デレマス短話集   作:緑茶P

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_(:3」∠)_いともたやすく行われるえげつない行為でござる………





【お届け物にご注意を】

 

「んとこら……っしょっと。お掃除しゅうりょう~」

 

 柔らかな木漏れ日が差し込むうららかな午後。私“塩見 周子”はエントランス前に落ちている最後の落ち葉を掃き集めてゴミ袋を気合の掛け声と共に結んで大きく背伸びをしつつ、日課の終わりを誰ともなく呟いた。

 

 こきこきと肩を鳴らせながら自分の綺麗にした部分を見て満足げに一息。

 

 実家を飛び出て早三年。今でこそアイドルなんかやっているが二年近くココで管理人をやっていたせいか、たまの休日でも予定がなければなんとなくこの日課をやらなければムズムズする。―――それに、行く当てもなくふらついていた自分を拾って貰った後に何も言わずに根気よく仕事を教えてくれたチヨ婆への微かな恩返しでもある

 

 結局、アイドルになってしまって手伝えることはうんと減ったけれどもやれることは手伝っているおかげか最近じゃ寮に住んでるメンバーも当番制で手伝ってくれるようになったのでこの程度の作業で済んでいるのは嬉しいやら後ろめたいやら。

 

 そんな自分の独白と共に苦笑を漏らしつつ、おんぼろな寮の物置へ掃除道具をしまおうとした時に、トラックが目の前に止まったのが目に留まる。

 

 多くの乙女が集うこの寮だが学校にアイドル業やバイト、更には趣味なんかで不在であることが多い。なので、郵便物や宅配なんかは併設された管理人用の離れで一旦預かる決まりになっているのだが――いま、チヨ婆はちょうど所用で出ていた事を思い出して爽やかな宅配のお兄さんを呼び止めた。

 

「あ、すみません。その荷物はこっちの管理人室で預かりますわ~」

 

 呼び止められたお兄さんはこれまたCMにでも出てきそうなくらいに良い返事をして一抱えもある荷物を一回でこちらに持ってくる。その様子と自分の兄貴分の気だるげな態度を比較して笑いそうになる。

 

“おにーさんも普段からこれくらい威勢が良かったら―――って、あり得へんな”

 

 爽やかな笑顔でハキハキと対応する様子を思い浮かべようとして失敗し、結局はいつもの彼が出てくる。今更にそんなイメチェンをされたってこっちも困る。そのやる気のないお節介な彼だから、昔の自分は救われた。―――あの人はそのままでいい。

 

 勝手にニヤニヤし始めた自分に不審な目を向けつつも職務を全うすることにした宅配員さんから手渡された受け取り伝票を軽くチェックする。

 

 ないとは思うが、不審物やおかしな送り先が無いかを確認するのも仕事の内だ。

 

 ソコソコの経験年数のおかげで大体は宛先や名前、住所を見れば異常を感じれるくらいにはなっているのだが―――今日はその能力に引っかかるものが一件。

 

「すんまへん。これの宛先ここであっとります?」

 

「へ?―――えーっと、はい、確かにココですね」

 

 私が付き返した紙の内容を確認してたくさんの荷物の中から小さな小包を出して確認する彼。だが、“ソレ”は―――どう見たってここにいる住人が必要とするものではない。

 

 体が資本で、売り物である“アイドル”。

 

 その体は鬼トレーナーの厳正なチェックによって厳しく管理されている。そんな彼女たちは“ソレ”の愚かさと虚しさを誰よりも知っている。そう、その小包の脇にでかでかと表記された――――“これで貴女も今日から巨乳! 豊胸パッドセット!!”なんて誰が必要とするというのだろうか?

 

 

 私じゃなくたって誤配送だって気が付くに決まっている。

 

 

「あはは、もしかしたら宛先を間違ったんかもしれんへんねぇ? 申し訳ないんやけど、それはここでは有り得ん品やから持ち帰って貰ってええですか?」

 

「え、嫌でも…ココで間違いないはずなんですけどぉ」

 

「そうは言ってもなぁ…そもそも、宛名かいとらんし。そんなん買う様な不届きもんは――「しゅ、しゅうこはん…あ、あの……」――あ、紗枝はん! ちょっと聞いてぇーな。おもろい話なんやけどな、ウチにこんなもん届くわけないやんなぁ。 大体が『これで貴女も今日から巨乳! 豊胸パッドセット!!』とかあからさまなパッケージで送られてくるようなん発注の時に気が付かん訳がない………紗枝はん? どないしたん? なんかめっちゃ気分悪そうやけど」

 

 自分の指摘に粘る宅配員に困り果てていると、ちょうどエントランスの隅っこから顔を覗かせた幼馴染に思わず呼び止めて、その商品のあり得なさに同意を貰おうとしたのだが―――いつもの涼やかな表情を浮かべてる彼女が脂汗を浮かべて、顔が真っ青である。

 

