デレマス短話集   作:緑茶P

94 / 178
(´ω`*)今日はお盆だから、大量更新(笑)

沼友からのリクエストで元ネタ”笑う犬”から

愛しい糞雑魚メンタルをどうぞ召し上がれー(笑)


【それいけ、りあむちゃん】

 

 

 時刻は一日の終わりを告げるちょっと前。日々の過酷なアイドルというお仕事を終えた自分にご褒美を上げるゴールデンタイムが今日も訪れた。暑い屋外を嘲笑うかのようにガンガンに冷房を聞かせた部屋で毛布をどっぷり頭まで被ってお気に入りのイヤホン被って推しのアイドルグループのDVDを大音量で再生。そんで、デリバリーしたピザの箱を開けた瞬間の格別な香りとコーラのボトルを開けた爽快な音で今日の最強装備が整った。

 

 奮発して全乗せトッピングチーズ倍ドンのイタリア生まれの憎い奴にかじりついて、ソレを人工甘味料ドバドバの炭酸で流し込む――――最高の至福が私を満たした。

 

「ぷっはー、これこれこれこれっ!! 満遍なく僕を甘やかしてくれるエデンに私は今日も帰ってキタ―――!! 寮に入るようにって何回も言われてるけど絶対無理だよ!! みんな輝きすぎて僕が即蒸発するのもそうだけど、こんな生活をあそこで出来る訳ないもんね~。あー、みんながスタイルとか健康気にして健全なライフスタイル確立してる中でこんな自堕落な生活やばば~(笑)    ん? こんな時間にめっせ~?」

 

 推しの華麗なステージにニヤニヤしながら日頃は口に出せない本音をぶっぱして優越感に浸っていると携帯に着信アリ。こんな時間に非常識な、とか。もしかしたら、アイドルの誰かからのメールかも、とか。そんなダルさと期待のない交ぜな気分で携帯を引き寄せ覗き込んで見れば、映るのは自分が唯一あの事務所で気兼ねなく接せるアシスタントの“ハチ様”。もしかしたら甘々なお褒めかもと期待を高めてアプリを開けばそこには無情にも簡単な事務連絡のみ。

 

「んだよー、もうりあむちゃんは今日閉店してんのに~。えーと何々? 【次の仕事決定。さっそくいって貰う事になった。 遠出になるので案内役を送ったからその指示に従って準備してくれ】 って、はぁ? なにこれ、かまちょメールにしても面白くなさすぎでしょ。大体、今頃から準備とか無理無理のムリじゃ―― “ピンポーン” ――ん?」

 

 余りに横暴なその内容にぶちぶち文句を漏らしているとチャイムが鳴らされた。そもそもがネット通販とか以外で訪れる人のいないこの部屋に鳴り響く音は不気味で、思わず肩を跳ねさせてしまう。そして、“まさか”なんて思いつつもさっきまで読んでいた文面を見返しているウチに―――チャイムがもう一回。

 

 ま、まじか…。ハチ様、本気でこの時間に人送ってきやがった。

 

 そのメールが冗談の類でない事が分かった以上、次に僕が考えるのは送られてきたのが“誰か”という所である。言うまでもなく自堕落を体現したこの部屋はめっちゃ汚い。床に溜まった埃も、流しに入れっぱなしの食器も、洗ったのも洗ってないのも分からないくらい混ざって山にしてある洗濯物も、派遣された人によっては滅茶苦茶怒られること確定。

 

 ちひろさんなら強制入寮。成年組の誰かでも怒られる事は必至。同年代での結果は同期二人が実例でとてもかわいそうなモノを見る目で見られて死にたくなった。どうか、どうか怒られるにしても優しい人であってくれと願いながらなり続けるチャイムに怯えつつ覗き穴からドアの向こうを見れば―――――“及川 雫”さんがそこにいた。

 

「りあむちゃーん? もう、寝ちゃいました~?」

 

「は、はひっ、おきてmす!! いま、開けるので少々おまちくださいませ!!」

 

 ドア越しに聞こえる包容力Maxなその声に“SSRガチャキタ―――!!”なんて心の中で叫びながら大慌てでドアのカギとチェーンを開けて彼女を迎い入れた。

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 

「こんな時間に、ごめんなさい~」

 

「い、いえっ!! ぜんぜんだいひょうぶでしゅ!!」

 

 夜チャイムが鳴ったら表に及川雫がいたとかそれってなんてエロゲと夢想を広げていると向い側から申し訳なさそうな声が掛けられて思わず声が裏返った。そんな彼女に今更ながらあれこれコーラや食べかけのピザなんかを進めるがやんわりと微笑まれてしまい、ついつい見惚れてしまった。

 

 ショートながらも柔らかく触り心地の良さそうな栗毛に、おっとりタレ目にのほほんとした声。それに何よりも眼を引くのは強調した服でもないのに満点の迫力を湛えるそのおっぱい。僕も大きい自負はあるけれどもこれはレベルが違う。おっきいとどうしたってデブって見えたり、垂れ気味になったりするけど彼女のはそんな邪推は一切挟ませないくらい巨乳の理想形だ。細いけど筋肉質であるストイックなウエストがソレを引き締め、おそらくだけど、ブラを外しても彼女のおっぱいは重力に逆らいツンと上を向くことが分かってしまうくらいに張りがある。もうこれ、僕に象がついてたら誤魔化せなかったレベル。しかも、彼女が来ただけでこの部屋に凄く優しいミルクの甘い匂いが広がって―――おぎゃっちゃいそう。

