デレマス短話集   作:緑茶P

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(/ω\)豪雪ラッシュでアシカの様な鳴き声を上げている。

新作書く時間が取れないから書きかけで放置してた奴をペタリ

これを読む前にこっちを読むとより楽しめます→https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=12108732




陽光に影 前編

 

「比企谷君、久々に外食などどうでしょうか?」

 

 昼休みを告げる豪奢な時計塔の鐘を聞き、凝りに凝った肩と背中をゴリゴリ、ボキボキ鳴らして今日の昼食に思いを馳せていると珍しいお誘いが掛けられた。その低く呟くような声を追って目を走らせれば、この部署のボスであり、巷で有名な偉丈夫の魔法使い“武内”さんが首元を抑えつつ立って俺を見下ろしている。

 

 厳つい顔に、そのガタイで誤解されがちだが案外と付き合ってみると喜怒哀楽がハッキリしていて分かりやすい人でもある。だからこそ――――首元を押さえて気まずげにする様子から今日は厄介事の相談であることがハッキリと分かってこちらも思わず顔を顰めてしまった。

 

 そもそもが夜勤・残業時の気晴らしでもなく、昼をカロリーメイトで済ませることが問題視されているこの人がわざわざ食堂でもない外食に誘う時点で相当にめんどくさい案件なのは確定である。

 

「……… 一応、お聞きしますけど拒否権はありますか?」

 

「できれば任意同行が一番穏当な結果をもたらしますが…拒否された場合は、複数名のアイドルに囲まれる事が予想されますね」

 

「……今日は、蕎麦な気分ですけど武内さんは何がいいですかね?」

 

「自分は天丼な気分でしたのでちょうどいい店を知っています。今日はささやかながら奢りですので、遠慮はいりません」

 

 無駄な足掻きとは知りつつも聞いた言葉は予想される限り一番に面倒な未来が予想されるもので、俺が現実逃避気味に聞いた返答に武内さんも苦笑いを零しつつ、同情するように言葉を紡いでくれる。

 

 自分の健康管理には数字上でしか興味を示さないくせに、その味覚や食へのこだわりは強いこの人がお勧めするくらいなのだから今日は美味い飯にありつけるという小さな慰めを胸に、“比企谷 八幡”は渋々と席を立った。

 

 

―――――――――

 

 

「“茜”に元気がない、ですか?」

 

「はい。収録や撮影…来月の大規模ライブに向けたレッスンにも影響が出始めているというのも問題ですが……正直、見ていられないくらいに消沈しているようです」

 

 武内さんに連れられて入った小さな蕎麦屋。そこの本当に芯のみを使った蕎麦というのは透き通るように輝くのだと衝撃を受け、その香りと喉越し。味に衝撃を受け、夢中でずるずると啜り、お勧めされた丼物も絶品という他ない逸品であった。

 

 お値段もそこそこではあったがこれは通うくらいの価値はある至福を貪ってひと心地ついて蕎麦湯を啜っている時に切り出されたのは意外な言葉であって思わず首を傾げてしまった。

 

 デレプロ、というか。日本全国を探したってあれほど元気が有り余っている少女なんか見つかりはしないだろうというのが俺の知っている“日野 茜”という少女のはずだ。ソレがどうしてそんな事になっていて、そうした相談が自分の元に来るのかも分らずに俺だって首を傾げるしかない。

 

「……まあ、思春期ですからそういう日もあるのでは?」

 

「――――本気で言ってますか?」

 

「女子の生態には詳しくないもんで」

 

 考えても答えの得られない問いを早々に投げ出して一番ありえそうな結論を答えて残った海老の尻尾をバリバリほうばれば信じられないモノを見たかのように目を見開く向いの偉丈夫。ソレが続けて俺の零した言葉に頭に手を添えてしばらく。

 

「すみません。フリーでいいので一本頂いても?」

 

「珍しいですね。楓さんに毒されてきてません?」

 

俺の軽口に取り合わずにグラスに注いだノンアルコールビールを一足に飲み干した武内さんは深くため息を吐いて胡乱気な視線を俺に向けてくる。

 

「一応、お聞きしますが。………心当たりはありませんか?」

 

「……俺がですか? まさかと思いますけど、俺が原因だって思ってるだなんて事ありませんよね? 俺があいつに影響を与えているだなんて、冗談でしょう?」

 

「“ラグビーワールドカップ”……ココまで言って心当たりはありませんか?」

 

「………? いい試合でしたね。あっ、武内さんはどの試合が一番―――「今はそんな話していません」―――えっ⁉」

 

 最近の最も日本中が湧き上がったあの歴史的な快挙が話題に出された事に首を傾げつつも、いつものサッカーやプロレス談議のような会話かと思って話題を振れば荒々しく飲み干したグラスを叩きつけた音と呟くような声に遮られてしまう。―――えぇ、自分で話題振ったくせにぃ…。これホントにノンアルコールだろうな? こんな武内さんの声は信楽焼の狸と肩を組んで道端で熱唱しやがった成年組のスキャンダル以来だぞ?

