「な、なんだ!?」
突如として襲撃、今度はホンモノの殺意。動揺した脳が一瞬にして冷える。
(これは・・・魔力の感触、それもかなり高純度だ)
恵美もすぐに気づいたようで、真奥と目線をかわす。
猿飛はまあどうでもいいにしろ、第三者の攻撃があったのなら、答えは一つ。一時休戦。
真奥と、猿飛を掴もうとして逆に手を払いのけられた恵美は、全速力で逃げ出す。
次の瞬間、銃弾、否、魔力弾が絨毯爆撃並みに展開された。
「はぁ、なんなのコレ!?誰のしわざ!?」
「おちついて猿飛さん、ここはひとまず、」
「・・分かってるわよ、舐めないで!」
そういうが早いが、猿飛は慣れた手つきで十数個の玉を取り出し、地面に叩きつける。直後、大量の煙が噴出し、三人の姿は掻き消え、霧散するころには、影も形も消えうせた後だった。
チ、と空中《・・》にいた人物は舌打ちをし、魔方陣を展開させて、その場から消えた。
「・・こ、ここまで逃げれば大丈夫よ・・」
「・・・驚いたな、まさかアンタがそんなに戦闘慣れしてたなんて」
「当然。『始末屋さっちゃん』といえばここらじゃ有名よ?」
わざとっぽくウインクする猿飛。何か琴線に触れるところでもあったのか、恵美の顔は苦さで満たされていた。
「あらぁ~、なに?私の魅力に嫉妬かしら?顔?足?それとも・・・むね?」
「!ちょ、胸はかんけいないでしょ!?」
「図星?」
「・・・」
胸に手を当てて羞恥に顔を赤くする恵美を、勝ち誇ったように手を口元に寄せ、高笑いする猿飛。真奥はひどく微妙な、何と声をかけるべきか迷う。しかし恵美は深くため息をつき、
「で、どうすんのあんた達?このままビルの影にいても見つかる可能性が高いわよ?」
「まあ、俺は自宅この辺だし、大丈夫だけどな。猿飛さんは?」
「ん、私もこの辺よ。それじゃ失礼するわね。ま、今回は邪魔も入ったことだから見逃すけど・・・いい、またどこから狙撃されるか分かったもんじゃないんだから、気をつけなさいよ?」
「それはこっちのせりふよ。せいぜい屋根から落っこちないようにしなさい」
「ふふ、忍者にそんな忠告は無用よ?」
そういって壁を垂直《・・》に駆け上り、夜の闇へと消え行く猿飛。それを呆れながら見つめる二人。
「・・・この世界にも、化け物っているんだな・・・」
「そうね・・・ちょっとアレは苦労するわ・・・」
***
「それで帰ろうとしたはいいのだけど、わたしったら銀さんの寝顔を見届けるのをすっかり忘れてて。それで屋根の上から入ろうとしたらテンション上がって、滑ってああなりました」
「「「・・・」」」
「「「長いわ!!」」」
まずはそれだ。なんで二話分跨いでこのオチなのだ。
「それと!その傷と襲撃は関係ないんかい!!」
「恵美の姉御は浮気なんてしないアル!!純情娘ネ!」
「いつ俺がオマエの所有物になったぁぁ!!」
こめかみをおさえて苦悶する三人。うん、つっこみどころはまだあるが、はっきりいって下らない。三人の脳内感想は、それに尽きた。
「それじゃ、私は屋根裏に戻るわね」
「いやもう家に帰れ役立たず」
***
チュンチュン、チュン・・・
うららかな、朝日差し込む部屋の中。
「う、うぅん・・・」
まだ眠気が残る目をこすり、ゆっくりと体を起こす。関節がごきゅごきゅと鳴り、思わず声を漏らす。
「さて、今日もいちにち・・・」
はた、と気づく。ここは、どこだ?
恵美、遊佐恵美はまだ靄のかかる頭が鳴らす違和感に、首をかしげる。
(えっと、昨日は何をしていたんだっけ・・・)
・・・
・・・
・・・・・・・・・・・・・・、
「うん、まあいっか♪」
結論、そうだ、二度寝しよう。つかの間の快楽を優先する恵美。
ぐるん、と布団に再度もぐりこむ。
「うにゃ~ん♪」
今までバイト続きで朝は早かったし、あの腐れ外道悪魔にあってイライラしてたし、別に罪はないわよね、神様?
