はたらく魔王さま!~IN EDO~    作:ジャンヌ

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第三話 勇者、宿敵と相対する。

「いやいや、すまないねぇ」

「いえ、これしきのこと。困っている人を見かけたらお手伝いするのは、真選組として当然の行動ですよ」

 爽やかな笑顔とともに、そう言う青年。手にはその老女がもっていたのだろう、風呂敷とスーパーの袋を手にしている。

「真選組なんて、熱血で冷徹な人斬り集団かと思っていたけど、アンタのような人がいるなら安心だねぇ」

 なんか矛盾してないか、と思う青年だが、ぐっと飲み込んで笑みにとどめておく。

「それじゃ、すぐそこだからもういいよ。ありがとさん、お仕事がんばってね」

「どういたしまして!」

 荷物を返す際にも、丁寧に老女の手に持たせ、別れを告げる。どこからどうみても、満点の対応であった。

「さて、巡回もまだ途中だしはりきっていきますか・・・あれ?」

 おかしい。進もうとしても、進まない。何か、強固な力にとどめれているのか。肩の違和感に後ろを振り返ると、

「・・・おまえは・・・!」

 

「・・・だれ?」

 

 掴んでいたのは、若い女性だった。ロングの髪をした、美人。

「ふん、もう忘れたのかしら?」

「何をいって、」

 

「エミリア・ユスティーナ」

「!」

 

 バッと手を振りほどき、構える。額からダラダラと冷や汗が出ていることから、その名が彼にとって多大な重要性をもつことが分かる。

「まさか、天下の魔王様が、人間のおばあちゃんを助ける、なんてねぇ?」

「おまえ・・・ほんとに勇者エミリアなのか?」

「当たり前でしょ」

 呆れたように手を前に差し出すと、光が集まり、一振りの剣が顕現した。聖剣ベターハーフ。

「あなたこそそんな人間くさいカッコして・・・今は第一段階だけど、あなたを倒すくらい、訳ないことよ」

「お、落ち着け!周り見てみろよ、野次馬がひどいことになってんぞ!?」

 彼のいうとおり、何事かとほとんどの人が足をとめ、二人に視線が集中していた。

「それに、今にも消えそうじゃないか?お前も聖法気が限界なんだろ?」

「!」

 あわてて恵美が聖剣を見やると、確かに、一度収束した光は、徐々に離散しつつあった。

「で、でも魔力がギリギリなのはあなたもでしょ!いいから死ね魔王サタン!!」

 焦燥からか、いきなり距離を詰め、聖剣を振り下ろすが、紙一重でよける青年、いやサタン。どよめきが、ギャラリーの中をかけめぐる。

「あっぶねぇ!!どんな神経してんだよ!?」

「あなたに言われたくないわ!さっさと死ね!」

「はいはい、そこまでだ二人とも」

 

 銀時が、恵美の右手を掴み、動きを止めていた。

 

「いやー悪いね兄ちゃん、ちょっとうちの恵美がオイタしたみたいでー」

「ちょっと、離して銀時!そいつ殺せない!」

「おまえは黙ってろ。たく、誰のせいでパフェ半分ドブに捨てることになったと思ってるんだよ。わかるか、この愛し合うカップルが無残にも親の手で引き裂かれるこの気持ちが!!」

「分かるか!!」

「えーと・・?」

 二人で喧嘩し始め、手持ち無沙汰な青年が、ためらいがちに、

「あのー、そちらは彼氏かなにかで」

「「あぁ``!?」」

「すみません・・・」

 落ち着いたのか聖剣をしまった恵美だが、いまだに青年を睨み続けている。

「・・・今回はこいつに免じて見逃してあげるけど、次は・・・分かっているわね?」

「ふ・・・この俺がお前ごときに倒せると思ってるのか、この魔王サタンを!」

「いや思いっきり押し負けてたよね、オレいなかったら確実に死んでたよね」

「それはそうなんですけど・・・あの、格好ぐらいつけさせてください・・・」

 ふん、と馬鹿にしたように鼻で笑い、立ち去ろうとするその背中に、青年が呼び止める。

 