 

「…もう、単刀直入に行きましょう。先日の騒動の時に茜さんとのワールドカップを観戦する約束を違えた事が発覚したのが今回の事件の“全て”です。―――――念の為。念のため聞きますが、ここまで言ったら思い当って頂けましたよね?」

 

「あぁ、何の話かと思えば……」

 

 深々と溜息を漏らした武内さんが諦めたように指し示した事柄でようやく何のことか思い至った。だが、その言い方には多分に誤解が含まれていて実に異議ありである。そもそもの発端を思い返して俺はもう一度だけ蕎麦湯で口を湿らせて、自己弁護をさせてもらう。

 

「そもそもが、誘われた当初には仕事が入っていて明確に“行けない”という意思を伝えていた筈ですし、ソレをアイツも納得してました。ソレが当日になって先方の予定が合わなくなって急遽の休みになるのは武内さん自身が認めていましたよね?」

 

「……そうですね。てっきり、自分は茜さんが“当日まで席は取ってますからいつでも連絡してくれ”という言葉を聞いていたのでそのまま合流したものかと思っていました。しかも次の日に比企谷君からラグビーの話題が出たので安心していたのですが―――まさか別の方と見に行っていたとは予想外でした」

 

「社交辞令だと思うでしょ、普通。それに、何が悲しくて世界を股に掛けた“日野重工”の社長の横で気を使いながらラグビー観戦しなきゃなんないんすか……。それだったら、気楽な知り合いと一般席でビール片手に観戦しますよ。休日の過ごし方までとやかく言われる筋合いはありませんね」

 

「……ソレは、そうですが。しかし―――」

 

 俺のにべもない言葉に口ごもる武内さんに重ねて伝えたいが。そもそもが、約束なんてしていないのである。

 

 急な予定変更と、プライベートで付き合いのある恩師が泣き気味の声で誘ってきた試合に行っただけの話だ。それにあの“なんならお友達やご家族の分まで用意しますよ”なんて言葉を真に受けて実行する方が非常識だろう。

 

 それを理由に落ち込み、仕事に影響を出す茜の方に今回は非があるだろう。

 

 腐っても、頭がぶっ飛んでネジが外れていてもアイツは、あいつ等はプロなのだ。いちいちこんな事で腐ってかまってちゃんをされたって困る。

 

 そんなこんなで残りわずかとなった休み時間を指し示せば、武内さんは言い掛けていた言葉を呑み込んでもう一度深くため息を吐くに留めてこの話を締めくくる。

 

「それが、君の意見ならそれでも良いです。……ですが、その事を踏まえて一度だけでも彼女と会話をして貰えませんか? 正直、このままの調子でいられても困るというのが本音でもあります。個人として語ることが無いというのならば、彼女のアシスタント業務の一環として―――彼女の主張も聞いてあげてください」

 

「………ソレは、業務命令ですか?」

 

「できれば、貴方個人の友人としての“推奨”として貰えると嬉しいですが……言い訳が必要ならば“業務命令”にするのもやぶさかではありません」

 

「……プライベートと業務を混同するのはパワハラの第一歩ですよ」

 

 柔らかな苦笑を零しながらそう呟く武内さんに精一杯の皮肉を返すのだが、どうにもそれすら『私は“気狂い”だそうですので、それも今更でしょう』なんて大人の貫禄で返されるのだから敵わない。

 

 そんな彼に憮然としつつも細巻きを加えて件の少女を思い浮かべる。

 

 馬鹿みたいに元気で、うるさくて、騒がしい上に無駄にある運動神経。それに隠すように含めた微かな暗さと繊細さを持つアイツ。そんな彼女に――――俺ごときが何をした所でどうなるとも思えないが……まぁ、久々のスキンシップくらいは取ってやるか…。

 

「一日、遊んでやるくらいなら」

 

「よろしくお願いします」

 

 めんどくささと呆れを蕎麦湯で流し込んだ俺に、目つきの悪い偉丈夫が小さく微笑んで最後の一杯を流し込んだ事で、豪華な昼食と厄介な依頼はここに契約を結ばれてしまったのだったとさまる

 

 

