_(:3」∠)_何度も言うけど、一切やった事ないので適当に調べた内容以外は知らぬ。合っているかもしらぬ。
('ω')それでも良いという勇者はこの3時間の低クオリティ沼に進むがよい(笑)
プロデューサーにスカウトされ憧れのアイドルになってしばし経つ今日この頃。
場末の商店街で簡素なお立ち台やFランクの人気もまばらなステージバトルをユニットの真乃やめぐる達と何とかアイドルらしい活動を繰り返していたそんな日々は、下積みといえば聞こえはいいがうだつの上がらない毎日。それに随分と焦れていたように思う。
勿論、それが大切な事で、そうなっているのは自分の力量不足のせいだという事も重々承知はしていても飲み込み切れない感情からプロデューサーに強くあたってしまった未熟が今では恥ずかしい。
だが、そんな鬱屈はここ最近では嘘の様に多くの仕事や露出の機会が増えてきて今日も今日とてテレビに出演させて貰えて、少ないながらも自己PRの時間まである。
目標であるトップアイドルへと着々と実績を積み重ねていく事の出来るようになったのは―――隣で気だるげな声で電話をしている男“比企谷”さんが来てからが最も顕著だ。
元々が大手346のアシスタントだったらしいのだが、噂では問題を起こしてここに飛ばされたのを社長が拾ったという話がまことしやかに事務所に流れていた。面談の時に顔合わせしたメンバーも多くは語らないし、円香さんに至っては聞いてるこっちが驚くくらいに蛇蝎のごとく嫌っていたので不安に思ったものだ。
だが、気だるげでやる気のないその姿勢に眉をひそめたのは最初の頃だけで、いざ仕事に関われば底辺事務所だったウチに溢れるアイドル達があっという間に暇が無くなるくらいに忙しくなった事を考えれば流石に考えも変わる。
仕事も、頭の良さも、アシスタントの一線を超えない思慮深さで個々人に配慮してくれているのも感じる。そんな人間が問題を起こして飛ばされるという方が現実味が湧かないし、実際に彼を気に入っているメンバーは随分と多い。
そんな彼に当然のごとく噂の真偽を問いかける子は多いのだが、彼はいつだってニヤリと笑って“そうかもな”と答えるだけ。
だが、まあ、結局は噂だ。
最後は自分で見て、触れたモノ以上の答えは得られないのが世の常。
少なくとも自分には事務所を支えてくれる心強い仲間であると思うし、346時代のコネを使って多くの仕事やチャンスをくれる恩人。それに、なんと言っても今日は―――あの憧れの大先輩“渋谷 凛”さんに会える仕事まで用意してくれたのだから文句なんか出ようもない!!
「ええ、はい、分かりましたからいい加減切りますよ? アンタはそっちのライブに集中してください。……あー、もう、分かりましたって。はいはいはい、は~い」
「プロデューサーはなんと?」
「“最高の機会だから出来る限り凜との会話の機会を設けさせてやってください”……だとさ」
「…………それ、出来るなら、私もお願いしたい、ですね」
「先方が快諾してくれればな」
「むぅ」
長々と電話していた通話を打ち切った彼に問えば予想通りのプロデューサーの気づかいについつい食いついてしまったが、むべなく切り捨てられ唸りながら今回の企画書を睨むほかない。
無機質な紙面の上に踊る文字は『“現役アイドル”! フラワーアレンジメント格付けチェック!!』という題名とその脇に書かれた講師役として呼ばれている大物芸能人の名前。それが“渋谷 凛”さんだ。
かつて346内で定期的に行われていた総選挙ライブ。数多の強豪の中で頂点に立った“シンデレラ”の一人でありながら、引退後もフラワーアレンジメントの国際コンクールに受賞を繰り返したり実家の花屋を切り盛りする才女というに相応しい人。だけど、テレビ越しで見る彼女はいつだって気取らないでクールに、それでいて華やかに人々を引き込む人間性を持っていた。
ここだけの話で言えば、自分のファッションや振る舞いも多分に彼女への憧れを含んでいる。
そんな憧れの人が来てくれる企画に自分がその他大勢の一人とはいえ呼ばれるのも、その人ともしかしたら個人的にお話できるかもなんて思えば興奮は嫌でも止まりません。そんな中での彼の言葉は冷や水というには十分すぎるでしょう。
