デレマス短話集   作:緑茶P

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(・ω・)俺はな、誓ったんだ。――――あの娘を勝たせるって。


文香選挙応援SS 【教鞭の貴方】

「以上の事から、古文は全ての単語が分からなくても前後の脈絡から物語の流れを読み取ることが出来ます。好きな方でしたらソレを調べるのが楽しみにもなりますが、テストという限られた知識での事なら細部にこだわらず分かる部分を埋めていくのが良いかもしれません」

 

「あー、そっかぁ。一問に拘って時間を潰すより分かる部分を呼んだ方が点数は高いですもんねぇ……」

 

「私は、恥ずかしながらも……物語に没頭しすぎて記入を忘れて赤点を取った事がありますよ?」

 

「うっそ、文香さんも赤点とかとったことあるんだ!!」

 

「ソレは、ちょっと意外だけど……文香さんらしいといえばらしいね」

 

 机一杯に広げられた問題集。懐かしい教科書に抜粋された物語の抜粋を解説しているウチに零した自分の過去の笑い話を交えればデレプロの後輩であり、仲間であるトライアドプリズムの三人が楽し気な笑いを零してしばしの雑談に興じます。

 

 そんな光景に小さく相槌を挟みながら、ちらりと視線を借り切った会社の会議室に走らせればあちこちで苦手な教科に頭を悩ませる高校生組がちらほら。それに熱血的だったり、冷静にだったりと方法は様々ですが年長の大学生組や年長組がサポートについて問題に取り組んでいる光景が広がっています。

 

 幅広い年齢の乙女が集まるこのプロジェクトは当然のことながら学徒も多くいて、試験前や受験シーズンが近ずくとこういった光景が風物詩のように広がる。

 

 総責任者のプロデューサー自身も“学業との両立”を掲げており、そのおかげか多くの生徒はアイドルという過酷な業務を抱えているにも関わらず学業がおろそかになることが少ないのがこの事務所の美点といってもいいでしょう。

 そんな恒例の行事の中でつい目をやってしまうのは―――やっぱり自分の意中の人だというのは仕方のない事だと思うのです。

 

「丸暗記を出来るなら世話無いが大体は無理だ。なら、せめて覚えやすいように工夫しろ。例えば、あれこれと種類があって覚えにくい変格活用一つにとっても形容詞なら『トヨタ”カロ“ ーラ ”かっ“ く” い“ い ”けれ“ ど』―――と覚えりゃ一発だ。

 

 いいか、少ない脳みそに無理して詰め込むな。いや、正確には押し込む量は無理のない範囲で残りは他の部分で補え。お前らが今から覚えるのはこの表と、俺が教える“魔法の言葉”だけだ。ソレを間違えずにやり切れば問題自体が理解できてなくても点数は取れる」

 

 特に文系科目に苦手意識を持っている子達が集められた席で教鞭を振るう気だるげな彼“比企谷さん”。

 

 意外に思われる事も多いのですが、彼の講義は非常に分かりやすく丁寧で、既存の苦手意識を拭いさるウィットさに富んでいて非常に人気があります。

 

 最初はちひろさんに脅されて渋々といった具合ではありましたが、回数を重ねるごとに元々の凝り性と面倒見の良さが出て来て彼の授業は試験前以外ですら開催を要望されるくらいになって多忙さが更に増したのは笑うべきか、溜息をつくべきかは判断に困るところではあります。

 

「……あれだけの講義やってるなら本職に出来るんじゃない?」

 

「あー、わかるかも。将来は有名どこの塾にでも出てきそうww。比企谷先生の生授業を抜け駆けで受けた奈緒さんはどー思います??」

 

「ちょ、加蓮、その話は蒸し返すなよ!!…………いや、でも、まあやっぱ分かりやすかったし、凄い才能あるとは思ったけどさ」

 

 そちらに視線を奪われていると自分が担当している3人組からそんな声が聞こえてきてようやく我に返る。そして、彼が褒められているのが自分の事の様でくすぐったい気分と彼の教育実習で“教師”としての彼を見ている奈緒さんに少しだけ羨望の念が湧き上がる。

 

「………そういえば、学校での彼はどんな感じだったのですか?」

 

「へ? ……いや、顔は良いし、普通の先生とは違ったからそれなりに人気はあったよ? 授業も分かりやすいし。でも、他の先生には良く怒られてたかな」

 

「あははっ、なんか目に浮かぶかも!」

 

「……もう、ホントにしょうがない奴だよね」

 

 私が気になって投げかけた質問に皮肉交じりで、それでも隠しきれない親愛の念が込められた奈緒さんの声に柔らかな微笑みで応える二人。そんな暖かな空気が流れ私もクスリと声を漏らして少しだけ夢想します。

 

 あの、物語の世界に没頭していた私の冴えない学生生活も―――彼の様な先生がいればいっぱしの女子学生のように淡い恋心の一つでも抱いたのでしょうか?

 

 その答えは、いまさら得られそうには無いけれど

 

「くっちゃべってないで問題をさっさと解け、阿呆トリオ。文香もこいつらの話術に乗って騙されるな。気がつきゃ雑談で終わらせようとしてやがるんだからこいつ等」

 

 耳に馴染んだその声が気安くかけてくる声と、距離を感じさせないその間合いで自分の隣に立つこの“同級生”という立ち位置に心の底から居心地の良さを感じている現状では少々だけ欲張りな願いかもしれません。

 

「いえ、私自身も興味深いお話でした。今度は、私も後学のため比企谷さんの教鞭を受けてみるのも面白いかもしれません」

 

「……かんべんしてくれ」

 

 げんなりと肩を落とす彼についコロコロと笑いを零してしまいます。

 

 教師の彼と、私。

 

 そんな楽し気なワンシーンを夢想しながらも三人からやんやと文句を言われている彼を見つめながら想います。

 

 それは、二人で読んだ書の感想を対等に語り合う時間とどちらが甘美なのか、と。

 

 きっと、どちらも負けないくらいに楽しい時間なのだろうなぁなんて思いつつも私も今日本来の責務を果たすべく参考書をゆたりと閉じ、言葉を紡ぎました。

 

「ふふっ、では、比企谷さんに問題が無いと知らしめるために今から赤本から出題させていただきます。――――頑張って、見返してやりましょう」

 

 楽し気な声から一転、悲鳴をあげる彼女達に微笑みかけながら私は―――昔の制服をどこにしまったかの記憶を探ってゆくのでした。

 

 

 気だるげな新米教師に、暗い文学高校生。夕方の図書室。

 

 

 ふむ、意外に、悪くないかもしれません。

 

 今度、彼がウチに来た時に揶揄うネタが出来た事を喜びつつ、私はこの国最高学府の赤本をコピーするために席を立ったのでした、とさ♪

 




(●ω●)みな、文香という沼にはまれ(暗黒の意思
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