「・・・真奥貞夫」

「はぁ?」

「真奥貞夫・・・それが、俺の人間界での名前だ」

「・・・ださ」

「ほっとけ!」

 ふりかえって睨む恵美。

「・・・遊佐恵美」

「おまえもまんまじゃねえか」

「うるさい!死ね魔王!」

「・・・それと、俺、いま真選組にお世話になっているから」

 それには、半ば空気と化していた銀時が反応する。

「真選組?やっぱその制服、多串クンのとこのだったか」

「・・・だれスか、それ」

「・・・はあ、いくわよ銀時」

 お、おう、と慌てて恵美を追う銀時。二人を視線で追っていた真奥は、自分がまだ巡回中だったのを思い出した。

 

 

 万事屋へと帰る途中、恵美と銀時は重ぐるしい空気のまま、肩をならべて歩いていた。

「・・・」

「・・・」

「・・・せっかくの外出だったのにな」

「・・・」

(オイィィ、なんか言え!!なんか言えよぉぉ!?俺耐えられねーよこの空気!どうしてくれんだよ!?これはツンか、それともどっかの大臣か!?)

「・・・」

 なおも黙り込む恵美に、思わず銀時はため息をつく。

「あ、そういや、なんでおまえ、アイツが魔王って分かったんだ?角とか獣みたいな足とか、もっと人外みたいな外見してるっていってたじゃねえか」

「・・・魔力」

 ん?と聞き返すと、ポツリ、と話し出した。

「魔力を少し感じたの。いままでこの世界で、感じたことは無かったから・・・」

「ふぅん、そうか」

「・・・」

(んでまたダンマリかよ!?)

 

 

***

 

―それで、どうだ?魔力がみたされる感触は?

 

―ふふ・・・わざわざ聞くなよ・・・いま、サイッコーに気分よくなるんだからさ!!

 

―こりゃ失礼・・・計画も大分進んできたことだし。

 

―あとは勇者と魔王を殺せばいいんだろ?

 

―その通りだ。頼むぞ、そのためにおまえを生かしたんだからな・・・わしの約束も、忘れるなよ?

 

―あはは、ボクにまかせろって!

 

―二人とも、なにごちゃごちゃ言ってるッスかー?もうすぐ会議が始まるッスよー?

 

―えー?まってよ、まだピカチュウ出てきてないんだからさー

 

―・・・は?

 

―いやー地味にでてこないよねー、出現率さんかくだし。一時間やってもまだでてこないよー

 

―・・・キサマ・・・ルシフェルゥゥ!!ワシと話していたときもずっとかあ!?

 

―イタッ、ちょっと雰囲気台無しじゃん!?空気よんでよ!?

 

―コッチの台詞じゃ!!

 

―あー・・・もうなんでもいいンで、はやく来てください。

 

***

 

「ただいま~」

「お帰りなさいませ、魔王様。どうぞ、これを」

「おお、わりぃな芦屋」

 魔王と呼ばれた青年、真奥は、芦屋という若干細身の清潔そうな男から熱いおしぼりを受け取る。

「あーやっぱ気持ちいいぜ!さすが悪魔大元帥!」

「お褒めいただき、恐縮です」

 読者諸君もお気づきのとおり、魔王と住む男といったらもうアレしかいないわけで、つまり芦屋四郎という男は、魔界の魔王軍における、悪魔大元帥アルシエルなのである。悪魔。

「ささ、こちらへどうぞ、すでに夕飯の準備は整っています」

「お、今日はハンバーグじゃねぇか!!」

「アルシエル、腕によりをかけておつくりしました!」

 地球での職:主夫。

 いくらエンテ・イスラをこの手に納めんとした悪魔でも、魔力が無ければどうにもならず、今は真奥が真選組一番隊隊員、芦屋が主夫の傍ら、真選組の事務員として働いているのであった。

「まったく、入隊して一週間の研修期間、食べるものといったら・・・」

「それはそれは酷いものでしたね・・・パン屋の前のパンの耳とか、店の裏の残飯とか・・・うぅ、申し訳ございません、魔王さま・・・」

「泣くな、アルシエル!ほら、今はこうして普通の人間よりいい暮らしを実現しているではないか!」

「魔王さま・・・!」

 グッと親指を突き出す真奥と、顔が太陽のように輝く芦屋。重ねていうが、彼らはいまでも一応、魔王と悪魔大元帥である。まあ、通常なら半年はかかる研修期間を一週間に縮めたのは、ある意味魔王らしい。

