デレマス短話集   作:緑茶P

124 / 178
( *´艸`)今日は泰葉ちゃんの知られざる過去回想!!

 まだまだ初心だった泰葉を見てみんなの心もほっこりさせちゃうぞ!!


約束 後 ①

 私“岡崎 泰葉”の人生の全ては大体がテレビ局のバックナンバーか舞台公演の録画された記録媒体にあるものが全てだと言ってよかった。

 

 物心ついた頃には夫婦揃って演者だった両親の影響かスタジオや芸能スクールで“子役”になるべくして日常は形作られていたし、ソレに何の疑問を抱くことも無く生活していたので5歳の頃に唐突に降って湧いた“初主演”というオファーに勧められるままに頷いたのがその人生の始まりだろうか?

 

 有名俳優同士のサラブレットというネームバリューもあっただろうし、両親の顔を立てるという大人の事情も多分にあったはずだが―――当時、自分の周囲を見回しても自分以上に芝居の上手い子がいなかったという事実も要因として無くは無かったと思いたい。

 

 何はともあれ、初めて子役としてのドラマ出演というのは大反響と満員御礼のまま幕を下ろして当時の最高視聴率まで獲得するに至り、私は一躍“時の人”として日本中にその名を轟かせる事となった。その反響たるや凄まじいモノで、子供ながらにあのスケジュールをこなしていた事に改めて振り返るとドン引きモノである。

 

 最低限の学業に、苛烈なレッスン。同世代の子供の冷たい視線と、大人達からの満面の笑みと称賛。そして、多忙な両親とのたまにある面会で零される演技へのお小言と―――“誰にも心を許すな”という実用的なアドバイス。だが、碌に育てて貰った覚えもない両親から与えられたその言葉だけは実に有意義なモノだった。

 

 売れていれば、色んな思惑が入り乱れる。にこやかにすり寄る人間は厄介事や悪意を隠していて、気味の悪い程に優しい笑顔で自分を甘やかすマネージャーはいつでも自分が癇癪を起すのを恐れている。逆に、売れている事を鼻にかけていると思われてキツくあたる監督や共演者も多くいる。そんな環境の中でその言葉は至って真っ当な“親の愛”ともいえる至言だった。

 

 端から心を開いていなければ、何かされると思っていれば―――“裏切られた”なんて悲しみは背負う事なく平静でいられたのだから。

 

 甘言を弄する人間には“子供っぽく無知に”、私のご機嫌を過敏に気にする人間には“大人っぽい良い子で”、悪意をもって敵対する人間には“しおらしく服従を”。こんな生活に比べれば台本のある舞台など、つける仮面を迷わず済むぶん楽なものだ。だから、無味無臭な私の芸能生活はつつがなく華々しく過ぎていって―――十年もたたない内に静かにその人気は風化していった。

 

 何があった訳でもない。スキャンダルどころか遊びに行った記憶というのもほぼない枯れた生活を送って学校やスタジオでの収録などを繰り返しているウチに少しずつ出演依頼は目減りしていき、遂にはあれだけ忙しかった日々は自宅で過ごすだけというのも珍しくない様な有様になったのである。

 

 まあ、有体に言えば―――世間に飽きられたという奴だろう。

 

 話題性も、人気作もいつかは風化して忘れ去られて新しい刺激を求めて人は移ろっていく。こうなれば周りの人間も素直なモノで、すり寄って猫撫で声を出していたどこそこの番組プロデューサーとやらは影も見なくなり、あれだけ小まめにご機嫌伺いをしていたマネージャーはメールで申し訳程度に埋まったスケジュールを送って適当な励ましを掛けるのみとなった。むしろ、律儀に嫌味を言いに来る元共演者たちなんかは逆に義理堅く感じるくらい。

 

そんな日々で暇にあかせて作っていたドールハウス作りを一旦やめて、テレビをつけてみれば新作映画に抜擢された新人子役が番宣をたどたどしくも一生懸命にこなしているのを見て思わず笑ってしまう。

 

「ようこそ、地獄の芸能界に」

 

 そんな事を厭味ったらしく可愛くない顔で言えてしまうあたり自分も随分とこの業界に染まってしまったようだ、なんて他人事のように鼻を鳴らして背をうんと伸ばして窓の外を眺めた。

 

 晴天がどこまでも続く青空に小鳥が呑気に羽ばたいてるのを見て知らず息が漏れる。

 

 幼少の頃からここまで駆け抜けてきた。

 

 これ以外の全てを切り捨ててきた。

 

