宮戸島の提督と仲間達のお気楽日記   作:SAMICO

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こっちの落ち度まで指摘して来やがんの。ここの査察はいいんですか?とか、ここまだ見てませんよね?とか、可愛くねえ
―――東北警務隊員・坊主頭―――


なっちゃんのお話その2

今回はいつも以上に過激です。まだR-15の範囲内に収まってるはず…


番外編:夏の海の向日葵Ⅱ~365回目の告白~

「何だ、紗花。夏海には懐くのか?お前さん、女にモテたりしてないだろうなあ?」

 

誂う眞一郎に、少し考えると、

 

「一人だけいますよ、何度振っても根気強くアタックする子が。運動神経バツグンでかわいい、所謂『僕っ娘』が」

「そうなのか?ともかく、球磨の異動話だったなあ?」

 

答える夏海に、あまり興味が沸かなかったようで、話を戻す眞一郎。

 

その答えの続きを、夏海と加賀は持っていた。

 

――――――――

それは、夏休みに入る前の七月頃。

 

「ねえ、僕と付き合ってよ?」

 

にへらっと笑った、ショートカットで背の高い女の子。

大村夏海は、そんな彼女から求愛を受けること295回。

毎朝の挨拶のようになっていた。

 

「はいはい、おはようございます。先輩」

「ちぇ、今日も駄目かぁ………」

 

カバンを持ちながら、両手を頭に回すそんな彼女――各務原結有は溜め息を吐いた。

そんな彼女の姿を、ちらっと見ながら校舎へと向かう。

 

結有は、所謂寮生で毎日、学校敷地に隣接している、白百合寮から通学している。

男性の立ち入りは厳禁、教師や職員も全員女性の女子学園である。

 

初等部から中等部、高等部まである由緒正しい『東北百合根女子学園』と言う女子学園の中等部。

相手は高等部の一年生。二つ年上である。同じ中等部の頃から声を掛けられている。

 

「もういい加減、諦めたらどうです?何度言ったら気が済むんですか?」

 

夏海が、もううんざりだと言わんばかりの態度を取ると、

 

「僕は、諦めの悪いのが取り柄なの」

 

と、アハハッと笑う。

 

「私には、ちゃんとした人がいるんです」

 

いつものダメ押しの言葉にも、へこたれない。

 

「知ってるよ、艦娘達なんだろう?その指輪、ケッコンカッコカリリングだよね?」

「あっ……」

 

いつもは学校に行っている時は、外してチェーン・ネックレスにして、服の中にしまっていたのに、

今日はうっかりしていた。

ケラケラと明るく笑う先輩に、顔を見上げながら、

 

「変だと言いたいなら、仰ってください。どうせ私は異常……」

「そうかなあ?いろいろな愛の形があっていいと思うよ。僕だって、君のことを好きになりたいし」

「ですから、私には艦娘達が居るんです。六人も!先輩の入る余地なんて、ないんです!」

 

今日は夏海も、自分で何か苛立ちを感じていた。

前日の、査察の一件もあったかもしれない。査察の落ち度を指摘しただけなのに、舌打ちされた。

それに対して食って掛かったら、こう言われたのだ。

 

「お前さんは可愛くないねえ」

 

と来たもんだ。宥める加賀のおかげで、それ以上の衝突は避けられたものの、夏海の心には苛立ちが残っていたのだ。

宮本一佐に苦情の電話を入れたものの、子供を宥める態度で申し訳ないねと一言、それも癪に障っていた。

 

「それにどうせ、私みたいな理詰めな女かわいくないですよ。先輩だってそう思ってるしょう!?」

 

言われた結有は、目をまん丸くして驚いた。

そして両手で宥める仕草をしながら、

 

「全然。かわいいよ。そうやって理詰めなところも、理詰めで納得出来ない所に苛ついてるのも、かわいいよ」

「なっ……もう良いです!失礼します!」

 

彼女にとっては「そうだね」と言って欲しかっただけなのに、軽薄な感じの言葉に余計苛立って足を進める速度を早めて、中等部校舎へと歩いて行く。

そんな彼女を、結有は頭を掻きながら見送っていた。

 

そんなこんなで、夏休みがやって来た。

 

