虚淵インストールなう
※:轟沈表現あり
――――東京、防衛省大本営。
明石、それに夕張、そして島風、アルティメットいなづまちゃん改めいなづまちゃんが大本営の出頭命令を受けてやって来ていた。
大本営の建物に入ると、明石はピリッとした空気を感じていた。
「総監がお待ちです、どうぞ」
副官の七原秋奈三佐が敬礼すると、四人も敬礼を返す。
秋奈の案内で総監執務室にやって来ると扉が開く。
そこには、足立幕僚総監が執務机に、応接ソファに四国警務隊長足立秋也一佐と、警務本部長兼関東警務隊長の七原陸将補が着席している。
四人が揃って執務机の前に立って敬礼すると、秋奈は足立総監の脇に控える。
「四人に来てもらったのは、他でもない」
足立総監が、渋い顔をしながら口を開いた。
秋也も七原将補も、厳しい顔をしている。
「足立一佐から告発が上がっている。アルティメットいなづまちゃん細胞を人体に使用し、あまつさえ、それを発展させようとしている。相違ないか?」
秋也の厳しい表情が、更に厳しいものになった。
「……はい、間違いありません」
明石は数刻逡巡した後、答えた。
「ばっか、お前何を考えてんだ。神にでもなったつもりか!?」
秋也が立ち上がり、指を指して糾弾する。
「…………」
明石は何も答えなかった。
七原将補は、腕を組んだまま何も言葉を発しない。
ゴクリと夕張の喉が鳴る。
「では処分を言い渡す。工作艦明石。貴艦を東京工廠本部に異動とする。兼任していた開発部長の任を解く」
「…………」
明石から、兵器開発権限を取り上げたも同然だった。
「夕張と島風は、四月より新設される有明鎮守府に異動とする。アルティメットいなづまちゃんとやらも同様とする」
「…………はい」
「…………」
「了解なのDEATH」
連帯責任、そう言っていい処分内容だった。
島風はともかく、夕張からも開発権限を取り上げる、と言う厳しい処分であった。
「硫黄島科学要塞研究所は閉鎖とする。これより爆破解体作業を……」
「待ってください!あそこには美里ちゃんが!!」
はっとして叫んだ時には、もう遅かった。
いなづまちゃんを除く全員が、苦々しい表情に変わる。
「明石、やはりそれが答えか?」
秋也が怒りを滲ませながら近づき、そして明石の胸倉を摑んだ。
「死んだ人間を生き返らせようってことか!?ばっか、てめぇ何考えてやがる!?」
拳を叩き付けようとするも、夕張が割って入る。
「待ってください、暴力はだめです!」
「っ……」
「止めんじゃねえ、夕張。こいつは、
「………彼には、安全を保証した程度の細胞しか投与していません」
「それが、人間が手を出したら許されない領域なんだよ!それを理解しろ!」
「…………
明石の狂気染みた叫びに、秋也は一瞬怯んだが、それでも彼は一歩も引かなかった
「いけねえよ!ジレーネ戦役では、たくさんの人間が死んだ、艦娘もだ。いいか、耳をかっぽじってよく聞け。
「…………」
「まだ分からねえのか?」
「……解りたく、ありません」
「…………そうかそうか。工作艦明石、貴艦を営倉に収監する。頭を冷やしていろ!」
秋也の言葉と共に入って来る警務隊員に、艦娘用手錠を掛けられて連行されて行く明石。
「さて、叢雲達の砲撃が始まった頃か…………」
その直後だった。
『大本営!聞こえる!?硫黄島要塞攻撃部隊旗艦叢雲よ!!』
「どうした!?」
叢雲の緊急通信に、足立総監が答える。
『硫黄島要塞が暴走したわ、通信も繋がらないし、緊急用遠隔遮断装置も効かないわ』
「っ……一度撤退だ!」
『もうとっくに撤退してるわよ!こっちは全員、要塞主砲で大破してるわ』
「何ということだ…………」
頭を抱える足立総監を尻目に、秋也は腰の九ミリ拳銃を抜いて、いなづまちゃんに向けて撃った。
胸のバッジに命中して、カラン……と転がった。
「あうっ!」
「足立一佐、何してるんですか!?」
秋也は、咎めるような夕張の言葉を無視して、バッジを拾い上げると解体した。
盗聴器だった。
「そう言うことだ。何者かがすり替えておいたんだろう。そして硫黄島の主は……」
ザザッ………
総監端末に通信が入った。
