デレマス短話集   作:緑茶P

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(・ω・)というわけで、くじを適当に引いたら”戸塚”と”LIPPs(ヤンデレ)”の二枚を引き当てたので書きました。

1、武内 2、設営・設備の中川君 3,有名カメラマンのおねい系おっさん
4,雑誌の編集優男 5,765P 赤羽

と続きます。腐ってる海老名さん大喜びのネタがいっぱいです。



比企谷の男たち

 

「……LIPPs会議、招集~」

 

「「「「?」」」」

 

 ありがたいことに毎日仕事に追われ、満員御礼の忙しいアイドル生活。そんな日々も狂ったように働き続けていれば“ぽんっ”と暇になる瞬間が訪れたりもする。

 

 他の現場の兼ね合いだったり、準備期間だったり、単に息抜きの休暇だったりと理由は様々なのだけれども最近はこのメンバーで固まって動くことも多かったせいかそれが重なり、自宅に帰るのも億劫で346寮に泊まり込み日差しの暖かな談話室でだらけていた時のことであった。

 

 忙しい生活に慣れてしまうと、いざ暇になると何をしたらいいのか分からなくなる――なんてこの年で体験するには早すぎるなぁと私“城ケ崎 美嘉”が苦笑をかみ殺しているときに挙げられたメンバーの“志希ちゃん”の号令に一瞬だけ顔を見合わせた私たちが顔を見合わせ、なんとはなしにそれぞれが正座をして向き直る。

 

 はて、今度はこの天才少女はどんな思い付きを閃いたのやら?

 

 警戒と好奇心を半々にその視線を気難しそうに眉を寄せる彼女に向けつつ、待つこと数分。

 

「…………“彼”って、ゲイじゃないよね?」

 

「「「っ!?」」」

 

 とんでもない爆弾が投げ込まれた。

 

 いや、ちょ、それは本当に踏み込んではいけない領域だ。今すぐに、笑いに変えなければきっと地獄が待ち受けている―――そう思い口を開こうとして、その先が出てこない。

 

 私たちの間で“彼”といえば、あの気だるげでやる気のないくせにお人好しな“アイツ”のこと。

 

 多くのアイドルを抱えるこの事務所の雑務を一手に引き受けるアイツはなんだかんだと言われつつも多くの好意が向けられているのは周知の事実だし、この面子もその例外ではない。

 

 この中で一番付き合いの長い周子ちゃんは言うまでもなく、誕生日以来明らかに接し方の変わったフレちゃんと志希ちゃん。オタばれをしてから一気に距離の近くなった奏ちゃんに、その、バレンタインの日に明確な一歩を踏み出してしまった私。

 

 虎視眈々とその隣を狙う誰もが、真っ先に否定しなければならないその可能性を―――誰もが否定の声を上げようとして詰まってしまったのだ。

 

 一気に重くなって誰もが目を泳がせる中で何とか立ち直り声をあげたのは我らがリーダー“速水 奏”である。

 

「………ふふっ、志希。貴方の仮説はいつも突飛ね。いきなりどうしたのよ?」

 

 柔らかく、そして、おいたをした子供を窘めるようなその声は余裕たっぷりで固くなった空気を解すには十分だ。その逃がすわけにはいかない波に乗るために私も口を開こうとして―――

 

「いや、この事務所の女の子にあれだけアタックされて誰にも靡かないってだけでもう十分すぎるでしょ、根拠は」

 

「「「「………」」」」

 

 続く言葉に誰もが目を伏せた。

 

 やめようよ。そういう、なんていうか、人を問答無用に黙らせるの、めようよ。

 

「うん、まあ、フレちゃんもね、たまに思っちゃう事もあるよ? でもね、女の子に興味がないわけじゃない事も確認されてる訳だしそう結論を急ぐ話でもないと思うしるぶぷれ?」

 

「そ、そうそう、346ビーチに行ったときとか、奏ちゃんや心さんの胸揉んだりとかムカつくけど結構なオープンムッツリじゃんアイツ! 大丈夫だって!!」

 

「……ふーん、まあ、確かにね。うん。ちょっといきなりゲイ呼ばわりはあれだったかも。志希ちゃん反省反省―――んで、あのバイの話に戻るんだけど」

 

「「「「何一つ納得してない」」」」

 

 私とフレちゃんのフォローも空しく冷めた目をする志希ちゃんはA4サイズの紙を取り出して私たちの前に差し出した。

 