夏休みと言っても、夏海の在籍する進学コースは、補習や有名講師を招いての講習があり、

登校することの多い彼女は、学校にやって来る。

 

「おはよう、なっちゃん」

 

丁度、校門で走り込みを終えて休憩している結有が、夏海に声を掛ける。

 

「おはようございます。今日も走り込みですか?」

「うん」

「ところでさ………」

 

夏海は、ほら来たと言わんばかりの顔をする。

これで、丁度365回である。

 

「ちょっと気になった事があって、気仙沼の提督に相談すべきかどうか、悩んでたことがあるんだ」

 

そう、今回は僕と付き合わない?ではなかったのだ。

少し残念そうに思いながら……そんな思いを自分の中で必死に否定しながら、

 

「どうしたんですか?先輩」

「それがね……昨日仙台に遊びに行ったら……艦娘らしき子がビルの中に連れ込まれていたんだ……」

「えっ……?」

 

大本営警務隊の管轄対象は鎮守府であって、それ以外に権限は及ばない。

こういうケースでは、幸田二佐ではどうにもならない。

 

「どこですか?」

「案内するよ」

 

今日の自由参加の補習をパスして、夏海と結有は仙台のそのビルへと向かった。

そこは、繁華街からちょっと離れたところで、人気の少ない場所だった。

ビルの前には、黒服の男が二人立っている。

 

「どうする?二人くらいだったらノせるけど?」

 

結有は、とんでもないことを言い出す。

 

「い、いえ……様子を見ましょう」

 

二人共、電柱の影に隠れて様子を見ている。

 

暫くすると、車が停車して中から人が出て来る。

 

「あっ、この人……市会議員の……」

「うん、黒沢……とか言ったね。艦娘を、社会に進出させるのに反対してる活動してる人だ。昨日も駅前で演説してた」

 

反艦娘派、つまりは現政権に批判的な態度を取っている人なのだ。

彼曰く軍国化の第一歩であり、艦娘は鎮守府にいればいい、と言った具合らしいのだ。

 

その黒沢議員はニヤニヤと笑いながら、黒服に案内されて中へと入って行く。

 

「何だろうね………?」

「判りませんね………」

 

結有は、スマホのマナーカメラでその様子を撮影すると、

 

「反艦娘派の黒沢議員が入って来て、艦娘が連れ込まれた可能性のある場所………」

「一旦離れようか?」

 

二人連れで、仙台の中心街に向かった。

 

一旦トイレに立ち寄って、出て来た時には人だかりが出来ていた。

 

「なんだろう。先輩もいない……し」

 

人だかりを掻き分け、一番前まで出ると、結有と学ランを来た男子中学生……原 圭一が喧嘩をしていた。

「えっ?」

 

事の発端は、こんな感じだった――

 

――――――――

 

史絵が、圭一のトイレを待っている所に、結有が冗談半分で声を掛けたのだ。

 

「ねえ、君。今一人?」

「えっ、あの……その……」

 

軽い感じの『男』に見えた史絵は、しどろもどろになる。

そんな時に現れたのが圭一だった。

圭一は

 

「おいこら!()()()()()よ。俺の女に手を出すんじゃねえ!」

 

と、いきなり殴り掛かったのだ。

「圭一!」

 

止める史絵を、結有が腕で制するとすぐ構えて、そのパンチを難なく躱して距離を取った。

 

「その構え、ジークンドーか!?」

「あはは。よく知ってるね、坊や」

 

そのまま、殴り合いと言うか圭一の攻撃を躱す結有、と言う図式が出来上がっていたのだ。

 

そんな二人に、つかつかと近付くと、

 

「何やってるんですか、二人共?」

「あっ、夏海先輩」

「あっ、なっちゃん」

「こんにちは、夏海さん」

 

と、言うことになる。

 

差し当たって入った、ハンバーガーショップで圭一に、結有は女だと告げると、「マジか!?」と驚くことになる。

 

 

――――――――

「と言う訳なんです」

 

圭一と史絵にも、艦娘連れ込み事件カッコカリを話すと、圭一の表情も深刻なものになる。

 

「ああ、そう言えば族の間で噂になってたんだけどよ……」

 

圭一は、二度の『やるかじじい事件』の後、大番長としての名を挙げて、暴走族からも一目置かれている。

その彼女の史絵も、そういう連中から「姐さん」呼ばわりされている。

 

