なので、木曜日に投稿します。
■作中の「♪~」について■
歌詞はNGなんで、皆さん脳内で補完してください。
圭一は、悩みに悩んでいた。
そんな中、暴走族の溜まり場に顔を出していた。
「何だケーイチ、今日は彼女さんは一緒じゃねえのか?」
暴走族のヘッドが、圭一に声を掛ける。
髪の色が七色の、ピアスを色んな所に付けた、キングオブ不良という感じのこの男。
東北最大の暴走族のヘッドで、非公式にヤクザからも盃を貰ってる男である。
三島雄二というこの男は、中学一年で高校の番長を殴り倒したり、
自身のメンバーをシメた圭一を、一目も二目も置いている。
「三島さん、俺……史絵と別れたほうがいいんすかね?」
「はぁ?何言ってんだ?あんなにラブラブじゃねえか。史絵だって、他に男を作るような女じゃないだろう。まさか、うちのヤツが手ぇ出したのか!?何処のどいつだ!俺様がぶち殺して来てやらァ!」
「違うっす!だから落ち着いてください!!」
早とちりする、瞬間湯沸器を宥めると、
「じゃあ、何だよ?」
「史絵、実は小説家としてブレイクしたんすよ。あんまり言わないでほしいんすけど、扶桑咲花先生」
「おー。俺の女が漫画版の『金銀竜』読んでるぜ。マジか?あれの原作か?」
「それで、史絵が遠くに行っちまった気がして、おれと釣り合わないんじゃねえかと」
圭一がそう言うと、三島はふむ、とビールケースに腰を下ろして、隣にあるケースをバンバンと叩く。
「うっす」
圭一も、頭を下げると腰を下ろす。
「それで、悩んでんのか?」
「うっす」
「オレは馬鹿だからよぉ。あんまりチマチマとした事は苦手だからアドバイスになんねえかもしんねえけど、お前はどうしたいんだ?」
「それが判んないから、悩んでるんすよ」
三島は「重症だな」と笑いながら、背中をバンバンと叩く。
「史絵に相談はしたのか?」
「それが…………あれ以来会って無くて、会わないようにしてるんすよ」
「あぁ?」
その瞬間、三島の表情が不快に染まった。
ザッと立ち上がり、圭一の胸倉を摑んだ。
「おいおいおいおい、圭一よぉ?お前は、いつからケツの穴の小せえ男に成り下がっちまったんだぁ?まずは史絵と相談だろうがよ?逃げ回ってねえで」
「それが、怖いんだ…………」
「ばっきゃろー!圭一ぃ!歯ぁ食い縛れぇ!」
そのまま、顔面に一発パンチをお見舞いする。
「ぐううっ!!!」
胸倉を摑まれたままだが、重いパンチが頬を直撃する。
頬が痣になって、口元から血が流れる。
「女ってのはよぉ!惚れた男に愛される為に生まれてきた生きもんだ!何をチマチマ心配してんだよ、おめえはよぉ!?まさか、俺達の付き合いに気を遣ってんじゃねえだろうなぁ!?」
「…………」
バキッ!
