はたらく魔王さま!~IN EDO~    作:ジャンヌ

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一か月ぶりの投稿。
何か、矛盾があるかもやしれません。
そうそう、一か月の間に、いつの間にかUA数が五千越え!!ありがとうございます!


第十話 戦況は二転、三転する。

 

 銀時の手は、ピタリと止まっていた。

 そして、糸の切れた人形のように、ぎこちなく立ち上がる。

「・・・恵美?」

 既に、殺気は治まっていた。

 フラフラと、横たわっている恵美に近づく。

「ぎ、銀時・・・?」

 ひざまずく銀時に、息切れを起こしながらも、しっかり銀時を見据える。

「生きてたのか・・・」

「・・・ええ」

「・・・はは、つい勘違いしたじゃねーか、バカヤロ・・・」

 銀時の手が、恵美の背中へと回された。

「え、ちょ、銀時?」

 戸惑う恵美の声には反応せず、そのまま恵美と倒れこむ。

 たちまち恵美の顔が真っ赤に上気するが、それも一瞬のこと。

 どうやら、気を失っただけらしい。

(一時的とはいえ、急激に魔力濃度が高まったんだもの、疲労が出たのね・・・)

 そのまま、ぎゅっと抱きしめる。

 その後ろ姿は、赤ん坊を抱く母のようで。

 武市は、ふぅ、と息を吐いたのだった。

 

 

 恵美は、銀時を抱えて、ゆっくりと歩き出す。彼女にも並々ならぬダメージがあったはずだが、やはり守る者がいると違うのだろう。

 そう結論付け、武市はまた子のほうへ振り向く。

「あの・・・先輩、早く手当てを・・・」

「貴方の場合は命に別条がないので不要です」

「そんな、先輩ぃ~」

 軽口を叩きあえるだけ、大事にはなっていない。

 しかし、武市は、これから起こりうることを、把握している。

 ほら、胸の奥から、グルンと何かが巻き戻って・・・

「ぐ、グハッ・・・」

 負った怪我に不釣り合いなほどの、血反吐を吐く。

「ど、どうしたんすかせんぱ・・・う、ううおえぇ」

 こちらは嘔吐のようだが、どちらにしろ異常な事態だ。

(これが、魔力の弊害なんですねぇ・・・)

 薄れゆく意識の中、武市は妙に冷静に思考する。

 

(後は、頼みましたよ・・・晋助様、ルシフェルさん、オルバさん、河上さん・・・)

 

***

 

  ググ、と刀と弦が互いに軋みあう。

 真奥と万斉の力はお互いに拮抗。それはすでにどちらも理解している。が、それゆえに決め手がない。

 かれこれ十分近く、均衡状態が続いていた。

(さて・・・どうすべきか)

 かれもルシフェルより手渡された堕天使の羽根―――魔力がある。ただ、あまり魔力が適合しないために、使いどころを見計らっていた。

(しかし、そうも言ってられないでござるな)

 弦を、ぐっと握る。

 対する真奥も、苛立ちが隠せないでいた。

 緊迫した状況に、真奥はただ焦っていた。

(クッソ隙がねぇなアイツ!?なんか余裕綽々だし!あーもうイラつくぜ!)

 一旦後方へ飛び、距離を空ける。

 なるほど、見れば隙のない構え。はりめぐされた弦、不自然なくらいな穴も、恐らく罠だろう。 

 おまけに、向こうは魔力も何も行使していないときた。

(だったら・・・)

 チン、と刀を鞘に納める。

 不可解な行動に、眉をひそめる万斉。流石にこの状況で投降、なんて甘い展開はない。

(さすれば・・・挑発でござるか)

