デレマス短話集   作:緑茶P

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(/・ω・)/渋の方でやった”見てみたい結婚後のアイドルとの生活”のアンケートで美優さんが勝ち上ったので、今日は奥さんになった美優さんを頭空っぽでお楽しみくだされ~!!

渋垢→https://www.pixiv.net/users/3364757/novels


比企谷家の決戦前夜(三船√)

 世間でよく言う『結婚すれば性格が変わる』という通説。

 

 それは間違いでもないし、正確でもないというのが私“比企谷 美優”の所感です。

 

 一般的には良い意味で使われる事の少ない言葉なのでしょうけれども、結婚という一大事を超えて結ばれた相手にはそれまで出せなかった“素”の部分が見えてしまうのは致し方ない部分でもありますし、相手を思えばこそ心を鬼にして臨まなければならないという事もあるでしょう。

 

 そう――ちょうど今の私のように。

 

「アナタ、念のための確認ですけど―――まさか“ソレ”を明日、持っていくつもりじゃありませんよね?」

 

「は、何言ってんすか? この他にも収音機にラフ版も現地配送で借りてるんで抜かりなく愛娘の勇姿は永久保存される予定ですけど??」

 

 リビングいっぱいに広げられた娘の名前や写真のプリントが印刷された法被にペンライト。その他にも横断幕やら明らかにテレビ局で使うようなビデオカメラ、音響機器などなどひと昔前のアイドル稼業をしていた時には見慣れたアイテムが目白押し。

 

 それを一つ一つ小躍りするように確認してチェック一覧片手にニコニコと私の問いに答える愛しの馬鹿旦那“比企谷 八幡”その人に思わずこめかみがひくついてしまうのを感じます。

 

 一般的に旦那は“結婚すればダラケはじめる”という通説に反するようにこの人はマメだし、家族愛にも疑いはない。たまの休日にだって家族最優先にしてくれる良い旦那様だと心から思う。思うのだが―――実の娘が『あとはママに任せます』とうんざりした顔で自室に引き上げてしまうその過剰供給はちょっと難あり、かしら?

 

 ウキウキと会心のグッツを数える彼に今から言わねばならない言葉を放つことが実に胸が痛い。胸が痛いが、妻としてこの暴走を止める義務が私にはあるのです。

 

「アナタ―――それ、全部置いて行ってくださいね?」

 

「―――え?」

 

「中川さんに頼んでるであろう撮影機材も一式全部キャンセルです」

 

「―――――へ???」

 

 最愛の妻が何を言っているのか本当に分からないといった様子できょとんとしている彼が可愛らしく見えてついつい甘くなりそうな自分を制し、小さく息を吸い込んで――

 

「運動会にそんなもん持っていける訳ないでしょうっ! 常識で考えてくださいっ!!」

 

 心を鬼にして雷声一喝。

 

 千葉の閑静な住宅街中に響き渡るような私のお叱りに“ひえっ”なんて言いながら首を竦める彼にノシノシと距離を詰めていき床に並べられたグッツ類をテキパキと片付けていく。

 

 本当に仕事で忙しいはずなんですがいつの間に作ったんでしょうかコレ?

 

「ちょ、ちょっと待ってください美優さん。娘の一世一代の大舞台、これを完全に納めないのは人類の損失といっても過言ではない。それに親戚や知り合い連中にDVD化して配るのに低クオリティなものを作るわけにはいかないでしょ!?」

 

 次々と段ボールに戻していく私の腰に縋りつくように絡んでどうしようもない事をわめく彼に冷たい目で応じつつ答えます。

 

「それ以上に娘の貴重な青春がガチの撮影機材揃えて臨む馬鹿親によって損なわれる方が大問題ですよ。というか、親戚も皆さんもそんなもの配られても困るだけです。―――あぁ、中川さんですか? いつもお世話になっております比企谷です。ウチの親バカ亭主がお願いしてた件なんですが……あ、こちらこそ助かります。はい。はい。ご迷惑をおかけして本当にすみませんでした。また改めてご挨拶に伺いますね。はい、失礼いたします」

 

「…………え、おい。今の電話って」

 

