デレマス短話集   作:緑茶P

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(´ω`*)もう一人のバレンタインは渋アンケートで文香でしたね、ハッピーバレンタイン!

( *´艸`)おいらは十時、時子さま、フレデリカからチョコを貰えてホクホクでした!!やったぜ!!


今日も脳みそ空っぽでお楽しみくださいませ~




『その男、甘党につき』 鷺沢文香の場合

 

 かつて恋を後押しした聖人の命日。

 

例年、この時期になると“はて、どうしたものか”と首を傾げる事が恒例となって久しい。

 

 ひょんな事からアイドルという想像もしなかった体験をする事になるまで、薄暗い書斎で毎日の様に本の虫だった自分には世間を賑わすイベントの華やかさと賑やかしさには興奮と期待よりも困惑の方が先だって目が回りそうになる。

 それでも、ここでの日々を隣で過ごしてきた想い人に日頃の感謝と思いを伝える数少ない機会だと思えば分からないなりに奮起して、馴染の書店に今が旬と言わんばかりにポップで彩られた雑誌を購入。

 

 毎回、ここまではスムーズに事が進むのだがここからが長い。

 

 同僚が大きく表紙を飾るその雑誌の中には様々なファッションや店舗、流行りのアイテムが所狭しと並べれていてその多くは恋人や意中の男性を虜にするためのアイディアがこれでもかと掲載されている。華やかな文化というモノに縁が遠い自分にはなかった発想や試みが多く載せられていてそれだけでも二日くらいは考察に費やしてしまいそうだったが―――今回の目的は差し込まれた特集の“手作りチョコレート”と銘打たれた冊子の方である。

 

 初心者でも簡単に出来るものを一手間加えて華やかにしたものや、玄人向けの凝ったレシピ。その他には、恋人と一緒に作るモノやいっそのこと既製品のオススメであったりと世の女性が抱える多くのケースバイケースに沿ったマニュアルがこれでもかと詰め込まれています。

 

 なるほど、現代の多様化した距離感や人間模様には手間暇かければ良いものではない事を如実に伝えてくれる親切なこの手引書は例年購入しているものよりもずっと読みやすく飽きがこない。コレを書いた人はさぞ博識で思いやりの溢れた人なのだろうと著者を確認してみれば―――表紙も飾っていた同期のカリスマJKさんであった。

 

「色んなコラムから才覚を感じてはいましたがこれほどとは………」

 

 最近、事務所でウンウンと頭を抱えていたのはこの記事を書いていたのかと小さく苦笑を零すと共に強力なライバルから送られてきた塩を存分に活用させて頂こうと思い直してもう一度レシピの章へと戻ってどれを作るべきかと思案に耽る。

 

 共に過ごして数年目ともなると塩梅がむずかしく、ああでもないこうでもない等と思っているウチにふと、辺りを見回せばいつの間にか目的地であった駅に到達したことを伝えるアナウンスに急いで席を立ち、事務所への歩みを再開させた。

 

 相も変わらぬ雑踏に少しだけ辟易をしつつも二日後に迫ったイベントのせいか街も人も明るく活気ずいている事を感じてソレを笑えた身分ではないことに一人苦笑を零しつつ通い慣れた時計塔までの道を進めていけば―――その道中にあるドーナッツ店の中に年の離れた友人が険しい顔で電子パッドを睨んでいるのが目に入った。

 

 自分よりもずっと幼いのに目的意識を持ったそのしっかり者の友人はよく仕事でも一緒になるし、今日の収録も被っていたので折角ならば一声かけて行こうかと思い直してそちらに歩を進めていく。

 

 涼やかな鈴の音に、甘い香りと程よい暖房。それだけでも少しだけ冷えに強張っていた体が緩むのを感じつつ、コーヒーを一杯だけ買い求めて彼女に声を掛けようとその背に近づくと彼女が何に悩んでいたのかが分かって思わず声が漏れてしまった。

 

「ありすちゃんも、何を作っていいか迷っているみたいですね?」

 

「ひゃうっ! ふ、ふふふ、文香さん!? いつからそこに!!??」

 

 その声に驚いて飛び上がった野良猫の様な反応をする彼女がつい面白くて、笑いを噛み殺しつつも彼女の隣に腰を下ろしつつも自分がさっきまで読み耽っていた雑誌を出して正直に告白していく。

 

