本当に有難うございます!
太平洋はミッドウェー諸島。
深海棲艦達が集う、デスペラン要塞。
人間社会に馴染めない深海棲艦達が、ハーフェンと呼ばれる深海提督の下、長閑に暮らしている。
「そんじゃあ、今日も狩りに行ってくるぜ」
そう言って出掛けるのは、ビーストハンターになった摩耶。
深海棲艦を引き連れて、北極海に繰り出して行く。
摩耶は元々、四国でジレーネ決戦と呼ばれる大戦争に生き残った艦娘だったが、
大貫 悟の告白と暗殺で、自衛隊の在り様に嫌気が差し、デスペランへとやって来た。
その後は、北極海で現れるDSビーストを倒して、戦利品である『霊子のコア』を自衛隊に売り払う、ビーストハンターになっている。
「はーい!行ってらっしゃい」
手を振ってお見送りするのは、要塞周辺の
毎度お馴染み、女川鎮守府の神通である。
桐山二佐と風俗を巡る一件で、大喧嘩の末家出して以来、一度も帰っていない。
毎朝、網を担いで小魚群を底引き網漁法で掻っ攫っては、要塞の横に設置した生簀にざーっと流し込む。
「キュッキュッ!」
流し込まれたお魚に向かって、深海棲艦の子達が次々に群がって、美味しそうに食べている。
これでも、知性のない深海棲艦イ~ツ級全体の1%にも満たない。
害獣化しないように保護を行っているのも、デスペランの大きな仕事の一つである。
イ級の一匹がぴょんっと飛び跳ね、神通に飛び付いてスリスリする。
「やんっ、もう……甘えん坊さんなんだから」
神通は、優しい笑顔を浮かべながらイ級を優しく撫でる。
「キュッキュッ!」
嬉しそうな鳴き声を上げて、神通にスリスリする。
このイ級は、神通に懐いている。
「神通さん、お昼にしましょうか?」
「はーい!」
そう答えると、玄関でもある軍港から今は物置となっているクラーリン格納庫を通り、生活エリアに登って行く。
生活エリアには、幼児の深海棲艦――これもイ級である――から大人の深海棲艦まで、人間型の深海棲艦が共同生活を送っている。
深海棲艦のイ~ツ級は、霊子を与え続けると人型化する事が、深海提督の手によって分かっている。
デスペラン要塞は、無尽蔵の霊子発生装置でもある。今は、それをクラーリンの製造ではなく、生簀の深海棲艦の子達を育てる為の装置に作り変えたのだ。
そうやって人型化した幼児体イ級は、人型化して間もないのと服を着るという文化そのものがない為、素っ裸で走り回っている。
基本、深海棲艦が女性或いは雌だけの集団の為問題はないが、男の子がいたら赤面ものだろう。
それをワンピース片手に、ヲ級のお姉さんが追い掛けている。
「コラ、ワンピースクライ、キナサイ」
「イヤー!アツイモン」
そんな様子を眺めていると、幼児体イ級が神通目掛けてまっすぐ飛び込んで来る。
「きゃっ……もう」
飛び込んで来た幼児体イ級を優しく抱き留めると、青白い肌で青い瞳に白い髪の幼い笑顔を、神通に向ける。
「エヘヘ……」
そんな笑顔を浮かべる、幼児体イ級のサラサラの白い髪を優しく撫でる神通。
お昼と言っても、ちゃんとした食事を摂るのは、神通や摩耶のようなデスペランに住み着いている艦娘と上位深海棲艦だけである。
買い出しした材料やビーストの肉を、料理上手の神通が生活エリアの隅っこにあるキッチンで調理して食べている。
他の深海棲艦の子達は、基本的に外に行っては魚を捕まえて、むしゃむしゃ食べたり、摩耶の持ち帰ったDSグリズリー等のDSビーストの肉を、生で食べたりしているのだ。
「買い出し行って来たにゃ」
