デレマス短話集   作:緑茶P

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('ω')続くぜ、激重 ミナミィ√!!

がんばれ、おれ!! 走り抜けろ、おれ!!

( *´艸`)いつもみんな、コメント・評価・ブクマありがとうございます!!




美波√ =迷い、惑い、彼と彼女は蹲る= chapter②

 賑やかで明るい声が響くこの事務所の名物とすらなり始めている宴会。

 

 それの開催のきっかけは本当に様々でライブの打ち上げだったり、収録の慰労会だったり、色んなイベントがあっても無くても様々な口実をつけて結構な頻度で開催されるコレは規模の大小はあれども、総じて姦しく楽しい時間が齎される。

 

 その例に漏れず、今日も誰もが自由に日頃の疲れやストレスへの反抗だと言わんばかりに盛り上がっている。そんな光景を横目に私“新田 美波”は自問自答する。

 

 成人を迎え、何の衒いも無く摂取することを許された手元の酒杯をゆるりと回して誰にでもなく心の中で問い詰める。

 

 明るく、楽しく、陽気な気分も齎してくれるこの酒精に自分はずっと昔から憧れていた。というか、正確に言えばデレプロに入ってからコレを呑んで楽し気に語る年長の人々を見たからこそ興味を持ったというべきだろうか。

 大学でもそういう機会は無かったわけでは無いが、お酒を含まなくても十分に会話だけで楽しめたし、世話焼きな自分の性分か呑み過ぎた友人や先輩たちの世話をすることが多かったので無い方が楽かもとすら思っていた。

 

 だけれども、普段は年長として面倒を見てくれる彼女達がこの時ばかりは空気を緩め、自分の趣向に正直になる瞬間を見ると羨ましくも思えたのだ。

 

 好きも、嫌いも。

 

 疑問も、提案も。

 

 心の内をこの時ばかりは素直に打ち明けられるその様子は、色んな方面で意地っ張りな自分には余りにも魅力的な“言い訳”であった。いや、もっと正直に白状するのならば―――酔いに任せた勢いで自分の想い人に素直に甘えに行く彼女達が恨めしかったのだと思う。

 

 そんな時ばかりは、いつも素っ気なくあしらう彼も酒精で寛大になっているのか激しく抵抗もせずに眉を顰めるばかりだったというのも自分の年齢を恨めしく思った大きな要因でもある。

 

 『“大人”ならば、ソレが許される』

 

 そんな酔った彼らを引き剝がしながらいつも心の中で焦れていた憧憬へ遂に自分はなることが出来た。

 

 自分の誕生日のその日。自分は例年になく高鳴る鼓動を押さえる事が出来ずに、急き立てられる様に事務所へと足を走らせ、目的の彼を呼び止める。

アイドルとしての立場だとか、いつも口うるさく喚いている品行なんてその時ばかりは構っている暇なんてない。

 

 彼と出会ってから1年ちょっと。いつ、誰が彼を攫ってしまうかと常に怯えてきた。

 

 自分たちが来る前から深い絆を結んでいた初期メンバー。

 

 同じ大学に通い、多くの接点を持つ清楚で知的な彼女。

 

 デレプロ創設時から彼と歩んできて、女の自分から見ても可愛らしい彼女。

 

 そして――――誰よりも自然に彼の隣に並ぶ、風の様な狐目の少女。

 

 誰もが彼に並々ならぬ感情を向けている事なんて、嫌でも分かる。

 

 だけど、“大人”になった自分ならば。

 

 素直になれる“言い訳”を手に入れたならば―――もう、堪える事なんて出来なかった。

 

 誰かに取られるくらいならば、自分が彼を射止めてしまおうと決意して渋る彼にごねてごねて無理やり首を縦に振らせ、初めての経験を踏み台に遂に彼への偽りの無い想いを口にすることが出来たのだ。

 

 それが、どうしてこんな事になってしまったのだろうか?

 

 あれから、彼は本当に何もなかったかのように変わらなかった。

 

 送迎も、仕事の打ち合わせも、メンバーとの接し方も、普段の気だるげな雰囲気も何一つとして変わらない。まるで本当にあの夜には何もなかったかのように振舞ってしまえる彼が、不気味ですらあって私は今日まで遂に声を掛ける機会を見失ったままだ。

 

 無言で、何も語らない彼にあの話をしてしまえば今度こそ――――決定的な何かが閉ざされてしまうという確かな予感が私を縛り付け、口を紡がせる。

 

 ゆたり、ゆたりと氷もとっくに解け切ってしまったグラスを回し続け、問いかける。

 

 貴方は、素直になることを許してくれる免罪符ではなかったのか?

