デレマス短話集   作:緑茶P

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ラグビーちょう楽しみ

分割投稿なのでかなり短め(笑)


本田未央随想録 =鷺沢さんは大人げない=

 

 

 それは、なんてことない午後のひと時の事です。

 

 決まった休憩時間などあってないような芸能界なのですが、このデレプロの事務所では急ぎでもなければ大抵三時頃に持ち寄った茶菓子や、常備しているお茶類で休憩をすることが多いのです。

 

 そのとき、わたくし“tyannmioこと本田未央”やありすちゃん、しぶりん、瑞樹さんが事務所で次の予定まで待機していたり、レッスンを終えて戻ってからの暇なメンバーでのんびりと一服をしていたのです。途中で帰ってきた比企谷さんも呼び止めて和やかにお茶会はさらに賑やかになっておりました。

 

 澱んだ目と気だるげな態度ですが、面倒見の良い彼になつく子は結構おおく、当然のように向かいの席の真ん中に引き寄せられた彼はしぶりんとありすちゃんに挟まれます。

 

 その様子を瑞樹さんと苦笑しつつも、話題を振って会話をしているときに事件は起きたのです。

 

 “かちゃり”と静かに開けられた扉に誰もが視線を引き寄せられます。

 

 その先にいたのは、先輩であり、尊敬すべきおしとやかな女性の典型ともいえる鷺沢さんがおりました。人の多いこの事務所の事です。往来も激しいので特に気にした様子もなくみんなが思い思いに挨拶を交わし、ついでだからと彼女もお茶会に誘います。

 

 一見、物静かなので冷たく見られがちですがお話をしてみると結構饒舌で明るい方です。なので、こういった誘いには結構普通に参加してくれます。なので、ほんのりと笑顔を浮かべて彼女がこちらに向け歩みを進めたので私と瑞樹さんはソファーを一個ずらして彼女のスペースを空けたのです―――――――そう、空いたはずなのです。スペースは…。

 

「………」

 

 そのまま、座るかと思った彼女は一拍、足を止めテーブルを見渡します。

 

「「「「?」」」」

 

 その行動がよくわからず、私たちもテーブルを見回しますが不審な事は特に見つかりません。一体、どうしたのでしょう?

 

 そんな疑問を誰もが抱き、私もソレを彼女に問いかけようと視線を彼女に向けた時、彼女は口を開きました。

 

「……ありすさん、あちらの机に置いてあるタブレットに着信があったようですよ?お仕事関係かもしれませんから確認したほうがいいかもしれません」

 

「え、あっ、あっちに置きっぱなしでした!ありがとうございます文香さん!!」

 

 そういって元気にパーテーションの向こうに駆けてゆく彼女を笑顔で見送り文香さんは―――――何食わぬ顔でありすちゃんが座っていた席に腰を下ろした。

 

 

〘〘〘……大人げなっ!!〙〙〙

 

 

 周りの視線も何のその。一人だけ首を傾げる比企谷さんも文香さんから渡される大学のプリントにその疑問も一瞬で氷解したのかありがたそうに受け取って会話に花を咲かせる。

 

 いや、いやいやいやいや―――不自然さに気づけよ!!

 

 見ろよ!戻ってきたありすちゃんが愕然としてそっち見てんじゃん!!

 

 『え、あれ?私の席なんですけど…?』みたいな感じで超おろついてんじゃん!!

 

 

「―――ありすさん?通知の方は大丈夫でしたか?」

 

「え、ええ、はい。ただのスパムでし、た。……それで、その、その席は「何事もなかったようで何よりです。そういえば、ここに来る前にコンビニで新作の苺菓子がありまして買ってきたんですよ」

 

 何とか答えた彼女が意を決して自治権を主張しようとするのを遮って彼女はバックからお菓子を取り出して広げる。―――さりげなくありすちゃんのマグカップを私の隣に移す手際も容赦がない。――――というか、大人げなさすぎだろ!!

 

 さすがのしぶりんもドンびいてるじゃん!!

 

「え、ええ、はい…その、ありがとう、ございます」

 

 深い絶望を湛えた彼女が席に着くのを見届けて、鷺沢さんはほんのりと微笑んで言葉を紡ぐ。

 

「いえ、いいんですよ。――――それと、大切にされてるものは傍に置いておくといいかもしれません。ここは、そんな人はいないと思いますけど、もしかしたらいつの間にか持っていかれちゃうこともあるかもしれませんから」

 

「………はい、次回からは、気を付けます」

 

 

 柔らかい言葉に含まれたその伏線と牽制。そして、明らかに燃え上がっているありすちゃんの瞳。

 

 

……………ガチ勢、マジ怖い。

 

 

 助けを求めて、隣の川島さんを見やれば遠い目で“わかるわぁ”とか言っている。

 

 向かいのしぶりんは不敵に笑ってるし…

 

 こうして、穏やかで、和やかな、デレプロのお茶会は幕を開けたのでした

 

 

助けて、あーちゃん。

 

 

 そんな私の心の声だけが小さく響いたのです。

 

 

 

 


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