慎と望、それに奈緒子、櫻子の四人は、それぞれの家から荷物を持って来る。
5LDKの大きな家だが、宮戸島の侵攻以来買い手が付かなかった為に、慎の父親が息子用に持っていた物件だったのだ。
住むと決めてから内覧もおかしいが、リフォーム済みでオール電化のこの家。
20畳のLDKにはダイニングテーブルとリビングソファーが運び込まれており、既にテレビも鎮座ましましている。
キッチンの家電も、既に新品が鎮座しており、ビルトイン型のIHコンロや食洗機等、最新のものを揃えてある。
これは、慎の父と直哉が酒飲み仲間でたまに居酒屋で飲んでいる仲なのもあって、直哉の
それに、全員では入れないものの広めのお風呂、洗面室にトイレ、LDKから出入りできる一部屋の10畳間。
そして二階には八畳間四部屋の居室があり、そのうちの一つには屋根裏部屋への階段がある。
既に慎が、大家の息子特権でこの部屋に決定しており、旅行中に家族の手により荷物を運び終えている。
「わぁ、どの部屋もチョー広いし綺麗」
「それな」
「うん」
早速部屋決めのじゃんけんを行って、荷物の運び込みが始まる。
一階の10畳和室は寝室に決まり、皆各々の布団を運び込む。
「おっす!」
「手伝いに来ました」
「手伝いに来たよ」
「おはよぉ~」
圭一と史絵、それに寛太と優花がやって来ると、人数も増えて賑やかになる。
とは言え、引っ越し屋さんがやってくれる為、皆リビングに集まってソファーで寛ぐ。
「ふっかふっかで良いソファーだな、流石師匠」
慎が、ふふっと笑いながら凭れ掛かっていると圭一が、
「その師匠なんだが、大晦日の食事会はここでやんね?って言ってたぜ」
と、直哉の伝言を伝える。
「いいな。八人掛けテーブルだし、ソファーもあるから何とかなるだろ。どうせ、飯は師匠の奢りなんだろ?」
「だぁな」
二人の不良学生はふふっと笑うと、辺りを見回す。
ダイニングテーブルでは優花と寛太が一緒に宿題をやっており、史絵は望の勉強を見ている。
そして奈緒子と櫻子は、大型テレビでゲームをやっている。
おそらく、この慎ハウスが二つ目の溜まり場になるに違いない。
――――――――
大晦日。
鎮守府では、大掃除が始まっていた。
高菜家の大掃除は、既に前日に済ませており、鎮守府の大掃除には圭一と愉快な仲間達がやって来ている。
「こうやって、愛たちも大掃除してんだろうな」
圭一は、感慨深げに二階の窓を磨いている。
そして艦娘達も、工廠から倉庫を大掃除している。
今までやっていた大掃除出撃は、不要と判断されて廃止された。
圭一と史絵以外の面々は、慎ハウスの大掃除の手伝いに向かった為、
鎮守府の大掃除は、直哉と史絵と圭一の三人で行っている。
史絵は漸く、月刊誌連載の原作担当の「小さな提督と艦娘の物語」の三回分のプロットを送り終えた為、自身の入試に専念できるようになった。
圭一は塾にも通い、自分でも勉強して、まさかの期末テストトップテンに名を連ねていた。
それでも夏海曰く、まだまだ油断するな、と言うことである。
「おーい、師匠。応接間の掃除終わったぜ―」
「ああ、ありがとうね」
圭一が応接間から降りて来ると、直哉は普段使っている机の掃除をしている。史絵は、エプロンに三角頭巾、と言うお掃除仕様で蜘蛛の巣払いをしている。
「工廠の掃除終わったのです」
「了解」
電達も、鎮守府の庁舎に戻って来る。
そこからは、賑やかに和気藹々と掃除になる。
そして、慎ハウスの掃除の面々も戻って来ると、皆待望の
賞与授与式である。
電の号令で、艦娘達と圭一と愉快な仲間達は二列になって並んでいる。
「それでは、仕事納めの会を始めます。電、年末賞与です。ご苦労様」
「ありがとうなのです!」
電に賞与袋が手渡されると、電は初売りで何を買うか期待が膨らむ。
「次に、卯月、年末賞与です。ご苦労様」
「ありがとうだぴょん!」
卯月も、新しいゲーム機を買おうか考えている。
「次に、薄雲、年末賞与です。ご苦労様」
「有難うございます」
いつもの、抑揚のない声で受け取る。
「次に、子日、年末賞与です。ご苦労様」
「わぁ、こんなにいっぱい!ゲームの課金しようっと!」
初めてもらう賞与に、目をまん丸くさせる子日。
最近スマホゲームにハマっており、パズルゲームを日夜やっている。
