宮戸島の提督と仲間達のお気楽日記   作:SAMICO

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今回もクロスエピソードです。


クリスマスのできごとin土佐②

クリスマス・イヴ。

 

全員大人しく過ごしたようで、皆各部屋で朝食を摂って集合した。

学生組は学生服が正装なので学生服、圭一も慎も普通の学生服を身に着けている。

直哉は、将官の正装である飾緒付き陸上自衛隊第1種礼装で

肩の階級章も、将官用の三本で細かく編み込まれた金色モールに、銀の桜バッジが一つ付けられた、准将補の礼装用階級章である。

艦娘達の襟には、特級艦娘検定徽章が付けられている。

 

「おはよう、皆よく眠れたかい?」

『はーい!』

 

元気のいい皆の声に、直哉はふっと笑みを零すと、

 

「さて、そろそろ迎えが来る時間だが……」

「皆さん、お迎えに来たわ」

 

燿子が、海上自衛隊の第1種礼装で現れた。肩の階級章は尉官の二本で編み込まれた金色モールに桜が一つの、三尉の礼装用階級章である。

 

「お待たせしました、それじゃあ向かいましょう」

「ありがとう、ところで愛ちゃんは?」

 

バスに向かいながら、直哉が声を掛ける。

 

「もう既に式場入りして、乾杯の音頭のスピーチを練習してたわ」

「だろうねぇ。あの若さで仲人になるなんてねえ」

「最初は足立ご夫妻も考えたんだけど、遠方から何度も足をお運びいただくのも悪い、ってことでいずれ結婚するんだし、愛ちゃん達が仲人になることになった、と」

「なるほどね。二人の上官でもある訳だしね?愛ちゃんは」

「そういう事」

「なるほどね」

 

直哉はふふっと笑うと、真っ先にバスに乗り込んだ。

皆バスに乗り込むと、最後に燿子が乗り込んでバスが結婚式場に向かって行った。

 

全員で受付を済ませると、

 

「つけもん!久しぶりだな」

 

と声を掛けられる。同期の足立秋也一佐である。彼も陸自礼装で、肩の礼装用階級章は三本モールで桜バッジ三つである。

 

「ああ、秋也か。そう言えば、四国の警務隊長だったな。よく問題児がなれたな?」

「ばっか、元々北海道の警務隊副隊長だっつうの」

「そう言えばそうか。何でも、祝辞はお前さんなんだってな?」

「そうなんだわ」

 

その言葉に、幕僚総監足立昭彦陸将夫妻がやって来る。足立総監は苦い顔をしている。

 

「私は今から心配だよ。秋也が何を言い出すか、判ったものではない」

「ばっか、円城寺に一応原稿はチェックをしてもらったよ。アドリブ入るかもしんねえけど」

「バカモン、私はそれが心配だと言っているのだ」

「まあまあ。()()これでも一佐ですから、よっぽどのことはしないでしょう」

 

そんな足立を、直哉が宥める。

 

艦娘達は艦娘達で、中学生組は中学生組で固まってワイワイ話をしている。

 

「ひでえな」

「まあ、日頃の行いでしょうな?」

「おいこら、円城寺」

「うむ、円城寺君。うちのバカ息子を頼んだぞ」

「了解いたしました」

 

お手洗いを済ませた円城寺がやって来て、しれっとそう言うと、秋也は文句を言い、足立総監は満足そうに、改めて息子の手綱を曳くように頼む。

警務隊からは、この二人が招待されたのだ。

 

「先輩!先輩のところは皆全員招待ですか?」

 

大村奈々海がやって来た。

 

「何だ、大村も来てたのか?だったら、一緒に来ればよかったじゃないか?」

「いやあ。招待は同期で親しかった人間、と言うことで、気仙沼からは私だけだったので、観光も兼ねて何日も前から四国入りしてたんですよ」

「なるほどね。郷里の同期と言うと、後は……」

 

そう考えていると、

「先輩、おはようございます!」

「高菜、元気そうだな?」

 

七原夫妻がやって来た。秋奈はもう臨月で、マタニティドレス姿である。

「七原に師匠、久しぶりだねえ」

「うむ」

「七原は大丈夫だったのかい?」

「あはは。これで、今日出産とかだったら洒落になってないですけど、予定日は来月頭なんで、まあ大丈夫でしょう」

 

 

暫し談笑していると、式場の係員に案内されてチャペルに入る。

宮戸島の愉快な仲間達は、新婦側の席に案内される。

 

結婚式は、翼のウィットに富んだ司会で無事終了し、披露宴になる。

披露宴会場もクリスマス色一色で、トナカイの絵等が飾られている。

各テーブルにも、小さなツリーが飾られている。

 

宮戸島軍団は2テーブルに分けられ、叔母の優花とその婚約者の寛太は、親戚席に行く為、

直哉と艦娘達と圭一&史絵で1テーブル、慎にギャルズ達とめぐみで1テーブルである。

 

「花梨さん、とっても綺麗だったのです」

「霊子がとっても溢れてた式場だったぴょん」

「人間同士でもああやって輝くんですね…………」

「子日もウェディングドレス着たい」

 

