デレマス短話集   作:緑茶P

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('ω')真っ黒だぜ…腹の底までよぉ………(笑)


タイプ:あく

 

「麗奈! また悪戯ばかり……今日という今日は許さないぞ!!」

 

「あーっはっはっはっは!! 今日もいい子ちゃんご苦労様ね!! そんなアンタには悪の道の楽しさなんて一生分かりっこ無いんでしょうね~!!」

 

天気も晴天で、風も麗らかな午後の事。今日もここ“シンデレラプロジェクト”の事務所は元気なちびっこ達の声が高らかに響き渡って耳をさんざめく。

 

 腰にお気に入りの変身ベルトを装着した“南条 光”がびしっと決めポーズと共に熱量多めのボイスで今日もせっせとあちこちにトラップを仕掛けてきた相方“小関 麗奈”を糾弾すれば、相対する麗奈はお手本のような高笑いを披露しつつ彼女への挑発を繰り返す。

 いつもの光景といえば光景でもはやこのじゃれ合いの騒がしさもBGMにして意識の外に置いておくのも手慣れたものなのだが―――今日はちょっとだけ趣向が違うらしい。

 

「くっ、何で正義の魅力を分かってくれないんだ―――比企谷さんからも何とか言ってくれ!!」

 

「はんっ、自分で説得できずに他人に縋るなんて本当に無様ね―――戦闘員1号、ビシッと悪の魅力をこいつに教えてやりなさい!!」

 

 ポチポチせっせと書類や経理、応対メールの返信にスケジュール管理をしていた俺の背中にびったりとくっついてそんな事を言い始める二人に強制的に作業を中断させられ、ちょっとだけ驚いてしまった。

 いつもなら二人で喧々諤々やりあって最終的には喉が渇いたからとかで二人で仲良くティータイムに入ったりして戦隊モノ談議を始める二人の新パターンに驚いてしまった。だが、気が付けば時計はとっくに三時を過ぎていて一服も忘れて仕事をしていたらしい事に気が付かされたので休憩ついでに付き合ってやるかとも思い直して二人に椅子を反転させて向き直る。

 

「……んで、俺はどっちの味方をすればいいんだ?」

 

「「私に決まってるでしょ(だろ)!!」」

 

 何気なく零した疑問は息ぴったりのハミングによってお叱りを受ける。仲良すぎでしょ、なんて苦笑を零しつつもギラギラと目を光らせて迫る二人をちょっとだけ脇に寄せてコーヒーを入れるため席を立つ。二人には何がいいかと聞けば仲良くココアとの返答。仲良きことは美しきかな也。

 

 ふんわりと甘く優しいココアの香りと香ばしいコーヒーの香りが事務所に立ち込め、なんとなくホッとしつつもソファーに腰を下ろせば対談のように向いに座った二人から強い視線が向けられる。そんな二人が火花を散らしながら可愛らしい牽制をし合いつつココアを呑んでいるのを眺めながら考えてみる。

 

さて―――俺は、選ぶとしたらどっちの味方になるべきだろうか?

 

 

――――― 

 

   ・正義の味方

 

 → ・悪の味方

 

――――― 

 

OK?

 

→yes

 

―――――

 

 

 

 

 

「……まぁ、どっちかといえば俺はダークヒーロー派だな」

 

 

「そ、そんなっ!!」

 

「あーっはっはっはっは、分かってるじゃない戦闘員1号!!」

 

 心の底から裏切られた事を信じられない光と喜色満面で飛び上がってこっちのソファに移動してくる麗奈。あまりの嬉しさにヘッドロックのつもりがただ抱き着いてるだけになってるがソレでいいのか悪役アイドル。可愛すぎるぞ、悪役アイドル…。

 そんな俺の独白は拾われることも無く恨めし気にこちらを睨む正義の味方に苦笑を漏らしつつコーヒーを啜って一拍考える。

 

 まぁ、純正の正義ヒーローに心をときめかせなかった訳ではない。俺だって最初はそこそこに純粋だったので最初はそっち派だったが、やはり中二レベルが上がるたびに好きになっていくのはダークヒーローであったように思う。いや、普通に世間の冷たさを理解し始めてからあのやさぐれたり、苦悩する姿に自分を重ね始めた痛い子その1ってだけなのだろうが……まあ、どっちかと問われればそっち派なのが正直な所。

 

 そんな童心を思い出しつつ勝手にホンワカしみじみしているとふと思う。―――いま、悪の道に進むなら俺はそうするだろうか?

 

「―――まずは、あれだな。取り合えず構成員と組織がある一定の規模であるとしたら最初にするのは全構成員の人質を取るところからだな」

 

「「えっ?」」

 

 満面の笑みを浮かべていた麗奈と、恨めし気に睨んでいた光がきょとんとした声を出すが構わずに思い浮かぶ最適解をつらつらと夢想していく。やっぱり一番恐ろしいのは身内からの裏切りだ。まずは組織の気密性を維持するために裏切りがバレれば自分ではない大切なモノが害されるという恐怖で忠誠心を手中に収めて管理できる人材が好ましい。ただ暴れたいだけの人種はもっと使い捨てとして効率的な出番がいくらでもあるので、人選はやはり大切だ。

 

「その条件を満たした首輪付きの人間だけを組織に組み込んで―――ヒーローが倒すたびにその人間の人質を見せしめにする動画を送って精神的に倒すことを戸惑わせる。迷いが生まれれば人間は脆い。倒すまでは行かなくても負傷まで自爆で追い込ませれば御の字だな……。後は、それすら慣れてきたり見捨てるような立派な正義の味方だった時には次のプランだ」

