迷宮要塞近海。
「急いで戻るのです!」
電が焦りの顔を見せ、直哉も何時になく焦った顔で頷いている。
「そうだね、急いで戻ろう」
「お待ち下さい。電、直哉」
そんな二人を、薄雲が冷静に諌める。
「どうせ急いでも、結果は一緒です。それより、敵艦隊が迫っています」
「敵艦隊だぴょん!」
索敵に専念していた卯月も、
遠くから駆逐艦隊が迫っているのを指差す。
「仕方がない、敵を引き連れて戻るのも拙い。量産型いなづまちゃんず、前へ」
『了解なのDEATH』
砲撃戦が始まった。
大破状態の電達は、直哉のボートを囲みながら守っている。
そんな中、量産試作型いなづまちゃんずは砲撃戦を開始する。
「ルビィちゃん、無事でいてくれ……」
直哉は、苦々しい顔をしながら戦術指示を出し続ける。
――――――――
浦の星鎮守府。
一方その頃、浦の星鎮守府では敵の最後の反抗とも言える、奇襲部隊との決戦を迎えようとしていた。
愛は、上空をキッと睨み付けながら声を掛ける。
「敵機が見えて来たね……ルビィちゃん、やるよ!」
「うゆ、愛ちゃんがんばるビィ!」
「が、がんば…?」
ルビィの言葉に困惑の表情を浮かべながらも、愛が再び意識を海上へ向けると、戦艦群を主力とした敵の水上打撃部隊が接近していた。
「よし…全艦戦闘体制!」
『了解!』
ルビィの指示に、全員元気良く答える。
「ねぇねぇ、あいつ等全部殺っちゃっていいの?」
レ級が、敵艦隊を見つめながらワクワクを抑え切れずに尻尾を振っている。それを横目に、ビスマルクが呆れながら返答する。
「第一目標はこの鎮守府の防衛なんだけど?」
「でも、全て倒してしまっても構わんのだろう?」
「はぁ…もういいわ。好きにして」
頭を抱えるビスマルクを見ながら、ルビィが苦笑いを浮かべていると、工廠から明石が何やら
「提督~!敵艦隊がこの鎮守府に来ていると言うことで、奴等を実験だーゲフンゲフン奴等を倒す為にロケット弾を持って来ましたよ!これがあれば敵を粉砕!……ってあれ?この方々は?」
「この子は笹野 愛ちゃんだよ。他の人の紹介もしたいところだけど……敵さんが来ちゃったね?」
ルビィがそう答えると、愛は無線機に手を当てる。
『愛、別世界でもサーカス開演の時間よ』
無線越しのビスマルクの言葉に、思わず笑みを零す。
「さぁ、やろうか!?」
「あ、あの愛ちゃん?ルビィは何をすれば?」
「ルビィちゃんは、敵の増援の有無の確認と出撃した艦隊との通信を試みて!」
「うゆ、わかった!」
ルビィの返事を聞いて、愛は一瞬笑みを浮かべたが、直ぐに意識を戦闘へと切り替えた。
「艦隊、戦闘開始!」
「敵機は任せろ~バリバリ~!」
と、レ級が言うとタコヤキ型艦載機を繰り出し、やって来た敵艦載機と絡み合って、上空はたちまち大乱戦となる。
それと同時に、妖精化した翼が余っている艦戦に飛び乗って独断で出撃して行った。
「ヒャッハー!久々の空戦だぁ!!」
翼率いる零式艦戦隊も、ドッグファイトを始めている。
「真愛もがんばる!!」
「え!?真愛ちゃんも艦載機を!?」
驚くルビィをそのままに、真愛が繰り出した艦載機は、ルビィと愛を守るように上空旋回を始めた。
ルビィが唖然とする中、水上でも戦闘が開始されようとしていた。
「最近は海賊として攻める側だったから、こう攻められる側の立場に立つのも面白いわね」
海上からやって来る敵艦を目の前にして、ビスマルクが独り言のように呟く。
「じゃあ、ビスマルク行くよ!」
敵の水上打撃部隊は、戦艦を主力とした「主砲こそパワー、大艦巨砲主義バンザイ!」な編成をしていた。
「真面にやり合っても何隻かは鎮守府に通しちゃうし、取り敢えずは釣り出そう。ビスマルク!敵の先頭艦に火力を集中させて、その後直ぐに離脱。敵を鎮守府直進ルートから逸らすよ!」
『了解!』
愛からの指示を受け取ったビスマルクは、直ぐ様行動を開始した。
「まさか、別世界に来て戦闘することになるとはね。主砲、ファイエル!」
ビスマルクの放った砲弾は、艦隊の先頭を行く戦艦ル級を正確に撃ち抜き、水柱が収まった時には、ル級の姿はなかった。
