デレマス短話集   作:緑茶P

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(・ω・)冬囲いが終わればやってくるのは雪と忘年会ラッシュ……日本人ってホントお休みがないいちぞくだね(絶望

_(:3」∠)_というわけで、年末にまさかの”あにゃ”投下。

 ロシア美女かわいいからしかたないね?

 さあ、今日も脳みそ空っぽでいってみよー!


ロシアより愛を込めて、婿へ問う

 ちらりちらりと舞う雪は街の眩いイルミネーションに彩られて星々が地上に落ちてきたような幻想さを私の瞳に齎す。

 

 自分の生まれ育った二つの故郷ではこうはいかない。

 

 ロシアでは強い吹雪ともに吹き付ける雪の粒は寒さと相まって刃物のように襲いかかってくるし、北海道にいた頃の雪の効果音は“チラチラ”なんて可愛いモノではなく“モサモサ”とまるでサモエド犬の抜け毛のように降りしきりそのまま埋まってしまいそうな勢いであった。

 

 まあ、そんな訳で、自分の短い人生経験とはいえこんな穏やかな雪もあるのだという事を知り世界の広さへの感動を白い吐息と共に吐き出していると、聞きなれた靴の音が雑踏に交じったのを捉え思わず頬が綻んでしまった。

 

 父のような重たいモノでもなく、母のような軽快なモノでもない。

 

 もちろん、遠い祖国にいる祖父母の落ち着いた足音でもない。

 

 今まで自分が住んできた地域は贔屓目に見てもきっと生き抜くには過酷な条件の多い土地だったとは思うけれども、自分はそんな土地だったからこそ自分を迎えに来てくれる“家族”の温もりが大好きだった。

 

 そんな家族と新たな世界が見たくて離れて暮らしたこの土地で見つけた新たな温もり。

 

 どこか気だるげに。でも、気遣いか臆病さを覗かせる密やかな足音。

 

 社交的なんてお世辞にも言えないけれど、言葉が分からない私に不器用にも手を伸ばしてくれるお人好しな彼。

 

 口では素直でないくせに、なんだかんだと面倒を見てしまう彼に最初に抱いた感情はきっと親愛。それから更に彼を知って抱いた感情はきっと“家族”へ向けるもので。

 いま、この肌を撫でる風の冷たさすら心地よく感じさせるこの胸の中に宿る熱は―――きっと  “恋”  と呼ばれるものだ。

 

 そんなくすぐったい独白に小さくマフラーの中で笑いをかみ殺しつつ、彼に呼ばれるのをわざと待つ。

 

 近づく足音はやがて止み、触れそうで触れないいつもの距離で待ちわびた“声”が漏らされた。

 

『ん、仕事は無事終了―――帰るぞ、アーニャ』

 

『ん~、んふふっ、減点ですよ“ハチ”。こんな綺麗な夜はロマンティックにデートに誘うのが紳士のマナーです』

 

 私と二人だけの時に彼がひっそり使ってくれる祖国の言葉。

 

 人気者の彼“ハチマン・ヒキガヤ”が、今だけは私の独り占めという高揚感は元々がおしゃべり好きな私“アナスタシア・アラフォヴァ”に軽口を叩かせるには十分で、毎回ちょっとだけ彼を困らせてやりたくなってしまう。

 

『やだよ、さみーもん。俺はお前を寮にさっさと送って温かい我が家でおでんをほっつくんだよ』

 

『あら、それなら名案がありますよ――ほら、こうすれば温かいでしょ?』

 

『―――もう、ほんと外国人の距離感近すぎなんだよなぁ。パーソナルスペースって知ってる?』

 

「Oh…I can’t speak English」

 

『めんどくさぁ……』

 

 素っ気なくする彼にムッとしたので、その腕に有無言わせず抱き着いて論破してやったのだが―――どうにも彼は誰にでもこうするのが外人の“普通”だと勘違いしてるのか、まるで猫か犬がじゃれついてきたくらいの反応。

 

……いや、家族ならともかく好きでもない異性にこんな事しませんから。

 

 そんな説明ももう説明し尽くしてもこれである。ならば、まあ、コレはコレで好都合なので無邪気を振舞って利用させて貰います。―――――良き狩人というのは勇猛さの他にも忍耐と上手く環境を使いこなせるモノですから、ね。

 

 そんなこんなで腕をもっと強く引き寄せ、彼のコートからする紫煙と紅茶の香水、そして、ほんの少しの男性の匂いをゆったりと味わいながらわざとらしく彼にじゃれつきます。

 

 パパとも、グランパとも違う。だけれども、その身体は確かに固くて熱い。

 

 めんど臭さそうにしながらも歩く歩幅をゆったりと合わせ、私の軽口に付き合ってくれる彼。

 

『ね、ハチ。いい事考え付きました。このままコンビニでおでんを買って車で食べましょう。私もお腹ペコペコですし、ご飯は一人で食べるより二人の方が美味しいですよ!』

 

『………それ食ったら大人しく帰れよ』

 

