(*''ω''*)という訳でようやきゅ夕美ちゃんデート回です!!
待たせた夕美Pごめんね!!(テヘペロ
('ω')ゆうみ、可愛いよね……
という訳で、いつもの様に脳みそかろっぽでおたのしみくだしゃー♪
ステージの上で、無我夢中でステップを踏み込んだ。
緊張から真っ白になる頭。それでも、それこそ比喩抜きで泣きじゃくるくらいにしごかれた体と口は振り付けと歌を淀みなく紡いでくれる。
アイドルに成りたての頃はそれこそなんでこんなに追い詰められなきゃいけないのかと腐りそうにもなったが今なら分かる。ここ一番で人間が絞りだせるのは夢でうなされるくらいに刻まれた血と汗の結晶だけだからだ。
ならば、大歓声とプレッシャーで役に立たない脳みそと体はかつてのしごかれた自分に任せて、せめて意識だけは満面の笑みを渾身の力でかたどろう。
上がった息が苦しく、滴る汗で視界が滲んでも―――それだけはやり切って見せる。
だって、私は―――― “相葉 夕美”はもう“アイドル”なのだから!!
そして、最後の振り付けを完璧に決め切った先で更なる大歓声が場内に響き渡る。その声は悲喜こもごもで喜びと無念が入り混じった物。ここがライブバトルという戦場である限り必ず生まれる勝者と敗者。それの明暗が自分の背後にあるバックスクリーンに映し出されているのだろう。
最後の一滴まで絞りだした中で、ゆっくりとその結果を確かめる。
【67:33】
華々しく輝く蛍光版に映されたのは――――自らの勝利であった。
『Bランク・ライブバトル決勝トーナメントを制したのは、新人“相葉 夕美”さんです!! あの346プロから突如として現れ、一気にここまで駆け上がってきた大型ルーキーが見事に古豪の92プロや2525プロの昇格を阻みました!!
際限なく生まれてくるその層の厚さは業界最大手の底力を物語っている!! この勝利は偶然か? それとも、芸能界を一色に染め上げようとする346の無慈悲な一手か!?
今後のAランクトーナメントで彼女の進退に目が離せません!!!』
会場中に鳴り響くナレーションに人々は更に熱狂し祝福や、悔し気な想いを乗せて応える。横では決勝を競った相手が項垂れ、涙を零しながら舞台袖に下がっていくのに少しだけ胸の奥を締め付けられながらも私は精一杯に笑顔を作って会場に手を振り返す。
少なくとも、自分はここまで応援してくれたファン達のお陰でここに立っている。
ならば、今だけは素直に勝利を喜び彼らと分かち合おう。
それが、勝者の私の義務だと思うし――――本当に張り合うべき相手はもっともっと先にいるのだから、こんな所で悩んでいる暇なんか恋する乙女には無いのである。
笑顔と勝手に零れる涙で頬を濡らしながらも、MCが持ってきたマイクで会場中に感謝の言葉を述べながら私はゆっくりと舞台を降り立った。
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「おつかれさん――っと」
「あ、あははは……ライブバトルが終わったら急に力が抜けちゃって」
なんとか笑顔のまま終え、下がった舞台裏で暗闇に紛れる様に気だるげでぶっきらぼうな声を掛けてくる彼“比企谷さん”に声を返そうとしたところでかっくりと膝の力が抜けてしまった。
転びそうになる私を咄嗟に支えてくれた彼の行為に甘えつつも乙女としては少しだけ言葉にできない煩悶。
汗だくだし、匂いとかその、ね?
