宮戸島の提督と仲間達のお気楽日記   作:SAMICO

68 / 108
大貫悟伝・序章~新たな鎮守府~

九月半ばに入って、漸く新しい鎮守府が完成した。

 

地上二階建て、それぞれ一階20畳・二階10畳の二間である。

 

二階の10畳は、応接室となる。

 

流石に、ちゃんとした来客対応はしないと拙い、と言うことになり、

ちゃんとした応接室が、強制的に確保された。

 

下20畳は、今までどおりの執務室兼多目的室である。

天井には7.1chホームシアターシステムが取り付けられ、副官デスクの真正面には、

60V型4Kプラズマテレビが取り付けられている。

 

今度の執務室はエアコン完備で、だるまストーブは廃止された。

他、シャワー室・給湯室・トイレが、執務室から出入りできるようになった。

 

執務机も幅広になり、司令官コンピュータシステム用端末に加えて、

私物のiMacPro(フルスペック)を、明石に買わせて机に設置した。

偶々難を逃れたMacBookProは、お下がりとして秘書艦の電に譲った。

 

そして、大きな目玉が大テーブルである。

特注で、番長と愉快な仲間達が全員座れる様になっていて、

壁には、カバンロッカーも用意した。

 

そんな鎮守府の初来客者は、明石であった。

 

「いやあ。その節は、多大なるご迷惑をお掛けしました」

「多大なるご迷惑過ぎるよ」

 

直哉の目の前には、茶菓子のレインボー最中が置いてある。

 

「明石には、いろいろ酷い目に遭って来たからね。応接行くかね?」

「あ、はい」

 

二人して応接室に上がると、今日の秘書官薄雲が立ち上がり、紅茶の用意を始める。

意図して二人共、ブランデー入り紅茶を淹れる。

 

「お茶です、どうぞ」

 

無表情でお茶を出すと、明石は口を付けてから、その芳醇なブランデーの香りに気づく。

 

「まあ、積もる話もあるから、今日はゆっくりして行きなさい。民宿には話をして置くから」

「謀られた……まあ、そうでしょうねえ。と言うか、高菜家じゃないんですねぇ?」

「夜の営みを聞く趣味があれば、別に構わないけどねえ」

「いえ、民宿でいいです」

 

明石は苦笑いを浮かべると、直哉の提案に従った。

 

「最近の私のライフワークなんだが、『大貫 悟』とは一体何者なんだ?」

「質問の意図が解りかねます。元大本営幕僚総監で暗殺された方としか……」

 

直哉の質問に困惑している明石は、紅茶を啜ると、

 

「では、()()()『大貫 悟』はどうなったんだい?」

 

と言う直哉の質問に、紅茶を噴き出しかけた。

 

「……………」

「私の仮説を述べようか。深海提督や大垣 守等のグループは、密かに自衛隊幹部に潜り込んで行った。そうやって、当時の()()()()()と入れ替わった大垣 守と、艦娘の有用性を共に訴えたのが、原初の艦娘の『工作艦』『任務艦』である明石と大淀だった」

 

明石は、何も反論できなかった。

 

「そして宮戸島に、ジレーネを倒す要素のピース・リーヴェが居ることに気づいた君達は、偶々大貫(大垣)空将から命じられた陸上自衛隊の私の小隊が、宮戸島の調査任務をしている日に、深海棲艦の大侵攻が発生した。それを薄雲と明石と協力して成し遂げたのは予定調和のうちで、私は民間人を誰一人死なせること無く逃がした功績で、三佐に特進した」

 

「…………」

 

「薄雲は、何か知っていたのかい?」

「提督のおっしゃりたいことは大体。私は元々、深海と艦娘のハーフで、以前説明したお話はだいたい嘘です」

「やっぱりか………」

「私への監視も、全て茶番だった、と言うことです。本気で監視をしている()()()だったのは、当時の足立警務隊長だけです」

 

