デレマス短話集   作:緑茶P

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日常SSS 『お姫様だっこ』

 

 

「……ちょっと、おにーさん。“コレ”やろーや」

 

「はぁ?」

 

「はしたない事言わんの、周子はん」

 

 今日も今日とて大学をサボってバイトで社畜として汗を流す毎日。そんな中で不意に生まれた隙間時間にようやく事務所で腰を下ろせたかと思えば、先に休憩に入っていた妹分であり所属アイドルの“周子”がテレビを指さし唐突にそんな事を言い始めた。

 

 彼女が指さした先を眼で追えば、どっかのプロデューサーがアイドルの事をライブ会場でいわゆる“お姫様抱っこ”という奴をかまして満面の笑顔で映り込んでいる。

 

 そのサプライズに賛否はあるようだが、画面の向こうでは大いに盛り上がってるのを眺めた後に改めて周子を見れば興味津々といった風情で俺の裾を掴みやる気満々のご様子。

 そんな彼女に相方の“紗枝”も飽きれた風に溜息を漏らして窘める。

 

「えぇー、減るもんでもないしいいやんなぁ。それに乙女として生まれたからにはいつ何時こういう事態になっても大丈夫なように訓練しとかないとさ。――という訳で、どーんっ!」

 

「ぐえっ、ばかっ、普通に重たいっつーの!?」

 

 拗ねたように紗枝に反論した彼女はそのまま悪戯気に頬を吊り上げて、ソファーに凭れる俺の腿の上にその形のいいケツをどっかりと乗せやがったのである。

 あの“塩見 周子”が首に腕を絡ませ、ケツを膝の上に乗せているその柔らかい肢体を寄せているというのは全国の男子垂涎もののシュチュエーションなのだろうけど、夜勤続きで鈍った頭ではでかい猫に絡まれた鬱陶しさの方がやや勝る。

 

 彼女特有の白檀の香りが鼻孔に流れ込んでくるのにやや眠気を誘われながらも、耳元でがなる彼女に素っ気なく対応する。

 

「大袈裟やなぁ、ほら、気張りー。こんな機会は冴えんアシスタント君にはもう二度と巡ってこーへんかもよー♪」

 

「果てしなく上から目線なのが腹立つな……普通に疲れてるから一回やったら終わりだぞ っと」

 

「うわっ、うわははっ、紗枝はんヤバいわコレっ! 思ってたよりも恐いけど、めっちゃ楽しいで!! 紗枝はんも今のウチにならんどきって!!」

 

「もー、比企谷はんわ周子はんに甘すぎやわ。―――まあ、貰えるもんはウチももろとこかなぁ♪」

 

「いや、京娘の奥ゆかしさは何処に行ったんだよ…」

 

 こうなれば意地になって動かないと観念した俺が絡みつく周子の肩と膝裏を支えてどっこらしょういち、っと立ち上がればそれなりに重いものの意外にも簡単に立ち上がれることが出来た、は良いのだが。

 

 大興奮で小娘のごとくはしゃぐ周子が暴れるせいで重心が揺れて抱えずらい。

 

 安定のために体を強めに抱えれば今度は静かになってニッコニコ笑顔で頬を染めるのでなんとなく気まずくなるし、いつの間にか紗枝まで早く変われと並び裾を引っ張る。

 

 この幼馴染コンビーーー揃って図々しすぎである。

 

「ほれ、終わりっ。お前も一回やったら終わりだからな」

 

「分かっとります、わかっとります―――って、うきゃあっ♪」

 

 ご満悦な周子をソファへ雑にうっちゃり、待ちきれないといった風情で首に手を回した彼女を抱え上げてやるとこっちもいつもの奥ゆかしさは何処へやら年頃の乙女のごとくはしゃいだ声を上げる。

 

「む、周子よりは軽いな」

 

「ふふーん、ウチは体重もお淑やかやさかいなぁ。――人足はん、このまま小早川コーポレーションまでよろしゅうたのんますー♪」

 

 周子とは違う金木犀のような香と艶やかな黒髪をくすぐったく感じつつ抱えているとほっぺをべチベチされそんなリクエストまで出してきやがった、生意気な奴である。

 

 要望どうり抱えたまま歩いてやり――丁度、その辺に放置していた手頃な段ボールに紗枝をすっぽり嵌めこんで下ろしてやった。

 

「ほえ?」

 

「要望どうりコーポレーションまで速達で送ってやるよ。ちょうど“割れ物注意“のステッカーも張ってるしな?」

 

「ぶはっ、あははははっ、これならタクシー代も浮いてお得やねぇ紗枝はん!! あ、ついでに“逆さま厳禁”も張ってあげる!! 今日のでれぽの話題は紗枝さんで持ち切りだよっ!!」

 

「ちょ、蓋しめっ、こらっ、撮ったらあきまへ―――やめーやっ、ごらぁっ!!」

 

 結局、丁寧に梱包された紗枝の速達便の写真がその日のでれぽのMVPに輝いたそうな……あー、腰いてー。

 

 

 

 

 

=オマケ=

 

 

楓「武内さーん……んっ!」

 

武内「……やりませんよ?」

 

楓「………? あっ、すみませんこれじゃ持ちにくいですよね」

 

武内「いえ、体勢の問題ではなく…」

 

楓「んもーっ、なんでそんな我儘なんですかっ!」

 

武内「いや、逆切れされても…… 一回だけですよ?」

 

楓「♪」

 

 

―――― 

 

きらり「きらりみたいなデカ女が、あんなのに憧れるなんて……ははっ、いや、なんでもないにぃ。なんでも―――ないです、から……」

 

武内「――――いえ、やりましょう。諸星さんにそんな顔をさせる訳にはいきませんっ」

 

きらり「たけちゃん……ありがとう、だにぃ~!(けろっ」

 

武内「――――(白目」

 

―――― 

 

泰葉「まさか、私は駄目とか言いませんよね?」

 

武内「いえ、その、する理由が無いと言いますか……」

 

泰葉「はぁ? 他の二人にはあったんですか? あるならお聞きしますけど?? というか昔はよくやってくれたじゃないですか!!」

 

武内「いや、その、ですね。もう、泰葉さんも立派な女性として軽々しくそういう事は出来ないと言いますか、あれは子供だったからといいますか……」

 

泰葉「あー、もう五月蠅いですね!! 今更そんなの聞きません!!―――えいっ!!」

 

武内「や、泰葉さん危ないですっ!? 分かりましたっ、分かりましたから飛び掛からないでくださいっ」

 

泰葉「えへへへっ、昔やってくれたグルグル回る奴も忘れずやってくださいね?」

 

武内「はぁ……かしこまりました」

 

泰葉「♪」

 

 

―――― 

 

 

武内「……なぜこんな事に(腰さすり」

 

チッヒ「……先輩、ちょっとお話が♡」

 

武内「ち、ちひろさんっ(びくっ」

 

チッヒ「私も、たまには童心に帰りたいなぁ~。毎日毎日、がんばってるんだけどなぁ~(チラチラ」

 

武内「………恨みますよ、比企谷君(ガックリ」

 




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