 学校も、友人も、一般家庭のような温かい両親も、遊びも、ぜんぶ―――全部だ。

 

 だから、単純に“舞台”が無くなった今の自分はモノの見事にすっからかん。悔しいとか、悲しいとか、そういう感情すら仮面でしか被った事が無い自分は、自分のためにその感情を発露する方法がさっぱり分からない本当の人形だった。

 

 これから、どうしたものか。そんな自分自身の事を投げやりに考えつつ手慰みに量産した人形を指先でコトリと倒したのと携帯の着信が鳴ったのは同時だった。

 

 久しくなることも無かったその連絡ツール。友人もおらず、両親は滅多な事では連絡を寄越さない。共演者という名のライバルなんてもってのほか。ならば、残った可能性はめっきりご無沙汰になったマネージャーぐらいのものだが―――いい予感はしない。

 

 進まない気分を無理やり奮い起こしてソファーの上に投げ出していたソレを手に取れば、ほらやっぱり。

 

【担当者変更について】

 

 そんな明確で簡潔な題名のメールがなんだか妙に面白くて私はケラケラと笑った。

 

 一人きりで、最低限の調度しかない部屋に響くその声は妙に響き渡って私はもっとケラケラと嗤った。

 

 飽きたら捨てられる、よくある人形の末路は、テレビの向こうで微笑む君の未来だよ?

 

 聞こえる訳もない先達からの忠告を、輝く子役に呪詛のように吐き捨てた。

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

 

 かつては自分のスケジュールを中心に全ての日程を決めていたはずのマネージャーがしごく面倒くさそうに日時を指定してきた事に苦笑しつつも承諾したその日。メールで随分と遠回しに書かれていたのを読む限りでは“私も暇じゃないので、新人に引き継ぎますね?”とのこと。いやはや、芸能界とは売れないタレントにはかくも無情なモノらしい。

 

 というか、まあ、彼女の気持ちも分からないではない。あれだけの激務を必死にこなして、子供のお守までやり切ったのにその結果が賞味期限切れの私を担当しているせいで上の方から随分と突かれているんじゃやり切れないだろう。

 ならば、経験豊富なタレントに新人をつけ実践訓練させるというお題目で切り離すのが一番綺麗な締め方という訳だ。

 

 そんな筋書きに苦笑しつつも久々に訪れた346の豪奢なエントランスと時計塔を通り抜けて指定された会議室にたどり着く。既に現マネージャーと後釜さんがいるらしく部屋の中からは人の気配と微かな会話が聞こえてくる。今から島流しを言い渡されるであろう現実にちょっとだけ抵抗するように深く深呼吸をし、静かにその扉をノックして押し開いた先で―――見慣れた妙齢のマネージャーの隣に座る芸能関係者とは思えないほどの偉丈夫と、目が合った。

 

 寡黙そうなのに、まっすぐと人を見るその目が―――妙に居心地の悪さを感じた。

 

「あぁ、学校とか忙しいのに急に呼び出してごめんなさいね? 本当に申し訳ないんだけど、急に担当が増えちゃってどうしても泰葉ちゃんのケアに支障が出そうだったから新しく来たアシストマネージャー君をとりあえずの顔合わせだけでも紹介したくて……でも、心配しないで、メインはそのまま私が継続だから彼とのやり取りで何か問題があればすぐに飛んでいくつもりだから!!」

 

「……いえ、そんな。田代さんが忙しいのは凄く良く分かってますのでむしろ申し訳ないくらいです。本当にいつもありがとうございます」

 

 学校にも碌に行っていないことくらい知っている癖に白々しい、だなんて顔に出すほど私の芸歴は短くない。それに、字面と彼女の振舞いだけで言えばその姿は完璧に長年連れ添ったタレントとの別れを惜しむ姿そのままなのだからきっと舞台に上がってもこの人なら十分に食っていける事だろう。

 そんな思考を完璧な笑顔で隠して私は彼女に勧められるままに椅子に腰かけ、ようやく件の新人さんとの挨拶を交わした。

 

「初めまして、“岡崎 泰葉”と言います。色々と至らない所はあると思うのですが、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします」

 

「こちらこそ……ご挨拶が遅れて申し訳ありません。この度、岡崎さんのアシストマネージャーを務めさせて頂く事になりました“武内 駿輔”と申します。若輩の身ではありますが誠心誠意、岡崎さんと業務に取り組ませて頂ければと思います」

 