多摩が週一回、買い出しと霊子のコア売却で夜明け前に出掛け、昼前には帰って来る。今日がその日なのだ。
買い出しのない日は、タブレットの猫漫画を見ながら、ゴロゴロと過ごしている。
多摩も同じく、四国での死闘を生き抜いた後、摩耶に同調して自衛隊を辞めて来た。
因みに、彼女も摩耶も自衛隊では『脱柵』扱いになっている為、追われる身だったのだが、
現在の
明石開発の冷蔵冷凍型ドラム缶に、ぎっしり食材を積んで帰って来る。霊子のコアの売買も、北海道・釧路鎮守府の熊崎提督を通して、日本政府と取引が行われている。
脱柵中から、熊崎提督とは極秘の取引を行っており、食材も熊崎提督経由だったのが、今は大手を振って『外国人』として、市場で堂々と買い出しを行えるようになっている。
クラーリン格納庫の一部も、冷蔵庫と冷凍庫になっており、そこに一ヶ月分の食料を保管してある。
「ジンツウママ、イキューモ タベタイ」
さっき抱っこしていた幼児体イ級を降ろして、お昼ご飯――基本的に魚は自給自足の為魚料理が多くなるが――の調理をしていると、クイックイッとエプロンを引っ張って、指を口に咥えて見上げる。
因みに、白いワンピースを強制的に、ヲ級お姉さんの手によって着せられている。
どうせそのうち、また脱ぐだろうが……
そんな彼女に、魚の煮付けの煮ている途中のものを菜箸で取って、ふーふーと冷ましてから、
「はい、あーん」
と、幼児体イ級の口元に持って行くと、あむっと食べる。
小さい乳歯でもぐもぐと食べて、ごっくんと飲み込むと、
「オイシー!」
と、ぱあっと笑顔になる。
基本、お魚は大好きな深海棲艦達だが、お野菜も好き嫌いなく食べる。
それなので、出来た料理の匂いに釣られて、他の深海棲艦の子達もやって来て良いように、大皿料理が多くなる。
出来た料理を、多摩がちゃぶ台に運んで来る。
今日は、ヲ級と幼児体イ級が、ちゃぶ台にちょこんと座っている。
そんな頃に、深海提督が螺旋階段で執務室から降りて来る。
デスペランを、《移動国家》として真っ先に認めたアメリカ合衆国を始め、それに追随した環太平洋の各国家、日本との書簡のやり取りや調整も、深海提督のお仕事なのである。
正直な話、ジレーネを滅ぼしたとは言え、二度と現れないとは限らない為、どの国も深海棲艦との戦争はもう嫌だ、と言うのが本音だろう。
文化の違いから、外交官の派遣は行わず、デスペランの代理国として日本を指名し、実務的なやり取りは日本に委託する、という形を取って、捕虜になったまま放ったらかされていた集積地棲姫を外交官として任命し、東京にある在日本デスペラン大使館の特命全権大使として暮らしている。
ただ、硫黄島要塞で触れたヲタク文化に感化されてしまい、東京暮らしになってからは《憧れの秋葉原》に毎日通うようになってしまった為、実務は参事官である駆逐水鬼と北方棲姫が行っている。
終いには、MeTubeを始めて
全く《仕事をしない大使》である。
だがこれも、深海棲艦と日本との宥和政策の一環でもある。
ただ、デスペラン大使館の諸費用は、全て日本政府のODAとして賄っているのは、外交上の極秘事項である。
因みに、多摩の買い出しは多摩に与えられた《外交特権》であり、逆に神通は日本国民となっており、不法出国者状態であるが、両国とも見なかったことにしている。
そんな訳で、深海提督は毎日お仕事をしている。
それの補佐として、神通は秘書艦として手伝ったり、まだ知性のない深海棲艦を養ったりと、デスペランのお母さんとなっている。
多摩は「そろそろ桐山提督とは離婚だにゃ」等と思っている。