ここで改めていわせてもらおう、エミリアは人間と天使のハーフだということを。
(あ~あったかい!ふふふ)
ついニコニコと正面の頭を見つめる。見つめた。見つめた?
・・・・
「・・・は、は、はぁぁぁぁ!!!」
がばっと飛び起きる恵美。
(え、ウソ!?記憶ないんだけど!?もしかしてわ、私・・・イッセン、コエタ?・・・・・・・きゃあぁぁ!!こ、これは何かの間違いよ!!こんな見ず知らずの男と、い、一夜をすごしたなんて・・・勇者の恥よ!!でも、お酒とか飲んだっけ・・・?)
「う~ん・・・ふあぁ」
男の起床に、思わず身をビクッ!と震わす恵美。
そうしてこちらに顔を向けたのは。
「あーよく寝た・・・ん?ああ、恵美おはよう、起きてたのか」
「・・・・きゃあぁぁぁ」
「ぶごふぁ!?」
あの、憎き闇のクズ、だった。
***
―いよいよ、じゃな。
―ええ。そろそろ計画は大詰めを迎えようとしています。みなさん、気を引き締めていきましょう。そう・・・すべては○○さまのために!!
―雰囲気台無しっスよ○○変態・・・伏字とか。
―あなたもしているではありませんか!!・・・ごほん、こんな安い挑発にはのりませんよ、なんってったってーちーしょーう!ですからね。
―あれっスね、×智将→○恥将 っすよね?あとキョンキョンの真似ウザイッス。
―・・・アバズレビッチさん、ちょっとこちらに来てくださいませんか?
―だれが人魚姫じゃゴラァ!!
―ちょっとやめてよ二人とも、どんだけしゃべくってんの?僕の出番が削られたらどうすんの?まあ、若干メンドイけど
―ボコボコに痣を残して縛られている者のセリフではないでござるな
―ほら、出番とってんじゃん!!
―ルシフェル、貴様は少しは反省せんのか?昨日の抜け駆け、我らの協定に反するものじゃ。・・・の皆さんにそっぽむかれたら、貴様はどうすんじゃ?
―いいもん、ちょっと気になっただけだし。せっかく強盗とかで溜めた魔力なんか気にしてないからね!?ネットとゲームがあればいいもんネーだ。あ・・・もしかして。昨日さ、ハゲっていったの怒ってる?ねえ?
―よーし、まだまだお灸が必要か?堕天使クン?
―え、ちょ、やめてそれはガチめに・・・ね、オルバさん?ちょおおっと、まってぇぇ!!
―あーもう、しまらないっスねー・・・はぁ
***
ちっく、ちっく、ちっく、ちっく
時間だけが無造作に過ぎてゆく。ただ、彼らの間に流れる空気は、時間さえも歩みを止めるほど、暗く立ち込めていた。
なるほど、顔を真っ赤にした勇者と、正座をした真奥、後ろにおなじく、悪魔大元帥。納得できる、のか?
「どう考えても、理不尽だ・・・」
「うっさい死ねクズ」
「魔王さま・・・ここは辛抱です」
・・・拉致があかなそうである。
事の発端は、ご周知の通り。恵美が真奥を蹴り飛ばし、壁にぶつかった衝撃で芦屋が起床。更に悲鳴を上げた恵美がタンス《・・・》を投げつけ、ココにいたる。
「・・・まあ、せいぜい弁解は聞いてあげるわ。もしくは遺言」
「どうあがいてもバッドエンドじゃねえか!?」
「まあまあ、ここはクソ勇者の意向を」
「なんかいったアルシエル?」
「いえ、なにも。・・・それと、人間としての姓は芦屋だ、覚えておけ」
ギスギスしすぎである。まあ、深く因縁のある間柄ということだけは、分かっていただきたい。
「と、とにかく。あの猿飛ってやつが帰った後、お前が家に帰ろうとした時にさ」
「・・・えっと、なんだっけ」
「・・・道が分からないって。住所教えろとかほざいたんじゃねぇか」
「ああ、そうだったわね・・・え?」
本人もびっくり。
事の発端は、こうである。ちなみにPart2。
そもそも恵美の目的は魔王の監視。当初、彼女は真奧が不穏な動きをとり次第、斬り捨てる意向でいた。しかし、ターゲットに十分な討伐理由が見当たらず、おまけに逃走ゆえに万事屋の場所すら分からず。なくなく魔王に、命令?したわけである。
「え・・・きゃ、きゃあぁぁ!!」
「ま、まて!思い出すな良く分からんが」
「だまれぇ!!」
「あべしっ!!」
窓の外に吹っ飛ぶ真奥。もう、暴れん坊勇者である。
「ああ、魔王様!!おのれエミリア、この仇、このアルシエルが・・・!」
「いいから助けろ!!」
閑話休題。
「もう・・・聞かないわ。これだけ・・・なにも、なかったのよね?」
「へ?なにが」
「だからそのセ・・・っっ//な、なに言わせんのよ!!」
「魔王様・・・はぁ。いいかエミリア、くだらない心配だが、なにもなかった、とだけいっておこう。この私が証人だ。」
「・・・悪魔の証人って、スゴォォく嫌だけど、まあいいわ・・・」
事なきを得たようである。ちなみにくだらなくなんかない。乙女にとっては、大事なことなんだからねっ!!
