宮戸島の提督と仲間達のお気楽日記   作:SAMICO

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休載中ですが短めのお話をひとつ


season1/2020年編
圭一たちの受験勉強


「ふむふむ……伸び悩みの時期が来ましたね」

「そうだね」

「そうですね」

「懐かしいわね……」

「まあ、壁と言うものはあるものさ」

 

圭一の新春小テスト結果を見遣りながら、五人の講師陣が武藤レストランの六人掛けテーブル席で会議を開いていた。

結局、直哉達の行方不明事件と深海棲艦大出現事件の責任は明石に押し付けられ、減給期間が更に伸びる結果となった。

本人としては、()()()()やったことなので不満そうな顔をしていなかったが……

 

その裏で行われた、圭一の五科目小テスト。

圭一は大晦日と元旦以外、冬休み返上で勉強を続けている。

史絵も一緒に母の許可を得て、圭一の家でお泊りでの勉強を続けている。

努力は、すればするほど結果に現れるとは限らない。

そのテストの結果は、安全圏内手前で頭打ちになっていた。

 

その講師陣の筆頭格であり、圭一の一つ先輩で、学年首席の奨学生である大村夏海が、テストの結果を眺めている。

隣では、防大卒業生である大村奈々海がビールを片手に同意する。

その対面には倉田めぐみ医師と笹野麻衣医師が座り、その隣に直哉が座っている。

夏海以外は、それぞれ大学や大学校卒業の優秀なブレーンである。

 

「どうじゃね?圭一くんの試験は上手くいきそうかね?」

コック服に身を包んだ武藤提督がキッチンから出て来ると、五人の視線が集まる。

直哉の対面に座ると、自慢のヒゲを弄る。

武藤提督は、経理一筋の現場叩き上げの曹候補士出身である。

勉強はあまり得意ではない、と講師陣には名を連ねなかったが、時折二人を招いては美味しい料理を振る舞って、得意分野の数学を指南してくれている。

 

「そうですね。予想通り頭打ちになっています。一気に勉強を進めた弊害が出てしまった形ですね」

 

夏海が、溜め息を吐きながらテスト結果を渡す。

 

「ふむふむ……これでもいい成績じゃが……」

 

テスト結果に目を通した武藤提督は、ヒゲを弄りながらテストの答案に目を通し始める。

 

「それがですね、調べたところ今年……来年(2020)度から制度が変わったんです。クラス平均点を超えないと編入を認めない、と言う方針になったんです」

 

めぐみが、取り寄せた資料を武藤提督に渡す。

 

「ふむ……在校生と編入候補生の、()()()()()戦争(たたかい)と言う事になったんじゃな?」

「はい、そうなんです」

 

夏海が、大きな溜め息を吐きながら応える。

そう。東京晴嵐男子学校中等部の、編入要項が変わったのだ。

それまでも声は上がっていたのだが、下位の学生が()()()()一般コースに脱落するのは可哀そうだ、と言う保護者の声から、

今年の保護者総代が音頭を取って、要項改正が行われたのだ。

姉妹校である、東北百合根女子学園でも同様の要項改正が行われた為、危機感を感じた夏海が、教師経由で資料を取り寄せたのだった。

結果、ハードルが上がった圭一は、更なる勉強を強いられることになった。

 

講師陣が焦りを覚え、一気に内容を進めた結果、圭一の成績が頭打ちになってしまう、と言う事態に陥っていた。

しかも、編入試験は一月後半に行われる。

圭一は、今もきっと史絵と勉強を続けていることだろう。

 

 

講師陣が教育方針に頭を悩ましている中、パジャマ姿の圭一と史絵は、圭一の家で勉強を続けている。

圭一の部屋のこたつで向かい合って、黙々とそれぞれの課題を熟している。

優等生の史絵は、年始の小テストで安全圏内を確保しているものの、圭一はまだまだ安全圏内に入り込めていないのだ。

 

「あーーーー判んねえ!!!!」

圭一が、頭を掻き毟りながら叫ぶ。

「圭一、ここはね…………こうして、こうやって……」

史絵が隣に座り直すと、判らない点を判るまで教えている。

講師陣の予習に、史絵の判るまで何度も教える復習で、()()()ステップアップしている……

だが、講師陣は焦って小さな一歩を見逃しているだけなのだ。

 

「ちょっと煮詰まって来たから、今日はこの辺にしましょう?」

「でもよぉ……」

「もう二時回ってるし、続きはまた明日。皆焦り過ぎです」

「時間がないんだぜ。俺なんか馬鹿だから、もっとやらねえと!」

「圭一」

 

史絵は、静かに圭一の言葉をピシャリと遮った。

 

「考えてください。試験まで、あと()()()あります」

「お、おう」

「と言うことは、()()()()()あります」

「そうだな」

「半分を、食事その他に費やすとしても、()()240時間もあります。寝て体力を回復するのも、()()()受験勉強です」

 

そう言うと、史絵は立ち上がり、圭一のベッドに腰掛けてから圭一の方を見る。

「圭一、寝ましょう?」

「お、おう……」

 

まだ女の子と一緒のベッドに寝るのに慣れてない圭一は、顔を赤らめながらベッドへと向かう。

 

――――――――

 

「おいおい、このテスト結果はだめだろ?」

 

それと時を同じくして、慎達の住まう一軒家のリビングで、講師陣の出した小テスト結果に目を通した慎は、大きな溜め息を吐いた。

奈緒子と櫻子はともかく、望が危険領域だった。

 

望は、()()()この三年間、勉強なんかやって来てなかったのだった。

 

「だよねー」

 

悪びれずに応える望を、慎はプラバットで頭を叩く。

 

「アホか?滑り止めの私立が二月頭に、本命の公立が三月にあるんだぞ?」

「圭一よりはまだ時間あるじゃん?」

「ねぇよ。圭一の方がスタートラインはずっと先だ。そんなこと言ってると、望だけ別部屋で寝ることになるな?」

 

しれっという慎に、望はぶんぶん頭を振る。

 

「それは困る!」

「だったら、もっと勉強しろよ?」

「だって、判んないんだもん……」

 

しょぼくれる望に、三人は顔を覗き込む。

 

「何が判んねえんだよ?」

「それな」

「うん」

()()()()()()()が判んないんだって」

 

『…………』

 

こっちはこっちで、前途多難だった。

 

 

――――――――

「それじゃあ、今日の授業を始めるわね」

 

今日は笹野医師の授業日である。授業は宮戸島鎮守府のテーブルで行われている。

それぞれ夏海以外の講師陣が、輪番で授業を行って行く。

圭一と史絵、それにギャルズ達はそれぞれ領域が異なることから、専ら問題集を解いたりしている。

医師等は理系が多い為、時折やって来る高菜源一郎や歴史が得意な直哉が、文系の講師担当となっている。

 

とは言え、一番勉強が遅れている望に付きっきりの為、秘書艦や直哉が圭一の勉強を見て、

残り三人は、ほぼ()()()()である。

 

判んないところが判んない、と言うことが判明した望について、講師陣は大幅な方向転換をした。

各講師陣が「試験に出そうな分野」をピックアップして授業を行う、と言う方針に転換したのだ。

判んないところが判らないなら、判る分野をどんどん作って行けばいい。

笹野医師発案のこの方針で、望は少しずつ()()()()を感じるようになっていた。

 

「あっ、だんだん判って来た感じ!」

「そう。その判らないことが判ったことが、勉強のモチベーションになるのよ」

 

嬉しそうに喜ぶ望に、笹野医師が優しく頭を撫でた。

 

こうして一月は、各自勉強が続いていた。

 

 

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