ご期待に添える内容かは分かりませんがご要望に添えつつお楽しみいただける√を精一杯書かせて頂きましたので御笑覧頂ければ幸いです。
(・ω・)リクエスト内容は「周子がアイドルになる許可をハチがひっそり両親に貰ってて、そのまま”やめるってよ”√に突入する」。
可能性は無限大にあるので楽しく書かせて頂きましたww
(´ー`)皆さんの好きな内容をエロも真面目もジャンジャンご依頼お持ちしておりまーす!!
今日も頭を空っぽにお楽しみくださいませ~!!
『この346に停滞は許されない』
そんな静かな断罪の言葉と共に自らの実父である社長 及び 取締役である重役たち十数名を祖父であり会長の委任状の下で総会の場で首切りを行い、自らがその王座に腰を下ろした女帝“美城常務”と示し合わせたように、その周囲の席を埋めた家臣とも言える新たな重役達。
そのあまりに衝撃的な光景から全社員があっけに取られる中で彼女がさらに度肝を抜いた“全プロジェクトの白紙”という衝撃的な宣言。
腐った体制から生まれた膿と非効率的な現状の立て直しを図るという名目になされたその言葉は大きく波紋を呼び、会場は荒れに荒れた。
それは辛苦を忍んでようやく始動に漕ぎつけた企画を無にするもので、安定を得ていた者の地盤を揺るがす行為で―――後ろ暗い所がある人間には自らの首を絞めるものであったから。
だが、彼女はその憤怒と混乱をただ冷然と嘲笑うようにその糾弾を受けいれ、たった一言でそれらを黙らせる。
『自分の新体制よりも成果を上げるのならば存続を認める』
そんな傲慢な一言で。
服従も、反抗も出来ないのなら口を噤むか出ていくがいい、と冷たく重い言葉を恐怖と共に刻み付けてその総会は締めくくられた。
反応は様々で、困惑するものから憤怒するもの。結託するものから出し抜こうとするもの。ここまでの苦労をおしゃかにされて呆然と膝をつく人も居れば、新たな出世のチャンスに舌なめずりをする人。
そんな混沌とした会場が―――この先の暗雲を示しているかのようにいつまでもさざめいた。
――――――
という修羅場からかれこれ2週間が経つ訳だが、今日も今日とて書類にスケジュール調整に予算計上に送迎・打ち合わせ。片しても片しても無限に湧き出てくるお仕事に忙殺される我らが“デレプロ”の日々には全く変化はなく、変わらぬ日常が流れているのであった、とさ。
あれれ~、おかしいな? 何でこういう所だけは業務改善されないんだろ~? ふっしぎだなぁ~??
「なんだか、あれだけ大騒ぎして他の部署は大変そうなのにうちだけは変わりませんねぇ?」
八つ当たりのようにだかだかキーボードを指で叩きつつ問い合わせに返信していると、ふんわり甘いココアの香りと湯気が沸き立つカップが机に置かれ手を止める。視線を上げればいつもと変わらず薄着でポヤポヤしている初代シンデレラの“十時 愛梨”が不思議そうに首を傾げている。
「そりゃ、ウチみたいな不良部署にゃ関係ないからな」
「というと?」
入れてくれたココアを冷ましつつ興味なさげに答えるとコテンとあざとい擬音が付きそうな感じで首を傾げ問われるが、まあ、わりかしそのまんまの意味である。
そもそもが元上層部の汚職に大反抗した末に残ったのがココの“デレプロ”の始まりだ。
その一番の被害者である彼女に多くを語る必要はないだろうが、そういったダーティな部分を切り捨てた代わりに会社からの恩恵はほぼ受けずに独立した稼ぎで運営している状態に近いし、武内さんの上には中西部長が名目上いるがあの人が据え置きだった時点で今更余計なちょっかいを出される事もあるまい。
ただ、ウチがおかしいのであって他はそうはいかない。
枕だのタレントを使った接待だのまでは行かなくとも普通は上司に媚を売り、歓心を買い、上にしかない伝を辿って仕事を引っ張ってくる涙ぐましい努力の末にこの大企業を登りつめた人間が多数だろう。
それらが全て無に帰すどころが、今までの賄賂やら身内のなあなあで済ませていたグレーな部分の全てが自分の首を絞めつける事になるのだから元重役にべったりだった人間ほど顔が青くもなるだろう。しかも、頼みの人事部も常務の側近が重役について全社員を洗い直しているというのだからさあ大変。
そのうえに、文句があれば成果を見せろと言われて反抗できる人間はいくついるものか。
人間は――特に牛後を選んだ人間というのは基本的にはそういった事には向かないのだ。