 まるで切り抜いたお手本のように交わされた自己紹介はつつがなく名刺を交換へと移り、人当たりの柔らかい微笑みはその仏頂面で目礼されるだけに留まった。天下の岡崎泰葉の満面の笑みにその対応というのは浮足立たない人物だという事を喜んでいいのか、付き合いの悪い人間だと肩を竦めるべきか悩むところだ。

 

 そんな私たちのやり取りを傍で見ていたマネージャーはちょっとだけ眉間を顰めつつも、ソレをあっという間に厚化粧の下に隠しこんで朗らかな声で語り掛けてきた。

 

「ふふっ、少し強面だけど真面目で真摯な人だから安心してね? それで、今後の事なんだけれども―――っと、ごめんなさい。新しいタレントの急用で調整が急に入ってしまって携帯が鳴りっぱなしなの……申し訳ないんだけど、引継ぎは武内君にしておいたから今後の事は二人でお話をお願いしていいかしら?」

 

 わざとらしく鳴らせた携帯に、不甲斐ない自分を恥じるような気まずげな顔を浮かべた彼女はそんな言葉を紡ぎつつもパタパタと手元の書類や筆記用具なんかを纏めてサッと席を立ってもう扉の前にいる。むしろ、ここまで来るといっそ清々しく感じて吹き出しそうになるのを堪えながら後釜さんに向けた微笑みと同じものを使いまわす。

 

「ええ、もちろんです。むしろ―――“働き過ぎで”体を壊さないようにご自愛くださいね? (私の時もそれくらい精力的だったら嬉しかったんですが?」」

 

「…………ありがとう、気を付けるわ。泰葉ちゃんも、頑張って頂戴?(昔くらいに売れたら、考えてあげるわ?)」

 

 サラッと交わした言葉に含まれる“副音声”。コレを聞き逃すようでは芸能界はやっていけないのでしっかりそれが聞き取れるマネージャーがついていた分、私は恵まれていた。さてはて、その点で言えば―――彼はどうだろうか?

 そんな好奇心からしまった扉の音を合図に向いに座る偉丈夫を見やれば、微動だにしない姿勢で彼はこちらをまっすぐ見るばかりだ。聞き取れていなくてこうなのか、聞き取れていてこうなのかは判断が難しい所だが随分と可愛げのない新人さんだ。

 

 そんな彼からボロを引き出すために脳内で作戦会議を開こうとしていると、意外な事に先に口を開いたのは彼の方からだった。

 

「………先ほどのようなやり取りは、昔からずっとだったのでしょうか?」

 

「意外、ですね。てっきりそういう事には踏み込まないか、気が付かないタイプの方だと予想していたので……まあ、正面切っては多分初めてですね。

 子役時代は彼女、私の機嫌を損ねないために必死でしたから担当を外れる時くらいは今までの鬱憤を晴らす機会を上げようかと思いまして」

 

「……そうですか。踏み入った事をお聞きして申し訳ありません。―――改めまして、自己紹介させて頂きます。先月からアクターズ部門のマネージャー班に配属となりました武内と申します。それ以前は研修期間という事で各部門を隔年で回っていましたが、今期からこちらで正式配属となります。そして、貴方の“アシストマネージャー”という任に就かせて貰った訳ですが――――最初に確認させて頂きたい事があります」

 

「……なんでしょうか?」

 

 席から立ち上がり、折り目正しく謝罪する彼にちょっとだけ毒気を抜かれた後にもたらされた質疑にちょっとだけ警戒感が湧く。

 

 さてはて、どの案件だろうか? 芸歴? やる気? スタンス? 芸能活動続行の意思? 大穴で昔の出演作の事なんかも、なんて首筋を撫でて言いずらそうに言葉を選ぶ彼を仮面の奥から眺めて数舜。発された言葉は――

 

「なぜ、岡崎さんは……学校に行かないのでしょうか?」

 

「―――はえ?」

 

 まさかの、お説教であった。

 

 今まで、された事のない経験に目を白黒させているウチに彼は関を切ったかのように真っ直ぐに私の方を見つめつつ、カバンの中から分厚いファイル一冊分の資料を取りだして言葉を畳みかけてくる。

 

「岡崎さんを担当するにあたりあらゆる事を社内の資料で事前確認させて頂きました。出演作や雑誌の特集は勿論、レッスンから共演者の履歴などあらゆる事を、です。いずれも華々しく、実にストイックに舞台や現場に向き合っている事を感じさせるものばかりでしたが……一点だけ明らかにおざなりになっているものがありました」

 

「い、いや、それは今、あんまり関係が……「まだ、私のお話は終わっていません」……はい」

 

 今まで、どんな修羅場現場だろうが、嫌な監督に罵倒され続けリテイクを連発されようが感じた事のない嫌な汗がジワリと滲み出てくるのを感じて話の矛先をずらそうと心見るもぴしゃりと遮られて体を縮める事しか出来なかった。

 

「芸能活動に身をやつしてきた事はまごう事のない事実なのでしょうが、それが学業が得意科目以外は赤点を取っていい理由にはならないと私は考えています。勿論、得手不得手はあって当然ですし多忙な時期に多少は目を瞑らねばならない事はあります。ですが、岡崎さんは最近、仕事が無くても欠席を繰り返していますね?

