宮戸島の提督と仲間達のお気楽日記   作:SAMICO

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店舗化した武藤レストラン。
その実態は……


熊崎提督がやって来た~南三陸編~

圭一の猛勉強開始から、少し遡る11月末。

 

熊崎准将補は、不知火と共に直哉と薄雲の案内で、南三陸鎮守府の「武藤レストラン」にやって来ていた。

今は12時30分。ちょっと遅めの食事である。

 

 

「おお、ここが噂に聞く武藤レストランだね」

「綺麗な建物ですね」

 

 

武藤レストランの建物は、鎮守府の横に併設されていてバリアフリーになっている。

自動ドアを潜ると、

 

 

『いらっしゃいませぇ』

 

と言う声が響く。

従業員さんが十人くらいはいて、皆ニコニコしている。

 

「おお。従業員さんも雇ってるんだねえ」

 

間隔が広く取られたテーブルに腰掛けると、車椅子の女性がお冷の乗っているトレーを膝に乗せて、こちらにやって来る。

そして、にこやかにお冷をテーブルに置きながら、

 

「ご注文がお決まりでしたら、お呼びください」

 

と言うと、くるっとUターンしてカウンターの方に戻って行く。

通い慣れている直哉達には()()()()()()だが、熊崎提督と不知火は目を白黒させている。

 

「ここは、継続型就労支援作業所《B型》でもあるんですよ」

 

直哉が説明する。

 

継続型就労支援作業所とは、障がい者等一般の就労が困難な者を対象に提供される、仕事の場である。

そのうちのB型は、雇用契約を結ばず、ここで働いている利用者さん達には、工賃が支給される。

 

「ここは、武藤提督が出資して、武藤提督の弟さんが社長として経営してるNPO法人がやってるお店で、武藤提督や艦娘達は名目上ボランティアとして、空いてる時間とかでお手伝いに入るんです」

 

「おお、そうなんだね。これは、地域密着型鎮守府としては、是非参考にしたい一例だね」

「そうですね。障害者手帳を持つ『轟沈扱いの艦娘』も存在しますから」

 

艤装を喪うと、海に浮けなくなる。

艦娘の死亡原因1位は全身打撲による即死だが、2位が溺死なのである。

そう言った不知火自身は、障害者手帳を保持していない。

片目の視力はないものの、もう片方の視力が1.5と、障害者手帳認定される6級以下の基準に満たないのだ。

 

全員が注文を決めると、薄雲がちらっと先程の女性店員を呼ぶ。

すると、ニコニコと車椅子を転がして、注文を取りにやって来る。

 

「足の具合が……悪いのですか?」

 

不知火が躊躇いがちに訊くと、女性はにこやかに、

 

「はい。生まれつきの下肢障害があって、歩けないんです」

「変なことを訊いてすみませんでした。大変でしょう?」

 

申し訳なさそうに言う不知火に、車椅子の女性店員は笑顔を崩さず答える。

 

「もうこの生活に慣れましたから、大丈夫です!」

「そうですか……私は海に浮けなくなった艦娘で……」

「そうだったんですか。でも聞いた話ですと、腕や脚を失ったりした艦娘がいる、と聞いてますから」

「艤装の保護機構の限界を超えると、素体にダメージを受けるんです。かくいう私も、右目は義眼で見えません」

 

不知火の告白に、自分のことのように悲しがると、不知火が冷静に説明する。

そう。不知火も、無傷と言う訳ではなかったのだ。

体の傷は高速修復材で癒えるが、()()()四肢その他は治らないのだ。

高速修復材は、人間の通常治癒の範囲にしか及ばないのだ。

今のところ、ボロ雑巾のようになっても再生するのは、アルティメットいなづまちゃんくらいなものである。

明石は、何れはそのアルティメットいなづまちゃん細胞を再生医療に役立てたい、と日々研究を行っている。

 

「そうだったんですね。海の平和を守ってくださって、有難うございます」

 

車椅子の女性が深々と頭を下げると、不知火は首を横に振る。

 

「今は、『艦娘として』は何も出来ません。お情けで、艦娘登録はそのままになっていますが……」

「それでも、秘書艦として頑張ってるんですよね?」

「はい。熊崎提督に支えられながら……」

 