言われた仕事と定まった方程式に則った方法をこなす事には長けていても、爆発的に成果を出すやり方もソレに人を付き従わせる求心力を併せ持つ人間はいない。そもそもがそういうタイプの人間が忌避されていたこの社内ではいなくたって当たり前の話だ。
「“売れなきゃ即御取り潰し”なんて無茶な前提条件でここまで来てんだ。いまさら、無駄な余力も繋がりも賄賂も絞られたってでやしねぇよ」
「言われてみれば最初からそんな感じでしたねぇ………。でも、まあ、今回の件で少しだけ胸のつかえも―――取れました」
「…………そうかい」
「ええ、そうなんです」
俺が肩を竦めながら零した文句に彼女は苦笑を浮かべつつ答え――俺の首に緩やかに腕を回して、小さくそう呟く。
デレプロの“本当の意味”での一期生でセンターに選ばれていた彼女。
ただし、その栄光の代償に求められたのは彼女の躰だ。
寂れてしまった故郷の再興を目指してアイドルになることを夢見た少女に待ち受けていたのは反吐が出る程に醜悪な欲望であった。
その悪意を囁いた上層部の面々が今回の件で断罪された事を考えれば―――素直に吉報であったと言ってもいいのではないかと俺は思うのだ。
「………ついでに、このクソ忙しい環境も改善してくれりゃ文句もないんだがなぁ」
「え~、でもハチ君はなんだかんだ言って働くの大好きじゃないですか~。あっ、それならご褒美に今度デートしてあげます!! トップアイドルを休日に独り占めとか最高のボーナスですねぇ?」
「数少ない休日に予定を更に入れられてボーナスもクソもないんだよなぁ…」
重くなった空気を散らすように愚痴を零せば、ケラケラと笑いつつ更に強く抱き着いてくる彼女。ココアとは違う甘い香りと、温もり。そして、彼女がいまこうして無邪気にあの頃の様に笑えているという事実はあの苦労の日々も無駄ではなかったと身勝手な自己満足を俺にもたらしてくれる。
願わくば、もうちょっとだけこの平穏が続けばと願い―――
「比企谷君、常務が面談をしたいとの事です。至急、社長室に向かってください」
いつだって俺のささやかな希望は儚く散ってゆくのである。
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首都のど真ん中にそびえたつ巨大な時計塔。その横に併設された更に巨大な346ビルの最奥。一般のエレベーターではたどり着けないようになっている特殊なワンフロアの絨毯は絢爛でフカフカ、内装は歴史ある洋館の様に贅と歴史を存分に振るったしつらえの通路は都内を一望できるガラス張り。
エレベーターの扉が開いた時点で一介の木っ端アルバイトには踏み込むのも躊躇う様なその風情に気圧されつつも何とか秘書らしき女性に促される事でそこに踏み入った。
何とも現実感の湧かない光景に絨毯のせいばかりでもなく足元がフワフワとおぼつかない感覚で落ち着かない。だが、かつて雪ノ下に習ったように顎を引いてきょどらず、ぼーっとしていればなんとなく大物感が出るらしい。ガハハハッ、上手くいった試しはないが勝ったなこりゃガハハハ……はぁ、帰りたい。
現実逃避に勤しんでいるといつの間にかひときわ重厚な扉の前にたどり着き、心の準備も整わぬまま美人の秘書さんがノックを数回。用件を中に伝えれば冷たく重たい声が返ってきて入室を促される。
あ、秘書さんはついてきてくれないの? はちまん、寂しいし、おっかないんだけど?
緊張を誤魔化すために脳内で必死におチャラけるが誰も取り合ってくれるわけもなく跳ねる心臓を抑え込んで入室する。
「あぁ、忙しい所を急に呼び出してすまない。この書類だけ片付けてしまうので、楽にしていてくれ」
「……失礼します」
扉を押し開いた先には都心を見下ろす様な巨大な一枚ガラスを背に質素ながらも一級品であることが分かるデスクで書類を眺める“女帝”が一瞬だけこちらに視線を寄越してそんなぶっきらぼうな言葉を投げかけてきた。
何とか噛まずに返答をしたものの書類に何やら苛立たし気に書き込むおっかない天下人を前に本気でくつろげる訳もないので足を少し開く程度にしてそのまま待つことにする。息すら極力控えて気配を消してみるが、なんならそのまま存在感の無さから俺を呼び出した事すら忘れてくれないかと願う。頑張れ八幡。今こそクラス中から存在を隠蔽したステルスひっきーの見せどころだ!
