宮戸島の提督と仲間達のお気楽日記   作:SAMICO

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本当に皆さんのおかげです、ありがとうございます。


這い寄る子日

宮戸島鎮守府が再建中のある朝。

 

高菜直哉は目を覚ました。

普段なら居る筈の嫁達がおらず、子日が寄り添って眠っている。

そこまでは良かった。

二人共、一糸纏わぬ姿なのだ。

 

「な…何が起きた!?」

 

直哉は、頭痛がするのを堪えながら、必死に記憶を手繰り寄せた……

 

 

――――――――

そこから、前日に遡る。

高菜家リビングでは、とある計画が水面下で動いていたのだ。

 

「『子日を嫁に迎える計画』を開始するのです」

『おー』

 

今頃直哉は、消防本部と県警本部からお叱りを受けている最中の一日仕事で、家にはいなかった。

 

「と言う訳で、子日を家族に迎える為に、いいアイデアを考えるのです」

「直哉に、子日が家事ができるところを見せる為に、今夜直哉のお疲れ様会をやるぴょん」

「おー、子日頑張る!」

 

俄然、やる気の出て来ている子日。

何故か子日を直接助けた圭一ではなく、後からやって来た直哉に惚れてしまった訳は、

かっこよく、紳士的に裸の自分をジャケットに(くる)んでくれたので、一目惚れしてしまったのである。

その間圭一はと言うと、議員先生をケチョンケチョンにしていたのだ。

 

電は、そんな相談を子日から受けていた。

嫁の筆頭としては、嫁がこれ以上増えてもなぁ、と言う思いは否定できなかったが、

何よりも、真剣に相談に来た子日が可愛くなってしまったのだ。

其の結果が、直哉不在のこの計画なのである。

卯月は乗り気になっており、冷静沈着な薄雲は、

 

「お二人が可なら、私も同意見です」

 

と言う言葉と共に、子日嫁加入計画に加わった。

 

「他に、何かいい方法はないのですか?」

「夏だから、浴衣を着てお出迎え、ってのはどうかなぁ?」

 

子日の提案に、電自身が飛び付いた。

 

「いいアイデアなのです。せっかくだから、浴衣と水着を買いに行くのです」

「おお、それはいいぴょん。薄雲ちゃん、運転お願いぴょん」

「了解しました」

 

と言う訳で、薄雲の運転で仙台のデパートにやって来た四人。

「まずは呉服屋さんで、思い思いの浴衣を買うのです」

 

まず卯月が飛び付いたのが、黄色のうさぎ柄である。

早速試着してみると、黄色の生地の白いうさぎ柄で、青の帯でアクセントも付いていて、とっても似合う。

「おー、うーちゃん似合うのです」

「可愛いですね」

「うーちゃん、いいなあ」

 

そう言いながら、子日はいろいろ探したがあまり気に入ったのが無くて、奥の方に入って行く。

薄雲は、灰色ベースで水色の地味な浴衣を見つけて来て「これにします」と、早速決めていた。

相変わらず、薄雲は地味なものが好きなようだ。

 

電は、秋にも着こなせるような茶色の花柄を選んだ。

そして、子日が奥から出て来た。

 

黒と灰色のモノトーンで、ネズミ柄の浴衣を身に着けてやって来た。

右手には、猫とネズミの手拭いも持っており、チーズを思わせる黄色の帯である。

 

「おー、子日ちゃんも似合うのです」

「一生懸命探した甲斐があるぴょん」

「素敵ですね」

「えへへっ、ありがとー!」

 

その後、浴衣姿のままで水着も購入した。

今回のお会計は、ボーナスの出ている電持ちである。

さすがは幹部艦娘である。

 

――――――――

制服に着替えると、家に戻って再び作戦会議である。

 

「それだと、弱いと思うぴょん」

「なら………既成事実を作ってしまえばどうでしょうか?」

 

薄雲のその言葉に、子日に視線が集中する。

子日は笑顔で、

 

「うん、高菜一佐となら!」

 

と答える。

 

「しかし、理性と常識のある直哉を、どうすれば理性を失わせることができるのか……そこが問題なのです」

「私にいい方法があります。明石謹製の酔薬があります」

『お~』

 

冷静に語る薄雲に、感心の声を上げる三人。

 

「これを一粒、コニャックに混ぜて渡します。するとぐでんぐでんになる筈です」

「採用なのです。では早速、楽しい料理に入るのです」

『おーっ!』

 

電の号令で、料理タイムが始まった。

女子四人、賑やかに楽しく武藤レストラン謹製レシピで料理作成が進んで行く。

 

 

―――――――

「ああ、今帰ったよ」

『おかえりなさい!』

 

浴衣四人衆が、揃ってお出迎えにやって来る。

 

「お、今日はどういう趣だい?」

 

四人それぞれの頭を撫でると、リビングに入る。

ダイニングテーブルにはお御馳走が沢山、特に直哉の大好物を中心に並んでいる。

 

「これは?」

 

直哉が電の方を見ると、

 

「これは今日、消防と警察へごめんなさいに行った直哉へのお疲れ様会なのです、子日が頑張ったのです」

「そうか。子日、ありがとうね」

 