車椅子の女性は、不知火の左薬指のプラチナ色のリングを見つける。

 

「そちらの提督とは、ご結婚されてるんですか?」

「はい……六月に」

 

不知火が顔を赤らめて頷くと、直哉が口を挟む。

 

鳶沢(とびさわ)さん、こちらが釧路鎮守府の熊崎提督と、秘書艦の不知火さん」

「鳶沢と申します。ご新婚なんですね、おめでとうございます」

「……有難うございます」

「ありがとう」

 

熊崎提督も、鳶沢さんに笑顔を向ける。

 

「それじゃあ、注文をお願いするよ。私はカレーライスセットで、セットのドリンクはホットティ、()()()()()()もお願いね?」

「かしこまりましたっ。ブランデー入りですね?」

 

直哉は、ここから先運転する気はないらしい。

 

「私はホットティで、500円の方の」

 

薄雲の注文に、不知火が不思議がる。

「お食事はよろしいのですか?」

「このお店、ランチタイムからティータイムの間、ドリンクを頼むと、500円でパンケーキが食べ放題なんです」

 

鳶沢さんの説明に、不知火は「なるほど」と頷いた。

 

「では不知火も、同じくホットコーヒーで。パンケーキもお願いします」

「かしこまりました」

 

「では私は、この十三穀米三色丼セットでコーヒーにしようかね?」

「かしこまりました、少々お待ちください」

 

そう言うと、車椅子で戻りながら、

 

「オーダー入りまーす!」

 

と、元気のいい声で注文を厨房に告げる。

 

昼食は、和やかなムードで進んでいた。

周囲を見ると、ランチタイムはサラリーマン等がよく利用していて、賑やかな雰囲気になっている。

 

「儲かってるのかね?」

「熊崎さん、NPO法人ですから、利益は殆ど出てないですよ。値段を見ていただけると解ると思いますが?」

 

そう。どのメニューも、結構リーズナブルな値段で提供しているのだ。

 

「武藤提督の弟さんの晋也さんが、別のところでも会社を経営していて、そっちで利益を出している状況ですね」

「そうなんだね……」

「ほら、常勤……つまり正規雇用の健常者の方もいらしゃるし、厨房には同じく正規雇用のシェフもいますからね?」

「なるほど……」

 

直哉と熊崎提督がそんな会話を交わしている中、不知火と薄雲は無心でパンケーキを食べている。

鳶沢さんが驚くくらいの枚数を食べてから、

 

「ふう、満足です」

「不知火もです」

 

と、ホッコリ顔の二人と熊崎提督を連れて、隣の鎮守府へと向かう。

ランチ代は、熊崎提督が出してくれた。

 

――――――――

鎮守府に入ると、武藤 廉一佐がにこやかに出迎える。

 

「ようこそ。ランチは楽しんでいただけましたかな?南三陸鎮守府を預かる、武藤 廉一等陸佐であります」

「美味しかったよ、ランチは小鉢が沢山ついてくるんだねぇ。熊崎正志陸准将補です」

 

早速、応接室に通される。

その間直哉達は、武藤レストランに舞い戻ってカウンターで駄弁っている、と言い出て行った。

 

応接室では、秘書艦の長門が立ったままで待っており、皆が中に入ると敬礼する。

廃止された階級章に代わって、全部金色の錨に葉っぱで囲んで真ん中に桜の入った(艦これロゴの文字が桜マーク版)バッジが輝いている。特級艦娘検定のバッジである。

不知火には二級……錨マークだけ金色で、後は銀色のバッジが付けられている。因みに一級は、葉っぱが金色に変わる。

 

「南三陸鎮守府秘書艦の長門です」

「釧路鎮守府秘書艦の不知火です」

 

「まあお掛けください」

 

年上だが、階級が下の武藤提督が席を勧めると、熊崎提督が不知火と共に腰掛ける。

 

「遅くなったが、一佐への昇進おめでとう」

「いやはや、数年前には二尉だったのに、あれよあれよという間の一佐ですからなあ」

「いいことだよ。今は艦娘の給料も、提督の階級に連動してるからねえ」

「各艦娘に、階級を設定するのが間違いだった、と言うことですな?」

 