 万事休すなこの状況の打開策にしては、随分と陳腐に思える。

 案の定、真奥の紡いだ言葉は。

「なぁ、人斬り。いい加減、その耳のヘッドホンを外したらどうだ?」

 笑わせる。その程度で、この万斉の心を動かすことなど。

「何故でござろうか。秦の強者というのは、例えハンデがあっても、輝かしいフィナーレを迎えるものでござる」

「ふーん・・・そうかそうか・・・へぇ~」

 ・・・顔がこれ以上ないってくらい、ウザい。口を奇妙にあけ、目に馬鹿にしたようなように曲がっている。

「まぁいいけど・・・そしたら、なぁ?俺に負けたとき・・・言い訳に困らないからなぁ?」

 まあ、予想どおりである。

「ふっ、笑止。拙者が勝って、万々歳。拍手喝采でござる」

「ああ、それと」

 思い出したようなように、万斉のズボンを指さす。

「そこになんか入ってんだろ・・・魔力の媒体」

「!!?」

 チッ、と舌打ちが思わずでた。腐っても魔王、そういった超常現象には敏感らしい。

「ほら、さっさと使えよ。今のこれが俺の全力なんだからさ、勝てるぜ?」

「・・・」

 どう考えても、罠にしか思えない。確かに言ってることはあっているのだが・・・。

 どの道、ここが正念場ということか。

「まあ、いいでござる。そんなに死に急ぎたいならば・・・鎮魂歌すら聞こえないほど、圧倒的に終わらすでござる」

 既に魔力を行使した時の自分の力は把握済みである。身体強化、武器の強化。問題ない。この程度の雑魚、一瞬で。

 ゆっくりと、堕天使の羽根を掲げる。

『地に墜ちし天の子よ、我に魔の力を・・・!』

 カァッと紫に輝く。徐々に、万斉へその光が移行されてくる。

(・・・なるほど。これが魔力でござるか)

 もはや、自分の力が自分でないような気がする。

 こんな感覚を・・・意志を持った機械にまどわされた、人斬り似蔵も、この気分を味わっていたのだろうか。

 刀を、三味線を握る手を、一層強く。

 

 

 そして、なんか脱力した。

 

 

「・・・え?」

 なんか、脱力した。それはもう、肩から、こう光が消えるというか。とにかく、魔力が感じられなくなったのである。

 その抜けた魔力はというと。

(ま、まさかまさか・・・)

 真奥へと、流れていた。

「おー、なっつかしーな、そうそうこれだよこれ!ま、雀の涙くらいかな」

 さらに、万斉は開いた顎をさらにあんぐりと開けた。

 万斉の気分が高揚するほどの力を、こいつは少々と言い切ったのである。

 

ーーーこれが、悪魔の王、サタン。

 

「ははっ、まさかほんとにやるとは・・・、一応こちとら魔力のエキスパートなんだからさ、少しは頭を使えよこのB級ヤロウ!!」

「うがっ、こ、この・・・」

 ギリギリと歯ぎしりする万斉をものともせず。ニヤリと笑う。

 ゾクリ、と背中に悪寒が走る。

 もはや、目の前にいるのは真奥ではなくーーー魔王だ。

 

 逸る殺気を抑え、冷静に弦を放つ。

 先ほどまでならとらえていただろう束縛の糸は、しかし、紙一重でよけられる。不敵な笑みをうかべ、ちょいちょいと人差し指を動かすその挙措に、ますます苛立ちが募る。

(くっ・・)

 柄にもなく、焦っていた。

 相手が急に覚醒するのは、別にいいむしろ面白い。いきなり曲調が変わり、自身に全力でかかってくる、戦闘の醍醐味である。

 だが、今の相手は、最早自分を敵に見ていない。

 そのことが、万斉の誇りを異常なまでに刺激していた。

(一瞬で終わらせてやる・・・!)

 再び、右手で真奥に弦を放つ。同じようにかわす真奥。

 そこに、左の弦が襲う。

「うぉっ!?」と驚き、のけぞる真奥。そう、これを待っていた。

 予想外の攻撃、一番反撃しにくい姿勢、心理状態。

 弦にしか注意がいってない奴に、この接近する万斉の姿を捉えられるはずもない。

 愛刀が、ギラリと光る。

敵の喉元まで、一直線に突き出した。

 

 

 ガキィィン!!

「!?」

 万斉の刀は、真奥の腕に防がれていた。

「あぶなっ!魔力がなかったら死んでたぞオイ!!」

 たらり、と冷や汗が垂れる。

 結局、自分は。

 この男のことを、何一つ理解してなかったのだ。

 ブンと真奥によって吹っ飛ばされる。

「・・・で?まだやるのか?」

 キッと刀を突き付けられる。

 まだ、戦うという選択肢はある。実力差を悟ったところで、玉砕覚悟で突っ込めば良いだけのこと。

 しかし。それは、己の矜持が許さない。

「いや・・・拙者の負けでござる。好きにするといい」

「・・・そうか」

 刀を納め、人質だった者たちへ駆け寄る真奥。

 その背中を見ながら、万斉は薄く笑う。

ーーーお主のビート・・・さてさて、どうなる事やら。

 これからの展開に胸をはせ、万斉はゆっくりと目を閉じた。

 

 

***

 

 

 絶望が飛来したのは、まさに狙い澄ましたかのような、最悪のタイミングだった。

 雑兵も残りわずかとなり、いよいよ士気が最高潮に達していた、その時。

「何アルか・・・あれ?」

 舞い落ちるは、地へと堕した天使の羽根。

「さーて・・・僕もそろそろいきますかっと!!」

 無造作に数多の・・・百はあろうかという魔力弾を生み出す。

「ん?・・・なんだ、あれは?」

「っ!神楽ちゃん、あれって・・・」

 新八が声に出すよりも早く、爆撃は地上に散弾した。

ーーーーダダダダッッ!!

