宮戸島の提督と仲間達のお気楽日記   作:SAMICO

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唐揚げが大好きなのです
――宮戸島電三尉―――




島の新生活

宮戸島の官舎に帰り着いた電達。 

早速、ベッドを果断速攻で手配しようとしていると、卯月がクイーンサイズベッドしかないことに気づいて、

「提督達は、いつもどうやって寝てるぴょん?」

と問い掛けると、電が 、

「いつもは、電が提督のベッドに潜り込んでいるのです。提督はさっさと寝てしまうので、安全無害なのですよ。卯月も一緒にどうなのです?」

「うーん、それは不味いだろう?この私物のベッドは明け渡して、私がシングルで、何か寝心地の良いベッドを探すさ」

作業帽・作業服に着替えた高菜二佐は、頭を掻きながらタブレット端末で、ベッドのカタログを見ながら考えていると、

「う…うーちゃんも電と提督と一緒がいいぴょん」

少し言い淀んでから、決意をするように言うも、提督(高菜二佐)は困った顔をする。

「でもね、卯月。君は男性への恐怖が、少なからずあるのではないかな?無理はしなくていいんだよ?」

「ううん。なぜか高菜二佐なら大丈夫、って思えて来たぴょん」

「ふむ……分かったよ。卯月がそこまで言うなら、そうしよう」

そう言って、頭をぽんと撫でると、笑顔になる卯月。

 

「さて、次は買い物だ」

卯月と二人で、ホームセンターに買い物に行く。

電は、桐山二佐の艦隊がまた戦艦を引き連れて撤退して、宮戸島海域に流れ込んで来たので、緊急出動である。

「全く、面倒事を押し付けないでもらいたいのです」

そう言って、出撃して行った。

最初は、電がいなくていいか卯月に問うたが、大丈夫と言うので、OD(オリーブドラブ)色の軽トラックで、宮戸島のホームセンターに向かった。

やっぱり彼は、ここでも人気者である。

「おお、直さん」

「高菜さん、こんにちは」

作業服姿の高菜二佐に声を掛ける、同じく大工の作業服姿のおっさん達に、卯月は高菜二佐の後ろに隠れる。

「やあこんにちは」

高菜二佐もその場から動かず、卯月を守るようににこやかな笑顔で応える。

「こっちの()は、新しい艦娘ですかい?」

「電ちゃんが嫁なら、こっちの()は高菜さんの(ムスメ)みたいな感じだねえ?」

ハッハッハと笑う二人を、ちらりと覗き込むように見る卯月。

「嫁じゃない、って。すみませんね、彼女はちょっと男性が苦手で、何故か私以外の」

「う……卯月ぴょん」

取り敢えずは自己紹介だけする卯月に、坊主頭のガタイのいい大工の棟梁のおっさんが、

「おお、自己紹介するとは偉いな。うちの(ムスメ)も人見知りで、他所様に挨拶しねえのよ」

棟梁(カシラ)ん所の嬢ちゃんは、父親に似ず可愛くてねえ、あだっ」

その隣のおっさんに、ゲンコツをくれる棟梁に、びくっと再び高菜二佐の後ろに隠れる卯月。

「お、おおう、ごめんよ。怖がらせる気はなかったんだ」

その卯月に、困った顔をしてオロオロし出す棟梁に、

「いやあ、大丈夫ですよ」

と言っておいてから、卯月の頭にぽんと手を置いて、くるっと向き直りしゃがんで目線を合わせる。

涙を浮かべている卯月に、笑顔を向ける。

「あの棟梁は大丈夫。娘を溺愛していて、嫁さんに頭が上がらない、無害なおじさんだから」

「そうそう。おじさん、女の子の涙には一番弱くてなあ。後、カカアにも弱いんだ」

はっはっはと笑いながら言う棟梁に、おずおずと顔を出す卯月。

「高菜二佐が言うなら……ぴょん」

「それじゃあ、おじさん達は失礼するよ。またね嬢ちゃん」

「うん……」

「ああ、棟梁。もしかしたら、今度顔出すかもしれないよ?」

「あいよ、了解だぜ」

大工のおじさん達が去って行くと立ち上がり、卯月と手をつなぐ高菜二佐。

 