「それで、どうしようかしら・・・」
「そういやおまえ、なんでホテルに泊まらなかったんだ?そのほうが何かと都合がいいだろうに」
「・・・」
ん?と怪しむ二人。なぜなら、恵美の顔がどんどん赤くなっていくからだ。またもや噴火か、と思わず身構える二人だが。
「・・・・いの」
「へ?」
「だ、だからその・・・ないの!!ないったらないの!!」
「え、あーそうか。財布でも落としたのか?」
それを聞いた恵美は。
グスッ。
「・・・え?」
「え、エミリア!?これはチャンスです魔王様!!この機を逃してはなりません!!」
「鬼か、お前!?ほら恵美、これで涙吹け・・・」
「うん・・・」
真奥が差し出したハンカチを、ぐしゃぐしゃになるまでチーンとかむ。目はもうすっかり、赤く充血している。
「わるかったな。それで、いったいどうしたんだ?」
いままでよりかなり優しく問いかける。恵美はまだグズグズとはなをすすっていたが、
「・・・ないのよ、ぞの・・・」
「・・・所持金、もうないのよ」
思わずポカーンと口をあける真奥と芦屋。だってそうだろう、あの高飛車な勇者さまの懐が、まさかのスカンピーだなんて。
「・・・ふ、フフフ・・・そうよね、馬鹿にしてるんでしょ?一文無しよ、ほんとにね。もう今月は食費と光熱費で家計を圧迫してるのよ・・・それで勝手にお金を持ち出すなんてありえないでしょ?あんたたちならやりそうだけどね。いいわー、どーせ真選組に所属はしているんでしょうから給料はあまるくらい持ってるんでしょ?こっちなんか私がバイトしてこんなもんよ、べつに嫌じゃないけどね。ハハハ、笑えるわ、冷蔵庫の中身がきゅうりと卵よ?どうしろと?どーせあんたたちは」
「ストップゥゥ!!それ以上はやめておけ!!頼む!!」
そういって目がもう明後日の方向を向いている恵美に何か握らす真奥。
「贅沢三昧・・・?え、これ?」
「べ、べつに同情とかじゃねーから・・・そう、そうだよこのまえの白髪の侍にわたしとけ!!助けてくれたお礼ってことで」
「・・・い、いいわよ、こんなの!?い、一万円とかふざけてるの!?」
「私としては一万円でそんな騒ぎ立てる貴様に哀れみをおぼえるよ・・・」
顔をまた真っ赤に茹で上がらす恵美に、どこか残念そうな表情を浮かべる芦屋。
「い、いらないわよこんな施しなんて!!」
「だから違うっつってんだろ!!だったら握り締めたその手はなせよ」
「これはその・・・返せっていっても返さないからね!?」
卑しいぞ、勇者。いや、うらむべくは万事屋の貧乏性か。
しばらくギッと睨みつける恵美だったが、突如たちあがり、
「とにかく、もう行くから。とりあえず感謝はするけど、ううんやっぱなし!あーもう!!とにかくじゃあね!!」
バタン、靴を引っつかみ、戸を閉めた。
訪れる、静寂。台風一過のような気分を味わう、悪魔二人だった。
ようやく五話目投稿・・・
うーむ、真奥、うらやまけしからんなぁ。
それはさておき、いよいよ次話から第一章【激動編】が始動いたします。乞うご期待ください!