デレマス短話集   作:緑茶P

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(;^ω^)はぁっ、はぁっ、はぁっ―――間に合った。

沼主どもからのリクエストに、まにあったぜ。

たっしー氏からは十時ん、雪見氏からはみりあ。

沖竹さんの時子様は後編だね!!


という訳で、今日も脳みそ空っぽではろうぃんハロウィンハロウィンしてください(*''ω''*)ハロウィン!!


はろうぃん☆はろうぃん 前編

 季節は移ろい、うだる様な熱気は蜃気楼のように消え去って、あっという間に木枯らしが吹きすさぶ秋まで葉っぱと一緒に散っていく今日この頃。

 あの窓から見える最後の葉っぱが散る頃には俺このバイト辞めるんだ、なんて嘯いてみれば所属アイドル達がその木を絵やら接着剤やら彫像やらコーティング等で逆にエントランス前を彩りまくる騒ぎを起こして常務に揃ってボコボコにされてから早数日の事だ。

 

 今度はこの都内に燦然と聳える346事務所の中で―――お化けが大量発生して、姦しく社内をうろついている。………ほんとにコイツ等、3日に一回はお祭り騒ぎをしなけりゃ気が済まないんだろうか?

 

 魔女に人狼、化け猫にゾンビとフランケンシュタイン。ジャックオーランタンに鬼、妖精から幽霊までメジャー何処からマイナー。古今和洋と節操のない程にかき集めた“モンスター”の仮装に身を包んだ彼女達はお互いの姿に大いにはしゃぎながら笑い合う姿に小さく溜息を漏らしつつ隣でソレを満足げに見つめながら頷く上司‘sを横目で伺う。

 

「……ふむ。完成度といい、それぞれのキャラクターを掴んだデザインといい中々の出来だな。これならば、ナイトパレードのメインとしても十分な出来栄えといっていいだろう。―――下準備は整っているんだろうな、武内」

 

「はい、入場行進からステージでの特設ライブ。そして、エンディング後の促販まで抜かりはありません。常務にもご満足いただける仕上がりは保証いたします」

 

「広報、営業共に告知は徹底させましたのでそっちも心配はないと思います。……ただ、予想よりも入場者が多く警備や誘導。飲食や手洗い場などの不足が予測されるので早めに簡易の露店や簡易トイレを増設した方が当日の混乱は少ないかもしれませんね?」

 

「分かった。早急に対処させよう。後は、その後の販売戦略についてだが―――」

 

 無邪気に笑い合うアイドル達の横で滔々と販売戦略について打ち合わせを行う姿を見ているとこの人たちもやはり芸能関係の人間を“商品”として取り扱うプロフェッショナルなのだなぁ、と他人事のようにしみじみ思う。が、先ほどの会話から分かるようにただただいつものアイドル達の趣味のイベントという訳でなく今回はれっきとした仕事として彼女達は仮装に勤しんでいるのである。

 

 東京都内にある長年続いた遊園地が廃業となるにあたってその土地を買い取り、大規模な予算を導入して新設されたテーマパーク。―――その名も“346パーク”。

 

 ネーミングセンスはともかくとして、この博打にも似た常務主導の取り組みというのは意外にも結構な大反響となって洒落にならない利益を上げている。最新鋭の技術を詰め込んだ遊戯施設に、膨大なタレントを抱えている346プロダクションのトップランカーから駆け出しまでを使った多くのステージは飽きさせる事無く観客を沸かせ続けているのだからやっぱり常務の経営手腕は恐るべきといった所だろう。というか、リゾートといいファッションブランドといい一体いくつ系列店を持ってるのか怖くて聞けないまである。

 

 そんな中で、かつてオープニングパレードのメインを張らせて貰った事のあるウチの部署は結構な頻度でこういった行事ごとにお呼ばれしていて今回の催しは―――“ハロウィン”であった。

 

 まあ、有体もなく言えば海外の“お盆”的なアレで今やすっかり仮装大会の名目となったイベントだ。現代人にココまで広がったのは変身願望を多くの人間が抱えてしまった生きずらさや欲求不満の表れがお墨付きを得られたためであるとか色々と言われているが詳しくは知らん。2chかうぃきでも調べてくれ。