 差し出されれば確認しない訳にもいかず、みんなでそれを覗き込めば名前の羅列がぎっしりと並んだ名簿表。その真意は分からないが、その中には仕事でお世話になることの多いスタッフさんの名前が見られる。

 

「なんやの、これ?」

 

「“彼”の携帯履歴から割り出した“怪しい人物リスト”」

 

「「「「  」」」」

 

 いや、こわいよ。しきちゃん。

 

 言いたいことはいっぱいあるけどね? もう、アイツのセクシャル属性うんぬんより今はただただ人の携帯を……それも、50人は下らないリストを作りあげる志希ちゃんが怖いよ私は。

 

「と、というか、人の携帯を盗み見るとか倫理観は置いといても履歴には女の人とかもあるわけじゃん。そっちはなんでリスト化されてないの?」

 

「んー、そっちもそっちで調べたんだけど大体の人は後難を感じてリタイアしてたから今回は除外かな。まあ、小早川コーポレーションに財前財閥、日野重工、西園寺グループ。そのほかにシンデレラガールとか著名人相手に張り合おうっていう気概のある人は少数だし、そこまで来たらもう正面から叩き潰すしかないでしょ」

 

 なにさらっと怖いこと言っているのこの子は……。

 

 でも、まあ、確かに。

 

 あんまりに近くに居過ぎて忘れそうになるけどココにいる娘の多くは結構にすごい人だったり、いいとこの娘さんだった。その娘たちが狙っている男を火遊び程度の気持ちで近寄る勇気のある女はそれこそ本気の本気だろう。

 

 かくいう自分だって今更そんなことで引こうとは思いもしていないのが何よりの証左。

 

 そして、理論的に云えば真っ向から“叩き潰す宣言”をされたにも等しいのだがそれはお互い様なのだから苦笑で済ませるしかない。

 

「……みんな、他人事のように笑ってるけど“コレ”を見ても笑ってられるかにゃ?」

 

「「「「―――は?」」」」

 

 差し出された写真には 見たことも無い笑顔で隣に誰かを連れ添って歩く“アイツ”。

 

 後ろ姿にその少女の顔は見えないが、華奢で細く、それでいながらも沙耶のような銀髪はボーイッシュにショートに纏められていて美人なことは容易に想像がつく。もしかしたら―――顔面偏差値のバグと呼ばれている自分たちに匹敵するのではないかと思うほどに。

 

 ぐしゃり、とその写真を握りつぶしたのは――いつも風のようにつかみどころのない周子ちゃん。

 なまじ似た容姿の娘が自分でも見たことのない浮かれた顔をアイツに浮かべさせたという事実は彼女の瞳から感情を抜き去るには十分すぎる屈辱だったらしい。

 

「都ちゃんから入手したこの写真を見た皆には死刑の事しか頭にないだろうけど……この人物は骨格から間違いなく“男性”だよ……認めたくないけどね」

 

「「「「噓でしょっ!!?」」」」

 

 志希ちゃんの言葉に誰もが目を剥いてくしゃくしゃになった写真を改めて見直せば―――確かに、よくよく見れば女性らしいふくらみがない、気がする?

 

 だが、それでも、一番の問題は―――アイツの表情だった。

 

 だらしなく緩み切り、浮足立ったような笑顔。

 

 頬はいつもより張りがあり、目の隈はいつもより薄く生気があふれている気がするその様子はまさにどこにでもいる“憧れの女の子とデートしている男子大学生”そのまんまである。

 

 こんな顔、この中の誰か一人でも見たことがあるだろうか?

 

 そんな疑問が、冒頭の疑惑に私たちを立ち戻らせる。

 

 

「「「「…………まさか」」」」

 

 

「LIPPs会議 “アシスタント:比企谷 八幡”の性的志向調査―――全会一致でいいかにゃ?」

 

 

「「「「異議なし」」」」

 

私たちは剣呑な光を宿すチャシャ猫の導きに迷うことなく頷き、あのアホンダラの素行調査に乗り出したのであった、とさ。

 

 

 晴れやかな晴天の奥に―――暗雲が立ち込めた。

 

 

 

――――――――――――――

 

 

LIPPs会議 調査記録№1  346プロダクション シンデレラプロジェクト ”プロデューサー:武内 駿介”

 

 

 

 




(/・ω・)/つづきません♡

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