『んふふふ~、まあまあそう言わずに雪見デートと洒落込みましょう♪』

 

「ほんっと、日本語の時とキャラ違うな……コイツ」

 

 最後にボソッと彼が日本語で漏らした悪態。

 

 聞かなかったふりをしてあげるけど、ちゃんと聞こえている。

 

 キャラが、いや、性格が変わるのは言語のせいなんかではない。というか、性格なんて多重人格でもあるまいし早々に変えられる訳がない。

 

 それがもし変わっていると感じているのなら――いい傾向だ。

 

 “私”が“こうなる”のは――――貴方の前だけだって、彼はきっと嫌でも気が付くだろうから。

 

 そうなる様に、まずは小さなことからコツコツと。

 

 私は一世一代の狩りを、目の前ののんびりとした羊を前に涎を押さえて微笑んだ。

 

 さて、この愛しくて堪らない羊は―――最後にどんな声で鳴いてくれるのか。

 

 隣で何のおでんを買うかをつらつら考える“獲物”を横目に私はバレない様に小さくほくそ笑んだのであった、とさ。

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

 

 季節の移ろいは無情なもんであっという間に季節は冬。年末真っ盛り。

 

 ただでさえ師匠も走り回る師走だっていうのに、キリストさんまでおぎゃっちゃう記念日も目前まで迫ってきている。それどころがもうバイト先の芸能事務所ではクリスマスの収録はとっくに終わり、今は正月特番や特集にてんてこ舞い。

 

 一週間が三日に感じる“りあるタイムリープ”真っ最中の今日この頃。

 

 なに、宗教のガラパゴス諸島と呼ばれるこの国では時空まで歪んでるのん? いや、騙されるな。ただただ職場に体よくつかわれ就労感覚が狂ってるだけでござる。立ち上がれ労規よ! 

 などなど、脳内でジークじおんしながら今日最後の撮影スタッフとのあいさつ回りと雑誌の掲載時期なんかをつつがなく打ち合わせし終えてゆく。

 

 悲しいけどこれ、お仕事なのよね……。

 

 というか、こっちも忙しいがあっちも正月返上で編集だというのだから挨拶もそこそこに手早く撤収に移っていく。

 

 あっという間に人がいなくなった撮影現場に残る意味もなく、少し離れた所で待たせている今日の付き添い相手を探して首を巡らせば―――目を凝らすまでもなくすぐにその後ろ姿を見つけられた。

 

 雑多な都内の街並みには溶け込み切れないその背中。

 

 自分の妹分である周子の髪を銀糸だとするのならば、彼女の――“アナスタシア”の髪は白金。

 

 そのいっそ浮世離れした髪と舞い散る儚い粉雪を見つめる姿はこの雑多な街並みにはあまりに異質で、何ならば彼女の周りには息を詰めてしまうほど冷え切った湖畔が見えてしまうほどにその周囲は洗練としているようにすら思える。

 

 人が、触れるべきでない神聖。

 

 それは、幽世と親しむ少女であったり

 

 神域にて祭られ現人神と孤島で崇められていた少女であったり

 

 神に愛されているという幸運な女がたまに見せる澄んだ瞳であったり

 

 このバイトについてから何度か経験したそんな緊迫感。

 

 それに劣らぬ彼女のその背に声を掛けるか一瞬だけ躊躇うが―――まあ、考えるだけ無駄である。

 

 妖精だろうが、バケモンだろうが、霊感少女であろうが、吸血鬼と従者であろうが、不幸・幸運少女であろうが、ヤンキー娘だろうが、スーパーアイドルだろうが、読書ジャンキーだろうが―――俺に怖くない女子はいない。

 

 なぜならば

 

『ん、仕事は無事終了―――帰るぞ、アーニャ』

 

『ん~、んふふっ、減点ですよ“ハチ”。こんな綺麗な夜はロマンティックにデートに誘うのが紳士のマナーです』

 

 そんな別次元の生き物であってくれればよかったのに、誰も彼もが俺の些細な一言に笑い、怒り、呆れ、哀しみ、楽し気に微笑んでくるからだ。

 関わるまいと、踏み込むまいと決めた自分への戒めを簡単に揺るがしてくる無邪気なその姿の方が俺はずっと怖い。

 

 それならばいっそ、理解できない別の生き物であってほしかったと願う位には。

 

『―――――、――』

 

『―――――――、――』

 

 必死に緩みそうになる思考を引き締めながら、無邪気に日本のイルミネーションや雪、コンビニのおでんの具材に目を輝かせながら明るく語りかけてくる“アーニャ”こと“アナスタシア”。

 

 ロシア語で語る時だけ見えてくる彼女の少しだけ辟易する減らず口と、年相応の小生意気さにいつものように適当な相槌を打ちながらも何とか送迎用のバンへと乗り込んでようやく和らいだ寒気に息をつく。

 

『うわぁ、いい匂いですけど、湯気で窓真っ白ですね!』

 

『そらこんだけ寒けりゃな。あー、くそ。酒が欲しくなるな』

 