テレビ電話の画面の先には、幼さを残した少女が座っていた。
真っ白い肌に赤い瞳……
「美里ちゃん…………」
夕張は、信じられないといった表情で呟いた。
『私は蘇りました。そして、硫黄島科学要塞研究所は私が乗っ取りました。明石さんは微量のアルティメットいなづまちゃん細胞を投与してくれました。それはゆっくり私に浸透して、意識を取り戻しました。量産型いなづまちゃんの一人に意識を落とし込んで、ゆっくり準備をして来ました。いつか、
「「「「「「……………」」」」」」
その『正気の欠片もない笑顔』に、全員が押し黙った。
『いなづまちゃん、こっちに来ませんか?』
「嫌DEATH」
『ならば、無理矢理にでも……』
「うぐぐ………」
いなづまちゃんの瞳が赤く染まり……艤装を展開させる。
「やばい!操られるぞ!!」
「いなづまちゃん!!」
いなづまちゃんは奥歯をぐっと噛み砕くと、苦しげな笑みを浮かべた。
「そうはさせません。夕張、
「えっ?」
絶句する夕張の目の前で、いなづまちゃんはサラサラと砂のようになって消えて行った。
「いなづまちゃん!!いなづまちゃぁぁぁぁん!!!」
『自沈しましたか……無駄なことを』
崩れ落ちながら泣き叫ぶ夕張の声を嘲るような美里の言葉に、夕張は崩れ落ちたまま。
「あ……あぁぁ……」
残された形見であるお揃いの指輪を手に、泣き崩れている夕張に駆け寄って背中を擦る秋奈。
「てめえ、もう美里ちゃんじゃねえな。深海棲艦そのものだ!」
『あは、美里ちゃんの自我なんてもうとっくにありませんよ。……っ!!』
その直後、美里が一瞬苦悶の表情を浮かべた後真面目な表情に変わる。
『そんな事ありません!!皆さん、私の自我が少しでも残ってるうちに、私を
そして再び正気を失った笑みに戻って、画像がザザッと消えた。
「……硫黄島要塞の攻略作戦を実施する。高菜准将補と笹野一佐の艦隊を至急東京に呼んでくれ」
足立総監が苦々しく言うと、全員が頷いた。
――――――――
「……と言う訳なんだ。美里の攻撃には明石も同意した」
集まった宮戸島・土佐鎮守府の面々に、秋也が会議室で説明をする。
「全く。明石も、何て馬鹿なことをしてくれたんだろうね?気持ちは、分からなくもないけどね」
「そうですね。でも、死んだ人間を蘇らせるなんて、私は認めたくありません」
直哉に続いて、愛も厳しい口調で続ける。
「本物は電だけなのです、なんて言ってる場合じゃないのです。いなづまちゃんの仇は電がとるのです」
「また要塞攻略だぴょん」
「仕方ありません。暴走した硫黄島要塞のコアを止めるしかありませんね」
「美里ちゃんを殺さなきゃいけないの……?」
宮戸島の面々も、口々に言葉にする。
「仕方がないわ」
「そうね、避けられないBATTLEネ!」
「悲しいですけど……」
「仕方がない」
「そうだね、大井っち」
「そうですね」
ビスマルクを始め、アイオワ、鳳翔、伊勢、それに北上に大井もその言葉に頷く。
「ま、仕方がないわ」
「敵はコロスだけさね」
ジェニファーとレ級は割り切ってしまっている。
他のル級達もコクリと頷いている。
「さあ、急いで出撃しましょう」
「ああ。その前に、私は寄るところがあるから、編成は愛ちゃんに任せるよ」
「はいっ!」
――――――――
暗い地下営倉に座り込んでいる明石。
既に涙は枯れ果てた。
そこに、直哉がやって来た。
「何て……」
「馬鹿なことをしたんだ、ですよね?」
「そうだね。差し当たって、君の
そう言うと、ポケットから鍵を取り出して独房の鍵を開ける。
「さあ、出るんだ。そして美里ちゃんを説得するんだ。それができるのは、明石、君だけだよ」
「……わかりました!」
その瞳には、強い
――――――――
お台場鎮守府で補給を受けた宮戸島・土佐連合艦隊が出撃準備を進めている中、直哉と明石もヘリコプターでやって来た。
「先生、準備は整いましたっ!」
「では私達も乗り込むとしよう」
「……はい」
師弟で一緒に出撃する
本日のお題 toshi-tomiyamaさん提供
・硫黄島要塞の危機(宮戸島)
→魔窟と化した硫黄島要塞……
ある日突然、大本営との一切の連絡が途絶……
いったい何が……