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 さてはて、ボスである武内さんとの昼食後にロビーで別れてからしばしの事。面倒だとは思いながらも楽観していた面があった事は否めない。

 なにせ件の話はあの元気印の“日野 茜”の事なのだ。最近はなぜだかめっきり会う機会も無かったが、アイツの事なのでご飯でも食って昼寝でも挟めばすっかり落ち込んでいた事も忘れて元気に駈けずり回っている事だろうと―――そう思っていたのだが。

 

「なんだ……アレ」

 

「んー、マストレさんに滅茶苦茶怒られてレッスンを追い出されてからずっとあんな感じ。流石の未央ちゃんもお手上げかなぁ……」

 

 予定にあるレッスン室になぜかおらず、ウロウロと日野を探していれば困り顔の未央に連れて来られたアイドル達の控室。そこには、真っ黒なオーラをこれでもかと撒き散らしながら藍子の膝に顔を埋めてブツブツと呪詛を振りまく暗黒太陽“ひの”がおわしました。

 

 余りのキャラ崩壊に絶句している中で頭を掻きながら苦笑する未央が俺の脇をこずいてくるのに何とか反応して問いかけても彼女は顔を顰め、俺の背をグイグイと室内に追いやるだけである。

 

「ほらほら、ハッチ―の心無い対応が純粋な乙女をあんなんにしちゃったんだから早く元気にしてあげないと! あと、あそこは私の指定席なんで長期滞在はお断りだよ!!」

 

「もう後半の理由が八割じゃね?」

 

 そんな会話をしているウチにあっという間に現場に到着し、絶賛奮闘中の藍子に片手をあげて労えば彼女も苦笑を零すだけでソレに応えた。膝元で蹲る日野の頭を撫でる手は慈母のように優しく、暖かでおぎゃりたくなる欲求が湧き上がるが隣で目を光らせるヘタレの王子様(ガチレズ)が噛みついてきかねないので今は当初の目的だけをすますことにしよう。

 

「おい、茜。いつまでも拗ねてんなよ」

 

「―――――」

 

 蹲っている頭をぺしぺし叩いて声を掛けたら、さらに丸まって防御力を上げてしまった。ポ〇モンか何かかな?

 

 その様子を見ていた二人からは盛大に頭を抱えて溜息を吐かれたりしたので、流石の俺もどうやら選択肢を間違ったようだと気が付いた。バッドコミュニケーションという奴だ。しかし、ボッチのコミュ障の俺にはそもそも他の選択肢が浮かんでくる事がないので実質一択問題なのである。つまり、おーるバッドコミュニケーションが平常運転なので異常ない。通りで生まれてこのかた友達ができない訳だ。

 

――――というか、もうまるっきりただの駄々っ子と化した彼女の相手も面倒になってきたので手早く解決させて頂く事にしよう。

 

 なーに、小町も小さい頃はよくこのダンゴムシ形態になって俺を困らせてきたのでノウハウは既にある。拗ねた駄々っ子は“食う 寝る 遊ぶ”をすれば大抵がコロッと機嫌が直ってしまうモノなのだから。

 

 思いついたらすぐ行動。それが出来るボッチの必勝プラン。

 

 携帯でポチポチと連絡を入れ準備が整った事を確認したのち―――ぶすりと無防備にさらされた日野の細っこい脇を指で突いた。

 

「ひぎゅっ!! って、うわ、わわわわっ!!」

 

「お前、腹減ってそうだな。今日は特別に奢ってやるから喜べ」

 

「ちょ、やっ、離してください!! ん―――!! ん―――――!!」

 

 徹底抗戦の構えで丸まっていた彼女が面白いくらい藍子の膝から飛び上がった拍子を逃さず小脇に抱えてその軽い体をえいさほいさと運んでいく。暴れる彼女がポカポカと俺の背を叩いてくるが可愛いもんだ。勿論、彼女の身体能力で本気の抵抗をすれば骨折くらいは覚悟しなければならないが、常日頃から対人ではセーフティを掛けるように訓練した成果が生きている。俺は猛獣の調教師かなにかなのん? #アシスタントとは?