ハッハッハと、二人が笑っている。

 

「しかし、今や武勲も立て難くなっている昨今ですからな。今から新規提督になる尉官は、辛いでしょうなあ?」

 

武藤提督が、髯を弄りながら言うと、

 

「そうだろうね。うちは、不知火との二人家族だからねえ」

「不知火は、提督のおかげで暮らせてます。ありがたい限りです」

 

そう言うと、武藤提督と長門が笑う。

 

「仲良い夫婦で、よろしいことではないかね?」

「そうだぞ、不知火。うちも負けてはいないが……」

 

バタンと扉が開くと、夕立が木曾と一緒に入って来る。

 

「提督、哨戒完了っぽい!」

「こら、お客様がいるぞ。ノックぐらいしろ。申し訳ない」

 

飛び込んだ夕立を、後から入って来た木曾が諌めてから、頭を下げる。

武藤提督と長門も恐縮するが、熊崎提督はハッハッハと笑う。

 

「元気のいい嫁艦達で、いいことじゃないか」

「これ、夕立、木曾、自己紹介しなさい」

 

武藤提督の言葉に、夕立は緩やかに、木曾はビシッと敬礼する。

 

「私は夕立っぽい!」

「木曾だ。提督、俺達は武藤レストランの方を手伝って来るぜ」

「うむ。頼んだぞ」

「それでは失礼するっぽい!」

 

今度は、二人共ビシッと敬礼すると、出て行く。

 

「しかし、三人の嫁艦に囲まれるとは羨ましい限りだなあ。体が保つのかい?」

「いやはや、何と申しますか。嫁艦達が私の為に(グリズリー)級の霊子結晶を取りに行ってくれまして、足腰も元気でやってますわい」

「おお、G級は20代の体力と精力を取り戻す、と言うからね。逆に嫁艦達が大変だろう?」

『はっはっは』

 

 

長門と不知火が顔を少し赤らめる中、二人の提督が朗らかに笑っていた。

 

――――――――

「熊崎さん、どうでした?南三陸鎮守府は」

「うん。福祉の地域密着は、私も目からウロコだったよ。これは是非、北海道でも取り入れたいねえ」

「はい。艦娘にも、こういう福祉を提供したいです」

 

直哉の問い掛けに、メモをしながら答える熊崎提督と不知火。

 

「それでは、今夜の宿までお送りしますよ。薄雲、頼んだよ?」

「了解しました」

 

薄雲に車の鍵を渡すと、熊崎提督が目を丸くする。

 

「もう、自動車免許を持ってるのかね?確かに、任務を続けながら自動車学校に通う艦娘もいるが……」

「一発試験で受かりました。ぶい」

 

無表情でVサインをする薄雲に、不知火も目を丸くする。

 

「一発試験!?自動車学校に通ってないんですか!?」

「はい。直哉の為に頑張りました」

 

その言葉に、熊崎提督は朗らかに笑って、

 

「いやはや、君も艦娘に愛されてるねえ?」

「深く連れ添えばこそ、ですよ。特に電とは、何年来の付き合いですからね。うちの嫁の筆頭格ですよ」

 

そう言うと、少し照れた薄雲が先に業務車に乗り込む。

その様子を微笑ましく見ながら、熊崎提督と不知火も車に乗り込む。

最後に直哉が車に乗り込むと、業務車が発車して熊崎提督が予約した宿へと向かったのだった。

 

 

その夜。

「提督」

「何だい?不知火」

「私、提督との子供が欲しいです」

 

そう。指輪のアンロックは、既に済んでいるのだ。

不知火が浴衣をはだけると、熊崎提督の上に伸し掛かり………右手に持ってるのは、G級の霊子結晶。

 

「し、不知火……!?」

「今夜は不知火が寝かせません」

 

戦艦のような眼光で笑みを浮かべると、G級の霊子結晶を熊崎提督に与えて……

 

 

翌日、仲居さんに、

 

「昨夜はお楽しみでしたね?」

 

と言われるほど、激しく愛し合ったと言う。

 

 

 

 

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