「ぐうっ!」
もう一発殴られた。
「それこそフザケんなよ!お前を、男ん中の男と見込んでダチとして付き合ってんだ。どうしちまったんだよ、大番長原 圭一は!?男ならどっしり構えて、テメエの女守ってやるんが男だろうが!?それを、悩ませ苦しませてどうするんだ!?男だろ!?もっとしっかりしろや!!」
「…………」
「史絵、東京行くかもしんねえんす。文学極めるために。その邪魔をしたくねえんすよ」
「だったら、従いて行けばいいだろう!?」
その言葉に、圭一の苛立ちが爆発した。
「ヘッド、簡単に言わねえでくれよ!勉強苦手な俺が、今から勉強してたら遊ぶ暇なくなるんすよ!ここにも顔出せなくなっちまう!」
「バッキャロー!俺達に気を遣ってんじゃねえよ!ダチが勉強するのを応援するのが、本当のダチじゃねえか!?」
「ヘッド………」
三島は、感極まって両目に涙を浮かべながら、両手で胸倉を摑み上げる。
「バカヤロウが!俺達なんかに気を遣いやがって!俺は、お前のようなガキに気を遣われるほど、落ちぶれちゃいねえよ。勉強が足りねえんなら、必死に勉強すりゃいいだろ!?女ってのはな、男が愛してやれば、どんどんいい女に育つんだよ!扶桑咲花って花を、大輪の花に育ててやれんのは、テメエだけだろうがよぉ!!!」
「三島さん…………」
「まだ分かんねえなら、分かるようにしてやろうか!?」
「もう大丈夫っす」
力強く言うと胸倉から手を外し、再びビールケースに腰掛ける。
「そうか。俺達は、お前を男と見込んで付き合ってるんだ。別に、兵隊として付き合ってる訳じゃねえ。スキな時に面ぁ出して、忙しかったら来なくていい。でも、たまに電話はくれよな?チームン中に、大学行ってるやつもいるから、困ったら勉強見させるからよ?」
三島は、獰猛な笑みを浮かべると圭一を見上げた。
「実はよ、史絵からも相談受けてたんだよ。単身、この怖い巣窟に来てな。圭一が、いつもの圭一じゃなくなってしまった、って」
「そうだったんすか……」
「おうよ。そん時は一言、『圭一を信じて待ってろ』って、言ってやった」
「そうだったんすね……」
三島は、再び隣のビールケースをバンバンと叩くと、
「まあ座れや」
と、席を勧めると「うっす」と言って腰を下ろす。
「俺なんかよぉ。二十歳過ぎてもチームやってる、半端モンだ。でも半端モンだけど、男としては誰にも負けねえ自信があるぜ。喧嘩も、酒も、女も」
「…………」
「圭一よぉ。お前、俺に相談してよかったろ?一言エールを送ってやる『愛は最強』だ」
「……ヘッド……」
圭一は、バッと立ち上がって深々と頭を下げた。
「ありがとうございました!」
「おうよ!それでこそ大番長の男、原 圭一よ」
――――――――
三島と別れて繁華街を歩いている時、スマホが鳴った。
取り出すと、愛からの長い動画だった。
「圭一くん、見てる!?」
笹野 愛が、手を振ってフレームインすると、ピアノを弾いている燿子の姿が映し出される。
『愛は勝つ』の前奏が流れる。
「♪~」
まずは愛の独唱から始まり、ワンフレーズごとに健太が加わる。
「♪~」
そして、燿子の声が加わって、リーヴェの声が加わる。
「♪~」
真愛は、愛に抱き抱えられて加わり、
「♪~」
娯楽部カルテットも、どんどん加わって行く。
「♪~」
そして、土佐の艦娘達、ビスマルク、アイオワが加わり、
「♪~」
鳳翔達が加わって大合唱になる。
「皆………」
二番になると画面が分割されて、そこに慎が加わる。
「♪~」
そしてギャルズ達が加わって、寛太と優花が加わる。
「♪~」
そして最後に、直哉と宮戸島カルテットが加わって、大合唱で全て歌い上げる。
歌い終わると一画面に戻り、愛だけフレームインしてメッセージが流れる。
「圭一。今の悩みに、この歌詞が全て当て填まってる。いい?最後に勝つのは……もう分かってるよね?」
愛がウィンクで再び横に避け、健太がフレームインする。
「圭一くん。一度愛情から背いた僕が言うのも何だけど、史絵さんの愛から逃げちゃ駄目だ!」