直哉は、子日に笑みを向ける。子日は、えへへっと笑みを返す。

 

「いやぁ、今日は大変だったよ。明石の尻拭いとは言え、それぞれ事情を一から説明しないといけなかったからねえ」

 

そう言いながら、ダイニングチェアに腰掛ける。

 

「それじゃあ、早速乾杯なのです」

『お疲れ様でしたー!」

 

直哉も、一杯目はビールである。

 

「子日も、ここの鎮守府は馴れたかい?無理せず、練度を上げて行かなくてはね?」

「うん!薄雲ちゃんと卯月ちゃんが丁寧に教えてくれるから」

「そうかそうか、それは良かった。預かるからには、練度をある程度上げないといけないからねぇ」

 

其の言葉で、艦娘達は顔を見合わせる。

これは最終手段発動しかない、と頷き合った。

 

「さあ、コニャックも入れたのです、飲むのです」

「お、今日はどういう風の吹き回しだい?」

 

いつもは飲み過ぎを掣肘するのに、今日は率先してコニャックを持って来る電を、訝し気に見る直哉。

 

「いやいや、今日は特別なのです。お疲れ様会なのです」

 

そう言いながら、明石謹製の酔っぱらい薬を仕込んだ。

 

「はい、どうぞなのです」

 

「ああ、ありがとう」

 

直哉がコニャックを飲む様子を、じーっと見る四人。

 

「どうしたんだい?」

 

不思議そうに見ると、四人の艦娘は慌てて食事に戻る。

直哉は、(ああ、なにか隠し事でもしてるな)等と思いながら、コニャックをグイッと飲む。

 

数十分後。

 

「あっはっはっは」

 

直哉は陽気に笑いながら、コニャックをラッパで飲み出す。

 

「直哉、楽しそうなのです。でもちょっと飲み過ぎだから、お布団に行こうなのです」

「ワタシ、マダヨテナイアル」

「充分酔っぱらいだぴょん。薄雲、子日、手伝うぴょん」

 

「わかりました」

「わかったよぉ!」

 

四人の艦娘の手により、何とか二階の寝室のベッドに直哉を横たわらせると、どんどん服を脱がせて行く。

一糸纏わぬ姿にすると、子日はちょっと顔を赤らめる。

 

「さあ、子日。あとは子日次第なのです」

 

子日は頷くと、シュルッと帯を解いて、パサッと浴衣を落とす。

それを見ると、電達艦娘トリオは部屋を出て行った。

 

「直哉、子日も抱いて……」

「うぇ?子日……」

 

二つの影が合わさった。

 

――――――――

漸く直哉は、頭痛の中から異常に酔っ払って、子日に迫られたことを思い出した。

 

「思い出した……何か仕込まれたな………」

 

気持ち良さそうにすやすや寝ている子日を、ゆさゆさと起こす。

 

「うーん………よその鎮守府に出さないで………」

「はぁ、最初から養子に迎えるつもりだったんだがなぁ……」

 

直哉は溜め息を吐くと、更にゆさゆさと子日を起こす。

 

「おーい、子日ー!!」

「ふぁ……直哉、おはよぉ」

「全く、昨日は散々だったよ」

「ごめんなさぁい………」

 

シュンとしている子日を抱き寄せると、

 

「最初っから、どこの鎮守府にも出すつもりはなかったんだよ。養子として置いておく予定だったんだけどなあ?」

「電が、嫁でもいいっていうから、既成事実を……」

「電がいいって言うならいいか。昨日は殆ど覚えていなかったからもう一度……」

 

そう言うと、子日を抱き締めて唇を重ねた。

 

「んぅっ……」

「んっ……」

 

 

――――――――

そして昼過ぎ。

 

「全く君達は、何て馬鹿なことをしたんだ?」

 

四人を正座させてのお説教である。

 

「だって、子日は直哉のことが好きになったんだからしょうが無いのです。きっと直哉はこれ以上増やさないと思って」

「他の鎮守府にやる為に、育てていたと思ってたぴょん」

「そうです、それじゃ子日が可愛そうです」

「ごめんなさい……子日が皆にやろうって」

 

シュンとしている艦娘達を見遣ると、一通の決定書を艦娘達の前に置く。

 

子日の、高菜直哉との養子縁組決定書である。

そしてカバンから取り出したのは、ケッコンカッコカリ指輪である。

「………全く、君達のおかげで、順番が逆になってしまったじゃないか」

 

そう言いながら、子日の手を取って左薬指に填める。

 

「わぁ……ありがとう、直哉」

目を輝かせて、笑顔の花を咲かせる子日の頭を撫でる。

 

「さて……休暇申請の為に頑張ろうかね?三高ワンダーランドのプールに連れて行ってあげるよ。どうせ水着も買ったんだろうし」

 

「ぎくっ、なのです」

「電の考えている事はお見通しなのさ」

 

肩を竦めて笑うと、直哉は早速、事務員妖精さんと執務に取り掛かった。

そんな直哉の姿を見て、ストライキ中の彼女達は、惚れ直したかのように見つめていた。

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