その言葉に、明石はほぅ……と溜め息を吐いた。

そして薄雲は、真っ直ぐ直哉を見て続ける。

 

「ですが、直哉を愛していると言う気持ちには嘘偽りはありません。改めて申し上げます。直哉を愛しています」

「はいはい、それは知ってたよ。ありがとうね」

薄雲を優しく抱き寄せるとソファーに座らせて、明石の目の前だと言うのに濃厚なキスを交わす。

 

「んんん……」

「んんぅ……」

「わぁ、大胆ですねぇ」

 

いつもは冷静な薄雲が、顔が真っ赤になっている。明石は苦笑いを浮かべている。

「その……直哉……人が見てます」

「今まで、私を謀ってくれたお礼さ。明石にもね」

 

直哉はそう言って、わざとらしく溜め息を吐いた。

 

「結局……私の人生設計をメチャメチャにしてくれたのは、大貫 悟というやつさ。私は彼を恨んでるし、感謝もしている。何せ、合計四名もの艦娘を嫁に貰えるんだからな」

 

「それは、大貫前総監も申し訳なく思っていらっしゃいました。彼には重責を担わせる、と」

「それが『導き手』だったんだろう?」

「…………はい」

 

直哉は、再び大きな溜め息を吐いた。自身の身に、これほどの不条理な運命を押し付けておいて、さっさと退場してしまった大貫 悟と言うやつが、笑っている姿しか想像できなかった。

 

「ところで、本物の『大貫 悟』はどうしている?」

「………と言いますと?」

「惚けないでもらおうかな?大垣 守が大貫 悟と入れ替わった先だ。まさか、死んだ訳じゃないだろうな?」

「はい。大貫 悟さんは、我等の同志です。彼は()()別の顔を持っていましたので……そのとある人物に戻りました」

「とある人物とねえ。どうせ、そのとある人物もお前さん達の同志だったんだろう?」

「はい」

「大貫 悟とは一体何者だったのか? 生きていれば生きていればで、死んだら死んだで我々を困らせる」

「ふふ……そうかもしれないですね」

 

「もう一つ確認事項なんだが、薄雲、生理は来ているか?」

「はい、子日、卯月、電にも」

「艦娘が、妊娠しない理由を教えてもらおうか?明石」

「っ……!」

 

最早明石は、言い逃れはできない、と悟っていた。

 

「そこまで辿り着いていたとは、予想外でした」

「『知識の蒐集者(ノレッジコレクター)』の息子を、バカにしないでもらいたいねえ。私だって、それなりに仮説は立てていたんだ。この七年間で、艦娘の妊娠例がないことを調べ上げた。全部の艦娘が避妊するとは限らないから、妊娠は()()起こりうる現象だ。人間の生理的機序も働いているならば。何らかの理由でロックしていた、違うか?」

「……仰る通りです」

 

直哉の、真っ直ぐ見る視線に耐え切れず、明石は目を逸らしながら答えた。

直哉は足を組み直して、薄雲に哨戒緊急中止を命じると、薄雲は立ち上がり一礼して応接室を出て行った。

 

「それはどうしてか?まずは、反艦娘派への配慮。提督と子供が為せるとしたら、それは彼等の警戒を招き、艦娘の立場を『兵器』として、一気に人権を与えない方向に傾いてしまう恐れがあった。それに伴い、子供をモルモット化される危険もあった。考え得るとしたら、その二つかな?」

「追加するなら、『子供はジレーネとの戦争が終わった後、ハーフェンの管理下で第一号を産む』のが望ましい」

「………神通の家出癖は……」

「桐山二佐の原因が七割なら、演技は三割と言ったところでしょう。桐山二佐には、既にその事は話しています」

 

その言葉に、直哉は予想が当たってホッとしたのと、大貫 悟というやつの掌の上にあった、自分達のバカさ加減に呆れるのと、複雑な思いでいた。

 