「この仙台に、艦娘のフーゾクがあるって噂で……」

 

そう声を落として言ってから、ポテトを頬張る圭一に、夏海と結有は顔を見合わせる。

 

「まさか……!?」

「今すぐ踏み込もう!」

「おう!」

「あ、あの、危ないと思います」

 

その可能性に渋い顔をし、結有と圭一は立ち上がり、それを止めようとする史絵。

 

「史絵は師匠に連絡してくれ!先輩、行くぞ!」

「うん!」

「分かりました!」

「は、はい!」

 

立ち上がると、急いで向かう三人。史絵はすぐに、スマートフォンで師匠である直哉を呼び出す。

 

――――――――

 

「鎮守府関係者です。中を改めさせてください」

 

完全にハッタリであるが、ビルの前の黒服が無線で連絡をしようとした直後、後ろの二人が同時に顎先に蹴りを叩き込んで、黒服を失神させる。

圭一を先頭にビルの中に入ると、幾つかの小部屋があって、中から女の子の喘ぎ声が聞こえて来る。

 

「やろう」

「おう」

 

結有と圭一がドアを蹴破ると、そこにはベッドの上で真っ最中の黒沢議員と駆逐艦子日がいた……

その光景を目撃した夏海は、嘗て自分が受けた暴力を思い出して、過呼吸を起こしていた。

 

「い……いや……あぁ……」

「なっちゃん!?」

「おいおっさん!何してやがんだ!?」

 

圭一が飛び込んで黒沢議員をボコボコにしている間に、結有は過呼吸を起こして、虚ろな目で泡を噴いている夏海を抱き抱える。

 

「夏海!!しっかりして!!夏海!!!」

 

バタン!

 

「全員動くな!……って夏海ちゃん!?」

「卯月、薄雲、すぐに制圧するのです!」

「わかったぴょん!」

「了解です」

 

結局、偶々仙台市内で買い物をしていた直哉達により、裏風俗店は制圧され、黒沢議員も逮捕された。

夏海は意識を失っていた為、一旦はということで、直哉の車で宮戸島鎮守府に担ぎ込まれた。

 

「ここは………?」

 

夏海が目を覚ましたのは、宮戸島鎮守府の艦娘寮のベッドの上だった。

 

「ここは、宮戸島鎮守府だって。彼奴等は、高菜一佐が全員逮捕したよ。四国のブラック鎮守府から売られて来た子達だって……」

「そう……ですか……先輩、みっともないところを見せてすみませんでした……」

「ううん、いいよ。高菜一佐から聞いたから」

「そう……ですか」

「ねえ。なっちゃん、僕と付き合わない?ほら、軽い感じの浮気程度でいいからさ?」

 

365回目のそれである。

「……先輩。私はご存知の通り、男性嫌悪症で同性愛者です。そんな私でも良いんですか?」

「それがどうした?」

 

そんな結有の物言いに、夏海は目をまん丸くすると、うふふっと笑い出す。

 

「………ふっ……うふふふ……」

 

そんな夏海に、結有が何と言って良いのか考えあぐねていると、

 

「分かりました。ガールフレンドから始めましょう」

「あはは、ありがとう」

 

その日は、鎮守府で泊まって行きなさい、と言う直哉の配慮に甘えて、二人で色んな話をした。

勿論、学園の寮にも直哉が連絡を入れてくれた。

 

 

――――――――

「なっちゃん!両親から下宿の許可貰ってきた!女性しかいない鎮守府ならOKだって!」

「ええっ!?」

 

その数日後だった。荷物を持って結有がやって来たのは。

くるっと後ろを振り返ると、加賀が笑いを堪えながら、学園の下宿許可証を見せる。

わざわざドバイにファックスして、下宿先の奈々海のサイン捺印と、父親の裕二のサイン捺印まで入っている許可証が……

そして、夏休みながら学校も、ドバイと親元と鎮守府に確認を取っての、異例の許可である。

「宜しくね、なっちゃん!」

「ふふ、賑やかになりそうね」

「そうですね……」

 

こうして、気仙沼鎮守府に新しい仲間が加わった。

 

 




ただ単に結有を出したかっただけです。
相変わらず親は男から結有を遠ざけたいようです。

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