空に雷鳴が立ち込め、みすぼらしい鳥が度々わめきながら空を縦断してゆく。
ここは、江戸から変わって、エンテ・イスラ。
エミリアなき、荒れた異世界である。
それも、西大陸の大法神教会 エミリアが所属している宗教組織である。ちなみにエミリアの聖剣のもととなる“進化の天銀”を貸し出したのはここである。もうとっくにエミリアと融合しているが。
「な、なんじゃと!?あやつが、まさか!?」
「は・・・既に私物はなく、教会所有の財宝も数個ですが横領されました」
「お、おのれぇ・・・大神官ともあろうものがぁぁ!!」
淡々と報告する伝令に怒りの矛先をむけんと、感情のまま手元のものを投げつける一人の大神官。仮にAとしておく。べ、べつに名前知らないとかじゃないんだからねっ!
「まあまあ、落ち着けといっても無駄じゃろうが、冷静になりんしゃい。いまここで怒鳴っても、」
「ちなみに元勇者パーティ所属のエメラダ・エテューヴァさまも行方不明だとか」
「なんじゃとぉぉぉ!!!エメたんがっ!!どこじゃあああ!!」
「俗にまみれすぎじゃと!?」
「・・・ヒュー(バタン)」
たちまち混乱の渦へと飲み込まれる。そんななか、ただ一人、手を組み、「クックック・・・」
と笑う者が。
「きさま、なんのつもりだレベリーズ!!」
呼ばれた最も若輩の男―セルヴァンテス・レベリーズは、口角をあげたまま、
「クク・・・いやね。なぜ皆さん焦っておられるのか疑問におもっていたんですよ・・・」
「なんだと!?」
「まあ、お待ちになってください・・・ほら、オルバ・メイヤーがいないといえば、彼はいったい今、なにをしているんでしょうねぇ・・・」
「それは、・・・し、しるか、おおよそ俗世の罪深き行為にでも・・・」
いまだ含みわらいをやめないレベリーズ。思うんだが名前が面倒だ。
「そうでしょう・・・なら、教会の失態は、きっと彼のご老人に全責任が集まるんでしょうねぇ・・・」
「!!」
思わず一同、目を見開く。この男、前代未聞の不祥事をクレーム処理に転用しようというのだ。驚かないほうがおかしい。が、一理ある、と思ったのだろう。
「なるほど・・・ならば、それで解決ということで・・・」
あっさり解決。これでいいのか、大神官よ。
「ああ、まだ終わってはいませんよご老人方・・・」
「・・・なにかあるのかね?」
Aが問い詰める。
「まだ・・・懸念すべき事案・・・“勇者エミリア・ユスティーナ”・・・彼女の存在ははっきり言って、」
「もう、用済みです」
放たれた、衝撃の一言。だが、残りのものがざわめくことはなく、「ああ・・・」「確かに・・・」と賛同を示す発言ばかりであった。
「彼女の死亡説《・・・》は、勝手にあの老人が吹聴してくれましたが・・・このままでは教会への尊敬はすべてかっさわれてしまう。そこで一つ、私のほうから提案が・・・」
そこでサッと手を振り、一人の人物を招き入れる。
「魔王と勇者の処断・・・その全責任を、一時彼女にゆだねることとしましょう」
「訂教審議会筆頭審問官・・・デスサイズ・ベルこと“クレスティア・ベル”・・・!」
***
権力者らのドロドロとした空気から一転、どんな異邦も受け入れる歌舞伎町。
いつもグダグダ、万事屋銀ちゃん。
「・・・なんですか、この紹介」
「どうでもいいアル。なーんか出番がひさびさな気がするネ」
はぁ、とため息をつく二人。
「チ、かぶった」
「・・・泣いていい?」
そこにガラガラ、と戸が開き、主である坂田銀時がようやっと帰宅した。
「よーうただいま、テメーら帰ってきたぞー」
「あれ銀さん、随分と早かったんですね」
「そうネ、『今日は出る日なんだよ』とかいってたのに、もう絞られたアルか?」
「バーカ、行こうとしたんだけどよ・・・」
そういってまた玄関にもどる銀時。
「その・・・財布、落としてな」