「これも予想していいかな?ロックを破るには、ケッコンカッコカリリングを()()姿()にしなければならない。何でカッコカリだったのか?それは、ケッコンカッコカリリングそのものが、封印解除の第一歩だった、からだね?」

 

その予想に、明石は大きな溜め息を吐いて両手を上げた。

 

「参りました、そのとおりです。能力の向上は副次的効果で、ケッコンカッコカリリングの真の目的は……」

 

その時、バタンと扉が開かれた。

三人の艦娘が入って来た。それぞれ、慎愛用のプラバットの予備を片手に……

 

「話は聞かせてもらったのです!」

「明石さん、酷過ぎるぴょん」

「艦娘が子供が出来ないって、仕組まれてたんだね!酷いっ!」

 

「ひっ、ひえええええええ!!!!」

 

その殴打は、薄雲がゆっくり上がって来るまで続いた。

 

「まあ、そういう訳で、手品をしようか?皆、左手を出してごらん」

「なのです」

「ぴょん」

「了解です」

「うんっ!」

 

四人の艦娘が重ねて出した左手の上に、ポンと直哉が左手を置く。

 

Diese wahre Liebe, hier(この真実の愛、ここに)

 

銀色のケッコンカッコカリリングが輝くと、白金(プラチナ)色のリングに変わって行った。

 

「これで、艦娘の最後の能力。ケッコンした人物との間に、子を成すことができるようになったよ」

 

直哉は肩を竦めて、皆を見回した。

 

「これでカッコカリが取れて、ケッコンリングになった訳だ」

 

そう付け加えると、四人を優しく抱き締めた。

 

明石は、その光景を目に焼き付けていた。そして、少し寂しそうに、しかし嬉しそうに、

 

「おめでとうございます。その通りです」

 

そう祝福した。

 

「明石、君はやはり大貫 悟を……?」

「はい。ですが、新しい出会いを探しますとも。それに私には、まだ研究という恋人がいます」

「はは、あまりやり過ぎないでもらいたいものだ」

 

直哉は苦笑いしてから、コホンと咳払いをする。

 

「さて。ここから、前回の一件の賠償のお話なんだが………」

「はて。請求されたものは、全て払いましたが……?」

 

明石が首を傾げると、直哉がにぃっと笑った。

 

「武藤レストラン食べ放題コースが履行されてないから……ね?」

「ああ、そう言うことですか。宮城の提督全員、開封させる気ですね?了解です」

 

――――――――

改めて、メカいなづまちゃん事件のお疲れ様会が、武藤レストランで執り行われた。

全員のケッコンカッコカリリングが、ケッコンリングに変わって、皆大喜びをしていた。

 

そして、間違えて酒を飲んで酔っ払った夏海が、

 

「明石さん!私、艦娘達や結有に、子供を孕ませたいです!何とかしてください!」

「ええっ!そんなの無理ぃ……」

 

と、滅茶苦茶過ぎる無茶振りをして、明石を困らせていた。

 

「まあ、明石の技術力なら、何とかなるだろう」

「いやいや、私を何だと思ってるんですか?一佐は」

 

と、直哉は更に退路を断って、明石は困り果てていた。

 

「散々迷惑掛けたんだから、そのくらいやれんだるぉ!?」

「ぐえっ!!しぬ……しぐぅ」

「夏海さん!落ち着いてください!これ以上やると、死んでしまいます!?」

「なっちゃん!明石さんを殺す気!?」

「散々、メカいなづまちゃん事件で迷惑掛けた()()()()()()を、役に立てろやゴルァ!」

 

と、夏海は人格が変わったようなドスの効いた声で、明石の首を絞めて脅しているのを、加賀と結有が止める形で、

そんな様子を見ながら、一同はどっと笑っていた。

 

後に明石が、新技術を用いてそれを可能にして、世の中の同性愛者の希望の星になるのだが、

それはまだ、もう少し先の話である。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。