クラスメイトの周子さんとの青春をお楽しみください(笑)
夏っていうのはいつだって唐突だ。薄暗くジメジメした梅雨が続き、蝉ですらも夏の訪れを待ってなどいられないかとでもいう様に雨粒の中で番いを見つけるために鳴き始めた事に同情をしていると滝のような雨の屋根を叩くような音を子守唄に一晩寝れば昨日までの曇天は何だったかのかという様に晴れ渡った青空を見せて気温をグングンと引き上げていく。ともすれば、それはあっという間に景色を変えて世界を一変する。
猛る新緑に、虫達の羽ばたき。それに人々の装い。全てをガラッと変える。そして、そんな晴天に油断した人々をまた裏切る気まぐれさも夏特有のもので人々を翻弄するのも風物詩と言えるだろう。
つまり、その、なんというか――――隣でぼんやりと滝のような夕立に視線を送る少女が、夏用の薄手の制服に水滴を滴らせ、その下にあるだろう刺激的な衣類が見えそうになって俺の理性をガリガリと音を立てて削っていくのもその一端であるのだろう。
「いやぁ、ホンマに急に振ってくるもんやねぇ―――って、どうしたん?」
そんな男の純情に気づきもせずに呑気にハンカチで髪を拭う銀髪で細い眦を向けてくる彼女をちょとだけ恨めしく思いつつも俺は深く溜息を吐いた。きっと、これからする行動は彼女の疑問に雄弁に答えてしまい、いつもの様にその狐目を細めてからかわれる事となるだろうけれどもやらないわけにはいかないのが男の辛い所。小町、俺頑張ってるぜ?
「これ……羽織っとけ」
「んお、っと。………パーカー? ははぁん」
ぶっきらぼうに自転車に合羽代わりに常備している撥水性のパーカーを彼女に押し付ければ、一瞬の怪訝な表情の後に全てを察したのか彼女は厭らしい声と共にその形のいい頭部にぴょっこりと狐耳をはやして楽し気にこちらを見やる。
反応したら負けだと自分に言い聞かせ真っ直ぐに視線を向い側の標識に固定する俺をしばらくニマニマと見つめた彼女は何も言わずにソレを羽織った。それに心の冷や汗を拭いつつそちらに視線を向ければ――――目を疑う様な光景が広がっていた。
「なっ―――おま!!」
「偉いおおきになぁ。上着が張り付いてちょうど気持ち悪かったんよ」
羽織ったパーカーの中に腕を引っ込めた彼女がその中でモゾモゾと微かにしけった布が擦れる音を狭い停留所の中に響かせ―――ようやく袖を通した腕で彼女は胸元から彼女がさっきまで纏っていたであろうそのブラウスをずるりと引き出した所であったのだ。
女子のそういった技能があることは知っていたが、それが目前で行われる事の衝撃と試すような彼女の淫靡な視線。その上、その手に握られる生々しいその温もりを伝えるそのブラウスの存在に俺は思わず息を呑んで阿呆のように口をパクパクさせることしか出来なかった。
「なっ、おま、馬鹿!!」
「濡れた服を着てるのが一番体に悪いんやって知ってた、はっちゃん?それに、冷えた体には―――人肌を直接合わせるのが一番なんだって」
意図せず顔が熱くなる俺に構わず寄ってくる彼女に後ずさり、遂には備え付けのベンチにぶつかりそこに腰を下ろしてしまった俺を覆う様に彼女が逃げ道を塞ぐ。
「ね、他の人には嫌だけど――はっちゃんなら、いいよ?」
「な―――」
濡れて冷えているはずのお互いの顔は真っ赤に染まり、動いてもいないはずなのに胸は全力疾走した後のような動悸を覚えて思考能力を奪われて行く。彼女の漏らす吐息も、薫る甘い体臭も、何より――――閉じられたジッパーに添えられた指の動きに視線は嫌でも外れてくれなくて。
ついに、その扉は――――あけ放たれた。
真っ黒な生地に、通気性の良さを感じさせる縫製。そして、何より特徴的なのは―――“2年3組 塩見”と書かれたゼッケンの存在感。そう、まごう事なき―――学校公認のスクール水着が俺の目に焼き付いている。
その予想もしていなかった光景に唖然としている俺の耳に堪えきれないといったような聞きなれたハスキーな関西弁が耳を突いた。
「ぷっ、あははははは!! ざーんねん!! 今日は家から着てきた水着のままでーす!! いやいや、水泳が先生のお休みで中止になって興ざめやったけど、こんな面白ろいはっちゃんの顔見れるなら着続けてて正解やったわーww。 ねぇ、かわええ下着があると思った? 残念!! スクール水着でしたー!!」
大爆笑で目に涙まで溜めた彼女をみて色々と思う事はある。朝から水着ってどうなんだ、とか。心配して損だった、とか。―――男の純情をどうしてくれる、とか。そんな感情を押しつぶす遥かに大きな問題から俺は目を逸らすために大雨が止まぬ停留所の外へと踏み出していった。
無言で立ち去る俺に流石にまずいと思ったのか周子は俺の後を慌てて追いかけて色々と声を掛けてくるが、今の俺にそんな事に構っている余裕はないので取り合わないままズンズンと歩を進めていく。