新婦の家族席を見ると、紗花がマタニティドレス。妙高四姉妹と扶桑山城は、お揃いの和服に身を包んでいる。

 

「和服も良かったのです」

「でもうちにはないぴょん」

「そうですね……」

「直哉、買って?」

 

子日のお強請りに、直哉はハハッと笑って、

 

「仕方ないなあ、分かったよ。帰ったら呉服屋さんに行こうな?」

『わぁい』

 

圭一と史絵はそんな姿を見ながら、

 

「史絵の和服姿見たいな?」

「でもうちも和服が……」

 

なんて会話を聞いていた電達が、

「直哉、史絵のもクリスマスプレゼントで買うのです」

「うーちゃん達のボーナスは多かったぴょん。直哉のボーナスはもっと多いぴょん」

「そうですね、圭一の夢を叶えてあげるべきです」

「そうだよ、それで帯回しをするの」

 

子日はどっかズレている。

 

「帯回しは駄目だけど、どれ、宮戸島軍団のお呼ばれ用に用意しておくかね?ほら、後三年で愛ちゃんと健太くん結婚だろう?深海棲艦化して、身分が成人になってしまったから。もちろん男子達の礼服も用意してあげるかね?クリスマスプレゼントで」

 

「おお、直哉は太っ腹なのです」

「いやあ、今回の移動費が割と浮いたからね」

 

軽く肩を竦めると、式次第が始まる。

 

「さて、披露宴でも引き続き司会を務めさせていただきます。新郎新婦入場いたします」

 

仲人である健太と愛、それに招待客が見守る中、二人がタキシードと真っ赤なウェディングドレスで入場して来て始まる。

 

「ふむ。タキシード姿の郷里も、意外になかなか様になるな」

「なのです」

 

後輩の晴れ姿に、少々毒の籠った賞賛を口にすると、電も同意する。

 

「凛々しくてカッコイイぴょん」

「石器時代の勇者が、文明時代の勇者になりましたね」

「うん」

 

カッコイイおじさんにお目々キラキラの卯月に、とんでもない暴言を放つ薄雲に、同調する子日。

 

 

「タキシードもいいな。花梨さんも綺麗だ。俺達もクリスマスにしような?」

「圭一、気が早過ぎます。後五年待ってください」

「だよなー。早く史絵と結婚したいぜ」

「…………もう」

 

圭一もタキシードに憧れて、もう結婚の話をしている。

史絵は顔を赤らめながら、満更でもないと言う顔をしている。

 

「それでは、乾杯の音頭を、土佐鎮守府司令官で仲人でもある笹野 愛一佐にお願いいたします」

 

翼の紹介に、愛はグラスを持って立ち上がるとマイクまで向かう。ガッチガチに緊張している。

 

「愛ちゃん、ガッチガチに緊張してるのです」

「だろうねえ」

 

直哉と電が、小声で話している。

 

「ただ今ご紹介にあずかりました、新郎の剛さん、新婦の花梨さんと同じ職場の土佐鎮守府司令官の笹野 愛でございます」

 

深々と頭を下げると、

 

「このような若輩者が僭越(せんえつ)ではございますが、ご指名いただきましたので、乾杯の音頭を取らせていただきます。剛さん、花梨さん、並びにご両家のご親族の皆様には、心よりお祝いを申し上げます。それでは、乾杯の音頭を取らせていただきますので、ご唱和をお願いします。お二人の末長いお幸せと、ご両家並びにご臨席の皆様のご健勝とご多幸をお祈りいたしまして、乾杯!」

 

『乾杯!』

 

一同、コップのお酒やジュースを空けると、拍手が巻き起こる。

愛は、一礼して仲人席に戻って行く。

 

 

「それでは、艦娘と提督を統括いたします、四国地区警務隊長の足立秋也一佐より、祝辞を述べさせていただきます」

 

そう言うと秋也が立ち上がり、原稿を取り出して、マイクの所に向かう。

新郎新婦と両家の家族が立ち上がる。

 

「えー、只今ご紹介いただきました、お二人の勤務先の上司の上司に当たります、足立でございます」

 

そう言うと、一礼する。

足立総監にとっては、ヒヤヒヤものの時間が始まるだろう。

 

秋也は二人に向くと、

 

「諸先輩方を前に、誠に僭越ではございますが、ご指名を賜りましたので、一言お祝い申し上げます。剛君、花梨さん、ご結婚おめでとうございます。そしてご両家ご親族の皆様、心よりお祝い申し上げます。本日は、この素晴らしい披露宴にお招きいただき、誠に光栄に存じます」

 

そして、両家に向き直り一礼しながら祝辞を述べる。

 

「皆様、どうぞご着席ください」

 

秋也の言葉で、一同着席する。

そして、原稿をポケットにしまい込む。

 

