デレマス短話集   作:緑茶P

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「('ω')むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。」などと供述しており――――


マジでいつもより酷いけど、いつも通りなんでも”ばっちーこーい”で心の広い人だけがお進みくだしゃぁ_(:3」∠)_


トレンド

CV:島村 卯月 

 

 ここは都内某所に立つ大規模芸能プロダクションの一室。多くの才能が輝き、若者が集う場所では当然のように流行り廃りというモノがあります。流行に敏感な若者たちは常に新しい刺激を求めており、新しい発見に身を焦がすそんな微笑ましくも熱い日常をちょっとだけ覗いてみましょう!!

 

―――――――――――――――

 

 

【アイドルトレンド:漫画】

 

 

美嘉「みんなおはy――――「雷の呼吸 霹靂一閃!!」スパーン――――― 痛ったーー!!!」

 

奏「また新たな犠牲者が出たようね」

 

志希「あはは、綺麗にはいったねー」

 

フレ「流石カリスマ~。ドッキリのリアクションもばっちり!!」

 

周子「まあ、おしりを押さえて涙ぐむシーンが必要なアイドルも大概だけどね」

 

 爽やかな笑顔で事務所の扉を開けたカリスマJK。しかし、その朝の挨拶は綺麗に響いた音と衝撃によって絶叫へと書き換えられてしまいました。あまりの痛みにおしりを押さえて蹲る彼女を嘲笑うかのようにノー天気な声が事務所に響く。

 

美嘉「~~~っ、うっさい誰がお笑い予備軍よ!!というか、朝から何してくれてんのよ!!」

 

周子「自分で言っちゃうのかーい。…というか、下手人はうちらやのうて後ろの人達でっせ」

 

美嘉「はぁ?」

 

 痛みから立ち直った彼女は真っ先にソファーから笑いを浴びせてくる同僚に噛みつくが狐目の少女に示された方向に首を向ける。

 

 

 そこに立つ黒い影が高らかに名乗りを上げる。

 

莉嘉「“鳴柱”」

 

千枝「“蟲柱”」

 

みりあ「“炎柱”」

 

「「「この世に鬼がいる限り、私たちの戦いは終わらない!!」」」

 

 三人が丸めた新聞紙を片手に力強く決めポーズで立ち塞がりますが、それだけでカリスマはなんとなく事の経緯を察したようで深くため息を吐きます。

 

美嘉「このおバカ、また変な漫画の影響受けて……こら!人のおしりを新聞紙で叩くんじゃありません!!」

 

フレ「お~、熟練のママみたいな立ち直りの速さ」

 

志希「まんまみーあ」

 

 後ろで茶化してくる同僚を後で〆る事を心に刻みつつ、目線を合わせていたずらっ子たちを叱りつける。悪気があるにしろないにしろ怒るべきことはしっかりしなければならない。―――ほら、悪い子達ではないのだ。ちょっと厳しめに睨めばしょんぼりとしつつも反省してくれる。

 

千枝「美嘉さん」

 

美嘉「ん、言い訳も聞くだけは聞いてあげる」

 

 俯きながらも千枝ちゃんが一歩を踏み出し私の前に立つ。叱るのも大切だが、言い分を聞くのも大切だ。出来るだけ優しく彼女の言葉に耳を傾ける。

 

千枝「千枝は鬼殺隊で唯一新聞紙を振り切れない落ちこぼれですけど―――乳首だけは的確に貫けるちょっと凄い人なんですよ?」

 

美嘉「は?――――「蟲の呼吸“蜂牙の舞い 真靡き”」―――――あんぎゃーー!!」

 

 彼女の言ってる事の意味が分からず思わず気を抜いた瞬間、彼女の持つレイピアのように尖った新聞紙がカリスマのB地区を的確にブラジャー越しに貫く。

 

 唐突、そして、油断。その二つに加えてあまりに的確なその刺突はカリスマを悶えさせるには十分な威力を持っていて彼女は漫画みたいな声をあげ転げまわる。

 

奏「完璧な奇襲ね」

 

志希「うわ、痛そ~う」

 

フレ「乳首片方だけ色変わっちゃったかも。わお、リバーシブル!!」

 

周子「ひっくり返しては使えないんじゃないかなぁ?」

 

 完全に高みの見物を決め込む同僚とのチーム解散を心に誓いつつ念のため確認するが紅くはなってるが色は変わっていない。…ほんとにそうなっていたら死を選んだかもしれない。良かった。

 

「アンタら!もう完全に怒ったからね!!」

 

 痛みを堪えてきゃっきゃっと悪戯の成功を喜ぶクソガキどもを怒鳴りつけると彼女たちはピタリと動きを止めた。あまりの剣幕にようやく現状を認識したのだろうと思い少しだけ留飲を下げる。さて、今日という今日は――――こいつらがそんな殊勝な心掛けを持っているだろうか?