「中川さんも『困ってたから助かった』だそうです。ほら、片付けの邪魔ですからさっさとお風呂にでも入ってきてくださいな」

 

「な、中川ぁぁぁああああっつーーーーーーー!! 裏切ったなあぁぁぁぁっ!!!」

 

 長年連れ添ってきた妻と仕事仲間に裏切られた彼の慟哭が千葉の住宅地に響き渡り、後日、ご近所さんから楽し気に揶揄われる事を想像して私は小さくため息をつきました。

 

こんな騒がしく、子煩悩な旦那様“比企谷 八幡”さんと結婚して早10年。

 

 彼と出会うまでの日々や、彼と結ばれるまでにあった様々な軌跡を考えれば信じられないくらいに普通で、当たり前で、穏やかな日常の中に私たちは生活しています。

 それを思えば―――彼がこんな駄々っ子のように振舞う姿というのは、やっぱりそれはとても“幸せな毎日”なのかもしれません。

 

 そんな事を一人独白しつつ、ソロっと娘の名前入りペンライトをポケットに忍び込ませようとする彼の手を“ぺちり”と叩き落としたのでした、とさ。

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

 

 俺こと“比企谷 八幡”は激怒していた。

 

 最愛の愛娘にして、マイスイートエンジェルである“美八(みや)”の晴れ舞台のために血眼で用意した応援グッツと撮影機材一式(プロ仕様&プロカメラマン込み)を邪知暴虐の鬼嫁によって全て水泡に帰されてしまったからだ。

 

 その怒りは風呂でポカポカの湯に浸かっても晴れず、晩酌のビールを飲み干しても揺らぐことも無く―――仕方なく困ったような微笑みで手招きする美人な嫁の太ももに顔を埋めても一向に収まることを知らない。

 

「もう、いい加減に機嫌を直してください」

 

「………仕事そっちのけで頑張ったのになぁ」

 

「いや、それは仕事を優先してくださいな……」

 

 ええい、五月蠅い。娘の懸命に走る姿を永久保存すること以上に最優先なモノはこの世に存在しないのだ。それを力説してやろうと顔をあげかけたら先読みした美優さんに出産してから更に大きくなったオッパイで挟まれ口を塞がれた―――湯上りのせいかノーブラな上にフローラルな香りで思わず意識を反らされてしまっ――ふがふが 小癪な。

 

「というか、去年の“秋八(しゅうや)”の時はそんな大騒ぎしてなかったのに差を付けたら可哀そうじゃないですか」

 

「いや、野郎の走る姿とか配られても誰得なんすか。男児には塩対応はウチの伝統ある教育方針っす」

 

 基本、野郎はほっといても育つのだ。これは俺と親父が証明しているので間違いない。だが、娘には好かれたいので全力で構いに行く。これにより小町のようなカワイイ娘が出来上がる。これも経験則で間違いないのである。

 

「だから秋八にも美八にも呆れられるんですよ……。というか、去年くらいで丁度いいんですよ。カメラ片手に一生懸命走ってる姿を応援して、勝っても負けても褒めてあげてお弁当を一緒に突いて送り出すだけで十分楽しかったでしょう?」

 

「うーむ、でも折角応援ソングと振り付けも作って大志と練習したしなぁ…」

 

「多分、それを実行したら一生口きいて貰えませんよ。私が保証します。あと、妹婿まで巻き込まないでくださいな……」

 

 それでも掛けた手間暇が惜しくて渋っていればベチリと頭を叩かれた。だが、冷静に考えれば親父も似たようなことをしてて小町に口きいて貰えなくなってたので一理はあるのかもしれない。

 

 悔しいながらもこの計画はお蔵入りとなってしまう予感を感じながらも、悔しいので目の前にある嫁のたわわなオッパイを揉みしだいて怒りの発散に努める。

 

 付き合いたての頃や新婚時代は微かなタッチですらお互いに頬を赤らめてイチャイチャしたものだが、今では“好きですよねぇ”なんてソファに押し倒されているような状態にも関わらず一心不乱に揉みしだく俺の頭を幼子のごとく撫でながら微笑んでくるのだからこなれてしまった。はちまん、悔しいですっ。

 