「「・・・は?」」」
「え、ちょっと待ってくださいよ、たしか行く前に二万いれてましたよね、恵美さんのへそくりですよ何考えてんですか!?」
「・・・(バキボキ)」
「ちょヤメテ!!神楽ちゃん顔がゲスイから!?無言で拳にぎらないでくれる!?」
「なにやってんのよ銀時、ほら。階段のとこにあったわよ」
「ウッソまじで!!サンキュー恵美!!ありがとな!!」
「ちょ・・・そんなストレートに・・・柄でもないじゃない///」
「さすが恵美の姉御アル!!」
「・・・」
恵美に群がる銀時と神楽を、呆然とみつめる新八。
(あれ・・・)
(え?僕がおかしいの?ちょ、つっこめるものもつっこめないんだけど!?まあ、聞くけど)
「あのーえみさーん」
ん、と新八に視線をむける恵美。
「あの・・・いままでどこいってたんですか」
「「「・・・・(ハッ)」」」
「いや今気づいたみたいな反応おかしいだろ!?特におまえらふたり!!」
***
「・・・ええとつまり、恵美さんはいなくなったのは魔王をストーカーするためだったと。家出はするつもりはなかった、ということですね?」
「あねごぉ~、ほんとに心配したアルよ!もしエンテイスラに帰ったかと思ったネ・・・」
「その・・・ごめんなさい。どうしても、迷惑はかけられないと思って・・・」
そういって俯く恵美。その様子から、彼女が本気で反省しているのが分かる。
「たくよ・・・こちとら昨日一日、えっちらおっちら走っていたんだぞ?まあ、戻ってきたならいいけどよ」
「・・・」
「俺らは万事屋だろ?だからよ・・・遠慮せず頼れよ。一人で思いつめんな。テメーは契約不履行で裁判所送られたいのか?」
頭をボリボリかきながら、銀時がぶっきらぼうに言い放つ。だが、そこに彼なりのやさしさがあることを、恵美は自然と感じ取っていた。
「・・・ほんと、そうよね・・・」
誰に聞こえるかもわからぬ、小さなつぶやきを漏らし、ゆっくりと顔を上げる。
「ごめん。いや、頼るときはちゃんと頼るけど・・・今回のことはしっかり自分で折り合いをつけたいの。だから、」
「いいって、わかってるよ」
恵美の顔に指を突き出し、ニヤリと笑う銀時。
「そうだねー、巷で流行りのフルーツクレープおごってくれたらかんがえなくもないかなー、神楽くん?」
「そうネー、私も満漢全席で手をうつアール」
「それはさすがにひどすぎでは・・・恵美さん、いつでも僕たちはあなたの力になりますからね!」
「プッ、むりやりかっこつけたアル。あーヨロシヨロシ」
「ちょっとくらいいいじゃないか、今まで相づちばっかりだったんだから!!」
あきもせず、言い争いを始めるその姿に、思わず苦笑する恵美。
だけど、その心中は・・・
『あーもしもーし。聞こえてるー?』
突如聞こえてきた。馬鹿にしたように間抜けな声。とっさに四人ともバッとあたりを見回す。
「あ、銀ちゃん!テレビネ!」
電源の消えていたテレビ。なぜか勝手に起動し、砂嵐やノイズの混じった雑な電波を受信していた。
「なんだ、また呪いのDVDとかそんなオチか?」
「いや、どうも違うみたいですよ」
新八の言うとおり、徐々に画面に映ってきたのは、血みどろの首つり天使などではなく。
紫の髪、耳にピアスをした、どこか少年みたいな面影が見える顔。
「え・・・え!?」
「!知ってるアルか!?」
「・・・ウソ・・・なんで・・・?確かに死んだ、はずじゃ・・・」
悪魔大元帥ルシフェル。西大陸侵略の指揮をとっていた堕天使であり、恵美がエンテ・イスラに名を広める要因となったものだ。
なおも、音声は続いていく。
『いやー電波ジャックも楽じゃなくてねー。もう一週間かかったかな?』
『それはあなたがゲームばかりしていたからでしょう?』
『うるさいなー武市変平太。まあいいや、いいですかみなさーん。僕らがいるのはターミナル屋上でーす。ここまで言えば分かるよね?』
