宮戸島の提督と仲間達のお気楽日記   作:SAMICO

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決戦

真夜中に、電と戦艦水鬼の戦いが始まっていた。

 

「キサマ、ナカナカヤルヨウダ。ダガカルイナ」

 

戦艦水鬼の主砲の連射を、超高速で回避しつつ小口径主砲を撃ち返す。

それと同時に、30㎜バルカン砲の弾幕で狙いを逸らせている。

 

戦艦水鬼は、回避すらせずに防御して、小口径の主砲を弾き返している。

 

「くっ、硬いのです」

「キサマゴトキノホウゲキナド」

 

風格さえ思わせるその声に、電も恐怖を覚える。

戦艦水鬼は、再び大きく構えて主砲を放つ。

 

それをなんとか回避しながら、牽制攻撃で狙いを絞らせない。

 

「電、それでいい。そのまま戦艦水鬼を惹き付けろ」

「わかったのです!」

 

直哉が通信を送ると、電は戦艦水鬼を睨み付けたまま答える。

戦艦水鬼は獰猛な笑みを浮かべると、副砲を連射し始める。

電は再び急加速すると、次々と海水に着弾して立つ水柱を背に、円周を描くように回避して行く。

回避しながら、電も狙いを絞らせない為に連射で弾幕を張って、ちょっとずつ近づいて行く。

 

夜戦の為、対水上戦闘に切り替えた薄雲と卯月、それに量産型いなづまちゃん達が砲撃戦を始める。

元々、夜戦が得意の宮戸島艦隊と量産型いなづまちゃんずは、有利に戦闘を始めて行く。

 

次々と、空母ヲ級が沈められて行く。

 

そっちに救援に向かおうとする戦艦水鬼だったが、魚雷の射程距離にまで近づいた電に気づいた。

 

「シマッタ!」

 

このまま背を向けると、魚雷でただでは済まない。

不敵な笑みを浮かべた電を見ると、戦艦水鬼は不愉快な表情に変わって行く。

何とか、この小癪な駆逐艦を沈めねば、と主砲を向ける。

 

電は、再び主砲の雨霰を掻い潜って避け続ける。

夜だろうが、目のいい彼女には容易いことなのである。

その間に、いなづまちゃんずの奮闘により、どんどん大型艦が沈められて行く。

いなづまちゃんずも損傷を負っているが、中破を超えたいなづまちゃんずは後退している。

量産型といえど、直哉は使い捨てにする気はない。

 

後方で休息を取りながら、微弱な自己修復機能で回復したいなづまちゃんずは、逐次戦線へと戻って行く。

相手も、無限に近い戦力を投入して来ているが、こちらも思った以上の戦力で対抗しているのだ。

 

 

そんな中、電と戦艦水鬼の一騎打ちは続いている。

 

 

近距離になった分、当てにくくなった戦艦水鬼は主砲から副砲に変える。

副砲を連射して電を捉えようとするも、電の足を捕らえきれない。

 

逆に電は、近距離になって主砲をどんどん当てて行く。

深海棲艦の自己修復機能でも、微弱なダメージを蓄積させて、小破状態まで持ち込むことに成功していた。

 

 

戦艦水鬼は苛立っていた。

戦線を分断されて、友軍は不利。自身も駆逐艦一隻に翻弄されている。

このままでは、離島棲姫に何を言われるかわからない。

 

そんなことを思いながらも、長い長い戦いで、夜中から夜明け。

空が白んで来た時に、戦艦水鬼はニヤッと笑みを浮かべた。

 

「カッタナ クウボカンタイ……」

 

そこには、空に飛ばすべき空母はいなかった。

全て、薄雲達が片付けていたのだった。

 

「空母なぞ、いませんよ」

「うーちゃん達がやっちゃったんだから」

『なのDEATH』

 

 

「キサマアアアアアアアア!!」

 

怒りの咆哮を上げた戦艦水鬼は、全方位に主砲を乱射した。

戦艦水鬼・狂となった彼女の破壊力で、いなづまちゃんずは四方八方に吹き飛ばされて行く。

大破状態に留まっているものの、怖くて戦艦水鬼・狂の主砲射程圏内に近づいて行けない。

 

卯月と薄雲も後退しつつ主砲を躱すも、卯月も至近弾を一発貰い、大破状態になる。

 

電だけは必死に避けているが、捉えられるのも時間の問題である。

 

「くっ、当たったら海の底なのです」

 

「シネェェェ!!!!チビメ!!!!」

 

半狂乱になりながら、主砲副砲の弾幕を全方位に打ち込み続けている戦艦水鬼・狂に、

攻撃すらできず、後退もできない距離に踏み込んだ電は、死を覚悟していた。

 

 

その頃、薄雲はアンカーを下ろしていた。

卯月が背中から抱き付いて、それをいなづまちゃんずが取り囲むと言った形である。

 

「狙撃点固定……徹甲弾装填完了まで、後1分」

 

新たに取り付けられたスコープは、半狂乱の戦艦水鬼・狂に向けて狙っていた。

その直後だった。

疲労により、電が集中砲火を浴びてしまったのは……

 

「あうううっ!!!!」

 

一気に大破に持ち込まれ、息も絶え絶えの電。

 

ニタアッと笑いながら、トドメの主砲を向ける戦艦水鬼・狂。

 

「ごめんなさい……直哉……」

 

ぎゅっと目を瞑った、その直後だった。

 

()()()()、戦艦水鬼に向かって海面スレスレに飛んで来た()()()()()が戦艦水鬼・狂に飛び込み、爆発した。

 

「グワッ!!」

 

防御態勢に入ったものの、戦艦水鬼・狂の動きは停まってしまっていた。

薄雲は、今だと、再び狙いを修正する。

 

「装填完了。バレル伸長」

 

三連装アイキャンフライ砲の真ん中の砲身が、ニュッと伸びた。

前に倒れそうになるのを、共にアンカーを下ろした卯月が必死に抱き付いて押さえる。

それを、いなづまちゃんずが必死に支える。

 

「80㎝スナイパー・ロングバレルキャノン、発射」

 

ズガァァン!