「まあ、余計な事は考えないで企画に集中しとけ。収録中にあんま酷い出来だとその可能性すら潰えるぞ」
「むっ、ご安心ください。今日の為に凛世さんに付きっ切りで一週間華道の特訓をして貰った私に死角はありません」
「付け焼刃っていうんだよなぁ、それ。まぁ、自信があるなら結構。精々、最後の方まで残れば個人指導まで行けるだろ、知らんけど」
「………勝ち上らねば」
タブレットをタプタプしつつ意地悪を言う彼をちょっとだけ恨めしげに睨みつつも、言われたおざなりな激励に闘志を燃やす。あの憧れ続けた彼女と会うためには先ずは大前提として初戦から勝たねばなりません。そう思えばどうしたってやる気は漲り―――漲りすぎて少々、お花摘みに行きたい気分になってきた…。
「――すぐ戻ります」
「はいよ、下痢止めが必要なら早めに行ってくれ」
「ぶっとばしますよ?」
「わりかし冗談じゃない“あるある”なんだよなぁ……」
減らない口の彼にペットボトルの蓋を投げつけつつ扉を荒っぽく締める。優秀なのは分かりますが、あのデリカシーのなさは相も変わらず直らないのは問題です。
今度、こういう時の為に果穂ちゃんの言ってたペットボトルの蓋をはじき出すおもちゃを常備しておいた方がいいかもしれないと考えつつ私は案内板に従って歩を進めたのであった。
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「ふぅ、この、緊張してくると何でもないのに感じる奴はなんなんでしょうか?」
しばし、花園で粘って見たはいいものの少量で事足りてしまった。こうなるとさっきの彼の揶揄した“緊張”というモノを自分が感じているのを嫌でも実感してしまいます。
意識をすればズシリと圧し掛かる重み。だけど、ソレに抗うには真摯に積み重ねていく事しか方法がない事を自分は知っているし、それ以外を知ろうとも思えないのだ。
それが過ぎてプロデューサーや彼や仲間達に迷惑をかける事があることは自覚しているけど、自分はやっぱりこの方法しか分からない。それに―――彼らもソレを笑って許し、付き合ってくれる事を知ってるから、鏡に映る弱気になりそうな自分のほっぺを強めに叩き気合を入れる。
「―――がんばれ、“風野 灯織”」
「―――うん、今日はがんばって」
「……うん?」
「気合、入ってるね」
真っ直ぐに自分に向けたエールになぜか返ってきた返答と、ポンッと肩に置かれた華奢で温かい手の感触に首を傾げつつ振り向けば―――
瞳どころが脳内に刻み込まれた、その強く射貫くような茶色い瞳と沙耶の様に艶やかな長髪。柔らかいのに涼やかなサボンの香り。大きくない呟かれる様な声がなぜか万人の耳を釘づける魅力を持つ、憧れ。
元トップアイドル“渋谷 凛”が仄かに微笑みながら私の肩を叩いていた。
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「ミルクティーで大丈夫だった?」
「は、はい…」
ガコロン、なんて情緒の無い音を響かせた自販機から取り出した缶を私に向かって差し出してくる彼女は小さく微笑み、自分の分であろう派手派手しい色の缶コーヒーを購入しつつさっそくタブを開けてソレに口をつけた。特徴的だったのは飲んだ後にちょっとだけ眉を顰めて苦笑いをこちらに向けてきた事だろうか。
「ふふっ、コーヒーって実はそんなに得意じゃないんだけど……なんとなく見栄で呑み続けてるんだよね」
「……渋谷さんでも、そんな事ってあるんですね」
私の意外そうな顔に気づかれたのか照れ臭そうにそんな事を言う彼女はテレビ越しに真っ直ぐと遥かな高みを見つめる瞳とは程遠い等身大の22歳の女性で、テレビで見る表情なんかよりずっと可愛らしさを秘めていた素敵な人なんだと素直にそう思ってしまった。
それに見惚れているウチに彼女は言葉を私に重ねてくれる。
「そりゃそうだよ。“クールの代名詞”なんていつの間にか祭り上げられてるのに、ホットチョコレート大好きな甘党だなんてカッコがつかないでしょ? だから、そんな私には敬語なんて要らないから普通に“凜”でいいよ」