卯月の生活用品を、一通り揃えて行く。

パジャマであったり、朝食用の食器であったり。三人になったので、トースターは二度回さないといけないな、と思いつつ、

二段式の、パンが四枚焼けるオーブントースターを見て、腕を組んで考え込む。

「こいつを買ったら、電が怒るか?」

そう。高菜二佐の出自を知らなかった彼女は、無駄な浪費反対派なのだ。

「こんなに沢山、いいの?」

卯月は、今までの鎮守府で出た給料までも、ブラック提督に横領されていた為、無一文なのだ。

今、湊子を通じて、湊子のコネクションでとある自衛隊上層部に働き掛けてもらっているが、上はお役所仕事なので、

まあ厳しいだろうと考えて、全部自腹で用意することにしたのだ。

「艦娘の給与は、提督に振り込んでの現金支給と言うのが間違いの元なんだよ。銀行口座を、司令官の同意がないと作れない、今の制度に問題があるんだがなあ」

善良な提督は、お給料日を一つのイベントとして、手渡しの喜びの為に使っているが、悪どい提督はその制度を悪用しているのだ。

大きな溜め息を吐く。そして、お財布のコーナーに向かう。

紳士向けのお財布から子供向けのお財布まで、いろいろ取り揃えられている。

「さあ、好きなのを選びなさい」

「でも、うーちゃんお金持ってないぴょん……」

「今月の給料日は明日だったね?湊子様のもとにいた期間と、できれば横領され続けてた期間の給与を払えないか今、上に相談してもらってるところだ。差し当たり、湊子様から預かってるお小遣いと、私からのお小遣いを加えて20万。入れて置くから、大事に使いなさい。貯金をしたいなら、銀行に連れて行こう。今月の給与から支給しよう」

その言葉に、目をまん丸にして驚く卯月。

「そ、そんなにいいぴょん!?」

「そんなにも何も、たった一か月分の給料に毛が生えた分だよ。毎月十何万か、給料が入るからね」

「そ、そうだったのかぴょん………」

自分は搾取されていたのか、と気づくと肩を落とす。そんな卯月の頭を撫でる。

「さあ、好きなのを選びなさい」

その言葉に、卯月は可愛いお財布を選んだ。それを見た高菜二佐は、ふふ……と笑った。

その財布は、ブタさんのキャラクターの財布で白と黒のバリエーションが有る。

卯月が選んだのは白だが、実は電が選んだのが黒なのである。

「それでいいならカートに入れなさい。あとはパジャマと、衣料品売り場で服を何着か選ぼうか?」

ここのホームセンターは、『としりま』という洋服屋のチェーン店も店内に入っている、複合店舗なのだ。

 