それに、細身に見えても意外としっかりした身体とか体温とかもこう身近にあると余計に意識してしまって気恥ずかしいのですぐに離れたいのだが、もう少しこのままでいたいとかも思っちゃたりなどなど色々と複雑なのである。
そんな自分の想いを知ってか知らずか、肩を支えたまま控室まで連れて行ってくれた彼に甘えて椅子に腰を下ろした所で一段落。名残惜しむ私から彼は離れてあっさりと離れて行ってしまう。……むう。
「まあ、順当に勝ち上がったようで何より。おめでとさん」
「えぇー、あれだけ苦労して勝ち上がったのに冷たいなぁ。もっと温かい言葉を掛けてくれないとお花だって咲いてくれないよ?」
「負けるとも思ってなかったしな。それに、祝福ならこの後に雪崩れ込んでくる奴らに過剰摂取気味に注がれるから俺からはこんくらいで丁度いいだろ?」
「ふふっ、信頼が重いなぁ…。それに、そういう問題でもないのー」
頬を膨らまして反論する私に肩を竦めるだけで応える彼。そういってくれるのは嬉しいが、そういう問題ではないのだ。
アイドルとしてはどうかと思うが、自分がこんな世界に飛び込んだきかっけとなった彼から掛けられる“栄養”からしか得られない特別な成分というのがあるのだからそういうのでは困るのだ。栄養過多で枯れちゃう花も多いが私に限って言えば与えられれば与えられるだけ成長するタイプなので是非ともじゃんじゃんかけて欲しい。意外と私は底なしに構って欲しがり屋なのである。
「もっと形のある祝福がほしい! んー、たとえば……そうっ! 明日からのお休みに遊びに行くとか分かりやすいご褒美が欲しいな!!」
「はぁ? 普通にやだけど」
案の定、渋る彼。だけどもそれくらいは想定内なのでここからの粘りが重要なのは他の彼に懸想している先輩方から勉強済みなのです。何度も読み返したスケジュールでは彼が珍しくオフになっている事も確認済み。ん? 意外と余裕あったじゃないかって? それとこれは別口なので無問題です。
「………そうだよね。ホントにたまにしかない休日をこんな園芸くらいしか趣味の無い女と過ごすなんて嫌だよね。うん、ごめんね? ちょっとトーナメント勝ち上がったくらいで調子に乗って……。うん、いいよ。明日は私一人で部屋でお花の植替えでもして静かに過ごす。いや、こんなんじゃ駄目だよね。明日は休業日だけど次に備えて自主レッスンでもしようかな―――卯月ちゃんでも誘って」
「おいばかやめろ死ぬ気か? 分かった! 分かったから!! 午後位なら付き合うから遠回しな自殺はやめろ!!」
「やったぁ!!」
「……お前って意外に性悪だよな?」
万歳して喜ぶ私にガックリと肩を落とす彼の恨めし気な目に思わず笑ってしまう。だけども言質を取ったらこちらのモノ。気分はすっかりお祭り気分で明日の予定についつい浮足立ってしまう。
というか、あの“微笑みの修羅”と呼ばれる六代目シンデレラガール卯月ちゃんと制限時間の無い自主レッスンをした場合は本気でヤバいので彼が引き留めてくれと心底ほっとした分喜びも倍増しである。
「うふふっ、可愛いお花には毒があるもんだよ♪」
「食わされる方は笑いごとじゃないんだよなぁ……」
そんな私たちの会話を皮切りに控室の扉の奥から仲間達の騒がしくも楽し気な声が聞こえて来て、二人きりの時間はどうにも終わりらしい。ノックされる扉にゆっくりと立ち上がりつつ彼に最後の一指し。
「明日、楽しみにしてますね?」
「俺の休日はいつやって来るんだ……」
そんな彼の情けないため息を、私はクスリと笑って答えるのであった。
まぁまぁ、私という花を愛でてゆっくり過ごすお休みも―――そんなに悪くないもんだよ?
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「というわけで来ました、横須賀のひまわり畑!!」
「結局は花関係なんかい…」
脅迫にも近い“暇つぶし要請”もあの後の打ち上げを挟めばあっという間に約束の時刻となり、寝たふりをして誤魔化そうにも鳴りやまない電話。それに根負けして遂にはこんな所まで引っ張られて来てしまった。
浜風に乗る潮の匂いに海の漣。そんなもんに夏がいよいよやって来るなぁなんてのんびりとレンタカーの窓から流れてくる風を感じつつ走らせていれば相葉ナビが指し示したのは海沿いにある大規模な公園施設とアミューズメント施設が混ぜられたようなゲート。
そこをくぐれば広がるのは目の前一杯に広がる―――黄色い太陽の畑であった。
“ヒマワリ” キク科の一年草で原産は北アメリカ。高さ3mほどに成長し、大きな一輪に見えるが実際は多数の花が集まりこの形を成しているのだとか云々かんぬん―――夕美植物図鑑より。
