意気投合して個人向け海の警備会社を立ち上げる
そんなトリオのドタバタ警備会社運営日記
ザザーッ
太平洋上では豪華クルーザーが停泊して、お金持ち一家がデッキで楽しく食事をしている。
その周囲を、三隈・最上・曙が周辺警戒している。
「あーあ、美味しそうね」
「そうだね、高級牛のローストビーフだって」
「全くよ。ホントセレブは、呑気でいいわね?」
ヘッドセットに付けている通信機で、駄弁っている三人。
それぞれ、株式会社「浜松警備保障」の代表取締役社長、同副社長、取締役専務。
何でこんな事をしているか?と言うと、クルージングの警備である。
――――――――
ジレーネ戦争が終わって、高菜政権が発足したのを見届け、艦娘達は除隊した。
浜松鎮守府は廃止となり、三隈達は小さなアパートを借りて、仕事探しをしていた。
そんな中、参加した街コンで彼等と出会った。
起業家トリオの、
最初は、
「ねえねえ君達、成人過ぎてるよね?街コンの参加資格、20歳以上の男女だけど?」
と、規が声を掛けて来たのがきっかけだった。
それぞれスポーツ刈りの筋肉質の青年、瓶底眼鏡でロン毛の青年、お相撲さんのように太っている青年だった。
曙が憤慨して、
「失礼ね!ほら、免許証」
生年月日に、《艦娘により成人》と記載された免許証を、印籠のように見せ付ける。
この度の艦娘・深海棲艦基本法の制定により、艦娘は全て成人として、選挙権も認められるようになった。
まだ被選挙権は認められなかったものの、大きな第一歩である。
因みに、曙の取得免許は普通自動二輪である。
「へえ、艦娘なんだ。それじゃ自衛隊員?」
「ううん、僕達除隊したんだ」
「そっかぁ。俺達は、一応実行委員会兼参加者で、僕が飯村。それから、隣の眼鏡が稲津、太いのが中垣。皆独身の、30代男だよ」
「ボクは最上」
「私は三隈よ」
「あたしは曙」
自己紹介も終わったところで飯村達が、
「もしよかったら、夕飯ご一緒しない?」
「お、お勧めの居酒屋もあるし」
「ボリュームいっぱいだよ」
と誘って来るのを、三人は顔を見合わせてから、コクリと頷く。
お見合い形式で三隈の前に規、稲津の前には曙、そして中垣の前に最上が並ぶ。
「それじゃあ、かんぱーい」
『かんぱーい!』
「皆さんは、どう言ったお仕事をされてるんですか?」
早速三隈が、ジョッキを持ったまま声を掛ける。
「俺は、一応自営業者かな。経営コンサルティング関係の仕事をしてる」
「僕は……その……作家、兼イラストレーター……」
「オレは土建屋かな。小さな土建業を営んでるんだ」
飯村と稲津と中垣が、それぞれ自己紹介をする。
「私達は今就職活動中で、なかなか艦娘を雇ってくれるところがなくてね」
最上が代表して、苦笑を浮かべている。
「そっか。ねえ、艤装って個人所有なの?」
「ええ、陸上での使用は禁止されてますけど……」
「そっかそっか」
飯村が暫し考えてから、
「街コンの趣旨とちょっと外れる話なんだけど、一つ聞いてもらえないかな?」
「うん」
「君達、就職活動中だろう?いっその事、起業してみたらどう?」
『き、起業!?』
艦娘三人の声がハモった。
「起業って!僕達そんなお金ないよ」
「そ、そうですよ。会社を立ち上げるだなんて……」
「ばかなの!?」
艦娘三人が狼狽えている中、飯村が笑みを浮かべたまま話を続ける。
「警備会社ってのはいいんじゃないかな?ほら、深海棲艦はまだ害獣化している、って話だろう?漁業や大きな貿易船舶は、自衛隊が手厚く保護してるけど、例えばレジャーとか小さな海運は、保護申請を出しても却下される傾向にあってね。特に四国の大戦争以降、人手が足りないとかで……」
