翌日、会議室に艦娘の一同が招集されていた。
「……と言う訳で、艦隊を二分して出撃させることにした」
直哉は、海図を出しながら説明を始める。
艦娘達は、着席して説明を聞いている。
迷宮要塞は、その名の示す通り海域が迷路になっていて、一艦隊だけでは攻略が不可能とされている。
そこで、難易度の高い海域を直哉達宮戸島艦隊が担当し、
比較的難易度の低い海域を、浦の星艦隊が担当するところまでは決定した。
「……子日」
「なあに?」
「子日には、浦の星艦隊に同行してもらいたい」
その直哉の言葉に、子日が首を傾げる。
「何で?」
その問いに、電が子日に笑顔を向ける。
「子日も、そろそろ戦術を覚えてほしいのです。ルビィちゃんの指揮を見ながら、自分で戦況を見極める、と言うことも覚えて欲しいのですよ」
「うん、わかったよぉ」
電の説明に子日は笑顔で頷くと、霞の隣に座る。
「皆、よろしくねぇ」
「よろしくお願いね、子日」
霞も笑顔を返す。
ルビィは、直哉の脇に控えている。
「ルビィの艦隊は、西から攻略します」
ルビィが海図を示すと、子日を含めた艦隊の艦娘が頷く。
直哉がその言葉に頷くと、海図を示す。
「電の敵情偵察の結果、東側の防御が厚いと推測される。その際、宮戸島艦隊は陽動作戦を行って、敵の攻撃を惹き付ける。その間に、ルビィ艦隊が西側から攻略する作戦を取ろうと思う」
その直哉の言葉に、コクリと電達が頷いた。
「霞達は、ルビィの作戦指示を受けながらその場で判断し、迷宮要塞を攻略してもらいたい」
「はいっ!」
霞が起立して敬礼すると、足柄と潮と響と子日も立ち上がり敬礼する。
――――――――
「皆!無事に帰って来てね!」
ルビィが元気に手を振って見送る中、直哉はモーターボートのエンジンを始動する。
直哉が電に視線を向けると、電は頷いてザザーッと水上を走り始める。
それに付き従うように薄雲、子日が出港して行く。
直哉も、モーターボートでその後を追い掛けて、東側から回り込んで出撃して行く。
――――――――
電達は、東側から回り込むと、迷宮要塞の付近までやって来ていた。
直哉はある程度近づいたところで、モーターボートを停める。
迷宮から、深海棲艦がワラワラ出て来る。
「それじゃあ、各自派手にやろうか?」
『はいっ!!』
直哉はそう言うと、ヘッドセットを取り付けて、腕を組んで戦場を見据える。
多数の深海棲艦がやって来て、襲い掛かる。
「行くのです!」
電の号令で、卯月と薄雲がザザッと前進する。
敵深海棲艦の砲火が、雨霰のごとく降り注ぐ中、素早く躱しながら砲撃で反撃する。
電も前に出ると、砲撃を加えながら陣形を指示している。
「とにかく大暴れするのです!」
『おー!』
電はそう言うと、不敵な笑みを浮かべて一気に前に踊り出る。
敵ル級の群れは、電に主砲を向ける。
主砲を発射すると、電の周りに水柱が次々と上がるが、電はその俊敏さを生かして躱し続ける。
「まだまだ甘いのです」
電が戦場を掻き回している間に、薄雲と卯月は魚雷を発射する。
丁度、水柱で二人の姿が見え難くなっている間に発射した為、ル級は魚雷の存在に気づいていなかった。
「!!!!」
ズガァン!