 

 貴方は、たゆとう甘い夢をなぜかき消してしまうのか?

 

 貴方は―――――もっと、明るく暖かな世界へ誘ってくれるものではなかったのか?

 

 私は―――どうすればよかったというのですか?

 

 八つ当たりというのも的外れな私の糾弾に、当然のように答えは無く

 

 代わりに、鈴の様に可憐な声が隣から掛けられた。

 

「アー、ミナミ。具合悪い、デスか?」

 

「アーニャちゃん……。大丈夫、ちょっと、ぼんやりしちゃってただけだから」

 

 自分のユニットの相方で、年下の親友であるハーフの少女の気遣いが少しだけ今は煩わしくてぎこちなく微笑む事で短く答える。

 

 誰かに、気を使われるのが最近は煩わしいと思う事が増えてしまって最近はこうした表情を浮かべる事が多くなってしまった。

 

 心配され、ソレを受け入れて全てを吐きだせればどれだけ楽だったろうか。だけれども、こんな話を誰に出来る訳もない。ましてやソレが―――同じ想い人を抱えているであろう少女や仲間達になんて話せるわけがない。

 

 色々と心配そうに声を掛けてくれる彼女に腹の底でそんな醜い感情と打算を巡らせている自分にどうしようもない嫌悪感が湧き上がる。

 

 こんなはずでは、無かった。

 

 どうして、こうなってしまったのか?

 

 どうして貴方は―――ここにいる皆への様に私に多幸感を与えてくれないのか。

 

 ガラリと開いた居酒屋の扉から遅れて合流した事務方メンバーが入ってきた事によって歓声が上がる会場の中で、私だけは手の中で無感情に揺れる酒精を私は恨めし気に睨みつけ、唇を噛みしめた。

 

 

 自分は、何を間違えてしまったのだろうか?

 

 そんな答えの出ない自問自答が、また繰り返された。

 

 

 

------------------

 

 

 

「……ハチ君、美波ちゃんとなんかありました~?」

 

「なんだ、藪からスティックに」

 

 菜々さん考案の新メニュー決定祝いだか、拓海の愛車の車検祝いだか、もはや何を祝したのかも分からない宴会。それに俺が呼ばれるのはわりかしいつもの事なのだが、今日は珍しく武内さん達も都合がついたため参加と相成った。

 

 多忙すぎて顔をそんなに出せない武内さんが来るとあってここぞとばかりにメンバーが連れ去っていきあーだこーだとその背を叩きながら酌をして盛り上がっているので今日は比較的に俺ものんびりと酒とつまみを突けていた。そんな俺の横にノソリと腰をおろして絡んでくる影が一つ。

 

 柔らかな栗毛をツインテールにした初代シンデレラ“十時 愛梨”がグラスを片手に俺の背中に圧し掛かってくる。体の細さに反して豊かに実った胸部を惜しげもなく当ててくるのはいつもの事なので反応しないように意識を必死に目の前のから揚げに集中。秘儀・から揚げの呼吸だってばよ。

 

「ハチ君って、嘘とか誤魔化しがいつまでたってもド下手糞ですよねぇ…」

 

 そんな俺のわざとらしい茶化しに呆れたような溜息を漏らす十時がジト目で俺の事を睨んでくる。

 

「別に何にもねぇよ。普通に仕事して、普通に会話もしてんだろ?」

 

「美波ちゃんの誕生日の次の日からですかねぇ、様子がおかしいの。普段どおりの脚本を二人してこなしてるみたいな変な間合いが出てきたのはその頃から」

 

 余りにピンポイントで“あの日”を指摘され、危うく反応しかけてしまう。だが、それは俺が肯定も否定もしなければただの十時の仮定というだけで終わる話だ。一番してはならないのは反応を読み取られてカマかけに乗ってしまう事。そうすればただの与太話で終われるのだ。

 

「なーんて考えてるのかもしれませんけど、誕生日当日のお誘いは全部断って、次の日にあんなぎこちない空気の美波ちゃん見れば勘のいい人はみんな気が付いてますから。美波ちゃんが小綺麗に繕うのが上手いから、大事にもなってませんけどね。

 それに、その日以降からハチ君が美波ちゃんと二人きりにならないように上手く調整してるのもバレバレ。私を騙そうとするならもーちょっと丁寧に頑張ってくださいね」

 

 ニンマリと笑いながら梅酒で喉を潤す十時に言い返す言葉も無いのでとりあえず“ぐう”とだけ唸って返し、そのムカつく口を黙らせるためにから揚げを突っ込んで黙らせる。

 