 

80㎝マグナム砲弾は、一発の発射とは言え薄雲と卯月を後ろに数m吹き飛ばし、海面に叩き付けられた二人は、仲良く気を失っていた。

その砲弾はぐんぐん加速を付けて行き、戦艦水鬼・狂に直撃した。

 

「グワアアアアアッ!!!」

 

その徹甲弾は、戦艦水鬼・狂の身体を貫いていた。

 

「こちらの勝ちなのです!沈めぇ!!」

 

胸にぽっかり大きな穴の空いた戦艦水鬼・狂に、電はありったけの砲弾・雷撃を叩き込んだ。

自身の砲弾に誘爆しながら、爆発と共に海に沈んで行く戦艦水鬼・狂は、ニタアッと笑いながら言った。

 

「ワタシノヤルベキコトハタッセイシタ。イマゴロチンジュフハ、ハイダロウ」

「えっ…………?」

 

電はその言葉に絶句し、直哉は自身の失策に気づいた。

 

「しまった!狙いは鎮守府か!?ルビィちゃんが危ない!」

 

しかし、全員ボロボロな宮戸島艦隊には、追い掛ける余力は残っていない。

直哉は、すぐに無線バンドを鎮守府に合わせて、交信を始めた。

 

「ルビィちゃん!!敵艦隊がそっちに向かっている!逃げるんだ!」

 

その直後、無線がロストする。

 

「拙い!急いで引き返そう!」

『了解!』

 

それでも、ボロボロの艦隊を立て直すと、直哉は鎮守府への帰路を急いだ。

 

 

――――――――

 

「…………トマホーク着弾確認」

 

海面に、ぷかりと浮かんだ小柄な艦娘は、その様子をレーダーで確認していた。

 

「私にできるのはここまでです。後は頑張ってください……()()()()()()()

 

ふっと、笑みを浮かべたこの世界の高梨 湊……突然変異攻撃型原子力潜水艦娘海渡(みなと)は、再び海の中に潜り消えて行った……

 

水中で、何者かに通信を送りながら……

 

「大貫さん、こちら……」

 

――――――――

その頃だった。

 

 

土佐沖に出現していたゲートの調査に、ビスマルクとレ級と翼、それに愛と真愛が訪れていた。

 

「何なのかしら…………」

 

ビスマルクが、腰に手を当てながら眺めている。

指揮艦に乗っている愛と翼。

水上に浮かんでいるレ級に、抱っこされている真愛。

 

「どうせ、明石が作った物体なんじゃないか?はい、解散」

 

調査する気が一切ないレ級に真愛が、

 

「ちゃんと調べないと、漁師の人達が心配しちゃうでしょ」

 

と、頬を膨らませてレ級を見ると、レ級は真愛の頭を優しく撫でる。

 

「愛ちゃん、とにかく調査しないといけないよね?」

「そうですね……」

 

その瞬間だった。

ゲートが起動して、真っ先にビスマルクが吸い込まれた。

 

「きゃあああああああ!!!」

『ビスマルク!!』

 

その次は、レ級と真愛だった。

 

「吸い込まれる……っ!!」

「ママぁぁぁ!!!!」

 

二人共吸い込まれて行く。

更に、愛と翼も吸い込まれて行った。

 

そして、そのゲートは消えて行った……

 

 

 

気づいたら、愛達は浦の星鎮守府の埠頭に落下していた。

「いたっ……」

「ピギィ!?」

 

腰を擦りながら立ち上がると、ルビィが腰を抜かしていた。

 

「あの……あなたは……?私は、笹野 愛特任一等陸佐と言います」

 

腰を抜かしているルビィに声を掛けると、ルビィは笑顔に変わる。

 

「えっ、あの中学生提督の愛ちゃん!?それで、そっちの子は、愛ちゃんのお子さんですか!?」

 

自身を知っている見知らぬ少女に、愛は不思議そうな顔をしている。

 

「あの、何で知ってるんですか?」

「高菜提督から教えてもらって……あっ、黒沢ルビィで……ピギィ!?」

 

ふと目に止まったレ級に、再び悲鳴を上げる。

 

「ふっふっふ、ぼくは悪いレ級じゃないよ」

 

ジリジリと近付こうとする、レ級のフードをグイッと引っ張るビスマルク。

 

「はいはい、()()レ級じゃないわね。私はビスマルク」

「わたしは笹野真愛。よろしくねっ!」

 

ビスマルクと真愛も、そう自己紹介をする。

 

「いやはや、ゲートの先にも鎮守府とはね。あたしは大垣 翼」

「よ、よろしくお願いします」

 

立ち上がりながら声を返すルビィに、一同は笑みを浮かべる。

その直後だった。レ級の眼が鋭くなる。

 

「愛、電探に感あり。深海棲艦艦隊が襲来、航空隊も飛んで来てるよ」

『えっ!?』

 

愛とルビィが海の先を見た直後に、直哉から通信が入って来た。

 

『ルビィちゃん!!敵艦隊がそっちに向かっている!逃げ……ザザッ』

 

その直後、ジャミングでザザーッと通信が封鎖されてしまった。

その通信を受けたルビィと愛は、互いに目を見合わせた。

 

「ルビィちゃん!戦おう!」

「うんっ」

 

二人の少女提督は、襲来して来た敵艦隊をキッと睨みつけた。

 

 

 

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