 箸を進めながら、真奥は、言いづらそうに切り出す。

「あのさ、芦屋・・・、今日エミリアに、会った」

「!!」

 箸をガタッと落とす芦屋。目には激しい動揺がうつっている。もしや、と予期していたことではあったが、まさか一ヶ月程度で起こってしまうとは。

「やっぱりあいつも聖法気が回復していないみたいだった。それと、人間の男が同伴していた」

「・・・そうですか」

 二人ともくちをつぐみ、食卓を重い空気が支配する。

「だ、だが、俺は決めたのだ!」

「・・・魔王さま?」

 

「俺は・・・真選組隊士として出世し、幕府をのっとってこの地球を支配すると!」

 

 立ち上がり、宣言する真奥。それを見上げる芦屋。

「魔王さま・・・」

 

「テーブルに足をかけないでください、料理がこぼれたら大変です」

「・・・わりぃ」

 ぶつぶつ「せっかくの見せ場が・・・」とぼやきながらも、しぶしぶ座る真奥。

「でも・・・そうですね。エミリアに屈する魔王さまではない」

 ふっと、穏やかに笑う芦屋。胸にてをあて、

「このアルシエル、いかなるときも魔王さまについて参ります・・・!」

「あ、芦屋・・・」

 そして男二人、感極まったようにしっかりと抱擁し、料理は冷めていった。

 

~~~

 

「ふむ、江戸のみならず地球と豪語したか・・・真選組とはいえ、この男、われら攘夷志士にとってつかえるかもしれないな。なあ、エリザベス!」

『そうですね』

 

***

 

真夜中。万事屋にて。

「けっきょく恵美の姉御、部屋から出てこなかったアル・・・」

「しかたねーだろ、いきなり因縁のヤローと出くわしたんだからよ。そりゃおもうこともあるだろ」

「・・・さみしいアル」

 帰ってからの恵美は片付けもそこそこに、水を一杯飲んだだけで部屋に引っ込んでしまった。ふすまだから無理やり押し入ることもできたが、銀時はそうはしなかった(神楽はしかねないほど心配していたが)。

 彼には、恵美の気持ちが痛いほどよく分かるからだ。

「あいつ、父親亡くしてるんだもんなあ・・・」

 大切な師をなくした銀時には、自分のことのように感じられる。銀時が、他の人よりも恵美に甘い理由も、そこに起因していた。

 大切な人をなくし、心に穴が空いたかのような、そんな虚しい気持ち。もし銀時が恵美の立場なら、迷わずあいつを斬っていただろう。恵美の場合は確信が持てなかった、というのもあるだろうが。

「つれぇよな・・・」

「鼻くそホジリながら言われても説得力ないアル」

「るせーよ、んなずっとシリアス展開やってられっか」

 ふわぁ、とあくびをする銀時。

「んじゃ、寝るから。オメーも早く寝ろよ」

「あ、待つネ銀ちゃん!」

 ん?と立ちどまる銀時に、思い出したように話す神楽。

「サドとマヨがここに来てたけど、なんかこの辺で強盗とかあるらしいネ。なんか犯人みつけたらボコボコにしろゆーことアル」

「・・・そうか」

 そっけない反応を残し、寝室に消える。その背中を見つめていた神楽は、ソファの上で膝をかかえ、呟く。

「・・・銀ちゃんの、バカ」

 

 

 深夜三時頃、神楽も布団に入り、草木も寝静まった頃。

 万事屋の玄関まえに、一人の影。

「・・・ごめん、神楽ちゃん、新八・・・銀時」

 そういって、階段を降り、歌舞伎町の闇に消えてった。

 




 ああ、ギャグが上手く書けない・・・。
 そうそう、感想ありがとうございます!投稿直後に二件もきたなんて、とても嬉しいです!いつでもお待ちしております!
 けっこう展開早いような気も・・・。
 それでは!
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