ル級の足元から立つ水柱と同時に、ル級の何体かが沈んで行く。
それでも、ル級はワラワラとやって来る。
それと同時に、ヲ級が戦場に到着して、次々と艦載機を発艦させて行く。
「電の本気を見るのです!」
電は、
「ソコダ」
そんな声が聞こえた途端、砲撃音と共に電の身体が爆発して、電はバックステップを取ってザザーッと退がって行く。
奥から出て来たのは、戦艦水鬼だった。
「……オマエタチハココデシズムノダ」
「くっ……強いのです」
電は、中破程度のダメージを受けていたが、それよりも問題は、対空攻撃が止んでしまったことである。
電の迎撃をすり抜けた艦爆が急降下して、卯月と薄雲に襲い掛かる。
「くっ!!こっちに来たぴょん!」
「対空迎撃です、急いでください」
卯月達が対空迎撃するも、撃ち漏らした爆雷や魚雷が、卯月達に襲い掛かる。
必死に躱そうとするも、至近弾を食らって、二人共中破状態になってしまう。
「うっ……!」
「まずいぴょん!このままじゃ……」
その状況を、直哉は冷静に見ていた。
「薄雲、三式弾装填。80センチ砲一門発射、目標、上空」
『了解です』
アンカーを下ろす暇が無いので、卯月が後ろから抱き付いて、仰角一杯で
二人の体が腰まで沈み込んで、水柱を上げながら砲弾はぐんぐんと上空に向かい、炸裂した。
上空にいた全ての航空機が、その広範に飛び散った破片に直撃され、海に叩き落とされて行った。
「電、一旦後退」
『了解なのです』
電も、牽制射撃をしながら一気に後ろに退る。
戦艦水鬼も、アイキャンフライ砲を警戒して追撃を加えようとしない。
十分な距離を取ったところで、直哉は電達に携帯用高速修復材を使って、小破まで修復して行く。
「助かったのです」
「ありがとうだぴょん」
「助かりました」
三人がそれぞれ頭を下げると、直哉はニヤリと笑った。
「いいさ、私達の作戦目的は突破ではないからね」
その言葉に、陽動だということを思い出している三人。
見ると、西側からも深海棲艦が補充されている。
「私達が暴れれば暴れるほど、敵はこちらに集中する、と言うことだが……」
直哉は、この分厚い陣容に、如何に敵を惹き付けながら轟沈艦を出さないか、考えていた。
「仕方がない、これを使うか……」
直哉は、軍服のポケットに入っていたケースを取り出すと、中に入っていたカプセルを10個、海へと投入する。
カプセルは、海水を吸い込んでムクムクと大きくなり、
「こ、これは……?」
引き攣った笑いを浮かべている電に、直哉はしれっと答える。
「量産試作型いなづまちゃん改二、だそうだ」
「おー、皆電とそっくりだぴょん」
「そうですね」
卯月と薄雲は、いなづまちゃん達をペタペタ触りながら感想を言っている。
『おさわりは駄目なのDEATH』
二人を注意しているいなづまちゃん改二を見る電は、頭が痛くなる思いだった。
「何で電をモチーフにするのです?」
「さぁ、明石に聞けば良いんじゃないかな?」
二人は肩を竦めて、お互い顔を見合わせる。
こうして、第二ラウンドが始まった。
いなづまちゃんずが対空を担当している間、三人の艦娘はダンスを踊るように、綺麗に水上で敵の砲弾を躱しつつ、
敵陣まで肉薄して行く。
とにかく集中的に空母を狙い、対空部隊のいなづまちゃんずが、次々に前線に投入されて行く。
戦艦部隊の攻撃を躱しながら、ちょっとずつ後退して行く。
じわりじわりと後ろに退がって行く……
追撃を加える戦艦水鬼は、それに釣られるようにじわりじわりと前進して行った。
その間に警戒陣に組み直した電達は、ゆっくりと後退して行く。
戦艦水鬼達が追撃を緩める度に、魚雷発射で攻撃を加える為、
深海棲艦達も追撃を緩めることができなくなった。
戦闘は膠着状態のまま一時間、二時間と経過して行き、朝から昼間、そして昼間から夕方に移ろうとしていた。
それが直哉の狙いだった。
「夜戦突入!」
夜目を持っている電といなづまちゃんずは、一気に攻勢に出る。
「電の本気を」
「見るのDEATH!」
一気に前に躍り出ると、魚雷を乱射し始める。
次々と倒されて行く、戦艦や空母達。
そして、同じく夜目を持っている戦艦水鬼が前に躍り出て来た。
「勝負なのです」
「イイダロウ」
電と戦艦水鬼の戦いが始まった。