 あぁ、気弱で流されやすく幸薄そうであった美優さんは遥か昔。

 

というか、最終的に何万人ものファンの前で歌って踊り、百戦錬磨のロケ経験者になって世間を賑わせたトップアイドルが紆余曲折の果てに自分なんかの癇癪に付き合ってくれているだけでも世の男からは吊るされ極刑にされても文句は言えない身ではあるのだけれども。

 

 それでも、俺に褌を一丁にしてそのケツにヤバイくらい興奮しつつ頬ずりしていた特殊プレイに余裕のない獣おせっせに励んでいた初心な頃の美優さんが恋しくなるのは男として当然の―――いだだだだだ。

 

「余計な事を考えていた顔です」

 

「むひふでふ(無実です」

 

 嫁との美しくも情熱的な日々を思い返しているとにこやかな笑顔のままほっぺを抓りあげられる。結婚して五年ほど経過してからたまに俺の脳内が覗けるんじゃないかと思う位に勘がいいのは喜ぶべきか、困るべきか悩みどころである。

 

 つねられていた頬を擦って拗ねていると、今度は頭ごと抱えられて―――慈しむような声でささやかれた。

 

「忙しい中で家族のために一生懸命になってくれるのは嬉しいですけど、折角のこういう機会はカメラとかなんかじゃなくて貴方の瞳に焼き付けてくださいな。

 お仕事みたいに張り詰める必要なんてないんですから素直にあの子たちの成長を見て喜んで上げましょう?」

 

「……………わかった。分かりましたから、その、離して貰っていいですか、ね」

 

「ふふっ、貴方はこういう時は昔と変わらず初心なままで可愛いと思いますよ?」

 

 その甘やかすような、自分の全てを受け入れてくれそうな甘やかな声と抱きしめる肌の温もりになんだか急に気恥ずかしくなって早々に降参をしたのだが聖母たる鬼嫁は攻勢の手を緩めてくれない。

 

 耳元でクスクス笑う彼女に“姉さん女房”の厄介さを感じつつ、とどめの一言が放たれた。

 

 

「――――――明日いい子に出来たら、二人っきりで『大人の運動会』してあげますから、ね?」

 

 

「――――――――」

 

 

 熱く、甘く、粘りつくような色気を宿した声で脳髄を痺れさせ、触るか否かの強さでツボを心得切った愚息を撫でまわした愛しの妻は、我が人生最高の女は悪戯っぽく微笑みつつ余韻だけを残して俺をソファに置き去りにして寝室に消えていく。

 

 よき母で、良き妻で、善き伴侶で  最高に“ワルイ女”になってしまった彼女に

 

 どうにも俺は一生尻に敷かれてしまう運命らしい事を悟って俺はソファに仰向けに倒れ込んだ。

 

 さてはて―――――年甲斐もなく元気にさせられてしまった愚息は、明日まで堪え性が持つのかどうか。

 

 それが、俺がいま最も脳みそを絞らねばならない命題へとまんまとすり替えれてしまったのである。

 

 

 

 リア充って、ほんと猿。

 

 

 

 ちゃんちゃん♪

 

 

 

 

=後日談という名のオチ=

 

 

 

大志「お義兄さん! 自分、全パート完璧にしてきたっすよ!! 美八ちゃんとウチの“錦(にしき)”の活躍、魂を燃やして応援しましょう!!」

 

ハチ公「は? そんなん他の父兄に迷惑だろ。……一般常識で考えろよ、常考」

 

大志「――――へ?」

 

小町「ほら~、ウチのお兄ちゃんのいう事なんて真に受けるからこうなるんだよ~。というか、アレまじで錦ちゃんの出番でやったら家に入れないからね、小町」

 

美優「ご、ゴメンね、大志君」

 

大志「う、うわぁぁぁぁぁぁぁっん! 必死にマスターしてきたのにぃぃぃぃいいいっ!!!」

 

 

 その後しばし、川崎家の長女はクラスメイトから『開会前から号泣した錦パパ』の件で弄られて家の中で大志に冷たくなったというお話が合ったとか、なかったとか、さ。

 




_(:3」∠)_ 褌プレイを楽しむ美優さんはこちらでどうぞ→https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=13938381

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