「すみません、事務所に行く途中で見かけたもので声だけでも掛けようかと先ほど。それに、故意は無かったとは言え覗き見は失礼でしたね。それに、私も先ほどまで同じ事で悩んでいたのでつい嬉しくなってしまいまして……」

 

「あ、いえっ、ソレはビックリしただけなので全然いいのですが………その、文香さんもバレンタインデーのチョコを?」

 

「はい。とはいえ、今年は何を作ればいいのかとさっきまで頭を悩ませていたので同じ状態のありすちゃんには勝手ながら親近感を覚えてしまいました」

 

「そ、そうなんです! そもそもが海外では男性からというのが(うんぬんかんぬん」

 

 私の告白に気恥ずかしさと悩んでいた鬱憤が関を切ったのか滂沱の様に語り始める彼女に少しだけ勢いを呑まれつつも、彼女が抱えていた電子パッドを見やればネットで公開されているチョコのレシピが並んでいるのに思わず気持ちが柔らかくなってしまう。

 

 数日後の聖夜は企業の戦略だのなんだのと言ってもやはり乙女にとっては数少ない想いを届けられる機会。それが日頃の感謝であれ、敬愛であれ、恋情だろうと想いに貴賤は無く、昔から一人よりも複数の知恵を集めた方が良いものが出来るのが世の摂理。

 

 どうせ一人で決めかねて頭を悩ませ不安に胸を高鳴らせるのならば、その不安だって二分に割って、作る楽しみを掛け合った方が楽しめるというモノだろう。

 

 そんな自分に都合よくこねくりまわした理屈に乗っ取って私は蘊蓄を語る友人に微笑みかけつつとある提案を投げかけた。

 

「ありすちゃん、良かったら今年は一緒に作って貰えればうれしいんですが―――宜しいでしょうか?」

 

「コレは企業の戦略で日本に渡ってき――――ほえ?」

 

 

 あっけに取られる彼女に、私は雑誌に書かれた名言を指さして答える。

 

 

カリスマJK曰く “なにごとも思い切り、楽しもう☆” 

 

 このやけっぱちに書かれたであろう言葉を、とかく至言であると私は思うのです。

 

 

 

--------------------------

 

 

 

 

「あっ、なんだか生地っぽくなってきました! 凄いです!!」

 

「いい具合ですね。後はこの生地を成形して少し寝かせる……と書いていますね」

 

―――――――― 

 

「ふふっ、切っただけだと全然イチゴに見えませんね」

 

「この先のデコレーションが完成度を左右する工程なので、丁寧に行きましょう。………あ、すみません余熱するのを忘れていたので先にチョコチップを撒いておいてください」

 

―――――――― 

 

「…………焦げてませんよね? これ、ちゃんと火通ってますかね?」

 

「……理論上は、大丈夫なはず……ですけれども」

 

―――――――― 

 

「―――あっ、失敗しました!!」

 

「チョコペンというのも、観てるだけの時は簡単そうなのですけど……案外難しいものですね……」

 

―――――――― 

 

 

 

 

 そんなこんなで後日。二人で決めたイチゴ型のチョコクッキーの制作に取り組んだ私達ですが、普段の料理とは勝手の違う工程に四苦八苦としつつも遂にはその努力は無事に成るに至りました。

 

 食紅を練り込んだピンク色のクッキーは雫状に整えられ、タネに見立てたホワイトチョコチップとヘタを表す緑色のデコレーションチョコ。

 焼き加減の差でいくつかムラは出てしまったものもあったけれど、並べてみればその可愛らしいチョコクッキーは良い出来といってもよく苦労の分だけ感動も一押しです。

 

 隣に立つありすちゃんと思わず手を取り合ってぴょこぴょこ小躍りの様に飛び跳ねて完成を祝っていれば彼女は鼻息も荒く、握りこぶしを突き上げて声を上げます。

 

「ふふふん、こんな出来のいいクッキーを貰えるんですから“あの人”も喜びで打ちひしがれる事間違いなしですね!!」

 

「ふふっ、きっと“比企谷”さんも喜んでくれますね」

 

 完成した興奮で当初の照れ隠しだった“お世話になっているみんな”という部分が抜け落ちているのを指摘するのも無粋なのでその微笑ましい光景に素直に頷いておきます。

 

