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注:この物語には川内さんの登場予定はありません。
「よし、長門を旗艦に艦隊連結。全員抜錨、
『おーっ!!』
高菜二佐の掛け声に、艦娘達の声が響き渡った。
逃げて来る夜釣り船が近づいてくる中、太陽は沈み切った。
空は青紫色になり、そして暗くなって行く。
ル級数隻と、駆逐艦の艦隊が追い掛けて来る。
「卯月、お前は後ろから皆に従いて来るだけでいい!出過ぎるな!」
「わかったぴょん!」
震えが止まらない卯月に、先頭を切って海を滑っている長門が、ちらっと後ろを見て声を掛ける。
「うーちゃんは、戦場に慣れればいいっぽい」
「いざとなったら私達が守る」
「敵艦見ゆ!」
続いて声を掛ける、夕立に木曾。
その直後、同じく先頭を長門と並んで滑っている電が、敵艦をはっきりと視認する。
電の
「よし。長門、漁船が最短射程距離に到達したら、主砲発射!当たらなくていい!」
「どういうことだ?」
「いやあ。相手は、漁船を追い回すのに夢中だ。夜目のいい電が視認しているなら、こっちが最先手を取れる。頼りにしてるよ、
「了解だ、主砲斉射!!」
不敵な笑みを浮かべる長門は、そこで進撃を止め主砲を発射する。
放物線を描いた砲弾は、敵の真ん前に着弾する。
ザッボォン!と水飛沫を上げて、深海棲艦達に降り注ぐ。
漁船はこちらまで到達して、船員は陸へ逃げて行く。
相手の動きが止まった段階で、電が夜目で着弾観測をする。
「長門!もうちょっと右で、仰角5度」
「了解した!」
再び腰を落とし、全身に力を込めて主砲を発射する。
「――――――!!!」
砲弾が直撃した
「次は俺様の出番だぜ!」
マントを翻し前に出ると、木曾は六連装酸素魚雷を、相手にばら撒く。
それと同時に高菜二佐の、
「夕立、突っ込め!」
と言う言葉に、卯月も、
「うーちゃんも突っ込むぴょん!!見てるだけじゃ嫌だぴょん!」
と訴える。身体はガタガタと震えて顔は真っ青だが、決意を持った瞳に、高菜二佐は頷いた。
「やれ!夕立と踊って来い!」
「ぴょん!!」
「電も突っ込むのです!」
「高菜二佐!何を考えている!?卯月ちゃん、駄目だよ!!」
卯月は、高菜二佐の指示に強く頷いて、夕立と手を繋いで敵陣に突っ込んで行く。
電も、それに追従するように突っ込んで行く。
そして、悲鳴を上げるような武藤提督の声。既に泣きそうである。
「最高にステキなパーティしましょ!!」
「レェェェッツ!ナイトダァァンス!」
「ぷっぷくぷー!!」
ばら撒かれた魚雷で、行動範囲を絞られた敵艦に、駆逐艦トリオが主砲を乱射して行く。
電はアクロバティックに、持っている12.7㎝連装砲D型改二で、敵艦に向かって乱射する。
夕立は、華麗にダンスを踊るように、12.7㎝連装砲B型改二で、敵をスナイピングして行く。
ガチガチに震えた卯月も、飛び込もうとした瞬間、戦艦ル級の主砲が目の前にあった。
「―――――――――!!!」
「ぁぁぁぁぁぁっ!!!」
顔面を主砲が直撃し、勢い良く後頭部を海面にぶつけて、数回転しながら派手に大転倒する卯月。
「卯月ちゃぁぁぁぁぁん!!!」
「おいおっさん!暴れるんじゃない!!うわぁぁっ!」
飛び込んで、救いに行こうとしている武藤提督を、高菜二佐が必死で羽交い締めにする。
そして、二人仲良くモーターボートから投げ出される。
そして、ボートは転覆する。
ざっぼぉぉん!!!