そして今度は、燿子と入れ替わる。
「喧嘩番長が、恋の喧嘩に負けてどうすんのよ!?」
次に、娯楽部カルテットと入れ替わる。
『皆、圭一くんの恋を応援してるよ!』
更に艦娘達が、全員フレームインする。
『自分に負けるな!自分を信じろ!』
続いて画面が切り替わり、慎が画面に映る。
「世話の掛かる隊長だよ、全く。もう答えは見えてんだろ?」
そこにギャルズ達が加わる。
「フーミンは待ってるよ!」
「それな、圭一を待ってるんだよ」
「うん、早く行ってあげて」
慎とギャルズ達が画面から避けると、優花と寛太が画面に入る。
「圭一、自分に負けちゃ駄目だよ」
「圭ちゃん。ファイトだよ~」
そしてカメラは、艦娘達に向けられる。
「圭一は、本当に世話の掛かるやつなのです」
「全くだぴょん」
「自分に正直に生きてください。それが貴方らしい」
「何なら押し倒しちゃえ!」
最後に、画面は直哉に向けられる。
「全く、世話の掛かる弟子を持ったものだ。でももう、答えは出てるんだろう?後は、それに向かってまっすぐ進めばいい。あの歌に全てが詰まってる。それだけだ」
そして、画面が黒くなり皆の声で、
『せーの。頑張れ、圭一!!!』
そこで動画が途切れた。
「皆……史絵……俺は決めたぜぇぇぇ!!!!」
そう叫ぶと、学校に向かって走って行った。
学校の文芸部……と言っても、史絵以外は引退した一人だけの部室で、史絵は陰鬱な気分で本を読んでいた。
東京に行くべきか、夢を遠ざけるか……
「はぁ…………」
その時、バタンと扉が開いた。
「史絵!!」
「圭一……」
「史絵、文学勉強する為に、東京行くんだってな!?」
「……まだ決めてなかったけど、地元の学校に行こうかなって……」
「夢を、諦めちゃ駄目だ!」
圭一は、声を振り絞って吠えた。
「高菜師匠のお父さんの下で、勉強できるチャンスなんだろう!?行けよ!」
「でも、圭一と会えなくなるから……」
「行くよ!俺も東京に!」
「は……はいぃ!?」
圭一の宣言に、史絵は絶句した。
「難関に挑戦するよ!それでも駄目なら、高校入試で東京の高校に行くよ!」
「い、今から間に合うの!?特進コースだよ!?」
狼狽する史絵に、圭一は自信満々に宣言した。
「絶対に勝ってやる! 愛は最強だからな!俺は、お前の為なら何でもできる!」
その改めての告白に、史絵の顔は真っ赤になり、ボロボロと涙が溢れる。
「圭一ぃ…………」
「史絵っ!!!」
圭一は史絵を抱き寄せて、力いっぱい抱き締めた……
――――――――
ここからが大変だった。
圭一の両親には、直哉を伴って頭を下げ、私立への編入試験の許しをもらった。
そして、塾に通い始めた。
「何だこれ!?中二の領域かよ!?」
出て来る問題に愕然とするも、圭一は寝る間も惜しんで勉強に打ち込んだ。
息抜きに、暴走族の溜まり場に顔を出す時も、参考書片手だ。
三島ヘッドも、勉強のできるメンバーに勉強を教えさせた。
こうして戦いが始まった。
受験まで後三ヶ月。二月の編入試験までに、統一模試が何度もある。
そこで、偏差値を70台以上に持って行けなければアウトである。
それでも、圭一は頑張っている。
頑張って頑張って頑張っている。
今までの悩みが嘘みたいに、猪突猛進で勉強だけに精を出した。
「すごいですね……お勧めしないって言ったのに」
「それが愛の力なんだよ」
家庭教師役の夏海お手製の小テストで、夏海の思った以上の点数を叩き出すと、
夏海は、その愛の力にある意味呆れるように溜め息を吐いた。
そんな夏海に、結有はふふっと笑って、ポンと肩に手を置いた。
史絵は史絵で、ある決断を下していた。
本命を、偏差値の高い都立高校に切り替えたのだ。
毎日、鎮守府にやって来ては二人並んで勉強して、夜は圭一の家で一緒に勉強する。
史絵の親は母親だけだったが、娘の為に血の滲むような努力をする
お泊りでの勉強も、何度も許可したし、草加家でのお泊りも許可した。
こうして、12月は下旬を迎えようとしていた。