 

 少しだけ冷静になった頭の中に疑念が、背中に悪寒が走り改めて彼女たちを見れば誰もこちらを見ずに入り口に目を向けている。

 

 まるで、新たな獲物を見つけた猛獣のような笑顔は惨劇を予感させ――扉が開いた。

 

莉嘉「雷の呼吸“霹靂一閃”―――」

 

 それに合わせ、蹲るかのように低く構えた莉嘉。

 

 その猛獣のような笑みと凄みからソレが自分の臀部を襲った正体だと確信した。

 

 止めようと伸ばしてもきっと届かない。そして、今度は背面からの襲撃でなく正面からだ。軌道から考えれば今度刈り取られるのはおしりでなく―――股間。

 

 そして―――図ったようにその扉の奥から現れたのはこの部署の責任者である偉丈夫。

 

 業界から魔法使いなどと呼ばれ畏敬される――――自分の好いた男。

 

 その男がこれから受ける絶望と、きっとそれすら飲み込んで許す残酷な優しさを想像し―――私の覚悟は一瞬で決まった。

 

 莉嘉より低い体勢で、なお早く―――その軌道に割り込む。

 

 それを見た莉嘉はより深く嗤って襲い掛かる。

 

 きっとこの一撃で自分のお尻は四つに割れるだろう。

 

 それでも、この目の前で状況も分からず目を見開く彼が無事ならば――それでいいと思いせめて私は微笑んだ。

 

 

 

奏「さっきから聞いていれば――――その程度で柱を名乗るなんて、笑わせるわ」

 

 

 

 覚悟した痛みはやってこず、代わりに耳を叩いたのは事態を傍観していたはずの―――我らがリーダー“速水 奏”その人が悠然と濡れタオルを片手に佇んでいる。

 

 悠然と立つ彼女の足元にはへし折れた新聞紙。

 

 それを信じられないとでもいう様に振りぬいた姿のまま呆然とする莉嘉。

 

みりあ「炎の呼吸 玖ノ型 “煉獄”」

 

千枝「蟲の呼吸“蜂牙の舞い 真靡き”」

 

 その背を陰に死角から襲い掛かる二つの影。ソレは、絶対に避けきれないそう思わせる程に完璧な一撃であったと思う。だが、それでも彼女は泰然と佇むだけであった。

 

「かなで!!」

 

 叫ぶことに意味があったかは分からない。それでも呼ばずにはいられなかった。そんな私に一瞬だけ彼女は優しく微笑み、言葉を紡ぐ。

 

 

「せめて柱を名乗るなら全集中くらい覚えてきなさい。 水の呼吸 拾壱の型 “凪”」

 

 

 嫣然と微笑んだ彼女は魔法のようにタオルを繰り、全ての攻撃を受け流していく。激しさを増す中で、新たに新聞紙をまとめた莉嘉も加わるが彼女はその全てを“凪ぐ”かのように無効化していく。

 

 その背は――――確かに私たちリップスを支えるに値するリーダーの背中だった。

 

 

――――――― 

 

 

武内P「あの、これは何でしょうか?」

 

志希「んー、漫画のなりきりごっこだって~。ジャパニーズのコミックへの情熱って桁外れだよねー」

 

フレ「さっきから混ざりたそうにずっとうずうずしてたもんねー」

 

周子「ジャンプ愛読者やもんな、奏ちゃん。……あれ、家で練習してきたんかな?」

 

武内P「はぁ…今度はそういう関係の仕事も方針に加えさせて頂きます」

 

周子「真面目かーい。まぁ、とりあえずお茶でも飲みなよ」

 

 

 激戦をよそに裏腹にのんびりとした会話が流れるこの事務所は今日も平和です。

 

ちなみにこの後、美嘉ちゃんもガッツリはまって何柱になるかでしばらく悩むのですが…ソレはまた別の話ですね。

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

【アイドルトレンド:ビーダマン】

 

 

薫「うわー!また負けた―――!!」

 

雪美「……うぐぅ」

 