「い、いや、ホンマ御免て。ちょっとしたサービスのつもりやったんやって!! そんな怒らんでもええやん! ちょっと、もー、悪かった―――って!!」
「馬鹿っ!!」
何とか取り繕おうと俺に追いつこうとした彼女が水溜りに足を突っ込みバランスを崩したのを横目でみて咄嗟に腕を伸ばして彼女を支える。
大雨の中でもその身体は柔らかく温もりを感じさせ、触れ合った部分は水着特有のざらつきを感じさせ、雨がより一層その身体の輪郭をリアルに伝えてくる。―――それは支えられた彼女も同じようで、一瞬だけ目を瞬かせた後に支えられた事に安堵した表情を浮かべかけて“とある違和感”に顔を硬直させた。
何度か密着した体の中で、感じた事のない熱と固さ。
それが何かと目で追って、その先でそれが何かを知った彼女は顔も真っ赤に今度は彼女が口をハクハクさせて言葉を失った。
それが”何か“分かった人はお察しの通り。分からなかった人はどうかそのままの純粋な貴方でいて欲しい。だけれども、言い訳をさせて頂きたい。思春期真っ只中の男子高校生が嫌いじゃない女子のスクール水着を目の前にして、その上にその豊満な丘を目の前で豊かに揺らされて反応しないわけがないだろう。
しかも、ソレを隠すために俺は最善の努力をしたのだ。雨に打たれ体を鎮め、感ずかれる前に彼女の前から去ろうとした。その結果がこの様である。マジで人生って無理げーだな。死ねばいいのに。
真っ赤になって俯く彼女という珍しいものを前に人生の終了を感じて黄昏ていると小さく袖を引かれる感触に意識を引き戻された。……死刑宣告かな?
「そ、その、ここまで濡れてまったから―――はっちゃん家でお風呂借りて ええかな?」
「――――――お、おかまい、できませんが」
「お、お構いなく」
真っ赤に染まった馬鹿二人の頭すっからかんの会話が夕立の中で溶けていった。
――おまけという名のオチ――
「「……………」」
さてはて、場所は変わって比企谷家。帰る途中も容赦なく降り注いで嫌がおうにもつないだ手の感触を浮き彫りにしやがった憎いアイツも今では小雨まで落ち着き、気まずさ満点のままお互いを押っ付け合って風呂を交代で入り終わった自分の事である。
隣でホカホカと湯上りの風情を醸す周子は俺が貸したトレーナーとジャージに身をくるんでいつもの無遠慮さは何処に行ったのか膝を抱えてずっと髪の毛をクリクリしている。かくいう俺も会話なんか思いつくわけもなくずっと口元を隠すようにさすって気を紛らわせるぐらいしかできない。セルフタッチという心理的防御だというのも頷ける。めっちゃ今心を何かで守りたくて仕方ないもん。
そんな時間をどれだけ過ごしたのかは分からないが――最初に動いたのは周子だった。
「あの、今日はちょっとおふざけが過ぎたわ。ゴメン」
「いや、その、そんな怒っては…ない」
たどたどしいお互いの謝罪になんだかこうして緊張してるのが馬鹿らしくなってお互いに苦笑いを零した。そんな時に、周子は目線をちょっとだけ下に切り何か意を決したように言葉を紡いだ。
「そのお詫びって訳でもないんやけど―――今度はホントの可愛いの着けてきたから、やり直し……する?」
「……へ?」
間抜けな返答をする俺に彼女ははにかんだ様に笑ってそのトレーナの前についているボタンを緩めていく。その緩められた襟から覗くのは今度こそ彼女の白魚のような肌で、肩口に見える紐はその先の果実を包む布地の華やかさを想起させるには十分な可愛らしさであった。
いつもの様に“何を馬鹿な事を”なんていって止めるべきだと理性は言う。だが、本能は正直に彼女の肢体に釘ずけとなり、あまつさえ彼女の脱衣を手助けするかのように肩に手を添える始末だ。まだたったそれだけだというのに主張を始める半身に彼女はちらと視線を走らせるが今度は生唾を一つ飲むだけでその行為を止めはしなかった。
三つある襟のボタンを緩め、肩口が露わになった所で彼女はその先は自分に託すように手を下ろし真っ直ぐに俺を潤んだ瞳で見つめた。その表情の熱に浮かされる様に彼女の顔へ近づき、そのサクランボのような唇に重ねようとし――――「たっだいまーー! もー。お兄ちゃん!! 小町が雨に降られてるなら自分はずぶぬれになってでも傘を届けるってのが兄妹の、き…ず、な……………。ゴメン、小町ちょっと忘れ物したから一時間くらい町内走ってくるね」
「「ち、ちが―――――う!!!」」
その後、雨のなか全力疾走する比企谷兄妹+1が町内で目撃されたとか、されなかったとか。
ちゃんちゃん♪
(・ω・)なんと評価ボタンを押すだけで貴方にもこんな学生生活が訪れるかも!! こりゃおすっきゃないよね!! ←無責任