 とにもかくにも、俺にとっての目下の問題はクソ忙しい中で急にこのイベントをねじ込まれたせいで更に厳しい仕事量になった事と―――もう一つの“名目”がウチのアイドル達に与えられてしまった事なのである。

 

 そんな事をつらつらと死んだ目で考えていると、ニマニマと満面の笑みでこちらによって来る少女達。

 

 ほら見ろ、やっぱり碌な行事じゃありゃしない。

 

 近づいてきたのは――――

 

 

→ ・獣っぽい耳を生やした普段から悪戯三昧の極悪コンビ

 

  ・背中に蝙蝠の羽をつけ、可愛らしい尻尾を揺らす優等生少女

 

  ・鬼の角を生やした元気いっぱいの小鬼達

 

 

――――― 

 

 

 

「「ひっきがやーさーん~!! トリックオアトリート!」」

 

「お前らはいつだって悪戯三昧だろ……ほれ、菓子やるから大人しくしてろ」

 

「「えぇ~~、つまんなーい!!」」

 

 だが、攻め方が分かってる以上は解決法もある訳で。ソレを俺が用意していないわけもなく脇に寄せていた段ボールから包み紙で包装されたクッキーだのマフィンだのが入ったお菓子を雑に放り投げれば二人“赤城 みりあ”と“城ヶ崎 莉嘉”は心底つまらなそうに抗議の声を上げる。

 それを見ていた周囲の反応も様々でつまらなそうに舌を鳴らすのもいれば、お菓子の存在に目を輝かせる者まで多種多様。というか、それだけでなんかを企んでいた組と無邪気に楽しんでいる組とで見分けがつくのが何とも言えずつい苦笑してしまう。

 

「ていうか、なにこれ。めっちゃ手が込んでる!! 超かわいい手作りじゃん!!」

 

「あっ、ホントだ!!……ハチ君ってお菓子作れたっけ?」

 

「馬鹿言うな。十時とかに作って貰ったんだよ」

 

 ブーブー文句を言う割にはお菓子自体は嬉しかったのか中身をしげしげと検分した二人が声を上げるのに肩を竦めてあっさりネタばらし。今日の日の為に営業帰りにお菓子の業務用の奴を箱買いしようとしたら普通に十時に怒られ、材料費その他倍ドンの手作りお菓子と相成った。どうにもブラック〇サンダーを配って終わりというのは許されなかったらしい。

 

 まあ、それでもその他の有志を募った結果、結構集まったらしく大量のお菓子を寮の厨房を借りて作りラッピングまでして今日の二人の手元に配った可愛らしいモノとなったのだが、試しに一個試食させて貰ったが味も折り紙付きなので遠慮なく齧り付いた二人も満面の笑顔でガフガフと食らいついている。

 

「うーん! 美味しい!!」

 

「お代わり!!」

 

「そう言うシステムじゃねーよ」

 

 あっという間に完食した二人が段ボールに伸ばした手をぺしりと撃ち落とせば、不満げに頬を膨らませる事数舜。今度は何を考えたのか二人でゴソゴソ作戦会議を始めてニンマリと笑いつつ部屋の外へ出ていき――――慌てた様子で戻ってきた。

 

「いまここにみりあ達が来なかった!?」

 

「……はぁ? 何をいって 」

 

「ばっかもーん!! ソイツ等は偽物だよ!! 本物の莉嘉たちはまだお菓子を貰ってないの!!」

 

「だから!!」

 

「今度こそ!!」

 

「「トリック!!」」 「「オア!!」」 「「トリート!!」」

 

「漫才なら他所でやれ、馬鹿共」

 

「「はぐぅっ」」

 

 完璧なコンビ芸を披露してお菓子強奪か悪戯を目論む性悪娘達の口にもう一個の箱から出した黒き稲妻を放り込んで黙らせる。ザクザク触感とほろ苦い甘さが病みつきになるその俺の一押しチョコ。止められはしたが個人的には久々に食べたくて買ってきた箱がこんな形で役に立つとは―――やはり最強か。