 とはいえ、わざわざ十時に言われるまでもなくなんとなく年長組は察してくれていることぐらい百も承知だ。だが、普段はおチャラけている年長組もあれで立派な大人なために気が付いても触らずにいてくれる良識を持ち合わせている。ソレをわざわざほっつきに来たコイツがガキなのである。

 

「“調子に乗って酔いつぶれたアイツをマスターに預けて置いていって、その酒癖の悪さを揶揄ったら怒った”。―――ほれ、蓋を開けて見りゃそんなもんだ。大した話でもないだろ?」

 

「相変わらず、ダメな王子様ですねぇ……」

 

 俺の説明の何が不満なのか大きく溜息を漏らした彼女は、首に回していた腕を緩くふざける様に締め付けて困った子供を叱りつける様に俺を窘める。

 

「答えの無い解答欄の苦しさはハチ君が一番知っているんじゃないですか?」

 

「…………」

 

「なら、お酒とか嘘で逃げる“カッコ悪い大人”だけじゃなくて―――真剣に迷って悩める“カッコいい大人”な部分も見せてあげてください。少なくとも、ソレが“初めて”を引導した人の責任、って奴ですよ?」

 

 だんまりを決め込む俺に柔らかく微笑んだ彼女は、そういって俺の頭をポンポンと撫でつける様に叩いて席を立つ。

 

「…………“カッコいい大人”、ねぇ」

 

 のんびりと離れていき、他のグループに交じって何事も無かった様にはしゃいで会話を始める彼女の後ろ姿に俺は溜息一つ零して、麦酒でその苦みを流し込んだ。

 

 ずっと、俺の様に答えのない解答欄の前で佇んでいるその姿がカッコいい大人なんてモノだとは到底思えない。そんな俺が泡沫の想いに酔っているアイツに応えられるものなど、無い。

 

 ドン詰まりの人間への問いかけの答えなど出せる訳がなく、不毛のまま貴重な時間は過ぎ去っていく。そんな、分かり切った結末なんかをわざわざ体験させるのが大人の責務だと割り切れる程に―――俺は、強くない。

 

 だから、この胸に奔る苦みを喉と脳細胞を焼く酒精の熱で誤魔化し、その泡沫が弾けるのを静かに待とう。そうすれば、いつかは時間という停滞の砂が緩く彼女の幻想を冷ましてくれて―――誰も傷を背負わずに済む優しい終わりがやってくる。

 

 

 もう、俺は―――――――誰かの傷なんか、背負いたくないのだ。

 

 

 胸に奔る昔の後悔の痛みを誤魔化す様に、俺は粗雑にグラスの中身を胃に流し込んだ。

 

 

 

 

 

~蛇足 という名の 同じ会場での一幕~

 

 

 

楓「うふふふふっ、いいですねぇ。いっつも武内君が宴会に来なくてえ~んかいっ!て思ってたので今日はいつもよりずっと飲めちゃいそうです!!」

 

武「か、楓さん。いくら何でもピッチが早過ぎです……。今日は付き合いますので、せめてもう少し押さえてください」

 

ちっひ「あ、武内さん。この量だとちょっと食べきれないんでよかったらシェアしませんか―――って、なんで間に割り込んでくるんですかねぇ、泰葉ちゃん?」

 

泰葉「シェアするなら取り皿が必要かと思いまして(いそいそ」

 

きらり「えへへ、武ちゃん。ご飯まだだと思うからお腹に溜まりそうなの取ってあげるにぃ?」

 

瑞樹「ちょっと、ちょっと、みんな。珍しくプロデューサーくんが来たんだから喧嘩しないの。まずは乾杯から皆で始めなきゃ駄目よ~」

 

佐藤「うは、修羅場に女神現るww」

 

菜々「は、はは、……瑞樹さんがいて良かったですねぇ。というか、美優さん? か、顔が怖いんですけど?」

 

美優「…………(ぷくー」

 

未央「あー、狙ってたハッチ―を取られちゃってご機嫌斜めだねー」

 

まゆ「こういう時の抜け駆けの技術は学ぶところがありますねぇ……」

 

拓海「たく、どいつもこいつも色ボケしやがって」

 

里奈「内匠が女の子と話してるときはたくみんもあんな感じぽよ~(笑)」

 

拓海「ん、んなぁわけねぇだろっつ!!」

 

幸子「は、ははははっ、さあさあ、とりあえず乾杯しましょう! カワイイこの僕が音頭を取りますからとりあえず、皆さん乾杯しましょっ!! ねっ!! ねっ!!!」

 

 

 

 

 

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