 

「うん、こんな時間だから手早く終わらせちゃうね?」

 

「はへっ、あ、ああ、そうですよね!? というか、こんな時間に及川さんをココに来させるとかハチ様も何考えてるんだか…」

 

「あ、いやいや、比企谷さんも下で車で待っててくれてるんです~」

 

「ほん?」

 

 ちょっとだけ頬を染めて照れ臭そうにそういう彼女に一瞬だけ間抜けな声が零れてしまった。そして、その瞬間に僕の脳内でとある考えに行きついてしまった。深夜・二人っきり・車・お仕事――この表情。

 

はは~ん、ハチ様もやるもんだ。二人きりで送るついでにアリバイを作ってから甘いラブラブタイム突入ってか? このお仕事だって忙しい二人が時間を合わせるために急遽入れたのかもしれない。まったく、あのスケコマシにも困ったものだよ。ま、大人なりあむちゃんは余計な詮索もせず、架空の企画とやらにも付き合ってあげますかね。―――今度からこのネタでしばらく揺すって甘やかしてもーらお。

 

「はー、なるほど、なるほど。二人もちゃっかりやってますねぇ。んじゃ、ま、ちゃちゃっとその“準備”とやらやっちゃいますかー。お二人もこの後、やっちゃう事もあるでしょうし~。ニシシ」

 

「うん? うん、りあむちゃんが乗り気で私も嬉しいです~。それじゃ、とりあえず持っていくものを……このバックに詰めて貰っていいですか?」

 

え、あれ、フリだけって訳じゃないんだ?……まぁ、いいか。とりあえず、付き合っておこう。きっと、こういうのは臨場感が大切なのかも。

 

「ん~、まあ、いうて携帯と財布ありゃ何とかなるでしょ」

 

「あ、その二つどっちも要らないですよ~?」

 

「なんで!?」

 

 のほほんと私が手に持ったモノを取り上げて脇に寄せる彼女に思わず突っ込んでしまった。え、おかしくない? 現代日本でむしろ何をするにしてもこの二つは必須でしょ? なんで、いの一番にそれが否定されちゃってんの? おかしくない?

 

「そもそもお店が近隣にありませんし~、携帯も車でしばらく走らないと使えない所だからですよ~」

 

「……はは~ん、おーけー、OK。そういう設定なのね。大丈夫、りあむちゃん完全理解。一応、聞いておくけど――国内って設定でいいんだよね?」

 

「あはは、りあむちゃんはおもしろいですねぇ」

 

 朗らかに笑う彼女にこちらも笑顔で合わせる。だが、状況は完璧に理解した。おそらくだが及川さんはちょっと自分をからかっているのだろう。いや、もしかしたらハチ様が唆して本当に私が明日遠方の収録があると思っているに違いない。ならば―――こっちも少しくらい悪ふざけしたって構わないだろう。

 

「それなら―――このティッシュも持ってかないとまずいですよねぇ?」

 

「あ、よく気が付きましたね! やっぱ作業中にいちいちトイレに行くのは時間がかかりすぎますからね!! やっぱ幸子ちゃんとのロケを重ねてるだけあるなぁ!!」

 

「……無人島ロケの設定で聞いてるのかな?  そ、それじゃ、一応、アイドルだからね! この衣裳やカワイイ服は絶対必要でしょ!!」

 

「そ れ は い り ま せ ん」

 

「…え?」

 

「りあむちゃんの服はちゃんと用意してますよ」

 

「…………ツナギ?」

 

 うっかり自宅に持ち帰ってきちゃって忘れてたステージ衣装を洗濯の山から引きずり出してみれば即刻打ち払われ、代わりに渡されたのはどう見たって農家のおじさんたちがよく来てる上下合わさった作業着“TUNAGI”である。一体、どんなロケを想定して可愛い服を置いてってこんなもの一着渡されるというのだろうか? むしろ、ハチ様はどんな設定でコレを渡すことを及川さんに納得させたんだ。

 

「ま、まぁ、そういうワイルドな感じで撮影なのかな?……こ、これはいらないよねぇ?」

 

「………慣れない人にとってはそれだけが頼りかもしれませんね」

 

 次に差し出した“月刊 あいどる”。毎月、アングラからメジャーまで幅広い情報を取り扱っている上に内容も激熱なので数年以上にわたって購読している僕のバイブル。とはいえ、流石に遠出のロケに持ち歩く程ではない。それでも、ジョークのつもりでソレを掲げてみれば真剣に、そして、切実そうに眼を細めた及川さんがそっとその雑誌をバックに詰めた。

 

「なんで!? おかしくない!!? 財布も携帯も要らなくて、トイレも草むらで済ませる前提で衣裳も要らないのに何でアイドル雑誌はOKがでちゃったの?? おかしくない!!?」