桃華「ふふん、これで十連勝ですわね?」

 

早苗「あら、何してるの?」

 

 

 穏やかな午後の昼下がり。事務所の中から賑やかな声が聞こえ、顔を覗かせれば年少組が何かで勝負をしているだろう悔し気な声と、余裕の声をあげている。ソレを微笑ましく思って彼女たちのいるテーブルを覗き込めば随分と懐かしいものが設置されていた。

 

 平面なフィールドを囲い、その中でいくつもビー玉が転がっている。見慣れないギミックがいくつもあるが、それは間違いなく大昔に白熱した思い出深い品。

 

早苗「“ビーダマン”じゃない」

 

雪美「早苗さん…知って……るの?」

 

早苗「知ってるも何も、直撃世代よ。コレとポケモンの強さがクラスのカーストだったくらい」

 

薫「へー、これって最近出たおもちゃだと思ってたー。そんな昔からあるんだー」

 

 “昔”というフレーズにちょっとだけ頬が引きつるが、意外なのはこちらの方である。昔は熱烈に愛したこの玩具もいまは昔で見るまで忘れてたくらい。ソレが時代を超えてこうして再び注目されているのは素直に嬉しいものだ。

 

 それによく見ればあの頃と随分と形状が変わっている。最初期のボンバーマンでないのは分かるが、よりオシャレで今どきのフォルムである。ただ、机の上のソレを見比べているとある違いに気が付く。

 

早苗「桃華ちゃんのと二人のはなんだか随分と形がちがうのね?」

 

桃華「わたくしのは櫻井家に相応しいフル装備ですから。お二人のはほぼ素体の状態だと思って頂ければ」

 

薫「うぅ、お小遣いじゃそこまで揃わないよぅ」

 

雪美「誕生日を……前借しても…厳しい」

 

 誇らしげに胸を張る桃華ちゃんと落ち込む二人。世の中、よくある光景といえばそうであるが―――随分と気に食わない。

 

早苗「桃華ちゃん。懐かしくなって来ちゃったから私とも明日ココで対戦しない?」

 

桃華「ええ、それはもちろん宜しいですが…旧式では、その……」

 

早苗「あはは、いいのよ~。懐かしくなって触りたくなっただけなんだから勝ち負けなんて。胸を借りることにするわ」

 

 言いずらそうに言う彼女を遮り、あっけらかんと笑って部屋を後にする。

 

 もちろん、嘘ではない。

 

 嘘ではないが――――おかしな勘違いをする前に正してあげるのも大人の役目だよね?なんて舌なめずりをして実家に連絡する。そうと決まればそうそうに相棒を整備してやらねば。

 

 久々の勝負への興奮に高鳴る胸に年甲斐もなくスキップしてしまった。

 

―――― 

 

 

早苗「さて、さっそく始めましょうか?」

 

 約束通りのフィールドに立った私は状況を確認し、小さく呟く。三つのタワーを倒してその上のビー玉を先に落としたほうが勝ち。分かりやすく、実に自分好みのルールである。

 

桃華「…せめて、ペットボトルマガジンだけでもつけませんか?」

 

早苗「ふふ、まあ―――最初は、ね」

 

桃華「……分かりました。では、ゴングを」

 

 その向いの陣地に立つ彼女が気づかわし気に声をかけてくるがやんわりと断るとちょっとだけ眉をしかめる。

 

 もしかして侮られたと感じただろうか?

 

 まあ、それも仕方ない。ピカピカでたくさんのブースターでかさましされた彼女の機体はまさに要塞のごとく。それに対して私が持つ機体は細かい傷と汚れだらけで彼女に比べればほぼ素体。その上にマガジンすらつけていないのだから舐めてるとしか思えないだろう。

 

 

 そう静かに笑いを噛み殺しているウチに――――ゴングが鳴った。

 

 

 まさにマシンガンというしかないビー玉の雨が降り注ぐ。

 

 あっという間に削られるタワーの足元。

 

 これは、確かに圧倒的である。

 

桃華「子供の遊びと思って甘く見過ぎですわっ!!!」

 

 そんな彼女の雄たけびに微笑んで―――私はレバーを押し込んだ。

 

 

“がしゃり” と  あっけない音が  フィールドに響いた。

 

 

早苗「甘えというのならば―――機体の性能に頼り切ったその姿勢の事を言うのよ?」

 

桃華「は―――えっ、な、何が―――」

 

早苗「ほら、もう一つ行くわよ?」

 

