デレマス短話集   作:緑茶P

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はしるーはしるーおれーたーち ながれる汗もそのままーにー

前にばら撒いたネタで全編ギャグです。

お気楽に空っぽで書いてます(笑)

テキトーでいんだよ、てきとーで!!

頑張れ夕方6時定期投稿!!

次号、ついにお正月にあの女がうごきだす!!


シンデレラの招待状 ―檄―

「お疲れ様―――で、す」

 

 いつもの様に開いた事務所の扉。その先には随分と珍しい光景が飛び込んできた。

 

 いつもは気だるげに開かれたその瞳は伏せられ普段の険が取れていく分と穏やかで、安らかな寝息はゆったりとリズムを奏でているのは、忙しなく働く彼にとっては随分と珍しい光景で。

 

「―――お疲れ、ですよね」

 

 憎まれ口が多い彼が普段誰よりも駈けずり回っている事は誰よりも知っている。何より、そんな意地っ張りな彼がこうして無防備な姿をさらしてくれる事が心を許されている証明の様に思えて少しだけ心にくすぐったい感触が湧き上がる。

 

 その欲求に答えて安らかに眠る彼の髪をゆっくりと梳くように撫で、思ったよりも心地よい感覚を伝えるソレを何度でも楽しむ。

 

 そんな彼がむずがるように身じろぎするのがおかしくて――――愛しくて、何度だって繰り返してしまう。

 

 

 そんなうららかな午後の時間は――――――彼の机の上に置かれたあるものを見つけ凍り付いてしまった。

 

 

ソレは―――――――決して認めることなんてできない事実であったから。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

「第68回シンデレラ会議を開催いたします。賛成は沈黙をもって認めるものとします」

 

「「「「「「………」」」」」」  

 

「あ、あのー…」

 

「はい、“リンゴ仮面”さん。何か異議がありましたか?」

 

「いや、異議っていうかこの集会って何をするものなんご?って所がよく分かってないんですけどぉ…」

 

「すみません#自分ら#新人なもんで」

 

「うぅ~、なんなんだよぉ。この空間やむぅ」

 

 薄暗く照明の落とされた会議室に所狭しと黒マントに身を包んだ者たちが肩を並べ合う異様な空間。その顔は思い思いの仮面によって覆い隠されてはいるのがまた一層にこの空間のカオスを引き立てている。そんな中で朗々とした開催宣言におずおずとした質問の声に主催者であろう本の仮面を被った人物は言われて気が付いたかのように手を叩き、その声に答える。

 

「あぁ、そういえば恒例の新人さんへの説明が抜けてました…。まあ、ざっくり言えば重大問題や疑問が起きた時にアイドル側の要望等を送り出したり、対処をする前に皆で集まって意見を出し合うことを目的とした場ですね。

 

 例で言えば第8回は『寮内カードゲームで地元ルールあり?なし?』だったり、第25回は『幸子ちゃん誕生日ドッキリは何処まで許される?』でした。ほかにも『楓さん禁酒要請会議』だったり『志希ちゃん失踪防止対策会議』など幅広く取り扱っています。

 

 メンバーなら誰でも発議できますし、プライバシー保護の観点から顔も隠すようになってます」

 

「ほへぇー、流石に都会はきっちりしてるんご」

 

「議題にしれっと個人名が上がるのが#マジ恐怖ですね…というか#議題が穏当じゃない」

 

「マジ意識高くてやむ……この薄暗い照明とあちこちに描かれている魔法陣やお札は何?」

 

「オカルト同好会の強い要望によってこうなってます」

 

「「「……フンス」」」

 

 紹介されたドクロとかキノコその他が胸を張るのを苦笑しつつも新人たちもこの会議の目的を受け入れられたのを確認して、主催者は卓上の全員に目を配って息を吸い込む。

 

「さて、発議が認められたようですので今回の議題に移りましょう。まずはこちらの画像をご覧ください」

 

「「「「「「……?」」」」」」

 

 彼女が議題をあげる前に一枚の映像をスクリーンへと映し出す。

 

 それは見慣れた事務所の一角で、その中心にいるのは、これまた見慣れた自分たちのプロジェクトを支える仲間のアシスタント。ただ、珍しいことをあげるのならばその彼が机に寄りかかるように居眠りをしている事だろうか?

 

 だるそうにしてはいても意外と隙らしい隙を見せない彼にしては無防備なその姿に場内に小さな笑いと、会話が綻ぶ。

 

「珍しくbookから招集かと思えば面白写真の発表かよ」

 

「くくく、普段張りつめてるように見えるけど寝顔は年相応に可愛げがあるじゃない」

 

「あはは、まあ、しょうがないですよね。こんな大人数に対して事務方が数人でここまでフォローしてくれてるんですから…あっ、分かりました!お疲れの皆を労うための会議ですか!!しま…四月仮面頑張ります!!」

 

「おー、しまm…四月仮面冴えてるね!!こりゃ、張り切って意見出さなきゃ!!」

 

 やんややんやとその画像を皮切りに姦しく華やかに慰労会の計画を話し出すメンバー。仮面を被った怪しい風貌でなく、怪しげな部屋でさえなければさぞ見目麗しい光景だった事が悔やまれる。しかし、そんな空気の中で数名だけが愕然とした表情でその画像を食い入るように見つめ―――ついには荒々しく席から立ちあがった。

 

 その突然の騒音に、誰もが口を噤んで視線を向け、顔面を真っ赤なリボンで何重にも覆い隠した見た目ヤバ気なその女が瞳孔まで見開いて、震える指が示す部分を目で追ってしまう。