 

 というか、君達どこでそんな芸覚えてくるの? むしろ最近はちょっと面白くなってきて心の中でイイネを押しちゃうレベル。

 

「むぐー、美味しいけど……こういうんじゃないんだよなぁ」

 

「ねー、ハチ君って本当に乙女心を分かってないよね~?」

 

「あのえげつない悪戯の数々にどんな乙女心が含まれてたのか是非とも聞かせて貰いてぇもんだよ、俺は」

 

 床に直座りでボリボリと口の中でチョコをかみ砕きながらぶつくさ文句を零すワーウルフとワーキャット(ライオン?)の少女達に視線を合わせる様にかがみ込んでジト目を向ければそれこそキョトンとした様子で目を丸くした二人はクスクス笑いながら俺の首っ玉に飛びついてくる。

 

 油断させた所に襲いかかって来るとは――不覚である。

 

 その勢いに押し倒された俺に揃って跨った二人は本当に楽しそうに笑いながらあっけらかんと言い放つ。

 

 

「「そんなの――もっとハチ君と遊びたいからに決まってんじゃん!!」」

 

 

 そんな無邪気で可愛らしく、太陽みたいに裏表のない表情で言い放つ“モンスター”達に俺は一瞬だけ目を見開き―――苦笑と共にゲラゲラ笑う二人に降参をするように手を上げた。

 

 そんな二人に触発されたのか、こっちに我先にと尻尾やらマントを振り乱して近づいてくるちびっこ怪物達の相手は随分と骨が折れそうだとこの先の筋肉痛などの被害に思いを馳せて八つ当たりのように悪童二人に軽いデコピンでお仕置きをするのであった、とさ。

 

 

 あと、どさくさに紛れていい歳した奴らも混ざって来るな。断固として相手はしないぞ、馬鹿やろう。

 

 

――――――――――――

 

 

 

「ありゃりゃ、これまた随分と派手にやられましたねぇ…」

 

「お陰様でお菓子も俺の体力も完売だよ、ちくしょうめ」

 

 お子様モンスター軍団のお菓子強奪&悪戯という名のじゃれつきを単身でさばき切り、心行くまで遊んだ彼女達はパレードに向けてのお色直しでようやく哀れな生贄を開放してくれた。その頃にはあれだけあったお菓子もすっからかんで、俺の体力も底をついてべちゃりと地べたに寝そべっていた所で聞きなれた声が苦笑と共に耳朶を叩き、それに吊られるように顔を上げれば予想通りというべきか、栗色の髪を二つに分けた柔らかい顔つきの女“十時 愛梨”が覗き込むように微笑んでこちらを見つめているのと視線がかち合う。

 

 かくいう彼女こそが初代シンデレラに輝いたアイドルであり、あの力作のお菓子作りを主導してくれた人物である。そんな彼女に軽口を何とか返せばそれすらも可笑しそうに笑って俺の頬を付いてくる。

 

「いいじゃないですか。私の自慢のお菓子よりもハチ君に構って貰いたいっていう子があんなに居たんですから~? 妬けちゃいますねぇ、むにむにうりうり~?」

 

「お菓子も強奪されて、悪戯もされるとかルールバグってない? おかしくない? 等価交換の原則はいつねじ曲がっちゃったのん?」

 

「えへへ、まあ、おおむね皆にもお菓子の評判も上々でよかったです。――それで、お菓子が無いハチ君は私に何をくれるんですかねぇ~?」

 

「………ブラック〇ンダーならポケットにまだ一個あります」

 

「い・た・ず・ら 決定 ですね~♡」

 

 なんという事だろうか。運営側だと思っていたこの女、ちゃっかりとビィランに鞍替えしていやがった。いやね、確かにすっかり他の人間の個数を数えて作って貰ってたからお前の分を忘れてた俺も悪いけどね? あ、でも、ほら、お礼にリンゴマークのカード上げたしね? あれ、ちょ、十時さ、―――

 

「ぐえっ」

 