「卯月!」
「卯月ちゃん!?」
「大丈夫!卯月は立ち上がるのです!」
長門が叫びながら前を見遣り、夕立も悲鳴のような声を上げて後ろを振り向くと、電の信頼に満ちた声と共に、
大破状態の卯月が、ゆっくりと立ち上がった。
「い……痛いぴょん……でも、怖さも一緒に吹っ飛んじゃったぴょん!」
キッと深海棲艦を睨むと、飛び込んで魚雷を放つ。
「――――――!!」
その魚雷がヴァイタルパートに直撃すると、ル級は海へと沈んで行った。
「うーちゃん、その調子!!一緒にダンスしましょ!!」
「分かったぴょん!」
転覆したボートにしがみ付いた二人が見たのは、綺麗な月夜に華麗な舞を踊る、五人の姿だった。
「主砲斉射! ル級はどんどん潰してやる!」
長門は、旗艦として後方から超長射程の主砲で、アウトレンジ砲撃して行く。
「俺様の魚雷は、一味違うぜぇ」
同じく前に突っ込んで行った木曾も、自慢の雷装でどんどんル級を沈めて行く。
「ソロモンの悪夢、見せてあげる!」
「当たれぴょん!!」
真っ赤な瞳の夕立と卯月が、二人で踊りを踊るように、主砲を乱射して行く。
まさに、夕立が卯月をエスコートしているかのような……
最後に、電が華麗なダンスで敵を仕留める。
卯月の仕留め掛けから、狙い撃って叩き潰す。
「綺麗だ……」
「でしょう?卯月は、壁をぶち破ると思っていましたよ」
ボートにしがみ付いたまま、見惚れるようにその様子を見ている武藤提督に、
同じくボートにしがみ付いて、それを見ている高菜二佐。
「そうさ、卯月は――」
――強い子だもんな。
ふっと、笑みを零す高菜二佐だった。
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「卯月ちゃん!大丈夫!すぐに緊急入渠させるからね!?」
深海棲艦を全滅させた後、長門に救助されてボートに乗り直したところで、帰って来る駆逐艦トリオと木曾の姿に、既に涙ながらに出迎える武藤提督。
二人共びしょ濡れで、一張羅が台無しである。
卯月は、夕立と電に曳航されて、南三陸鎮守府に戻って行く。
それを守るように後ろから木曾と長門、それとモーターボート。
南三陸鎮守府に戻ると、すぐに高速修復材での修復が始まる。
「いやあ、そこまでしてもらわなくても」
と言う高菜二佐の言葉に、
「高菜二佐、今回はうちの管轄で発生したことだから、うちでやらせてくれい」
と言って聞かなかったので、ご厚意に甘えることにした。
「へっくしっ!!」
「高菜二佐も着替えるのです」
電が、車に置き忘れていたクリーニングしたばかりの常装を持って来ると、高菜二佐も鎮守府庁舎を借りて着替えて来る。
その間に、武藤提督も作業服に着替える。
卯月が治療して戻って来ると、
「整れぇつ!」
と高菜二佐が号令を発し、埠頭に一列に並ぶ艦娘達。
「艦隊連結解除!今日のMVPは卯月だ!」
『おめでとー!!』
皆の拍手に、照れる卯月。
その様子を満足そうに眺めてから、いつもの態度に戻る。
「さあ皆、運動後のティータイムと行こう」
『おーっ!!』
その日は、夜遅くまで艦娘同士の修好を深めて行った。
途中からは、本当にナイトダンスパーティになっていた。
夕立が、自分の部屋からスピーカーを持ち出して、流れる音楽の中、
華麗に水面で踊る艦娘達を眺めながら、二人語らうおっさん達。
その思い出は卯月にとって、壁を破ったことと共にいい思い出となった。
もちろん、電達にとっても……
帰り道。
後部座席に、仲良く眠っている卯月と電を乗せて、運転する高菜二佐。
「さて。また明日から、通常営業に戻りますかね?」
そう呟いて、車を宮戸島に向けて走らせるのだった。
―――――――
翌日。
当然だが、スマートフォンは水没して壊れていた。業務用の携帯電話も。
両方共、データは昨日の朝バックアップを取っているから問題ないとしても、使えなかったら緊急時に支障が出る。
「今度は防水のにするか……財布だけでも車に置いておいて正解だった」
そう呟きながら始末書を用意して、大本営に弁償の申し出と始末書の送信をする、高菜二佐だった。
そして、開店と同時にすぐに携帯ショップに駆け込んだのは言うまでもない。
その頃。
足立一佐は、艦娘提督を統括する大本営幕僚総監の
「御用でしょうか?大貫空将」
「うむ。昨日の夜、業務用携帯電話が二台壊れた。宮戸島と南三陸だ。誤って海に転落、とある。始末書と弁償申し出があったが、査察の必要性はあるか?」
足立一佐は、武藤・高菜両提督から送信された始末書と、携帯電話弁償の申し出、戦果報告に目を通すと、こめかみを抑えてこう呟いた。
「やれやれ、困ったものだ」
そう呟いてから、目の前の上官に向き直る。
「いいえ。戦果報告にて、卯月が大破入渠して。と記載されております。おそらくは、武藤三佐が助けようとして暴れて、二人仲良く海に落ちたもの、と推測されます。査察は無用でしょう」
「うむ。ならばよろしい、許可を与える旨通達を出そう。二人には……そうだな、何れ定期査察の時に説教でもしてやってくれ。話は以上である」
「はっ。移動時に、早速キツめに説教をいたしましょう。それでは、小官は査察があるのでこれで」
「うむ、よろしく頼む」
そう言って、幕僚総監の執務室を辞してから、再び呟いた。
「全く、困った連中だ」
と。その時の表情は笑っていたと、通り掛かかった事務官の子が言っていたそうな。
そして高菜と武藤の二人は、それぞれ下ろしたての電話で、査察に向かう途中の足立一佐から説教を喰らうことになるのだが、各々の携帯電話ショップにいる彼等は、知る由もなかった。
今日のお題「一緒に踊る」
《本日の前書き》
これしか思いつきませんでした
Tips《赤いお目々のぽいぽいちゃん》
お察しの通り、電、長門、木曾、夕立は全員改二です。