 

「な、なにをいってんのよ、ア、アンタは…」

 

「そ、そんな事、人として許されないよ……」

 

 俺の初期プランに戸惑った二人が零した言葉に首を傾げる。ロマンは無いだろうがやはりこうするのが一番効率的だと思うのだが二人には別のプランがあるのかもしれない。気にせずにそのままコーヒーを啜りつつ次のプランを説明していく。

 

「まあ、ソレだけで鋼のヒーローが参る訳ないしな。次はソイツの身内を徹底的に調べ上げて動行の全てを記録した資料を送りつける。そいつだけでなくソイツの所属組織の人間全ての家族構成を調べられれば裏切りを誘えて話は早いんだが、とりあえずはソイツの関わる全てを調べている事を見せつける。――――で、ヒーロー様が動く度に一人ずつ身内を襲っていく。

 身内がいなければ、通ってる弁当屋でも居酒屋でもなんでもいい。お前が関われば全ての人間がターゲットだと教え込んで、孤立するようになってからが肝だな」

 

「そうして孤立しても戦い続ける人間だったら―――あとはもう簡単ですね?」

 

「「ひっ!!」」

 

 

 俺のプランを引き継ぐように言葉を紡ぐ可愛らしい声の持ち主“千川 ちひろ”さんが割って入った事で二人は息を呑んで肩をすくませた。確かに急に会話に入ってこられるとビビるよな。わかるわかる。

 そんな俺の独白を知ってか知らずか、熱々のコーヒーを自分で入れてきたちひろさんはニマニマと楽しそうにソファに腰を下ろして続きを引き継いでくれる。

 

「完全無欠に正義の為に人間性を捨てたモノなんてもはやモンスターと変わりありません。その活動のせいで多くの人間が死んだことを大々的に広告してやればあっという間にその人物は“ヒーロー”という肩書から“大量殺人の偽善者”となり果てますからねぇ…。

 

 そこまでいけばこちらの物です。被害を恐れず“正義のため”暴れる化け物を徹底的に批判する世論を作れば“世界の敵”は入れ替わって彼の事を迫害してくれるでしょうから彼は休息すらもままならず擦り切れていきます。

 

 自分に石をぶつけてくる人間の為に全てを捨て去ったのに最終的にその人間から疎まれるアイデンティティの崩壊。そして、彼がせっせと破壊活動をしてくれた痕跡を情報媒体を介して広め、守るべきはずだった民衆は敵となり―――いつの間にか自分が“世間にとっての悪”になっていた、なんて思いもしないでしょうからねぇ?」

 

 つらつらと語る彼女のストーリーは全く自分の思い描く通りの内容でやはり意地の悪さは同レベルだと認識させられ笑ってしまう。

“正義が最後にかならず勝つ”?

 

 素晴らしい。まったくもってその通りで、そうであって欲しいものだ。ならば――――正義と悪をすり替えれば必ず勝てるという理想の数式を使わない手はないだろう?

 

 少なくとも、大切なモノを全てを大義の元に犠牲にして戦い続け、何かを滅ぼそうと動く人間は“狂人”だ。そんな人間の来歴を上げるだけで決着は勝手に世間が付けてくれるだろう。彼を保護している団体だってそこまでいけば彼を守るのではなく切る捨てるはず。

 

 正しく正義を貫いたヒーローを殺すのは実に簡単だ。

 

 馬鹿でも正義は務まるが、悪は賢くなければ務まらない。

 

 自然淘汰に諸行無常。

 

 まさにこの世は“正しく”、“平等”に出来ている。

 

 そんな完璧なプランを俺とちひろさんでククク、チヒヒと笑い合っていると隣から呻く声が聞こえてきた事に驚いて隣に目を向ければ唸りながら頭を抱える麗奈が蹲っている。

 

「ど、どうした? さっきまでめっちゃ元気だったのに……」

 

「麗奈、目を覚ますんだ!! そいつらは、その組織は君がいちゃいけない!! お前が抱いた理想の悪の道っていうのはそんな道を踏み外したものだったのか!?」

 

「う、うぅぅぅ、うるさい。うるさい。うるさいぃのよぉぉ……私はっ、わたしは―――っ!!」

 

「れいなーーーっ!!」

 

 目に涙を溜めながら絶叫する光と苦悶の表情と共にこちらも涙をこらえる様に叫ぶ麗奈。やがて、何かに耐え切れなくなったかのように走り出して事務所を出ていく彼女を光が追いかけていく事であれだけ騒がしかった事務所はあっという間に静寂に包まれてしまった。

 そんな思春期の青春のワンシーンにあっけに取られつつも二人が出ていった扉を見つつじゅるじゅると俺たちのコーヒーを啜る音だけが響く。

 

「………なんだったんすかね?」

 

「……まぁ、あの年頃の子は多感だから何か思う所があったんじゃないですか?」

 

 問いを投げかけたちひろさんは興味もなさそうに茶菓子をもぐもぐして我関せずといった風情。あんな光景を前になんて無関心なのかとこのサイコパスに呆れつつ俺も茶菓子を突き始めた。

 

 今日もこの事務所は平和である。

 




(・ω・)へへへ、評価してくれないとチッヒが来ちゃうぞ☆彡
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