『ターミナルの支配権は、いまやうちら鬼兵隊のものってことっスよ!!人質もいるっス!!』
『そーゆーこと。ついでに僕らも、ね。えーと今何時?あ、午前11時か。じゃあ午後三時に江戸全土に絨毯爆撃するから』
『適当ですねぇ・・・ざっくばらんに言えば、そういうことです。もし止めたくば、どうぞご自由に。我々はターミナルにてお待ちしておりますので・・・』
『どーせどいつもこいつも逃げ惑うだけッスよ!』
『分かった?もういいよね、ボク、コーラ飲みたい』
ピピピ、ガガ・・・・ブチッ。
理不尽でふざけた犯行声明は、唐突に終わりを告げた。
「・・・え、なに?急に何言ってんの?ふざけてるんだよね?なに?高杉のヤロウ、ついに妄想癖でも発症したの?ああ、もとからか。そうだな、今度お見舞いにでも」
「銀さん、現実逃避はだめですよ!!」
「つーか誰アルか、あの駄ニート」
「・・・ルシフェル。悪魔大元帥の一人よ」
「「「!!!」」」
恵美の言葉に少なからず動揺する三人。もしそれが本当なら、今回の事件は、エンテ・イスラがらみのものとなる。
「もしかして・・・魔王のやつ・・・やっぱり・・・!!」
「おい」
「あの偽善者が、今すぐ化けの皮はいで晒し首にしてやる、ええそうよ、骨の髄までめったうちにして」
「落ちつけ恵美!!」
ビクッと肩を震わせる恵美。それほどまでに、銀時の声に凄みがあった。
「まだアイツがらみかなんて分からねーだろ、今重要なことはなんだ?」
「・・・ごめん、銀時」
自分自身に驚きを隠せないでいるのだろう、腕をグッと抱きしめて、そのままへたり込んでしまった。
万事屋に、気まずい空気が流れていく。
うつむく三人を静かに見つめていた銀時。壁に立てかけていた木刀を腰にさし、そっと玄関のドアを開けた。
***
あのふざけた放送により、江戸中がパニックになって、数分後。
「局長、やはりターミナルの上に鬼兵隊の戦艦が!!」
「指名手配書と人相が一致しました、間違いありません!」
「ようし分かった。・・・全隊員に告ぐ!!上層部からの命令はまだ来ていない!しかしこの未曽有の危機、われら真選組が動かずして存在意義はない!!今から三十分以内に準備しろ、これは・・・局長命令だぁぁ!!」
「「「おおお!!」」」
局長 真選組局長、近藤勲のただならぬ士気にあてられ、屯所内の温度が一気に高騰した。各々が銃を、バズーカを、アイマスクを、そして・・・刀を掴み、疾走する。
一番隊隊員である、真奧も例外ではない。
「よっし、じゃあおれも!」
「おい真奧、ちょっといいか」
ズコッ、と出鼻をくじかれ、前につんのめる。
「てて・・・なんですか、土方副隊長?」
「だから土方さんでいいっていってんだろが。・・・いや、用があるんでな。ついてこい」
そう言い、有無を言わさぬ調子で奥へと歩いていく。
「・・・?」
首をかしげていた真奧だったが、ハッと意識をとりもどし、急いで後を追った。
通されたのは、応接間としてよくつかわれる和室であった。二人とも、向かいあうかたちで畳に腰を下ろす。
「時間のない中、わるいな」
「い、いえお構いなく」
土方が柄にもなくストレートに謝罪する姿に、真奧はすこし違和感を覚える。が、深く考える前に、土方が言葉を投げかけてきた。
「お前が真選組に所属してから一カ月になるわけだが・・・今回は相当な山場だな」
「・・・?はい、そうですが・・・」
いよいよもって意図が読めない。土方の思惑が感じ取れないことに、ただならぬ不安を覚える。
「しかし・・・オマエが自分を魔王だと名乗った時は驚いた・・・思わず刀抜きそうになったぜ」