「…………午後のこの時間で、この気候ともなると微睡んでしまうのも仕方ないとは思わないかね?」
「………はい?」
そんな時間潰しの世迷いごとを心の中で考えていると、役に立たない特技をサラッと無視した常務が脈絡もなくそんな事を問いかけてきたせいでついつい間抜けな声が零れてしまった。
意図が掴めず困惑する俺を一瞥してクツクツと笑った彼女は小さく溜息を吐きつつ額を押さえ、もう一方の手でさっきまで読んでいた書類をぴらぴらと振って見せる。
「どうにも、長い伝統と歴史を誇る我が社でも人間の性には抗えないらしい。――――だから、こんな寝言にも等しいゴミクズのような陳情を恥ずかしげもなく私の元へと送ってくる」
ぐしゃりと、摘んでいた書類を俺の前で握りつぶした彼女がその笑顔のまま手元の鈴を鳴らして先ほどの秘書さんを呼び出してソレを手渡す。
「この営業2課の武藤という男にこの寝言を突き返して来い。“二度目の寝言は聞かん”そう伝えるのも忘れるな」
平坦な声で、感情を揺るがせた形跡もないのに傍で聞いていた他人の俺の心胆すら縮み上がらせるその恫喝。それが、何よりも雄弁に新たなこの塔の支配者の苛烈さと無慈悲さを知らしめる。
固くなって飲み下しにくくなった唾を何とか飲み込んでいるウチに秘書さんは恭しく下がっていき―――いよいよその恐ろしい女帝の視線は俺自身へと向けられる事となった。
「ふん、あれだけ分かりやすくレクレーションしてやっても前体制を引きずるモノというのは一定数出てしまうとは度し難いな……。―――さて、互いに暇でもない身だ。本題に入ろう」
多少の疲れを滲ませた彼女がそう吐き捨て、気を取り直したように引出しからファイルを引き出した。
「“比企谷 八幡”。21歳で私立W大3回生。一回生の中盤から撮影庶務3課のアルバイトとして346に所属。その数か月後、武内がアイドル部門設立時に引き抜く。以降はそこに専属として送迎・発注・企画段取り・管理等の幅広い業務をこなし現在では事務方の主軸となる。―――以上に間違いはないかね?」
「……まあ、概ねは」
淡々と読まれるソレはざっくりとした自分のここでの経歴。だが、取り立てて面白いことを言う必要もないので素直に頷けば彼女はその整った容姿を怜悧に輝かせこちらを射貫く。
「ふむ、素行と評判にはいくつかケチはついているがその年齢では破格の実績といってもいいだろう。それに商品であるアイドル達との接し方も多少親しすぎるきらいはあるが多目に見れる範疇でもある。それに、最初期の“あの事件”の時に無勢であった武内側を選んだという性根。総合的に見れば実に有能な人材候補だと言っていい」
続けて語られる言葉は褒められているはずなのだがなぜか首元が真綿で締められていくかの様な感覚が襲い来る。俺が褒められる時というのは大抵、碌なことが無い。だから、その一見甘い言葉の羅列に神経を尖らせ、警戒を引き上げる。
そして、彼女が引き絞っていた鏃は放たれた。
「以上の事から私は君を“アルバイト”ではなく“インターン生”として正式に受け入れる事にした。君の実績から鑑みて今までのアルバイト期間の分もそれで再計算した報酬を約束するし、君の進路についても私の名の元に346が保証しよう。――俗にいう“青田買い”という奴に君は晴れて選ばれたという訳だ」
つらつらと語られるめでたいお言葉と評価の羅列。普通に聞いてりゃ非の打ちようもない好待遇で大手の346に将来を保証されたのだと諸手を挙げて喜ぶべきなのだろうけれども―――その真意に気が付きついつい心の中で呆れてしまった。
ほーん、どうやら新任の常務様は搦手も達者らしい。
冷たい瞳で口だけは言祝ぐように祝辞を述べる彼女の思惑に気が付き、思わず心の中での呆れた視線がそのまま出てしまうと今度こそ楽し気にその眦を細めこちらを伺っている。
何が、青田買いだ。 何が、実績を鑑みてだ。
そんなおためごかしで良いとこだけを主張するのは大概が詐欺師か、悪魔だけなのだ。
“シンデレラプロジェクト”は単独で莫大な売り上げを誇り、社内からの恩恵を一切受けずに一大部署となっている。だからこそ、今回の施策にも関わらず今まで通りに営業が出来るし、誰の援助も受けないからこそ好きに振舞い、文句があるなら逆に自分達以上の成果を出して見せろと脅せる立場になってしまう程に奇跡の大成果を上げ続けている。
彼女の示した新方針の“支配を受けたくなければ成果を示せ”という基準は既に超えているのだから干渉されるいわれもない。
だが、それが当たり前になっている事こそが異常事態だ。
それだけの売り上げと実績を誇る企画が―――支配下にない状態にしておく方が経営側としては狂気の沙汰だろう。そして、常務はその目的を果たすために“何をすべきか”という事を正確に理解している。
人気絶頂のアイドル達に妨害する?