 これは二年後に受験を控えている岡崎にとってはあまりいい傾向とは言えません」

 

 なんだ、コレは?

 

 なんだか、今まで感じた事のないくらいに気まずいプレッシャーが圧し掛かってきてまともに彼の事を見る事が出来ず目を伏せてしまう。

 言いたいことも、反論も、嫌味も山ほど脳裏を掠めていくのにあまりに真っ直ぐにこちらを窘める様に叱ってくる彼に何とか絞りだすことが出来たのは幼い子供が拗ねる様に口を尖らせて俯きつつ愚痴っぽい弱音だけだった。

 

「………い、いままで学校なんて碌に行ってなかったのに、急にちゃんと通い始めるのって……ダサい……じゃないですか」

 

「“立派”ではあっても、“ダサい”などという事はあり得ません」

 

「…だって、そんなの“売れてない”って言ってるようなモノじゃないですか!!」

 

「“売れていない”というのはプロデュース側の失態であって―――貴女が恥じ入るところなんて一片も存在しません!」

 

「――――――っつ!!! あ、 な、 だってっ だってっ!!」

 

 こちらの主張を一切汲み取ってくれない朴念仁に段々と苛立ちが募ってきて、八つ当たりのように噛みついた言葉は―――安っぽくて、陳腐なモノなのに 

 

誰も、掛けてくれなかったそんな一言だった。

 

 違う。 騙されるな。 思い出せ。

 

 “誰にも、心を開くな”という至言を。

 

 そんな言い訳を許容してしまえば―――“岡崎 泰葉”は取り返しのつかないくらいに、弱くなってしまう。

 

 誰よりも、強く、正確に、完璧だった。だから、全てが上手く回っていた。

 

 そんな機械仕掛けの生き方に―――そんな生ものを挟み込んではいけない。

 

 いけないはずなのに―――私の頬からは、涙がこぼれ 溜め込んでいた鬱憤が口ぎたなく零れ出て、溢れていった。

 

 アンタらが、お前ら全員が“そう”であれと言ったのだろう。

 

 両親が、スタッフが、監督が、プロデューサーが、マネージャーが、共演者が、演出家が、台本作家が、そう教え込んだ。出来なければいらないとすらも無言のまま教え込んだ。ならばやるしかないだろう。ここしか知らない人形が捨てられないために――やり切って見せたのに、

 

 アンタらはあっさりと見限った。

 

 ミスも、失敗もしないように完璧に演じきった先で―――厄介な在庫のように倉庫の奥に放り込んだ。

 

 どうすればよかった? どうしようもないじゃないか?

 

 “自分は失敗しなかった”なんてそんな慰みを胸に倉庫でしたり顔する以外に、出来る事があったというのならばもう……とっくに、やってるのだ。

 

 いまさら、そんな事を言われても―――困る。

 

 「困るん、です。いっ、今更、そんな、事を言われても……」

 

 「……ならば、自分が、あの“岡崎 泰葉”を初プロデューサーさせて頂く―――記念すべき日となりますね」

 

 私のみっともない癇癪を不愛想で仏頂面の強面のまま聞き遂げた彼は全く慣れてもいない事がまる分かりの拙い動作で私の前にしゃがみ込んで手を取り、私の顔を見上げる。だが、それでも、涙で滲んだ私の視界の先には静かなのに決して尽きそうにない熱を吐き出す光を宿して真っ直ぐにこちらを見てそんな事を嘯くのだから思わず、笑ってしまった。

 

「貴方の仕事は“アシストマネージャー”じゃ、ありませんでしたか?」

 

「既にお察しの通り、貴方の担当は自分一人になっているので……兼任という事で一つお願い致します」

 

「……ぷっ。思ったより、身勝手な人なんですね?」

 

「よく、言われます」

 

 私が意趣返しとして零した意地悪に、気まずそうに首筋を撫でる彼がおかしくて私は本当に久々に“自分の顔”で笑ってしまった。

 