これには、さすがに苦笑するしかない。必死に説明するも全く理解してもらえず、実際に牢獄OR病院送りにされるところだったのだ。まあ、近藤の鶴の一声で何とか納得してくれ、おまけに衣食住と仕事まで紹介してくれたのだから、近藤には感謝しても感謝しきれない。まあ、素行は・・・アレなのだが。すでにマッパは六回目撃してしまっている。どんな状況だ。
「はなしがそれたが・・・あの紫の髪の野郎、アレ、お前知っているんだろ?」
「っ!!」
少し過去を思い出していたときに言われ、驚愕のあまり飛び上がってしまった。
「・・はー、はー、ちょ、驚かさないでくださいよ・・・」
「図星か」
少しは意に介してください、鬼副長。
ぐっと飲み込む真奧。
「まあ、おまえを信用していないわけじゃない・・・あの犯行声明に一番動揺していたからな」
「・・・」
「おまえはオレら真選組の隊員・・・ここからは生半可じゃ通用しない。覚悟決めろよ、真奧」
「・・・はいっ!!」
土方の強く、ギラギラした目を真っ向から受け、力強く、確固たる意志をもって答える。
「よし・・・それじゃ、オマエは今から“魔王”ではなく“真奧”として行動する。いいな?」
・・・そうか、と突如として、真奧は土方の思惑を察する。
彼の立場。エンテ・イスラのことを知っているのは近藤、土方、山崎、あとどこかから聞きつけた沖田しか知らない。だから隊の中で気まずくなることはあり得ないのだが、だからこそ。土方は真奧の意思をはっきり確認したかったのだ。戦場で、一分の迷いも生まないために。
「土方さん・・・ありがとうございます」
「フン・・・」
対応はそっけないものの、表情はまんざらでもない様子である。
「さて、それじゃ」
「おお、こんなとこにいたのかサダオ、それにトシ!!丁度いい、話が」
「近藤さん・・・もう言ったぜ」
「え?マジでぇー?」
「土方さん、なーにサボってやがんですかい?法度違反でさぁ」
「オメーに言われたかないわ総浯ぉぉ!!」
なにやら騒がしくなってきたが、真奧は土方の言葉をもう一度思い出す。
嬉しかった。ただ、その気遣いが。
改めて、人間とはいえど、彼らへの尊敬の念がこみ上げてくる。
真奧は腰に下げた刀を、ギュッと握った。
***
『ほら、もうすぐですよ~』
『ほ。ほんとか・・・ウプ』
『ん~、もうしゃべらないほうが~、いいと思いますよ~?』
『わるい・・・そういや』
『ん?なんですか~?』
『エミリア・・・あいつ、大丈夫なのか?』
『だから言っているじゃないですか~、あのエミリアが死ぬわけないって~』
『だ、だよな・・・くっそオルバのやつ!!あんな出まかせを・・ウプ、』
『・・・あと少しですから、吐かないでくださいね~?』
***
そして、午後一時。
それぞれの思惑が交錯する。
はたして、恵美・真奧・銀時らがつかむのは、希望か
それとも絶望か
街のため、欲のため、己のため、そして
大切な人のため
命がけの決戦が、いま、幕を開ける!!
はたして、彼らの運命は!?
「なん、で・・・あなたが・・・?」
「ハハハ素晴らしい!!その絶望 、僕に、ささげてよ」
「ちぃ。クソが!!」
「あ、ごめん聞いてなかった」
「お妙さん・・・見ててください、このこんど」
「ルシフェルよ。魔王として・・・真選組、一番隊副隊長として、貴様を処罰する」
「所詮はこのていどッスかあ!?」
「すべては・・・わしの大いなる野望のために!!」
「かましてやれ、恵美、真奧・・・ぶん殴ってこい!!」
「いや、おまえも行けよ!?」
乞うご期待!!
はい、タイトルの通り、争乱編への導入回でした。なにげに恵美の家出が軽くなっていますが・・・。
あと、最後の予告(?)っぽいもの。あえて言おう。ノリ、だと。
ほんとにセリフが出てくるかは私にもわかりません。雰囲気だけです!
ひどいものですが・・・さて、次回からは多大に戦闘です!!戦闘シーンです!!拙い文才を駆使して頑張ります!!あ、いやがんばんのは恵美とか銀時ですが(笑)