飯村が真面目に語り出すのを、三人の艦娘達が真面目に見ている。
「それでも、レジャーに行く人はいるんだよね、保険を掛けて。さて問題です。保険会社は、どうやってお金を工面するでしょうか?」
ビールを飲みながら三人の艦娘に問い掛けると、曙が手を挙げる。
「はいはい、保険の掛け金から出される!」
「はい正解。ぼのちゃんだっけ、それじゃ、テロや深海棲艦がいっぱい現れて、保険会社のお金では賄い切れなくなったらどうするか?保険会社も、保険を掛けてるんだ。それを、再保険と言うんだけど。小さな海運やレジャーで被害を被った人たちが多くて、一時期小さい保険会社がバタバタ潰れたことがあってね。再保険会社が、深海棲艦案件での支払いを戦争や天変地異等、常軌を逸した変乱に因る時に拠る免責を主張して
『………』
艦娘達は、申し訳無さそうな顔をする。
「いや、責めてる訳じゃないんだ。そこで俺が思い付いたのは、保険会社や個人と契約して、小さな海運やレジャー目的の船を護衛して、深海棲艦案件や保険金の支払い事案や命を落とすのを阻止する会社を立ち上げる、ってのなんだけど、どうだい?」
『おー……』
艦娘達は、目から鱗だった。
「そ……それよりも………」
「今日は、折角の街コンだから、さ?」
二人に突っ込まれると、飯村が苦笑いを浮かべる。
「興味があったら、明日にでも話すとして………今日は折角だから、いろんなお店回って楽しもうよ?」
『おー!』
いろいろなお店を回って、スタンプラリーみたいな感じで、はしご酒をして行く。
自然と飯村には三隈、稲津には曙、そして中垣には最上がくっ付き始める。
飯村と三隈は延々と起業の話をして、
ドMの稲津は、曙に「クソ泰司!」と罵られながらも、楽しく絵を書いて過ごしている。
そして酒の回りの早い最上は、中垣の大きいお腹をポンポコポンと叩きながら、くっ付いている。
そして自然と、それぞれのカップル(?)で解散となり、明日お昼ついでに警備会社の話をする、と別れると、規と三隈はバーに足を運んだ。
「私達のこと、最初から知ってたんでしょう?」
「あはは、大正解。村上さん達から、
「あの二人は『優し過ぎる』んです。だから今は、警察で総理の護衛になれてよかった、と思うんです」
「そうだね。ところで明日もあるし、お家に送るよ」
「……あの、まだ帰りたくない、って言ったら怒りますか?」
「全然?」
「それじゃあ…………」
「うん、行こうか……」
二人はバーでお勘定を済ませると、バーを後にしてホテル街へと向かった。
――――――――
翌朝。待ち合わせ場所で、昨日と同じ服装の六人が、顔を揃えた。
『………』
艦娘達は、無言でそれぞれ顔を見合わせると、少し赤らんだ。
「三人共朝帰りだった、と」
規が代表して突っ込むと、泰司がしどろもどろになってしまう。
「……あの、その……童貞を貰ってくれて……」
「クソ泰司!そういう事は、報告しなくていいから!」
顔を真っ赤にした曙が、バシッと叩きながらツッコミを入れると、ガリ細の泰司が蹌踉ける。
「こっちはねえ、フッカフカのお腹だったよ」
「あはは、上に乗っかったまま寝ちゃったもんね」
最上が照れ笑いしながら言うと、堅も照れながら笑った。
「ところで、くまりんこはどうだったのよ!?」
「そうだよ、僕達の話ばっかりずるいよ!」
二人に迫られると、三隈は両手を上げて、
「その、激し過ぎて………チェックアウトギリギリでシャワーを浴びて……」
「寝てないよね?俺達」
二人で照れっ照れになりながら言うと、曙が目を逸らす。
「あれぇ?曙さーん?どうしたのかなぁ?」