「で、ここからは敵の進路を逸らすのよね……で、やっぱり敵は撃って来るわよね!」
愛の作戦通り、敵艦隊はビスマルクに引っ張られるようにして、進路が浦の星鎮守府から逸れようとしていた。
「ビスマルクは回避優先!撃てるなら副砲だけでも撃って、敵の砲撃を少しでも妨害して!……で、あとは」
とそこまで言った愛が、明石の方を振り向いた。振り向かれた明石は一瞬「え、何?」みたいな顔をしたが、直ぐに意図に気づいた。
「敵の皆さーん、私の実験台になってくださーい!明石特製ロケット弾、発射ぁ!!」
明石の撃ったロケット弾は、砲撃を続ける敵艦隊のど真ん中に着弾、見事に大爆発を起こした。
「汚え花火だ!」と歓声をあげる明石の後方では、爆風によってキレイに飛ばされた若き提督二人が、地べたに這い蹲りながら会話をしていた。
「愛ちゃん…これは予想できた?」
「まさかこれほどの爆発だとは……あ、ビスマルク!?」
愛の気にしたビスマルクはー
「こんな爆発、聞いてないわよ……」
艤装が半壊状態になり、苦笑いしながら海上に寝転がっていた。
――――――――
「でも、これで全員やっつけれたかな?あれ?そういえば翼さんは?」
「あの人は……多分、空を飛び回ってるかな?」
その言葉どおり、翼は天山に乗り換えて爆撃を始めている。
残った敵深海棲艦は、次々と沈んでいる。
「もし、残ってたとしても大丈夫。多分レ級がー」
と、愛がそこまで言いながら海上を見ると、
「艦載機は殺っちゃったから、残った敵をデストローイ!一人残らずデストローイ!」
レ級が壊滅状態の敵艦隊にトドメを刺していた。
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敵艦隊は、明石のロケット弾&レ級の追撃によって殲滅することができた。
「無事殲滅完了かな?」
「私は決して無事ではないのだけど……まぁいいわ」
「ビスマルクさんは入渠してきた方がいいよね?明石さん、案内お願い」
ビスマルクは、明石に入渠所へと連れられて行った。その様子を見ながら、愛がルビィに話し掛ける。
「これで、あとは艦隊を待つだけかな?」
「そうだね。戦闘中に通信できるか試してみたけど、やっぱりジャミングのせいで長距離通信はできなかったみたい。無事に帰って来てくれるといいけど……」
ルビィが心配そうに海を見つめていると、後方から何やら声が聞こえて来た。
「ルビィ!ルビィ~!」
「ルビィちゃん、何か声が聞こえない?」
「うん。で、多分この声は……」
ルビィがそう言った直後、ルビィは後ろから何者かに抱き付かれた。
「ルビィ~!無事で良かったですわぁ~!」
「やっぱりお姉ちゃんだった!お姉ちゃん~!」
姉妹、感動の再会の場面を、目を白黒させながら見ていた愛が、漸く口を開いたのはそれから5分後のことである。
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「え、え~と、この人がルビィちゃんのお姉ちゃん……?」
困惑しながら愛が喋ったことによって、我に返ったルビィが顔を赤くしながら、姉である黒澤ダイヤの紹介を始めた。
「こ、この人が、私のお姉ちゃんの黒澤ダイヤです……撫子鎮守府で提督をしています……」
「姉妹で提督をしてるんだね……そして、お姉ちゃんが大好きなんだね?」
「うぅ…」
笑みを浮かべて声を掛ける愛に、顔を真赤にしながら声を漏らすルビィ。
「ルビィお姉ちゃん、お顔が赤いよ?だいじょうぶ?」
「は、恥ずかしいよぉ!!」
それまで、ずっと明石の不良発明品を漁って遊んでいた真愛のトドメの一撃によって、ルビィのメンタルは轟沈、膝から崩れ落ちるように蹲ってしまった。
「愛ちゃんに見られた真愛ちゃんに見られたレ級さんにも見られた…」
「なーなー愛~これ、どうすんだ?」
「う~ん?艦隊が帰ってくるのを待とうか?」
こうしてルビィは、30分後に両艦隊が帰還して霞に喝を入れられるまで、ずっとこの状態でいるのだった。