デレマス短話集   作:緑茶P

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いい夫婦の日 記念作品。

そんな記念すべき日にみんなが心温まる作品にしました(笑)

今日からストックが切れるまで毎日夕方6時に定期更新だよ!!

放置しててごめんね!!


いい夫婦の日

 

 窓の外に深々と降り積もる雪の音。その何処までも続く真っ白な世界はずっと見ていれば吸い込まれてしまいそうなほど静まり返っているけれども、それをかき消すかのように自分のいるキッチンは騒がしく鍋は踊り、オーブンは軽やかにタイマーを鳴らす。

 

 それに追い立てられている自分がそんな感傷に浸っている暇がないのは―――まあ、幸せなことなんだろう。

 

 そんな事に一人苦笑を漏らしつつ時計に目をやれば――――

 

「「ただいまっーーーー!!」」

 

 我が家のわんぱくギャング達が時間ぴったりに玄関を蹴破らんばかりに雪崩れ込んできて私の元に一直線。だが、それが母である私に一番に会いたくてなんて殊勝な心掛けによるものでないことなんてとっくの昔に学習済みなのだ。

 

「ねぇねぇ、ママ!ママ!!今日のご飯なに!!?カレー?肉じゃが?」

 

「違うわよ!この前、箪笥にオンザシチューがあったからきっと“掛けるシチュー”よ!!?」

 

「どっちも違います!というか、火の元の近くで跳ねない!!あと、雪は払ってから入ってくるように言ってるじゃないですか!!!」

 

「「うひゃーーー!!」」

 

 

 あーだの、こーだの姦しく周りを飛び回る猛獣達の頭の上で揺れる特徴的なアホ毛をひっ捕まえ雷一括。それでも愉快そうに笑い転げるおバカ姉妹に溜息一つ零して、二人が散らかしてきた雪を片付けてきたのか、遅れてキッチンに入ってきた陰に八つ当たり気味に文句をチクリ。

 

「“貴方”からもこの二人にちゃんと言い聞かせてください?」

 

「分かっちゃいるんだが……どうにも、“お前”そっくりの顔で上目遣いされると弱いんだよなぁ」

 

 私のジト目に困ったように苦笑する彼の見え透いたおべっか。そんな見え透いた手法なのについつい口元と目尻が緩んでしまう私“十時”改め“比企谷 愛梨”はふかーいため息と共に愛しの旦那さんである彼“比企谷 八幡”にひっ捕まえているアホ毛を差し出して一言。

 

 

「おべっかはいいですから、さっさとお風呂済ませてきてくださーい?」

 

「「「いえす、まむ」」」

 

 

 一糸乱れぬ動きで敬礼するその姿に根負けして笑ってしまいました。

 

 

 外の寒々しさなんて感じる暇のないくらい騒がしく温かい毎日。そんな日常が当たり前のように続いてく今が、本当に愛おしい毎日です。

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 

 

「起きてるときが嘘みてぇに寝るのは一瞬なんだよなぁ…」

 

「寝てるときは本当に天使の寝顔なんですけどねぇ?」

 

 静かに寝息を漏らしてお互い身を寄せ合うように夢の世界に旅立つ二人は本当に見ているだけで一日の疲れが癒される。――――そして、その寝顔を収めつつ子供部屋の扉を閉めると訪れる自分にとって待ちわびた時間。胸の奥から零れるその欲求を素直に表現するために隣にいる彼に思い切り抱き着く。

 

「いや、もう十年経つけどいまだにコレも気恥ずかしいな…」

 

「むしろ、二人が寝静まるまで我慢してるだけでも褒めてくれていいんですよ、“ハチくん”?」

 

 この時間だけの特別な呼び方に彼は照れたように頬を掻くのを見て、相変らずな事に小さく笑って彼の腕を暖かいリビングへと誘う道すがら、思い返す。

 

 あの激動の時代を乗り越え、デレプロが解散してからしばらく。アイドル以外の女優やコメンテーターとしての仕事が板についてきた頃に彼と結ばれたのが十数年前。

 

 それからしばらくしてお腹に宿った子供を地元で育てたいという私の我儘を聞き入れてくれた彼と共にこの雪の降り積もる国へと帰ってきて随分と経つ。お互いの仕事柄や彼の事を考えればあまりに身勝手な提案だったのに、彼はほんの数秒だけでソレを受けてくれた。

 

 不便な土地だと、無理をしなくていいと、こっちが逆に問い詰めてしまう私を笑って抱きしめた彼が――――今でも忘れられない。

 

 

「嫁が急ににやけ出して気味が悪い件について」

 

「む、気味が悪いとはなんですかー。誰がどう見ても聖母のアルカイックスマイルですー。うりゃ」

 

「おい」

 

 いつの間にかリビングにたどり着いていたのか、ソファで彼に寄りかかるように座っておりその温もりを堪能しつつも、彼の軽口に抗議の声を漏らしてさらに体重をかけていく。抗議の声も何のその、よじよじと腕から肩、お次は彼の膝によっこいしょ。

 

 無残にも押し倒された形になる彼が零そうとする文句を、年の割に瑞々しい唇でちゅるりちゅるちゅら。

 

 

「「………ん、ぁ。……………」」

 

 

 熱の籠った吐息だけが雪の降り積もる静かな夜にくぐもって響き、そして、余韻をかみしめるように彼の口唇を柔らかく吸って体を起こす。

 

「……愛梨、あっつくなって来ちゃいました ねぇ?」

 

 彼との間に淫らに繋がる唾液の端を見せつけるように舐めとって、いつもの“合言葉”。

 

「…いつもより―――っつ」

 

 彼の上で腰を焦らすようにこすり付け、胸板に置いた指で掠るように彼の弱点をひっかく。それだけで言葉を呑み込み元気になる彼に気分がずっと良くなって、じんわりと熱を帯びてきた体に羽織っているセーターを彼の手をそっと導き耳元でそっと囁く。

 

「   三人目、そろそろ 欲しくありません?    」

 

 

 

 その囁きを聞いた瞬間に彼が、ねつれっつに私の唇奪ってほこりっぽさが……?

 

 

 ほこりっぽさ?

 

 

杏「あー、十時さん?杏の抱き枕とソファーを使うのは構わないんだけどー、涎まみれにされるのはちょっとーーー」

 

十時「あれ? 可愛い子供二人と 愛しのハチ君は?」

 

杏「……いや、寝ぼけてるのは分かってるんだけど―――いや、杏が悪かったよ。いい夢をみて」

 

 虚ろな目で立ち去る杏ちゃんを目で見送るついでに周囲を確認。愛しのマイホームは何処にもなく、周りを見回してみると普段と変わらない事務所。さっきまで熱烈に愛を交わして抱きしめていたはずの彼は程よい反発力の抱き枕のくまちゃん(涎まみれ)にすり替わっており―――?

 

 

 これっていわゆる・・・・

 

 

十時「ゆ、“夢落ち”って奴ですかーーーーーーーーっ!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 彼女のその悲痛な慟哭は346本社の隅々まで響き渡ったそうな。

 

 

 

 ちゃんちゃん

 




('ω')へへ、旦那。今回のお話いかがでしたかね。

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コメントに見てみたい√とか書いちゃうとわりかしフワフワ生きてるあっちは妄想を膨らませちまうのでよかったら気晴らしにポチっとお願いしまさぁ、へへへ←小物感


_(:3」∠)_ 増えろデレマスSS

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