 

 

「け、ケホ・・・大丈夫、神楽ちゃん、近藤さん!!」

 いち早く回復した新八が辺りを必死に見回す。この前の猿飛の話を思い出したため、いち早く避難はできたが、さすがに他の者まで手が回らなかったのだ。

「・・・いたアルか、新八」

 すすまみれでも、険しい表情を浮かべる神楽。彼女も本能か、避難できたようだ。

「ああ、良かった・・・そうだ、真選組のみんなは!?」

「ゴリラならあそこネ」

 クイ、と指差した先を見てみると。

「・・・なんでケツ出してんですか?」

 頭から地面に突っ込み、ケツ毛という名の漆黒のジャングルを外気に晒していた。

 おおむね、他の隊士も、ケツは出していなかったが、頭は地面に。

「さすがネ、こんなときでもギャグを忘れないなんて」

「・・・(グッ)」

「いや、褒めてませんから。神楽ちゃんの目、ゴミを見る目ですから」

 親指を突き出す近藤にツッコム新八。

「そんなことより、アイツをぶっ飛ばすアル!!」

「え、えぇ!!でもどうやって?」

「ん~、よし、新八。眼鏡かけ器、貸すヨロシ」

「え、いやそれは家にゲブゥ!?」

 神楽は、新八の頭を踏み台に、空高く飛翔した。

 ボーゼンと消えゆく神楽を見つめる。

「・・・」

「お・・おぃぃぃ!?せっかく一カ月ぶりに出番もらって、またこの仕打ちぃぃ!?なんか新しいけど!?僕を何だと思ってるんだぁぁぁ!!」

 ・・・踏みぬかれた時点で、相当の負荷がかかったはずなのだが、ものともしていない。

 こんなときばかり、超人さを発揮する、地味こと、新八。

「はぁ・・・仕方ない、近藤さんたちをたすゲボァブフゥウ!!?」

 またもや、頭部に二連続ショック。おまけに二人目は、的確に首の根元を踏みつけやがった。

「けはっこほっ・・・なんなんだよぉぉぉ!!!」

 

「ハハハ・・・どうしたの?そんなもんかい?サムライってのはそんなもんなのかいぃ!?」

 嘲るような高笑いが、炎揺らめく上空に響く。

 もう少し骨があるかと思っていたが、これではとんだ見当違いだ。

 意気高く刀を振り上げていたものどもは、いまではすっかり腰を抜かしている。

(あ~あ、つまんない。僕も高杉のほうに行こうかな~)

 のんびりと諦めをつけ、クルリとターミナルへ引き返そうとした。が、

「死んどけやこらぁぁ!!」

「何してくれやがるコノヤロウ!!」

「死ねぇ!!・・・土方」

「なにボソリと呟いてんだ総俉ぉ!!」

 騒がしくも、こちらにばく進してくる三人組。

「・・・いいね」

 ニヤリ、と笑みがこぼれる。

 やはり、こうでなくては。面白みがない。

 いち早くルシフェルへ拳を振りぬく神楽。しかし、空中ではやはり、羽があるほうに分がある。

 難なくかわされ、魔力弾を打ちつけられる。

 「クソッ・・」と呟き、地へ落ちゆく。

 残りの侍二人も、抜刀してきりかかるも、かわされる。

(ま、仕方ないよね)

 だが、やっと見つけた玩具だ、ここで終わりにするのはもったいない。

 なんとか着地していた三人の元へ、ゆっくりと降りる。

「へぇ・・・やりあう気か?」

「まぁね・・・どうせ死ぬなら今がいいでしょ」

「はっ、ぬかしやすねぇ」

「何かテメー、サドに似てんだよコンチクショー!!」

 神楽の悪態はさておき。

 互いに構え、にらみ合う。

 ・・・何分が、過ぎただろうか。

 どちらからともなく、地を飛翔し、蹴り、刀を振り上げた。




万斉にB級と言い切る真奥、パないっス。
まだ姿は魔王のものではありません、まだまだ基準地には、ね。

次回も時間がかかるかも・・・善処しますので、よろしくお願いします!!
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