 体に纏わりつく冷えを追い払うためにエンジンをかけ暖房を掛けるものの、なんせオンボロ車。暖気が済むまではしばし時間がかかるので途中で買ったおでんが今はありがたくも恨めしい。

 

 ポロリと零した酒の話題をアーニャが目ざとく拾ってきた。

 

『あ、そうです。パパが今度はオーロラを見に来いと言っていました。――ふふっ、気に入って貰えたようで何よりです!』

 

『なんで二か月前に行ったばっかのロシアにトンボ返りしなきゃなんねんだよ……というか、もうウォッカもキノコもボルシチもロシア柔術もしばらくはNoセンキューだ』

 

 熱々のたこ串をほおばりながら横のアーニャから漏らされた報せは何とも滅入るものであった。

 

 たまたま収録でロシアへとロケに行く仕事が舞い込んだのであるが、流石に祖国とはいえ未成年を海外ロケに保護者なしでほおり出すわけにもいかないし、コミュニケーション能力に難のある輝子までいたので結局は同伴することになったのだが―――まあ、アーニャの父親と祖父に随分と可愛がっていただいた。(相撲部屋的な意味で

 

 なぜかロケの撮影中にガイド代わりについて回り、俺を常に圧迫面接ばりに追い詰めつつ毎晩しこたまウォッカを飲まされた。

 

 意識も朦朧としながらもパパsの泥酔お説教を聞き、二日酔い気味の朝に笑顔でボルシチを頂いて出勤。最後には釣り勝負でオーパオーパと叫び合い、かかってこいと言われ何故か川辺で投げ飛ばされまくるマジでロケより俺の方がキツイ旅路であった……いや、うん。愛娘を見世物にしてる会社の人間をしばきたくなるのは分かる。うん。

 

『パパもグランパも若い人に威張れる機会少ないからウキウキしてました。ハチが来て毎日とても張り切ってましたよ!』

 

『そのおかげで死にかけてるんだよなぁ……』

 

 俺のげんなりした顔の何がおかしいのかコロコロ笑いながら労うように割った大根を俺の口に押し込んでくるアーニャ。

 

『ふふっ、何度負けても立ち上がるハチはとても素敵でしたよ?』

 

『………ときめきポイントが体育会系なんだよなぁ、ロシア人』

 

 出汁が染み染みになった大根が口の中でほどけていくのを感じながら、呆れたようにそう呟けば“負けても屈さなければ不敗。それが大切なんです”と悪びれなくそう呟く彼女にいよいよ呆れ果てて、逆に感心した。

 

 変に生真面目で熱血で意地っ張り。だけど、朗らかでちょっとズボラ。

 

 そんな相反する性質を当たり前のように持ち合わせるからこそあの大国はきっと繁栄してきたのだろう。

 

 そんな事を極東の島国の小市民として思い浮かべつつ――俺は再び差し出された大根を頬張りつつニコニコ笑顔の少女を横目に呑気に考える。

 

 まぁ、オーロラを見に行くお誘いは折角だがご勘弁願おう。

 

 こちとら宗教のガラパゴス諸島の住人。

 

 クリスマスで髭づらの聖人が来たかと思えば、初日の出の山頂を目指して干支が駆け抜けて、神頼みの受験生が試験に阿鼻叫喚し、鬼をマメで追い払っているうちにお雛様が嫁入りのてんやわんやしながら鯉が天を泳ぐ。

 

 年中無休でお祝いに勤しむこの国は忙しなく、それに随伴するアイドルも忙しい。

 

 だから、のんびりと極北でオーロラを待ってサウナで整う生活も憧れないではないが―――今度は彼女の家族を招いて案内してやろう。

 

 どっかの偉い人が言ったそうな。

 

 ロシアの秋は二度目の春である、と。

 

 ならば、この無邪気に笑う愛娘が異国でどんな春を過ごし、どんな仲間と青春を送り、どんな世界で生きているのかを見せてやりたいと思う。

 少なくとも、家族ガチ勢の俺としては―――あの過保護な親父さん達をちょっとでも安心させてやるにはそれくらいしか思いつかないから。

 

「オーロラは見に行けないし、ウォッカも飲み飽きたから―――桜を見に、日本酒でも飲みに来いって伝えとけ」

 

「――――ダー!! みんな とっても喜びマース!!」

 

 さっきとは打って変わってキラキラと顔を輝かせ、ウキウキと早速メールを開く彼女に苦笑しつつ前を向けば湯気はすっかりと暖気で払われて、雪の止んだ夜空は――――冬の澄んだ満天の星空が広がっていた。

 

 

 

 まぁ、ロシアの秋の空も捨てがたいが――――この空もそう悪くない。

 

 

 

 あの大酒飲みで厳つい一家が来日した時には、どこに連れていくべきかしばし思案しながら俺は緩やかに帰路へ向かってアクセルを踏んだのであった、とさ。

 




コッチの方が無差別にいっぱい書いてます→https://www.pixiv.net/users/3364757/novels
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