硫黄島要塞。
そこは、“マッドサイエンティスト”明石の研究施設と化していた。
東京から遠いのをいいことに、明石と夕張は自由気儘に研究をしている。
いつしか、硫黄島
「明石さん、お昼なのDEATH」
上の階から明石の
明石が真面目に研究している光景に首を傾げていた。
「…………」
明石は、ラットにアルティメットいなづまちゃん細胞を投与する実験の最中だった。
自己再生、自己増殖、そして自己進化の『三大理論の夢の細胞』。
ラットは、がん細胞のように膨れ上がって、即死した。
「ダメですか…………」
大きな溜め息を吐いた明石に、アルティメットいなづまちゃんが再び声を掛ける。
「明石さん、今度はなんの実験なのDEATHか?」
「ああ、郷里二佐に投与した『限定アルティメットいなづまちゃん細胞』を実用化出来ないものか?と思いましてね」
「郷里二佐はどうなったのDEATHか?」
「土佐での定期検診の結果、通常の細胞に置き換わってしまったそうです。
「それで、このラットは?」
「ああ、これはもうちょっと浸透力を強めた細胞を投与したんですが、自己増殖の結果がん細胞化して死んでしまいました」
「何でそんなに、これに拘ってるのDEATHか?」
「そうですね」
明石はそう言うと、大きな溜め息を吐いた。
「
「再生医療なのDEATHか?」
「そう、再生医療。
「…………」
そう語りながら、明石は昔のことを思い出していた。
――――――――
明石が、東京の自衛隊大本営工廠部で働いていた頃の話だった。
ある雨の日、小さな少女が大本営工廠部の前で倒れているのを、明石が発見したのだ。
怪我をして倒れていたのだった。
「ちょっと!大丈夫ですか!?」
「うう……寒い……」
この少女は、美里と名乗った。
医療技術も持ち合わせている明石は、直ぐに工廠部の医務室に運び込み、応急手当を施した。
この身元不明の少女は、一旦工廠部で預かることになった。
数日間医務室で寝込んだ彼女は、ぽつりぽつりと話し始めた。
自分が虐待を受けて育って来たことと、そこから逃げ出して来たこと。
その告白を受けた明石は、自分が預かることにした。
「明石さん!おはようございます」
明石の散らかっていた官舎は、数日間で綺麗になり、
更に美里は料理もこなして、毎朝明石を揺り起こす。
「う…ううん……おはようございます」
「朝ごはんできてますよっ!」
「ああ、ありがとうございます」
明石は部屋を出て行く美里を見送りながら起き上がると、制服に着替えリビングに向かう。
「いただきます!」
「はい、いただきます」
二人で過ごす楽しい朝食。
最初はこの生活に戸惑いはしたものの、数日も経てば楽しい朝食になっていた。
明石は、可愛い妹が出来たな、と彼女への好意を強めて行った。
そんな矢先、彼女は突然この世を去った。
交通事故だった。
横断歩道を渡っての買い物帰りに、信号無視の車にはねられて、即死だった。
悲報を受けた明石が駆け付けた病院の霊安室。
冷たくなった彼女が横たわっていた。
「みーちゃん……どうして……」
「………」
声を掛けても、美里は何も答えない。
明石は涙を流しながら、すっかり冷たくなった美里の遺体を抱き締め続けていた。
事故を起こした運転手はその場で逮捕された、と聞かされても、明石にとっては何の慰めにもならなかった。
物言わぬ彼女を抱き締めながら、明石はとある
――美里を蘇らせる。
明石は直ぐに冷凍保存カプセルを作り上げ、工廠部の地下に美里の遺体を安置した。
周囲には、『火葬した』と偽って…………
それから明石は、深海棲艦の研究を始めるようになった。
鹵獲した深海棲艦を徹底的に解剖して、一つの結論に至った。
人間に、深海棲艦の細胞を移植することは可能ではないか……と。
最初の被験者は大垣 守……つまりは大貫 悟空将。
「美里ちゃんの為に、被験体になってください」
明石のその言葉に、大貫はコクリと頷いた。
「私で良ければ力になろう。君のことだ、まずは安全な領域から始めるんだろう?」
「はい、守さん」
移植手術は成功に終わった。深海棲艦の青い血に置き換わった大貫 悟は、生涯病気に煩わされること無く健康に暮らしていた。
……暗殺されるまで。
明石は、その実験データを取りながら少しずつ、再生能力を持った細胞の研究に傾注して行った。
世間に公表されれば大問題になる実験を隠す為、明石は巫山戯た研究をして、周囲の目を逸らして行った。
そして一つの研究の
だが、その研究も頭打ちになっていた。
『通常生物への移植』と言う、大きな問題に直面していた。
限定的に能力をセーブして郷里二佐に投与した細胞は、郷里の細胞に負けてしまい、消えてなくなってしまった。
――――――――
「明石さん?」
「ああ、すみません。昔のことを思い出していました」
「お昼が冷めるのDEATH」
アルティメットいなづまちゃんが小首を傾げながら呼ぶと、明石も立ち上がり、ラットを焼却炉に放り込んで、ラボを後にした。
硫黄島科学要塞研究所の地下。
明石だけが入れるパスワードロックの掛かった部屋で、彼女は佇んでいた。
部屋には、美里の遺体が安置された冷凍保存カプセル。
「みーちゃん、待っててね。いつかきっと生き返らせてあげるから」
明石の瞳には、強い
明石の真面目な研究(宮戸島) toshi-tomiyamaさん提供
→「マッドサイエンティスト」の二つ名が定着してしまった明石さん……
アルティメットいなづまちゃん細胞の研究に傾注する理由とは?