 

「……稀に、新人さんや研修の方は“あの子達”だけに接するためにそっち方面で正常を失ってしまう事があるので、それは必要と判断しました~」

 

「せめてこっちを見て言ってくれよぉ!!? どこ?? 今更だけど、ぼく、これネタとかじゃなくてガチでヤバいロケ送りになっている事が分ったよ!!? 僕は一体、どこに送られる事になっちゃたの!!???」

 

「……空気の美味しい、長閑なところですよ~」

 

「嘘だっ!! いや、むしろそれしか無いんだろ!! おかしいもん!! どこの世界にこんな小っちゃいカバンにティッシュと雑誌とTUNAGIだけツッコんで大丈夫って太鼓判する事務所があるんだ!! スタッフすらいないヤバいロケだろ!!」

 

「さ、比企谷さんも待ってますし、準備も完了――――そろそろ行きましょうか~」

 

「ついに返答も無くなったよ!!? お願い、せめて、せめてこのピザだけでも~!! あああぁぁぁっぁーーーーーー!!!」

 

 絶叫して床に張り付く僕をよそに手際よく部屋の電気や電気・水道の元栓を閉じた及川さんはクソみたいな中身のバックと私を一緒くたにひっつかみ嘘のような馬鹿力でそのまま部屋から引きずり出していく。ご近所迷惑百も承知で絶叫するも世間は厳しく冷え切ってしまったのか誰も顔すら出すことも無く私のSOSは住宅街と見慣れた送迎用のバンの中に吸い込まれて消えていった。

 

 

 そんな真っ暗なバンの中、及川さんの朗らかの到着を知らせる声とは別の聞きなれた声が耳に入り僕は藁にも縋る思いでその声の主に詰め寄った。

 

 

「は、ハチ様!! おねがいごめんなさいすみませんでしたいつもありがとうだいすきだいすきだいすきだからたすけておねがいなんでもしまむらうず――「シートベルトしないと危ないですよ~?」――っぎべ!!」

 

 およそ、顔から出る液体全て垂れ流して、思い付くすべての語彙を振り絞って最後の希望である根暗で気だるげなアシスタント様に全力で助けを求めるがそれはあえなく及川さんのシートベルトロックによって遮られた。それでも暴れ続ける僕にハンドルに疲れたようにうつぶせになっていたハチ様がついに顔を起こしてこちらを振り向く――――般若のような顔を浮かべて。

 

「――――俺らが今からこの車で行くのは、雫の実家“及川牧場”だ。東北の一層山奥にある幻の酪農地帯の最奥。そんで、そこで一月丸々俺らは働かされる事になっている。表向きは“アイドル、農家やるってよ”とかいう意味不明な自然派ドキュメンタリーの撮影。実際は、お前に対しての会社からの左遷・隔離だ」

 

「へ? へ!!? 意味わかんないよ!!? 僕、なんにもしてなくない!!? 最近はお仕事もレッスンも頑張ってたじゃん?? なんでそんな拷問みたいな扱い受けなくちゃいけないのさ!!?」

 

「―――拷問ですか~?」

 

「ひえっぇ」

 

 笑顔のまま顔を覗き込んでくる及川さんに息を呑みつつ、縋るようにハチ様を見れば今度こそ疲れたように頭を抱えて項垂れつつも説明を続けてくれる。

 

「理由は二つ。及川家のおば夫婦が農繁期なのに腰痛で動けなくなって雫が長期休暇を申請してきた事への解消。もう一つは―――どっかの馬鹿が常務に向かって“僕の歌詞の最後ってやっぱ女の子らしく『お〇んこーる』の方が良くないですか?”とかふざけた事をぬかしやがったせいで武内さんが首を切れとブちぎれる常務から離すために取った苦渋の策だからだ。―――――――それの監視役として巻き添えを食って俺まで、だ」

 

「………あ、やっべ」

 

「ぶっとばす」

 

 つらつらと述べられた理由。最初は完全に人身御供の人権侵害だと思ったが、後半は完全に自分のやらかし履歴だ。しこたま怒られ過ぎて辛かったので記憶から消していたが、つい1日前の出来事。その記憶がじわじわと蘇るにつれて胸の奥からツラ味が溢れて視界が曇って再び嗚咽がせりあがってくる――――あ、やっばい。なんかしてないとこれ吐くわ。

 

 

「が、がんばーれ“ー ま“け”ん“なー ぢぢがらのかぎり”― いぎてーやーーーれ“ぇーーー!!!」

 

 

「うっせえぇぇ!!! もう二度と常務の前で口開くな、だあほう!!」

 

 

 深夜の首都高。街灯に照らされた輝くはいうえいすたーは私の魂の絶唱と、苛立ちMaxのアシスタントさんの怒声。それと、一人だけ上機嫌で鼻歌交じりに窓の外を眺める及川さんというカオスが入り乱れた地獄の様相を呈したのでした、とさまる

 




('◇')ゞお盆休み頑張って更新するために皆おらに力(評価)を分けてくれー!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。