 

 これが、後に“魔法使い”と呼ばれる恐れられるプロデューサーと

 

 その初の教え子として長く長く舞台の上で生涯を駆け抜けた大女優の

 

 出会いの物語。

 

 

 

 ただ、この後の打ち合わせで彼が大量の企画書をダース単位で持ってきて私をひっくり返らせた事や、真っ赤っかな私の答案用紙が改善されるまで指導されたり、不器用な父親のように毎日学校の様子を伺ってくるお節介に辟易したりと、再ブレイクするまでの二人きりの時間の物語を知る人間は、ほんの一握り。

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

『いや、あの~、勉強や学校に行くって言うのは分かるんですけど……レッスン予定でスケジュールが真っ黒って……』

 

『岡崎さんの失速の原因の一つは“子役”から“女子”への転換時期の一時的なモノだと考えています。なので、ソレを今までの分を補うためだったのですが……少し、削り――『わ~!! やります、やりますから!! そのままでいいです!!』―――そ、そうですか。ですが、友人との遊行など予定が入りましたら遠慮なく言ってください。調整いたしますので』

 

『私、友達いませんけど……?』

 

『…………すみません』

 

『謝らないでください!!』

 

 

――――――

 

 

『“声優オーディション”?……私、一応、女優なんですけど……』

 

『だからこそです。色眼鏡が無い状態で岡崎さんの演技力を声だけで知らしめる格好の機会としてコレを受けて頂きたいのです。逆境や畑違いだからこそソレを押しのける実力が試され、貴方には出来ると私は確信しています』

 

『…………なんだか、どんどんと私の扱いが上手くなってきてますねぇ』

 

 

―――――― 

 

 

『こ、この仕事のオファー……ほ、本当ですか!?』

 

『貴女の輝きを見てくれている人は、私だけではありませんから』

 

 子供の頃から何度も何度も観てきた舞台監督からの、オファー。実力だけでしか選ばないと噂されるあの人から―――端役でもチャンスを貰えた!!

 

 嬉しい、嬉しい―――嬉しいっ!!

 

 でも、心の一番奥にあるのは―――喜ぶ私を本当に優しい目で見つめてくれるこの人が心から素直に称賛してくれてる事かもしれない。

 

 それを、真正面から伝えるには――まだちょっと気恥ずかしい。

 

 

―――――― 

 

 

『……ちょっと、働き過ぎじゃありませんか?』

 

『そうでしょうか? ですが、この書類まで作れればキリが良く――』

 

『2時間前も同じこと言ってたじゃありませんか!! 駄目です、今日の残りのお仕事は明日に回してください!!』

 

『あっ……分かりました。分かりましたので、コンセントから手を離してください』

 

『分ればいいんです………ちなみに、ノートパソコンも置いて行ってくださいね?』

 

『…………はい』

 

 

―――――― 

 

 

『ロールアウト、お疲れさまでした。そして、おめでとうございます』

 

『……私、いままでやらされてたって思ってましたけど――やっぱり芝居が好きみたいです。胸が、こんなにも熱くて、あつくてっつ――ごめん、なさい。うれしい、はずなんですけど…っ』

 

『ようやく、貴女をココまで連れてくる事が出来ました。いえ、貴女だからこそここに来られた。―――本当に、ありがとうございました』

 

 

―――――― 

 

 

『もう、子供じゃないんですからそんな写真撮らなくていいですって!』

 

『一生の記念ですので……改めて高校入学、おめでとうございます。こちらは、入学祝いには少し質素ですが』

 

『これって、万年筆……もっと勉強しなさいってことですかぁ?』

 

『い、いえっ、学業はもう立派に果たされています! ただ、その、女性に贈り物となるとそういった知識に乏しくそんなものに……』

 

『ふふふっ、武内さんっぽいですね! んー、じゃあ、埋め合わせにこの後、デートしましょう!! 美味しいごはんにデザート、夜の観覧車まで付き合ってくださいね!!』

 

『―――そ、それは』

 

『ほらほらっ、行きましょう!! もう、お腹ペコペコなんです!!』

 

 

―――――― 

 

 

 

 

『武内さん、ずっと、ずっと見守っていてください。―――私、絶対に貴女の期待に応えて見せますから』

 

 

 

『私は、貴女の“プロデューサー”ですので』

 

 

 

 

―――――― 

 

 

 

 

 

 

 

 

『新しい部署の総括プロデューサーに―――任命されました』

 

 

『――――えっ?』

 




(・ω・)こいつは、ギルティ……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。