最上が意地悪そうに言うと、三隈も弄りに参加する。
「そう言えば、遅刻ぎりぎりだったよねぇ?」
「っ……!!」
曙が、更に顔を真っ赤にして耳まで赤くなると、
「あの……ネットで売ってて冗談で買った、「アカシ秘薬」ってネットショップの「超絶ギンギン丸」ってのをぼのたんに見つけられて………全部飲まされたら朝まで萎えなくって……その……漫画の資料で取り寄せたグッズで……前だけじゃなくてお互い後ろも……」
「言うなああああああああ!!!!」
げしっ
今度は、真っ赤な曙の蹴りが入って、蹌踉けて堅に凭れ掛かる。
「うん。ドSとドMのいい関係になりそうだ」
「そうですね」
規と三隈は顔を見合わせると、笑みを浮かべた。
――――――――
結局、警備会社の設立を規のコンサルティングの下に行って、
社会に進出したけど、仕事のない深海棲艦達も次々入社して、他にも自衛隊を除隊した五十鈴等が参加して、
総勢60名の社員で、『株式会社浜松警備保障』は船出した。
三隈達の
一ヶ月足らずの、スピード設立となった。
因みに本社は、浜松鎮守府跡地を買い上げた。
大株主は三高ホールディングスであるが、子会社にするほどは保有していない。
いろんな業種から、規が見付けて来てくれた出資者が、株をどんどん保有してくれた。
規達も、経営の方法から経理の方法、税理士を紹介してくれたりいろいろ手伝ってくれた。
大人気イラストレーターの泰司が、社員募集や依頼募集の広告を、いろんな即売会で出してくれて、
土建屋の堅も、本社改築工事に力を貸してくれた。
その間にも、それぞれのカップルは互いに愛を深めて行き、こちらもスピード結婚となった。
やはり結婚のきっかけは、優しくしてくれる相手をそれぞれ求めていた、と言うのもあった。
専業主婦とは行かなかったものの、それぞれの家で実業家として、主婦として頑張ることになった。
――――――――
「夏休みシーズンだから、役員まで総動員で仕事かぁ……クソ泰司はコミケ行ってるのに」
「ごめんねぇぼのたん、折角のエロコスで売り子する予定だったのにねぇ」
「僕も行きたかったなぁ、コミケ」
楽しそうに、子供が燥いでる豪華クルーザーを見ながら、駄弁っている三人。
会社の役員でもあるこの三人は、艤装を着けて海に出る機会が少ないが、経理部長である五十鈴まで動員している以上は、
社員が足りないので出来ません、と断る訳にも行かなかった。
しかも、このミッションの報酬はかなり破格であり、「金は命には代えられない」と言うのを、まざまざと見せられるような思いだったのもある。
依頼人の、
「命を金で買えるなら、安いものだ」
と言う言葉も、三隈にとっては忘れられない言葉になった。
「さあ、気を引き締めましょう。このクルージングの旅が無事終わったら、規さん達がご褒美に、三高ワンダーランドに連れて行ってくれる、って言ってたわ!」
『おー!』
こうして、除隊した後も自衛隊の手が回らない分野を民間でカバーすることによって、深海棲艦事案の保険金支払いや被害が多少は減ったとか。
こうやって、海のレジャーは守られている。
今度、デスペランから卒業した子達が新規採用枠でやって来る。
そんな子達の教育をしないと。そう思いながら、三隈達浜松警備保障は今日も頑張っているのである。
余談だが、副業がバレた明石は減給処分となった。
お題「浜松鎮守府のその後』toshi-tomiyamaさん提供
→湊子総理によって司令官と副官がスカウトされた浜松鎮守府……
艦娘達も除隊して……
さて、その後は……?
ネタが降りてきたので以前の話の文章を訂正しました