直哉が自衛隊幹部席を見ると、足立が渋い顔をする。そして秋奈が何か言うと、苦笑いに変わるのをにこやかに見ていた。

その秋也の、長くも心の籠った祝辞が終わると、秋奈と紗花がそれぞれの夫に付き添われて、そっと会場を出て行くのが見えた。

直哉はすっと立ち上がると、めぐみの横で、

 

「めぐみ先生、多分陣痛でしょうね?」

 

そう言うと、めぐみは頷いて会場からそっと抜け出す。

 

 

そのまま、ジュースとビール瓶を持って新郎新婦仲人席へと向かう直哉。

 

「おお、先輩。ありがとうございます」

「結婚おめでとう。君に限っては戦死の心配はないから、安心して花梨さんを託せるんじゃないかな?羽佐間准将も」

 

ビールを注ぎながら「まあ飲みなさい」と、一気飲みさせてそれを見ると、

「郷里君には、グラスじゃなくてジョッキのほうが良いかな?」

「はっはっは。皆さんに注いでもらえるよう、今日はグラスで十分です」

「儀礼服も様になっていたが、タキシードも良いね」

「はっはっは。馬子にも衣装、と言うやつですな」

「幸せそうで何よりだ」

 

そう言うと、今度は花梨の前にやって来る。

 

「人間として、私の想像以上に成長したね」

「いえ。私なぞ、まだまだ未熟です」

 

ビールを注ぎながら語る直哉。

 

「いやあ、未熟じゃない。半熟と言ったところかな?郷里くんと一緒に、花梨も隣の若人を支えてやってくれ」

「はいっ。死んでしまった、葵の分も生きると決めています。それまで愛ちゃん提督を支えます」

「うん、それでいい。夫婦は支え合うものだからね」

「ところで。紗花さんと秋奈さん、大丈夫ですか?」

「めぐみさんも居るから大丈夫だろう。足柄と妙高も行ったし」

「そうですね……無理なお願いをしてしまいましたね」

「いやあ。これで無事生まれたら、クリスマスにウェディングにバースデーと、めでたいことだらけになるさ」

 

申し訳なさそうにする花梨を慰めてから、招待した花梨の同期がやってくるのを見て、敬礼する同期に答礼しながらその子達にビール瓶を渡して、

「禁酒解禁で飲みが足りないようだ。任せるよ」

と、ニヤッと笑ってから仲人席へずれる。

 

「やあ、愛ちゃん。大任ご苦労さま」

 

同期の女子達に、どんどん飲まされている花梨を尻目に、愛に声を掛ける。

 

「あはは、一つポカしちゃいました」

「『全員起立』を忘れてたね?まあ良いじゃないか、司会がどんどんやらかすんだから」

「あははっ」

 

そう言いながら、グラスにオレンジジュースを注ぐ。

 

「深海棲艦化した健太には、ビールが良いかな?」

「いいえ、ジュースで。ビールは苦くて嫌い、って言ってました」

「そうか。今度ゆっくり、酒の良さを教えねばならないな」

「あまり飲まさないでくださいよ。深海棲艦化して成人になったとは言え、中学生ですから」

「ははは、努力するよ」

 

釘を差すのを忘れない愛に、笑いながら健太の前にずれる。

 

「師匠、将官昇進おめでとう御座います」

「まあ、今日は結婚のほうがおめでたいよ。ジュースでいいかい?」

「はいっ」

「一番弟子の健太は成人だから、後三年で結婚式だね?()()()で」

「あははは………」

「その時には、もちろん駆け付けるからねえ」

「ありがとうございます」

 

「えー、それではこれより、土佐鎮守府空母二人娘による、艦載機曲芸飛行を行います」

 

その翼の言葉に、席に戻る。

 

伊勢と鳳翔が同時に矢を放つと、艦戦が曲芸飛行をして、ハートのスモークを作る、と言う演出が為される。

皆万雷の拍手をする。

 

『改めまして、おめでとう御座います!』

 

伊勢と鳳翔が、祝福の言葉を述べる。

 

その後は出産報告があったり、ビスマルクとアイオワの漫才や、大井北上の居酒屋事件暴露話等、余興は続いている。

 

異例づくめの結婚式・披露宴がお開きになると、直哉を先頭に立ち上がり、会場を出て行く。

 

新婦側は妙高と眞一郎が、新郎側が鐵太郎と小夜子が、新郎新婦の横に並んでお見送りである。

 

「結婚と出産、おめでとうございます」

「うむ、ありがとう」

「名前はこれからですか?」

「紗花がもう決めててな、女の子で眞梨紗にするそうだ」

「眞梨紗ちゃんですか。もしかして、両親と姉で1文字ずつ?」

「ご名答」

 

笑う直哉と眞一郎。

 

 

それぞれから感謝の言葉を受けると、直哉はロビーに皆を集合させる。

 

「愛ちゃんには、LINEで連絡して二次会は遠慮させてもらうことにしたよ。ここからは、一度戻って着替えたらカップルで自由行動をしていいよ。飲酒と問題だけは起こさないようにね?」

『はーい!』

 

 

皆のクリスマスは、ここから始まるのだ。

 

 




次回からはそれぞれのクリスマスの過ごし方になります。
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