今日のお昼はヲ級に多摩、深海提督に神通、それに幼児体イ級でのご飯である。
因みに、折角ヲ級が着せたワンピースは床に転がっており、素っ裸である。
『いただきまーす!』
お箸の使えない幼児体イ級は、神通が食べさせている。
「そう言えば、そろそろ愛ちゃん達はお産の時期ですね?」
「そうですね」
「三人も嫁をもらった健太は羨ましいにゃ」
そんな世間話をしながら、未だ日本に張り巡らされている諜報網を活用して情報を仕入れ、更には仕入れた情報も披露する。
日本と手を結ぶことを決めてはいるものの、日本を完全に信頼している訳ではないのだ。
特に、四国の方は体制が一新したばかりで、まだ警戒の網は解かれていないのだ。
お昼が終わると、深海棲艦の有志を集めての、日本語講座が始まる。
講師は、勿論神通である。
「こんにちは、鈴木さん」
『コンニチハ スズキサン』
「お元気ですか、鈴木さん」
『ヲゲンキデスカ スズキサン』
「本当にお元気ですか、鈴木さん」
『ホントウニ ヲゲンキデスカ スズキサン』
「そんな物飲んでも何の自慢にもなりませんよ、鈴木さん」
『ソンナモノ ノンデモ ナンノジマンニモ ナリマセンヨ スズキサン』
どこかおかしい。
そんなおかしい日本語講座をしながら、正しい日本語のイントネーションを身に着けて行く。
因みに、大使館の深海棲艦トリオは日本語どころか英語もペラッペラの、バイリンガルである。
「大漁だぜ。今日はグリズリー二匹と、クラーケンを落として来たぜ」
「おー、大漁だにゃ」
「コアも高く売れますね」
「それじゃあ、クラーケンは早速捌いて、皆さんにお配りしましょう」
摩耶達の遠征隊が大漁旗を掲げて帰って来る頃には、辺りは日が暮れて夜になっている。
クラーケンは、イカが突然変異してDSビースト化したもので、こいつの犠牲になる艦娘や深海棲艦も、潜水艦種を中心に多い。
しかし、コレの刺し身が絶品なのである。
皆の大喜びの声が、デスペランに響き渡る。
引き摺って来たクラーケンを、神通と摩耶が大包丁を使って二人掛かりで捌くと、皆に配り始める。
艦娘や深海提督達は協力して、夕飯の準備に取り掛かる。
「マヤネーチャン オイシイ」
「おっ、そうか。それじゃあたし達も、料理ができたら堪能させてもらうぜ」
美味しそうに食べている、幼児体イ級の頭をポフポフと撫でると、摩耶は料理番の手伝いに向かう。
そして海の幸と、海の幸と言えるか怪しいDSグリズリーのステーキが食卓に並ぶと、
お酒を片手に、皆で今日はああだった、こうだったと楽しく語り合いながら、楽しく暮らしている。
そして、提督の執務室で艦娘達と深海提督の、夜の晩酌タイムが始まる。
下の生活エリアでは、深海棲艦達が雑魚寝で眠っている。
晩酌タイムでは、たまに過激な猥談も行われ、軽いお触りやくすぐり等、じゃれ合いながら夜を過ごす。
たまに幼児体イ級が目を覚まして、じゃれ合い途中の所にやって来ては、興味本位で色々訊いて来る。
「ネエ ドウシテ マヤオネエチャンハ ジンツウママノ ヲマタオ サワッテルノ?」
「あっ これはな、あははは」
「子供には、まだ早いニャ」
「もう、イ級ちゃんを起こしちゃったじゃないですか、摩耶さん」
「うふふ、これはナイショのお遊びですよ。さあ、もう寝なさい」
「ハーイ、テイトク」
こうして、デスペランの一日が過ぎて行く……
「デスペラン要塞の一日 (toshi-tomiyamaさん提供)」
意外と簡単そうなネタだと思ったのが難産でした。