馬鹿な、ドル箱に火をかけては元も子もない。
権力を傘に仕事に圧力をかける?
デレプロへの依頼を今更本社にお伺いを立てる所などない。全てが直通で話が来るし、346本社との関りを断ってでもという覚悟のある業者だけがウチの常連だ。
“商品”にも、“流通経路”にも崩す場所がないのならばどうする?
答えは簡単だ。
それらの行き先を繰る船頭たる、“裏方”を突き崩せばいいだけなのだから。
それがたった4人しかいないとなれば―――話はもっと簡単だ。
武内さんは論外。チッヒも武内さんを裏切ることはないだろう。美優さんもいるにはいるがもはやアイドルとの兼業になっているのでコレも無視していい。となれば、最後に白羽の矢が立つのは、自分という訳だ。
こういった事が初めてな訳ではない。元重役のオッサン達だって人の陥れ方は十分に承知している有識者の方々ばかりだった。事務方の木っ端のバイト一人を辞めさせれば立ち行かなくなることくらいは十分に理解している。
ただ、それが―――ただのアルバイトというのが彼らの頭痛のタネだったのだ。
社員であれば“会社の圧力”というモノは覿面だ。様々な嫌がらせに、決算、果ては税金処理まで彼らのハンコとサインが無ければ物事は進まないのだからじわじわと追い込んでいけば良かっただけである。それが出来なかったのは俺が“デレプロ“に直通で雇われている形であったから。
誰にどんな勧誘を受けてもボスを通してくれと逃げられ、給金を締め上げようにもデレプロの売り上げは鉄壁の計理の悪魔が握って離さない。そんな俺への最も手っ取り早い首輪として彼女は“インターン”という方法を持ち出してきたのだ。
正式ではないものの公には“会社に属する研修生”として扱われる以上は会社から出される指示に従わねばならない。つまり――“転属”を命じられればソレに従う他はなくなる。
これを拒否すれば、ただでさえバイトに入りびたりの3年間は何の評定も受けぬ労働となり果て、将来のここでの居場所の消滅を意味するのだ。
何も考えずに素直に頷けば上場企業での実質的な内定を貰ったに等しく、今までの自給換算は就労計算で見直せば結構な差額が入ってくるのは想像に難くない。
何よりもこの条件を出したのが上役の一人なんてレベルではなく、実質的なこの城の支配者となった彼女から出されたのだから今までの言葉とは重みが違う。
受けるにしろ 断るにしろ、だ。
そんな彼女の悪魔の提案を俺は――――
――――――――
→・受ける(クローネ√
・受けない(正規√
――――――――
※この選択肢を選んだ場合はこれまでのフラグ・好感度・開拓√などに多大な影響を与えますが―――それでも選択をしますか?
→・Yes
・No
―――――――
ピロン♪
新規√ 【KRONE Producer】 編が解禁されました。
新たな物語をお楽しみください。
―――――――
一瞬のうちにあらゆる思考が脳内に駆け巡る。ここまでの道中にあった様々な出来事や、人生で初めて文句はあれどその先を見届けたいと思った上司である偉丈夫への恩義。そして、その傍らでただの少女から泥や苦悩に塗れつつも駆け上がり続け、遂にはあらゆる人々の心に燈を灯す星となった少女達との日々。
そして、その最後に閉じた瞼の中で浮かび上がってきたのは――――逃れられぬ孤独に心を苛まれてつつも陽気に笑う狐目の少女の微笑みであった。
数時間にも感じる葛藤。だが、改めて瞳を開けばそれはたったの一瞬の事で小さく一人笑ってしまった。
ただのアルバイトで、ただ流されてここまで来た。
だけど、そんな日々の中で唯一、自分が能動的に行った事の責任だけは取らねばなるまい。
損得勘定も、葛藤も、倫理も飛び越えた最後に瞼の裏に映った答え。
それだけは俺自身でケジメを付けねばならない唯一の事柄だろうから、俺は小さく息を吐いてその言葉を絞りだす。
「………そのお話、受けるにあたってもう一つ条件を付けさせて貰っていいですかね?」
「――――言ってみたまえ。出来るかどうかはそれから判断しよう」
「“塩見 周子”っていう女の実家に一緒に謝りに行って貰えませんかね?」
俺の気だるげなその一言を聞いた女帝の大笑いが室内に響いたのは、その数秒後の事であった とさ。