 多少の事は飲み込んで耐える京の人間がこんな顔を浮かべるなんてただ事ではない。

 

「あ、あの、しゅうこはん、あんなぁ――「いや、もうそんなんどうでもええよ! 紗枝ちゃんめっちゃ気分悪そうじゃん!! そんな状態で和服なんて着こんで!!……ゴメン、宅配さん。ちょっとこの子体調悪いみたいやから、ソレはとりあえず受け取り拒否にしといて? なんか問題あったらココに文句いって貰っていいから!」

 

「え、ええ。―――まぁ、それじゃ、これだけは持ち帰ります」

 

 少しだけ困ったような顔を浮かべつつも荷物を籠に戻して引き返していってくれた彼に一言だけ大きな声でお礼を言ってすぐさま紗枝ちゃんの手を引き、一階の談話室へと連れていく。やはり、体調が悪いのか足取りは遅く、何かに後ろ髪を引かれるかのように視線は忙しない。

 

 そんな彼女を宥める様にソファーに座らせ、てきぱきと着物を緩めていく。そもそもが男子禁制のこの寮だし、着物の下にだって襦袢があるのだから今は彼女の体調最優先だ。重くしっかりと着付けた着物をできる限り皺にならないように脱がせば、百合の花のように華奢で嫋やかな体が露わになり、上から下までするりとした肉付きは正に着物のためにある理想的な体だ。

 

 そんな彼女の日本人特有の肉体美に、ほうっと息をつきそうになるのを堪えて彼女を休ませる体制を整えてゆく。

 

 青い顔で“あぁ”とか“うぅ”とか呻くだけだった彼女は膝の上にお招きして横にした所でようやくその呻きが止んだ。だが、今度はどうしたことか頬は可愛らしく膨らみ、赤みを帯びている。―――これは、いよいよ風邪かな? なんて思ったり。

 

「とりあえず、今日はお休みやしゆっくり横になっとき。明日になっても体調が戻らんかったら病院いこか?」

 

「いいどす。―――風邪やないもん」

 

 絹のようになめらかな彼女の黒髪を梳きながら言い聞かせるように話しかけると、ちょっと拗ねたような声が返ってくる。ソレが幼い頃の彼女の不機嫌な時の様子にそっくりで思わず笑ってしまう。

 

……ふむ。ここは明るい話題でちょっとでもこの幼馴染の気分を晴らしてやった方がいいかもしれない。

 

 そう思案して思いつくのはやっぱり、さっきの珍事件だろう。

 

 

「なはは、でも、さっきのはおいしい所に出くわしたなぁ紗枝ちゃん。よりにも寄ってアイドルの寮に“偽巨乳セット”だよ? 日本中が把握してるスリーサイズがあんなあからさまなパッド入れたら一瞬でバレてお笑い草やわ。そのうえ、傑作なのがあのパッケージ! 発注する時に梱包状態とか確認しないであんなん送るとか有り得んわ~。あんなの一人暮らしでも受け取る勇気ないよ。いや~、ほんまに―――ん、紗枝ちゃん? ちょ、いたいいたいいたい! なんで私の腿をつねっとn いだだだだだっつっつつ!!???!??!?!?」

 

 

 

「うっさいねん!! あほぅ!! あほぅ!!! 周子はんのあほーーーーーーー!!!」

 

 

 

 その後、涙目の紗枝ちゃんが疲れ果てふて寝するまで何度もぺしぺしと叩かれという理不尽が私を襲った。――――この情緒不安定…生理でイラついていたんだろうか?

 

お詫びに彼女が起きたらホットミルクでも差し入れしよう。そう私は密かに反省をし、心に誓ったのだ。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

――後日談 というか オチ――

 

 

 その数日後―――――

 

 

「お待たせさんどす~」

 

「……」

 

「ん~? そんな女の人をジロジロ見るんは不躾どすえー」

 

「いや、お前が洋服ってのが珍しいのと……意外と着やせするんだな」

 

「ㇺㇷ、ㇺㇷㇷ///。…もー、会って早々に何ゆうてはるん? そら折角の“でぇと”の時くらいおめかしもしますえ~」

 

「……マストレさんに今度、再測定を―――「普段から大きいの見過ぎて目の感覚がおかしくなってるんちゃいます? さっ、いきますえ!!」

 

「何を急にそんな…」

 

「ええから! 今日は最大手のスポンサーの“接待”なんやからバッチリ決めておくれやす!」

 

「もう既に“でぇと”っていう設定から脅迫になってるんだよなぁ……」

 

 

 その日、絹の様な黒髪を可愛らしくお団子にした京都生まれの女の子が随分と楽し気に気だるげな青年を引き連れてとある街を散策していた姿が各所で見られたとか、なかったとか―――――。

 




('ω')ノへっへっへ、どうでしたかね旦那。ココだけの話ですが、画面右上のボタンをポチポチして評価・感想をあげると売人が一層に気張るそうなんですが・・・・・一口のりやせんか?
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