「い、いえ、そういうつもりで言った訳ではっ!!……でも、あの、その、“凜さん”からで始めさせて頂けると、ありがたい、です……」
「ふふっ、真面目だね。じゃあ、私は先に“灯織”って呼ばせてもらおうかな?」
「は、はい!!」
トイレから自分の控室への道中でそんな現実か夢のような会話が響いていく。
あれから、あまりの出来事にパニックになり自分勝手な自己紹介と控室に帰る旨を伝えて駆け出そうとしたのだが、全く見当違いの方向に駆けだそうとした私を引き止めた凜さんが送ってくれる事を申し出てくれたのだ。
大先輩であり、憧れであり、今日のメインの人にそんな好待遇を受けてどうしたらいいのか混乱の極みにいた私は彼女のその言葉に若干だけ落ち着きを取りもどしつつ――重大なミスに気が付いて、頭を下げる。
「あっ、すすみません!! 私、まだ楽屋へ挨拶も済ませてなくて!!」
「ん? あぁ、気にしなくていいよ。というか、今回は講師ってのも偉そうで好きじゃないんだけど、判定側だから参加者には楽屋を教えない方針にしてるらしくてね? だから、多分、灯織のプロデューサーもあえて教えてなかったんじゃないかな」
「じゃ、じゃあ、やっぱりこうして送って貰うのって拙いんでしょうか…」
「ははっ、花に関してはどんな子でも誰に対しても厳しく見るから大丈夫だよ」
「………が、頑張ります!」
「うん、がんばって」
思っていたよりもずっとさっぱりと話しやすいその人柄と、勝負事でのそのストイックさは自分の思い描いていた憧れそのもので自分でも説明できないくらいに胸の奥底が熱く、叩かれた肩からやる気が漲ってくる。
小学校の頃に両親もいない部屋で膝を抱えていた自分の心に火を着けた憧れは―――間違ってなんかいなかったんだと今更ながらに確信を得て、今すぐにでもどこかで思い切りお話してみたいと湧き上がる欲求を押さえつけてぎゅっと胸元を掴む。この想いは、思い切り自分の全力を今日の仕事にぶつけてからにすべきだ。
そんな想いを新たにした時に自分の楽屋が見えてきた。
この楽しい時間ももう終わりか、なんて一人ひっそり落胆している中で気持ちを切り替えて隣の彼女に目を向けると―――氷ついた様に目を見開いた凜さんがいた。
「り、凜さん?」
「283、プロダクション? って、あの283?」
「え、あ、はい。そういえば名前だけで事務所は言ってませんでしたっけ? 改めまして、283プロダクションのいるみn―――って、凜さん!!?」
呆然と、何とかそう絞り出した彼女の雰囲気に呑まれながらも改めて自己紹介をしようとする私を置き去りにして彼女は目にもとまらぬ疾風の様に駆け出して行って荒々しくその扉を蹴破るように押し入ってしまった。
「?? ???」
突然の変貌に訳も分からずあっけに取られた私はなんとか気を取り直して彼女の後を追うが混乱は増すばかりだ。
彼女のような大御所タレントが自分の弱小事務所と関りや確執があるとは考えにくい。他の誰かが粗相をした可能性もないではないが、そもそも、彼女の様に顔通り出来る様な仕事は今回が初めてなのでそれも違うだろう。それにも関わらず彼女があんなに血相を変えてあの部屋に飛び込む理由なんて―――
「ひ っき っが やぁー―――――!!!」
「どうぉっ、な、えっ? は!?―――なんで、お前がココにいるんだ!?」
「ひきがやひきがやひきがや―――ん~、はっ! ん~、はっ!! この匂い・味・湿度・温もり!! 間違いなく生比企谷だっ!!!!」
「ちょ、やめっ、―――いやぁぁぁっ、シャツをむくなぁっぁぁ!!!」
扉の先には、さっきの憧れの大先輩はおらず
大型犬の様に尻尾をブンブン元気に振り回す犬のごとくウチのアシスタントさんに貪りつくちょっと危ない光を瞳に宿した女性と
一張羅のシャツを涎や口紅や、噛み跡でめちゃくたにされつつ押し倒されながら絹を裂くような悲鳴を上げるウチのアシスタントさんがいるだけであった。
風野 灯織 15歳。
人という生き物はかくも恐ろしき多面性を秘めているのかと、大人の階段をこの惨状から学びました……。
…………真乃、めぐる、たすけてぇ。