 

 その結果、ご立腹のお嬢様(ガチ令嬢)と誘拐犯(not犯罪)が社内を闊歩するというヤバ目の光景が出来上がった訳だが、警備のおっちゃん達も既に声を掛ける事も無くなってきたのが地味に寂しいものである。いとかなし。

 

 そんなこんなで―――お嬢様のご機嫌取り、開始である。

 

 

―――――― 

 

 

「うわぁ……なんというか、女の扱いが手慣れてるというか、なんというか……」

 

「あ、あははは……女の子というか“小さな子”の扱い、かな?」

 

「肯定しずらいけど、否定も出来ないんだよなぁ……。というか、あーちゃんや?」

 

「なぁに、未央ちゃん?」

 

「………張り合う訳じゃないんだけど、私も久々に膝枕してもらいたいなー、なんて思ったりしちゃったりなんて……その、ねっ?」

 

「え、えー、ここじゃ恥ずかしいから……お家でたっぷりしてあげますね♡」

 

「えへ、えへへへへ///」

 

 

 

---------------

 

 

 

 という訳でやってきました346本社名物でもある“346カフェ”。エントランスに併設カフェなのだが、厳選されたコーヒーや本格的なスイーツが季節ごとに提供され、多くの社員に留まらず一般の顧客にもファンが多いここ。それだけでなく、軽食もボリュームと満足度が高く俺の一押しとも言える逸品がいま―――不機嫌Maxな“暗黒太陽”日野の目の前に供された。

 

 スパイシーな香りと、解けるほどに煮込まれた肉や野菜の優しい香りが完璧に調和したルーの匂いにつやつやと輝く白米が可愛らしくウサギ型に盛られて濛々とその身から湯気を湧き立たせ食べられるのをいまか今かと待ち構えている。

 

 常連のみが知る裏メニュー“346特製カレー”がうさ耳メイドの“菜々さん”によって目の前に置かれた。

 

 長らくここのバイトを続け、いまだに人手が足りない時には手伝いに来るのでもはやアイドルを引退したらここに就職するのではないかともっぱら噂の菜々さんお手製のカレーにぷっくりと膨らませた日野のほっぺはじゅるりと零れた涎と共に萎んでいった。

 

 だが、まだだ。 俺のターンはまだ終わっていない。

 

「菜々さん―――お願いします」

 

「かしこまりました~、きゃはっ」

 

 律儀に決めポーズまでしてくれた菜々さんが後ろのカートから取り出したのは―――山盛りのチーズと、揚げたて特有の香ばしい音を立てる厚切りのとんかつ!!

 

「あ………あぁぁぁ!! そんな!! 豪快に!!!?」

 

「いっちゃうんですよ~! きゃはっ、召し上がれ!! 」

 

 それを遠慮躊躇なくカレーに突っ込んだ事により真の裏メニュー“ウサミンカレー”が完成し―――その誘惑に成すすべなく日野は陥落した。

 

 さっきまでの憂鬱で不機嫌なオーラは何処へやら。にっこにこの笑顔でバラ色に染めた頬はハムスターの様に膨らませて正にこの世の至福を味わっているかのような笑顔。ほれみろ、やっぱ俺のノウハウに抜かりは無かった。

 

 困った時、苦しい時、気分が上がらない時はカロリーと炭水化物なのだ。

 

 わんこそばの様に“はいじゃんじゃん”とお代わりを注いでくれている菜々さんに目だけで急で無茶なお願いを聞いてくれた感謝を伝えれば、向こうもお茶目なウインク一つで答えてくれる。こんな年季の入ったカワイイウサミン星人、俺じゃなきゃとっくにお嫁さんにしてるね。危ねぇ、おちかけてたぜ。

 

 そんな小芝居をして一人脳内で遊びつつ、ご満悦な日野を眺めているとふとした瞬間に目があった。

 

 幸せそうにカレーを味わっていたのに、俺の視線に気が付けば“まだ怒ってます”と言わんばかりにリスみたいなほっぺのまま目を不機嫌そうに逸らしたのが面白くて溜まらず吹き出してしまった。

 

 怒ってるアピールもそこまで行くと可愛らしいもんで、幼い時の小町をついつい思い浮かべてしまいそのままお節介を一つ。

 

「口元、米ついてるぞ」

 

「―――――っ!!///」

 

 ナプキンで彼女の形のいい口元を拭いて笑ってやればなぜか顔も真っ赤にしてまたカレーをかっ込み始めた。いや、カレーをあのスピードで食ってりゃ熱くもなるか。というか、掻っ込まず落ち着いて食えって話じゃなかったかい、いま?

 

 呆れと苦笑、そんな感情も混ぜ混ぜに俺はコーヒーで喉を潤したのであったとさ。

 

 

 

――――――― 

 

 

 

 

「(こ、これは悪い男の子の典型ですねぇ……はぁ、いいなぁ。私もこんな青春ラブコメしたかったぁ……)」

 

「どうしたんすか、菜々さん?」

 

「いや、こうやって被害者は増えてくんだなぁ…とおもいまして(ジト―」

 

「????」

 

 




(´ー`)みんなも、クソ忙しい年末―――いきのびろよ……。
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