服を何着か試着するとそれも買い、自分が休日用のスーツを見てる間に、卯月は自分の下着を選んで持って来る。

沢山の生活用品と、収納ボックスと衣類の入ったカートを、レジへ持って行く。

「ああ、こんにちは高菜二佐。新しい艦娘さんですか?」

レジの若い女性店員は、ニコリと卯月に笑みを向けると、

「卯月だぴょん」

と挨拶する。女性店員は、「ハイ、こんにちは。ようこそ宮戸島へ」

そう言いながら、どんどんレジ登録して行く。

そして金額を告げると、高菜二佐はお尻のポケットにある財布を取り出し、白金(プラチナ)色のカードを出して女性店員に渡す。

「支払いは一回と回数とリボ、どちらででよろしかったですか?」

「うん、一回で」

その会話に首を傾げている卯月に、

「クレジットカードは一回で払うか、分けて払うか選べるんですよ」

「そうなのかぴょん」

その女性店員の説明に、また未知の話に目をまん丸くする卯月。

「さあ、こいつを積み込んだら鎮守府に戻ろう。まずは官舎で荷物を下ろして、片付けをしてからお昼にしよう。電は戻って来るかな……?」

そう言いながら、カードとレシートを受け取り財布に仕舞うと、財布をポケットに仕舞う。

そして、商品の袋やシール付きの商品の載せられたカートを転がしながら軽トラックに向かうと、

軽トラックの車両無線からマイクを手に取り、無線を送る。

この無線は、艦娘とのペアリング無線なので、艦娘と近隣の各拠点だけに送受信できる無線なのだ。

「えー、宮戸島高菜二佐より宮戸島電、応答せよ?」

『はい、宮戸島電、どうぞなのです?』

「現状を報告せよ、どうぞ?」

鎮守府待機(おやつタイムなのです)。どうぞなのです?」

「了解、物資調達完了(買い物終わったよ)糧食調達可否か?(昼飯は弁当屋にするけどどうする?)どうぞ?」

二佐に一任いたします(唐揚げ弁当がいいのです)、どうぞ?』

「了解。糧食調達後、すぐに戻る」

通信が追わった頃に、卯月が荷物の積み込みを終わらせる。

戦闘中の他の艦娘達にあからさまに言えない為この言い方なのだが、艦娘達は大体察するのだ。

このゆるさが、艦娘ならではなのである。

 

―――――――

「あー、宮戸島の電ちゃんおやつタイムっぽい」

「そのようだな。お昼は、コンビニか弁当屋なのだろう」

「提督も、今日は昼飯とおやつ用意してるって言ってたぜ。明日の手料理、何かねえ?」

そんな暢気な会話をしているのは、南三陸鎮守府の夕立、長門、木曾のお気楽トリオ。長門は電と同じ三尉、夕立が曹長、木曾が一曹で、宮戸島鎮守府と同じく、女川鎮守府の桐山二佐被害者の会会員でもある。

ここの提督は、武藤 廉三等陸佐。艦娘を、過剰に大事にすることで有名な提督である。

大事にし過ぎるせいか、毎日埠頭までお見送りをし、お出迎えをし。ちょっとでも小破すると、オロオロと泣き出すくらいである。

45過ぎの、スキンヘッドにヒゲを蓄えた、太ったいいおっさんで、元々は経理畑で勤務をしていたが、適性試験で前線に引っ張り出された、可愛そうな人でもある。

料理が得意で、給料日には自ら厨房に立って美味しい料理を振る舞う、女子力の高い提督なのだ。

因みに、残念ながら独身である。

―――――――

銀行に立ち寄って、卯月名義の銀行口座を作って15万円は口座に入れる。数日後、鎮守府にキャッシュカードが届くのだ。

最後に弁当屋に立ち寄り、唐揚げ弁当を三つ購入してから官舎に戻る。

お昼ご飯の後、電と卯月が和気藹々と収納を組み立てたりしているのを、ベッドに腰掛け眺めながら、

そろそろ、官舎の拡張工事を視野に入れるべきか考える、高菜二佐であった。

「「高菜二佐も手伝うのです」ぴょん!」

「はいはい」

頭を掻いて、その二人の輪に加わる高菜二佐だった。

 




今回のお題「お買い物」


今回の前書き、何も思いつきませんでした。




Tips《テートクのお仕事~給料日編》
給与自体は所得税、住民税、健康保険料などを差っ引いて明細を毎月鎮守府に送信する。
提督には自身の給与に加え艦娘の給与も振り込まれる。
一部の提督は各艦娘の銀行口座にそのまま給与明細を見ながら振り込む。(艦娘口座への振込手数料は一律無料)
現金支給派の提督は、銀行もしくはATMに赴いて引き出して、
提督は給与明細から、小銭端数切り上げ、または金額通り(せこい提督は四捨五入または切り捨て)で給与袋に入れる。
そして、その日の定期哨戒帰投後手渡しを行う。
善良な提督は、色を付けて渡したり、パーティで外食に連れて行くこともある。

高菜二佐は電、卯月が銀行通帳を作っているので、
執務室のパソコンでカタカタっと振り込んで終わり。
どこまでもデジタル派である。


■おしらせ
ストックが尽きました。 明日からは速度がガタ落ちするかもしれませんがお許しください。
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