とは言え、高菜家は寝室スマホ持ち込み禁止の為、布団に入るのが一番遅いのが子日である。
「さて、ここからはちょっと早いお年玉だね。原 圭一君。スタートラインまで後もう少しだ、頑張ってね」
「うっす」
受験に打ち勝つのがゴールじゃない。
圭一は、男子ばかりの特進コースで生き残って行かなくてはならないのだ。
笑顔で受け取るが、今年は早速開けて中を確認したりはしない。
「草加史絵さん。「小さな提督と艦娘の物語」連載開始おめでとう。また困ったら、広報を通じて協力できるところはするからね?」
「はいっ、ありがとうございます」
史絵も、お年玉を笑顔で受け取る。
「次、富永寛太くん。優花ちゃんと仲良くね」
「はいっ!」
寛太も笑顔で受け取る。
「次、西野優花さん。いつも明るく元気でね」
「はぁーい」
「優花ちゃん!開けるのは後で!」
受け取って開けようとするのを、寛太に止められる。
「齊藤 慎くん、三代目の名誉隊員隊長、よろしくね?」
「圭一達も旅立ったら、少し寂しくなるっすね」
「そうだね。でも、圭一達にとっては大事なことだからね。笑顔で送らないと」
「そっすね」
そんな会話を交わしながら受け取る。
「横澤 望さん、入試、頑張ってね?最悪浪人しても、高校行くんだよ?」
「マジ頑張ってる!ふみえもんが勉強教えてくれて、最低ランクの次の高校の射程圏内に入ったよ!」
自信満々に言うが、何とか滑り止めを確保した状態である。
「平岩奈緒子さん。慎と仲良くね」
「それな」
いつもの口癖を言いながら受け取る奈緒子。
「田中櫻子さん。あんまり羽目を外さないようにね?同居生活」
「うん」
同じく、いつもの口癖で受け取る櫻子。
それから全員の前に戻ると、皆を見回して、
「本時刻を以て、2019年の全ての任務を完了したことを確認した。ご苦労様」
「全員敬礼!」
電の号令で、全員がビシッと敬礼する。直哉も答礼する。
「直れ!」
「今年は、圭一達の彼女達も鎮守府にやって来て、一層賑やかな年になったと思います。来年は圭一と史絵は東京に巣立って行きます。そしてギャルズ達は、高校生に
パン!
「お疲れ様でしたー!」
直哉の言葉に、
『お疲れ様でしたー!』
と、皆も挨拶する。
直哉達は、鎮守府を施錠してから一旦高菜家に届いたおごちそうを持って、皆で慎ハウスへ向かう。
各自のグラスにジュースやお酒が行き渡ると皆で、
『かんぱーい!』
と、大晦日の夕飯が始まる。
「いけ!やれ!アッパーだ!」
「そこ!ぶっ潰すのです!相手のガードが下がってるのです!」
「ああ、バカ!攻めどきだっつうのにハゲ!」
「いや、スキンヘッドだからな?あれ」
直哉と電と圭一と慎は、ダイニングテーブルで持ち運び可能の小さいテレビで、年末特番の格闘技を見ている。
リビングの大きいテレビでは、下町という芸人コンビと仲間の芸人達の、年末恒例の笑ってはいけないシリーズを見ながら、女子達と寛太は大笑いしている。
『あははははは!!!』
皆ご馳走を食べながら小休止したり、テレビの移動をしたりして、好き勝手に過ごしている。
ゴーン ゴーン
除夜の鐘が鳴り出すと直哉が、
「そろそろ行こうか?」
『はーい!』
宮戸島にある五十鈴神社に、お詣りに出掛ける。
一同ぞろぞろと五十鈴神社に向かうと、それぞれ祈願をして圭一と史絵、あと望には皆で合格祈願の大きなお守りを買ってプレゼントした。
「さて、ここで解散だな。皆今年もよろしくね?」
『はいっ!』
「行こうぜ、史絵」
「はい」
圭一と史絵は圭一の家で過ごすらしい。最初に手を取り合って帰って行った。
「かんちゃん、うちでおそば食べよぉ」
「そうだね」
ぎゅっと腕を組んだ優花に、寛太が頷くと帰って行く。
「帰ったら、イケメンアイドルのコンサートテレビで見ながら蕎麦だね?」
「それな」
「うん」
「そうだな」
慎とギャルズ達も別れて行く。
そして家に帰ると、スマホに大量のことよろメールが入っている。
防大の同期や、同級生達からのメールである。
それから、それぞれメールを返し終えると、五人で年越しそばを食べて眠りに就く。
残念なことに、仕事始めは四日からだが、
2019年が終わり、2020年がやって来た。
シーズン2無事終了!