

 

「う……うふふふ……」

 

今度は笑いだした有紀に、ギャルズ達は三人で身を寄せ合う。

 

「ゆ、有紀さん」

「こ、怖いよ」

「うん……」

 

電は地雷を踏み抜いたことを悟り、ソロリソロリと敵前逃亡した。

 

「聞いてくださいまし。この目には深い深い呪いがありまして……私の母は海外の男と浮気をして、その男との間に生まれた忌み子が私……うふふ……」

 

そんな暗い暗い話をし始めると、望が笑顔で、

 

「それじゃあ、ハーフ!?チョー可愛いからそう思ってたんだ」

 

と脳天気に言い始め、奈緒子と櫻子もそれに続く。

 

「それな、栗色の髪の毛も可愛くていい感じ」

「うん、浮気が何さ?慎なんて、私達三人でシェアしてるんだよ。私等、経験人数二桁だしぃ」

 

有紀は、キョトンとした顔になった。

今まで、そんな事を言ってくれる人は一人も居なかったからだ。

 

「に……兄様ぁ!!私っ、この目で、この髪で、初めて褒められましたぁ!!!」

「うん、良かったね…有紀」

 

今度は嬉し泣きである。おいおいと泣き出す有紀の頭を、優しく撫で続ける浩助。

そんな有紀を、ギャルズ達も頭をナデナデし始める。

 

「ふつーじゃねえからな、こいつ等」

 

慎は、ポケットに手を突っ込んで、フルスイングしようとしたバット片手に、

ぼそっと毒を吐きながら、心の中でギャルズ達に拍手をしていた。

 

――――――――

自分の最大のトラウマである、金銀妖眼(ヘテロクロミア)と栗毛を褒められた有紀は、上機嫌であった。

場所を高菜家に移してからも、陽気に楽しくグビグビお酒を飲んでいる。

ワインの瓶を、片手でラッパ飲みである。

 

「うふふ~、可愛いって♪青と黒のお目々~♪栗色のお毛々♪」

「チョー可愛い。有紀さん、のんが食べちゃいたいくらい~」

「それな~」

「だね~」

 

四人で肩を組んで、陽気に楽しく歌いながらである。因みに、ギャルズ達はお酒を飲んでいない。

 

「てなことを、うちのバカ共は言ってるんですが、いいんすか?」

「女の子はノーカウントでしょ?」

「はぁ」

 

兄の方は兄の方で、常識がズレてるのを感じた慎は、浩助のグラスにビールを注ぐ。

 

「こいつ等、常識が狂ってるからな」

「なのです」

「ぴょん」

「ですね」

 

さも他人事のように言っている直哉達に、慎が、

 

「いや。嫁三人とか、あんた等もおかしいっすよ?」

 

と、ツッコまずにいられない。

 

「うふふ、いいじゃないですかぁ。と云うか慎くんだって、中学生なのにお外で致したんでしょぉ?」

 

慎がお手洗いで中座した時、ギャルズ達から聞いた情報を暴露すると、慎は件のプラバットでぽかっぽかっぽかっぽかっと頭を叩く。

 

「何!話して!んだよ!お前等!?」

「きゃん!」

「いたっ!」

「やん!」

「あたっ!」

 

序に有紀まで叩いてしまった慎は、やべっと思って振り向くと、浩助は呑気な顔をしてる。

 

「あ、すんません、つい勢いで」

「ううん、いいよ、有紀叩かれるのも好きだから。もっと強くても良かったんだよ?そのバット砕けるくらいで」

「いや、そういうことを聞いてるんじゃねえすよ!?」

 

慎は、この兄妹の常識のズレ方に従いて行けていない。

 

そんな、コントを繰り広げている状況を、直哉達はにまにまと眺めている。

 

「彼奴等はいろいろ影を背負ってるからな?こういうところで発散するのもあり、さ」

「なのです」

「ぴょん」

「ですね」

 

「綺麗に纏めようとしてるんじゃねえよ!?」

 

慎のツッコミが、高菜家に木霊した。

 

「このクソ提督!どこほっつき歩いてるのよ!?」

因みに、有紀の残した置き手紙に方々探し回って、宮戸島にやって来た激おこな曙が迎えに来るのは、その数十分後である。




本日のお題「村上兄妹の「ギャグ」回(提供toshi-tomiyamaさん)」


今回は難産でした。
闇が深い村上妹が明るく壊れるにはギャルズの能天気さしかないと思いました。
番長は真面目一徹だし、史絵は多分失神の未来しかないし、
天然に天然掛けると収集がつかないし

ただ、ギャルズだとお下品ネタにしかならない不具合
そして、慎の貧乏くじ&ツッコミ属性&ドSっぷりがどんどんレベルアップしていく。
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