そんな聞きかじったくらいの知識しかない俺だが、目の前に壮大なヒマワリ畑が広がると理屈とかは置いといて単純に“すげぇ”と思って息を呑むくらいしかできない。
夏本番は少し早いが、それでもぶっとい茎で立ち上がり眼を覚ます様な生命力を感じさせるその輝きは意地で絞り出した嫌味を最後に、茶々を入れる隙のないくらいに俺を圧倒させた。
「んふふ、藤とか有名な植物園とか色々と有名どころで悩んだんだけど……やっぱり夏はヒマワリだよね!」
「まぁ、運転手をした分くらいの労力は報われたのは確かだな」
言葉を失って見惚れる俺の前に躍り出た相葉は真っ白なワンピースに白い日除け帽の眩しすぎる装いと輝く笑顔で俺に笑いかけてくるもんだから、俺も思わず眼を眇めてしまうのを誤魔化す様に苦笑で返す。
そんな男の浅知恵なんかお見通しなのかクスクスと笑いを零した彼女が余りに自然で無邪気に俺の手を取ってそのヒマワリ畑へと誘っていく。
「ならここからは“楽しみ”が増えてくだけだね! ここって凄い遊べる所らしいから、思い切り羽を伸ばそう!!」
「おいっ、あんま引っ張んな」
そんな眩しすぎるくらいの彼女の笑顔をに引き連れられて――――俺たちの休日が始まったのであった。
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「あははっ、凄いねここ! 思ってたよりずっと飽きが来ないや!」
「だからってワンピースで芝のスライダー転げるとは思わなかったけどな……」
すっかり日が沈むまで遊び惚けた夕方、帰る前の一休みとカフェで限定のシェイクとやらで喉を潤していると今日の事を振り返った相葉が本当に楽しそうに笑っている。
あちこちと一日では廻り切れないくらいに広い園内を駆け足気味に回ってきた中で本当にバリエーションが豊富なアトラクションを彼女は思う存分駆け巡った。
水あそび場があれば濡れるのを構わず突貫し、温室では様々な工夫を事細かにメモし職員を質問攻めにし、ゴーカートでは盛大にスリップし、動物に囲まれ右往左往したりし―――終いには芝ソリに無謀にもチャレンジして巻き込まれた俺ごと一緒に白いワンピースを芝塗れにして、大笑いしていたのだから笑うしかない。
引っ張りまわされ、疲れるには疲れたのだが―――なんとなく満たされたような謎の充足感。
アルバイトという社畜に成り果てて疲労とは随分長い付き合いになったが、鈍い重たさを感じるそれではなく素直に眠りに落ちてきそうな充足感ある疲れというのは随分と久しい。
それこそ、遠い昔の子供の頃以来のモノではないだろうか?
そんな久しくて懐かしい感覚を味わってなんとなく郷愁に駆られている中で、ジッとこちらを見つめる瞳が一対。
「……なんだよ」
「ん、そういう優しい顔も出来るんだなぁと思って」
「………いつも通りだろ」
「はいはい、そういう事にしておきますよーっと」
ニマニマと気持ち悪い顔を浮かべる相葉に未使用で置いていたお手拭きを投げつけ遺憾の意を表明しつつ俺は席を立つ。
「―――近くに温泉もあるらしいから、せっかくならその泥だらけの顔も洗っていくか」
「えっ、うそっ! まだ汚れついてる!?」
「ドロドロだな。主に面の皮が」
「ちょっと、どういう意味!?」
ニコニコと少女と母親が混ざったような優し気な顔立ちに、焦った顔、怒った顔。笑った顔にわりかし打たれ弱い顔。意外に分かりやすい悪だくみした時の顔。どれもこれもが百面相のようにコロコロと変わる彼女のせいで、普段は鉄壁を誇る俺の顔が特にひどい。
だから、こういう時は心と体に生まれた“勘違い”という毒素を温泉でデトックスして仕切り直さねばならない。そして、ソレはそうとしても、心の膿を出し切る前についでの恥のかき捨てと行こう。
わんにゃーきゅあーきゃー俺の隣で文句を零す彼女に一言だけ振り返ることも無く俺は聞こえるか聞こえないかのキワ戦で呟く。
「……まあ、その、なんだ。思いのほか楽しかった。ありがとう」
「――――――へ? ちょっと! いまのもう一度!! 聞こえなかった!! もういっかいだけおねがい!!」
「あー、うるせぇな。何も言ってない! お前の空耳だ!!」
「うそ! 絶対に言った!! ね~、もう一回だけおねがい!!」
わんにゃーキャーキャー、馬鹿みたいな意地の張り合いをする夕闇を歩く二人を見渡す限りのひまわり達が野暮は無用だと眼を瞑って俯いていく。
まったくもって、花って奴は人よりも慎み深くて助かる。
ついでに、この俺のドロドロに溶けてしまった表情に浮かぶ朱も夕焼けのせいにしてくれないかと俺は誰に呟くでもなく心の中でそう願うのであった、とさ。
(´ω`*)評価くれると嬉しくて泣く