 狼狽して手が止まった彼女に、もう一度分かりやすく声をかけてあげる。

 

 その次の瞬間に、フィールドを切り裂く光が駆け抜け―――もう一つの塔が壁を乗り越えて外へと飛んで行く。その現実離れした光景に誰もが息を呑んだ。

 

早苗「かつて、ビーダマンにおいて制作会社とユーザーが最も過激だった時代があったわ。“もっと強く、より早く、最強であれ”という時代が。今のようにカスタマイズ前提ではなく、一つ素体だけに全ての技術を詰め込み、使い手にすら負担をかけることが前提の狂気の時代。

 

 今では使用すら禁じられるであろう機体を使いこなし、勝ち残るには“ユーザー”の腕こそが問われ、あらゆる技術が生み出されたわ。

 

強靭すぎるスプリングとロックを片手で極限まで締め、連射性を捨てて投入口から掌に握り込んだビー玉でさらに押し込む事によって圧力をかけ加速させる。その代償に腱が痛み、皮がむけることなど日常茶飯事。

 

 その他にも多くの技術が発展し“競技”が“死合い”へと進化していった」

 

 その言葉に引き込まれた全員が私の手元に視線を送り、息を呑む。細かい傷、その中にしみ込んだ汚れが――――滲んだ血であることに気が付いたのだろう。

 

 最終的に人に的をつけて山や谷で命懸けの裏試合をしていた悪童時代。その行き過ぎた熱故に威力が制限されてしまったのかもしれないが…彼女たちがもう一度この玩具に、新たな光を刺してくれる事を祈って――――私はスプリングを引き絞る。

 

 

「今度―――色々と小技を教えてあげるわ」

 

 

「―――はい、楽しみにしてますわ」

 

 

 最後に輝いた光は清々しい彼女の笑顔ともに

 

 要塞のような機体と塔を粉々に 吹き飛ばしたのだった。

 

 

―――――― 

 

 

早苗「あででで、やっぱあの機体ヤバいわー。大人の全力でもこんな指が軋むとかマジでいかれてる」

 

 後輩たちを指導し終わった私は真っ赤になった指をさすりながら廊下を歩く。

 

 なんとなく熱くなって彼女の機体を粉々にしてしまったが流石はブルジョワ。気にした様子もなく許してくれた。あの後、残りの二人とも禍根なく共にビーダマン道を進む誓いをしていたし、いいことをすると気分が良い。

 

「随分と、無茶をするのね?」

 

 上機嫌に鼻歌を歌っていると聞き覚えのある声に呼び止められた。

 

 振り向いたその先にあるのは同年代の同僚で―――その手に持つ機体に微かに微笑んでしまう。

 

「昔は帽子とサングラス。その上にコテコテの関西弁だったから気がつかなかったわ――― “浪速のスピードスター”  いや、今は “瑞樹ちゃん” と呼ぶべきかしらね?」

 

「ふふ、昔の話よ。ところで―――あの時の決着、ついでに着けちゃわない?」

 

 闇試合の決勝戦。お互いの残弾が一つとなって額についた的を撃ちぬいた方が勝者という状況で警察の介入によってうやむやになった何十年ぶりの決着をつけようと彼女はいうのだ。――――思わず獰猛に笑ってしまう。

 

 

 何も言わずにお互い腕を下ろし、見つめ合う。

 

 おあつらえ向きに時計は後数秒で鐘を打ち鳴らす。

 

 それが―――合図となる。

 

 

 極限までひりついた空気が、昔日の想いが――――鐘と共に一気に弾けお互いの額を喰らわんと弾けて奔った。

 

 

 

 あの日の決着の行方は――――――――

 

      丁度、真ん中の通路から出てきた常務の両方のこめかみに

 

                          めり込んで消えていった。

 

 

「「あっ」」

 

 

 

「じょ、じょうむーーーーーーーーーーーーーーっ!!」

 

 

 

 その日は“ビーダマン常務誤射事件”として語り継がれ、社内でのビーダマンの使用を固く禁じる原因となったそうです。

 

 

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CV:島村 卯月

 

 えへへ、皆さん如何でしたでしょうか?こうして私たちデレプロはお互いを日々高め合っているという日常を感じて貰えたなら幸いです!!

 

なんだこれと思った方は正常です!私はもう慣れてしまって何も感じなくなりました!!エヘヘッ

 

それでは、また皆さんとお会いできる日を楽しみに島村卯月、頑張ります!!

 


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