 焼きたてのクッキーを前に彼の喜ぶ顔と、一月先にある“お返し”まで皮算用して口角が上がりっぱなしのありすちゃん。それは、なんだか一番最初の頃の自分を見ているようでなんだか少しだけむず痒くも温かい気分に浸らせられる。

 

 少なくとも彼にチョコを送る人は結構な数がいて、他の年少組の子も家族か年長組の誰かとお菓子作りに勤しんでいるのであまり過度な期待をさせるのは“少し不味いかな…”と思わないでもない。だけれども、こういう時に先々の事を考えてしまうよりは今はもっと純粋に彼の喜ぶ顔を思い浮かべているほうが健全でしょう。

 

 期待と信頼というのは想いの表れで、それが叶わなかったと言っても恨みを募らせる類のものであってはいけないと思うから。それに、どうしてもそれが欲しければ―――勝ち取ればいい。

 

 だから、私も今は無責任に欲の皮を突っ張って彼女と“ホワイトデー”に彼からどんなお返しデートに連れて行って貰うか悪だくみをするくらいで丁度いいのだと思います。

 

 甘く胸を焦がす恋心も、期待と不安に跳ねる鼓動も、この先の未来でもしかしたら自分の娘とこんな日を迎えるかもという妄想も、他のライバル達に抱くちょっとの嫉妬心も―――

 

“なにごとも思い切り、楽しもう☆”

 

 そんな免罪符を胸に満喫させて頂く事にしようと、そう思うのでした、とさ。

 

 

 

 

=後日談=

 

 

 

「比企谷さん! 何してるんですか!! 早く行かないとイチゴが全部取られちゃいますよ!!?」

 

「そんな気合の入ったイチゴ狩りにはいまだ出くわした事ねぇよ……というか、もうそれ業者レベルだろ」

 

 いまだ風が吹けば少し首を竦める肌寒さはあるとはいえ、日差しは刺さる様な温かさになってきた3月の事。俺とありす、文香で県外ロケに出た帰り道にあるビニールハウスの前で車を止めてえっちらおっちらと歩みを進めている。

 

 それというのも、先月のバレンタインデー。ありがたい事に顔も真っ赤に手作りチョコクッキーを文香と作って来てくれたありすの無邪気な約束に根負けした事が原因である。

 

 ムリだろ、あんな意地らしく涙目で“どっかに連れてって”とかおねだりしてくるのを振り払える訳ないじゃん? その上、文香に助けを求めてもニッコリと“近場でも大丈夫です”とか圧とフォローまで受けられてどうやって断れと?

 

 それ以来、会うたびに何か言いたげに口を開きかけ黙っちゃう小学校6年生への罪悪感が俺の良心を轢きつぶす前に二人の送迎スケジュールを調整して帰りに寄れそうな“イチゴ狩り”で少し早めのホワイトデーと洒落こんだ訳だ。

 

 その結果、小さなお姫様はネタばらししてからテンションが振り切れてにっこにこだし、ありすを挟んで隣の手を握っている同級生の女はソレを微笑まし気に眺めつつ珍しく鼻歌まで歌っている。ソレを見れば、まあ―――素人の痛々しいサプライズという黒歴史が加わらなかったことを素直に喜ぶべきなのかもしれない。

 

 そんな諦観と苦笑を一人漏らしていると、視線を感じて隣に目を向ければ蒼天を溶かしこんだような透き通った瞳が柔らかに細められてこちらに向けられていた。

 

「……なんだよ?」

 

「いえ―――来年も、期待しててくださいね?」

 

「…………ま、期待せず待っとく」

 

 柔らかで、深いその声と表情に――俺は顔に出そうになる羞恥をいつもの気だるげな言葉と一緒のそっぽを向くことで誤魔化した。

 

 

 童貞に、そんな優し気な表情はちょっと刺激が強いのでぜひご遠慮願いたい。

 

 空は青く文香の瞳の様に澄み渡り、甘く優しい匂いを放つ完熟したイチゴはありすのほっぺの様に柔らかい。

 

 ホワイトデー、ソレは“想いを送られた人間”が“送った人の色に染まる”からそんな名前になったのではと邪推して俺はのんびりと引かれるままに足を進めていく。

 

 

 きょうは、絶好のいちご狩り日和だ。

 




(・ω・)さあ、自粛もあと少し。頑張って皆で妄想沼に嵌って引き込まりましょう!!


デレステ沼 ED →https://twitter.com/OW_LieMaker/status/1355799942850203651
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