 

 指さす部分はねこけている彼ではなく机の一角。だが、書類やメモ、キーボードなど特にいつもと変わっている所は見受けられないし、目を凝らすがどうにも分からない。他に移っている物などCDのケースとチケットくらいの物。それだって、数えきれないほどこなしてサンプルがいつも山のように―――――まて、このジャケットは、見た事がない。

 

 いや、正確には見覚えはある。

 

 自分たち以外のCDショップなどで、だ。

 

 

「「「「「「「「「「「「765プロじゃん!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」

 

 

 そう、そうだ。いつも大量に並んだサンプルとは違う限定版のサイン入りCDに脇に置いてあるのは765劇場のVIP席チケット。会員ファンたちが抽選会の時点で多くの血涙を流し落選し、選ばれた数人のみが手に入れられる限定版とVIP席。人気では負けているつもりはないが、アイドルという文化に再び熱を入れた彼女たちのファンはいまだ根強く強固だ。そのセットを手に入れるのは並々ならぬ努力か、高額で手に入れるかの二択である。

 

 そんな貴重な物を、なぜ彼が持っているのか?

 

 決まっている。

 

 行ってきたからである。―――そして、また行くためである。

 

 外ならぬ自分ら“デレプロ”をサポートする身であるくせに。

 

 自分たちの新曲やライブなんてまともに見に来た事もないくせに!!

 

 765(他の女)には喜んでペンライト(棒)を振りに行くというのか!この男は!!!!

 

 許し難き――――裏切りである。

 

 

 彼を好ましく思っている人も、ちょっと苦手な人も、可愛がってきた人も、弄ってきた人も誰もがメラメラとその事実に火を灯す。これには釈迦も苦笑いで席を外すぐらいにこの空間には怒りが満ち溢れていた。だが、今にもカチコミを掛けそうな彼女たちを引き留めるように澄んだ声が会議室に響く。

 

「皆さん、冷静になってください。この写真をあげたのは――今回の議題は“背信行為の弾劾”を行うためなどではないのです。確かに、この光景を見たときは思わず私も広辞苑の角を振り上げてしまいそうになりました…。ですが、そうして彼を責めて、チケットとCDを粉砕してなんになるというのでしょう?」

 

 深い悲しみに打ちひしがれた顔をしているがやろうとしてることは強盗殺人一歩手前であるのでこの女も大概ヤバい。思いとどまったのが奇跡である。

 

「で、でも、こんなの許せません!ただの女関係でだらしないよりも屈辱的です!!」

 

「…ほんまやなぁ。ここまで虚仮にされたんは、いつ以来やろうか?―――ただではおかんえ」

 

 熊本と京都を代表するアイドルが漏らした言葉にほぼ全員が一斉に頷く。ちなみに、新人たちはもう隅っこで涙目である。

 

「だからこそです」

 

「「「「「「「………?」」」」」」

 

「765さんの実力を私たちは身をもって知っています。そして、それに惹かれる心も。ですが、今ならば私たちも負けてはいないという自負があります。

 

 そんな私たちのライブを彼は一度も見ていないのです!!」

 

「「「「「「!?」」」」」」」

 

 その宣言に誰もが目を見開いた。

 

 そうなのだ。思えば彼はライブの裏方として何度も参加はしているが観客として見た事など一度も無かったはずだ。ライブの演出も段取りも、振り付けも全て知ってる人間がわざわざ見に来ることはないだろうし、それを知らぬままいくライブの方が楽しいに決まっている。

 

 つまり――――これは自分たちの怠慢が招いた事態なのだ。

 

 その事実に誰もが膝から崩れる。

 

「そ、そんな…先生は、私達じゃ満足させられないなんてっ!!」

 

「慣れ………それは、平和な家庭の……崩壊の一歩……」

 

 年端も行かぬ子供たちが目の光を失って昼ドラみたいな台詞を叫んでさめざめと泣き始める。芸能界の悪い所を存分に吸収しているようで将来が不安される中で本仮面がそんな二人の肩をそっと支える。

 

「――ふみ…book。まさかそんな事を宣言するために呼んだわけじゃないでしょう?早く本題に入って頂戴?」

 

「…本題?まさかこんな状況で解決策でもあるっていうつもりかよ?」

 

 その言葉に誰もが俯いていた顔をあげ、へんてこな本の仮面を見上げ―――彼女は力強く頷いて、一枚の紙をかざす。

 

 

 

「この来月に迫ったステージ。彼が観客として来たくなってしまう様に各員に全力でアピールし、私たちが彼女たちに負けていない事を証明するのです!!」

 

 

―――――   ナ、ナンダッテ~~~~~ッ!!! ――――――

 

 

 力強くかざされたそのポスターは来月に予定された大規模ライブ。

 

 その開催日時は―――――くしくも、彼の持つライブチケットと同日であった事は運命の悪戯か、運が悪かったのか…ソレは神のみぞが知ることである。

 

 

 

第68回シンデレラ会議 『比企谷八幡を篭絡せよ』

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

???「ふふふ、ならば私が出るしかないでしょう。このプロジェクトで最も神に愛されし――――私がっ!!」

 

 

 一富士  二鷹   さん  かこさん   出陣です!!

 




('ω')へへ、旦那。今回のお話いかがでしたかね。

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コメントに見てみたい√とか書いちゃうとわりかしフワフワ生きてるあっちは妄想を膨らませちまうのでよかったら気晴らしにポチっとお願いしまさぁ、へへへ←小物感


_(:3」∠)_ おもちも雑煮もあきたーーん

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