「まったく、いい加減に自分の事も相方の事も考えれるようになってくださいよ~?」

 

 倒れ伏す俺の頭を両手で掴んだので何をされるかと思い、思わず目を閉じたのだが意外にも痛覚はいつまでも働きかけてくる事なく代わりに後頭部に柔らかくて温い感覚に包まれた事を感じて恐る恐る目を開ければプンスコといった感じに頬を膨らませる十時が目に入る。

 

 べちべちと八つ当たりなのか、気づかいなのか分からない感じで汗をふき取るハンカチを俺の顔に当てつつカボチャを模した魔女のローブに包まれた腿で俺の頭が馴染む場所を探してくれている。

 

 まあ、なんというか、随分と献身的な“悪戯”もあったもんだと苦笑を零しつつもその手を緩くタップするついでにとりあえず謝っておく。

 

「いや、まあソレに関しては悪かったよ。あと、改めてお菓子助かった。箱買いのチョコじゃ流石に味気なかったよな」

 

「………ふふっ、まあ、及第点といった所ですかね。お菓子に関しては作った時に皆で一杯味見したから気にしなくていいですよ~? こういうのってやっぱりあんな風に喜んで貰えるのが嬉しくて作るものですから―――その点では大成功だったでしょう?」

 

 そう微笑む彼女にあの馬鹿みたいに笑いながら美味い美味いと騒ぐちびっこ達の表情が思い出され笑ってしまう。あれがもう少し大人しければ世間で言う最高の年少アイドルなのだろうけれども……まあ、身内の前くらいでは年相応に我がままでも構わないとおもうくらいには俺はあいつ等の事をそれなりに可愛くおもっているのだ。

 

 そんな独白を知ってか知らずか優しく額を撫でて答える彼女はしばし無言のまま微笑んで、空気を換える様にいつものおっとりした顔にちょっとだけ意地悪気な色を足して俺の顔を覗き込む。

 

「ところで、ハチ君はまだ“トリックオアトリート”してませんよねぇ?」

 

「……いや、俺は別に」

 

「し て ま せ ん よ ね ?」

 

 にこやかながら圧倒的な圧力。ついでに言えば顔を両手でがっちり挟まれ言うまで逃がさないと言わんばかりの姿勢に息を呑む。

 

え、ナニコレ。言うまで逃がして貰えない感じ? 普通に怖いんだが。

 

「………ちなみに、言うと何が出てくるんだ?」

 

「言ってみたら分かりますよぉ~?」

 

「なにそれ、普通に怖…ぃでででで、分かった! 分かったからこめかみ潰すな!!――――と、トリックオアトリート?」

 

「んふふふ、いっつも頑張ってるハチ君には――とっても甘い、あま~いお菓子を用意してるんですよ~?」

 

「お?」

 

 グニグニ押し込まれるこめかみの痛さに根負けして恐る恐る合言葉を呟けばパッとその圧力は無くなって、悪戯を成功させた少女のように微笑む十時がそんな事を言うので思わず安堵の息を吐いてしまった。

 なんだ、あれだけ勿体ぶるものだから一体何をされるのかと思って身を竦めてしまったが何の事はなく、ただ余分に作ったお菓子を俺にとって置いてくれていたという話らしい。

 

 ニコニコと微笑む十時に驚かすなと文句を言おうと口を開こうとしたところでおかしなことに気が付く。

 

 

「――――なんか近くない?」

 

「愛梨特製の“お菓子”を食べるんですから―――これで、いいんですよ~?」

 

 

 そんな溶けるような温度の言葉と近付く彼女の体温とお菓子の様な甘い匂い。それが何を意味するか気が付いた時には既に時は遅く、俺の顔は―――

 

 

「甘くて~、フカフカで~、柔らかくて、癖になっちゃう最高のデザート。

 

 目一杯、堪能してくださいね♡」

 

 

 詳細は省くが、おそらくこの世の男子が羨望して止まない最大級のマシュマロを息がつまる程に味合わされた事だけはここにご報告させて頂こう。

 

 

 




(´ー`)はろうぃん!!

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