はたらく魔王さま!~IN EDO~    作:ジャンヌ

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第六話 そして事態は急変する。

 空に雷鳴が立ち込め、みすぼらしい鳥が度々わめきながら空を縦断してゆく。

 ここは、江戸から変わって、エンテ・イスラ。

 エミリアなき、荒れた異世界である。

 それも、西大陸の大法神教会  エミリアが所属している宗教組織である。ちなみにエミリアの聖剣のもととなる“進化の天銀”を貸し出したのはここである。もうとっくにエミリアと融合しているが。

「な、なんじゃと!?あやつが、まさか!?」

「は・・・既に私物はなく、教会所有の財宝も数個ですが横領されました」

「お、おのれぇ・・・大神官ともあろうものがぁぁ!!」

 淡々と報告する伝令に怒りの矛先をむけんと、感情のまま手元のものを投げつける一人の大神官。仮にAとしておく。べ、べつに名前知らないとかじゃないんだからねっ!

「まあまあ、落ち着けといっても無駄じゃろうが、冷静になりんしゃい。いまここで怒鳴っても、」

「ちなみに元勇者パーティ所属のエメラダ・エテューヴァさまも行方不明だとか」

「なんじゃとぉぉぉ!!!エメたんがっ!!どこじゃあああ!!」

「俗にまみれすぎじゃと!?」

「・・・ヒュー(バタン)」

 たちまち混乱の渦へと飲み込まれる。そんななか、ただ一人、手を組み、「クックック・・・」

と笑う者が。

「きさま、なんのつもりだレベリーズ!!」

 呼ばれた最も若輩の男―セルヴァンテス・レベリーズは、口角をあげたまま、

「クク・・・いやね。なぜ皆さん焦っておられるのか疑問におもっていたんですよ・・・」

「なんだと!?」

「まあ、お待ちになってください・・・ほら、オルバ・メイヤーがいないといえば、彼はいったい今、なにをしているんでしょうねぇ・・・」

「それは、・・・し、しるか、おおよそ俗世の罪深き行為にでも・・・」

 いまだ含みわらいをやめないレベリーズ。思うんだが名前が面倒だ。

「そうでしょう・・・なら、教会の失態は、きっと彼のご老人に全責任が集まるんでしょうねぇ・・・」

「!!」

 思わず一同、目を見開く。この男、前代未聞の不祥事をクレーム処理に転用しようというのだ。驚かないほうがおかしい。が、一理ある、と思ったのだろう。

「なるほど・・・ならば、それで解決ということで・・・」

 あっさり解決。これでいいのか、大神官よ。

「ああ、まだ終わってはいませんよご老人方・・・」

「・・・なにかあるのかね?」

 Aが問い詰める。

「まだ・・・懸念すべき事案・・・“勇者エミリア・ユスティーナ”・・・彼女の存在ははっきり言って、」

 

「もう、用済みです」

 

 放たれた、衝撃の一言。だが、残りのものがざわめくことはなく、「ああ・・・」「確かに・・・」と賛同を示す発言ばかりであった。

「彼女の死亡説《・・・》は、勝手にあの老人が吹聴してくれましたが・・・このままでは教会への尊敬はすべてかっさわれてしまう。そこで一つ、私のほうから提案が・・・」

 そこでサッと手を振り、一人の人物を招き入れる。

「魔王と勇者の処断・・・その全責任を、一時彼女にゆだねることとしましょう」

 

「訂教審議会筆頭審問官・・・デスサイズ・ベルこと“クレスティア・ベル”・・・!」

 

 

 

 

***

 

 

 権力者らのドロドロとした空気から一転、どんな異邦も受け入れる歌舞伎町。

 いつもグダグダ、万事屋銀ちゃん。

「・・・なんですか、この紹介」

「どうでもいいアル。なーんか出番がひさびさな気がするネ」

 はぁ、とため息をつく二人。

「チ、かぶった」

「・・・泣いていい?」

 そこにガラガラ、と戸が開き、主である坂田銀時がようやっと帰宅した。

「よーうただいま、テメーら帰ってきたぞー」

「あれ銀さん、随分と早かったんですね」

「そうネ、『今日は出る日なんだよ』とかいってたのに、もう絞られたアルか?」

「バーカ、行こうとしたんだけどよ・・・」

 そういってまた玄関にもどる銀時。

「その・・・財布、落としてな」

 

「「・・・は?」」」

 

「え、ちょっと待ってくださいよ、たしか行く前に二万いれてましたよね、恵美さんのへそくりですよ何考えてんですか!?」

「・・・(バキボキ)」

「ちょヤメテ!!神楽ちゃん顔がゲスイから!?無言で拳にぎらないでくれる!?」

「なにやってんのよ銀時、ほら。階段のとこにあったわよ」

「ウッソまじで!!サンキュー恵美!!ありがとな!!」

「ちょ・・・そんなストレートに・・・柄でもないじゃない///」

「さすが恵美の姉御アル!!」

「・・・」

 恵美に群がる銀時と神楽を、呆然とみつめる新八。

(あれ・・・)

(え?僕がおかしいの?ちょ、つっこめるものもつっこめないんだけど!?まあ、聞くけど)

「あのーえみさーん」

 ん、と新八に視線をむける恵美。

「あの・・・いままでどこいってたんですか」

「「「・・・・(ハッ)」」」

「いや今気づいたみたいな反応おかしいだろ!?特におまえらふたり!!」

 

***

 

「・・・ええとつまり、恵美さんはいなくなったのは魔王をストーカーするためだったと。家出はするつもりはなかった、ということですね?」

「あねごぉ~、ほんとに心配したアルよ!もしエンテイスラに帰ったかと思ったネ・・・」

「その・・・ごめんなさい。どうしても、迷惑はかけられないと思って・・・」

 そういって俯く恵美。その様子から、彼女が本気で反省しているのが分かる。

「たくよ・・・こちとら昨日一日、えっちらおっちら走っていたんだぞ?まあ、戻ってきたならいいけどよ」

「・・・」

「俺らは万事屋だろ?だからよ・・・遠慮せず頼れよ。一人で思いつめんな。テメーは契約不履行で裁判所送られたいのか?」

 頭をボリボリかきながら、銀時がぶっきらぼうに言い放つ。だが、そこに彼なりのやさしさがあることを、恵美は自然と感じ取っていた。

「・・・ほんと、そうよね・・・」

 誰に聞こえるかもわからぬ、小さなつぶやきを漏らし、ゆっくりと顔を上げる。

「ごめん。いや、頼るときはちゃんと頼るけど・・・今回のことはしっかり自分で折り合いをつけたいの。だから、」

「いいって、わかってるよ」

 恵美の顔に指を突き出し、ニヤリと笑う銀時。

「そうだねー、巷で流行りのフルーツクレープおごってくれたらかんがえなくもないかなー、神楽くん?」

「そうネー、私も満漢全席で手をうつアール」

「それはさすがにひどすぎでは・・・恵美さん、いつでも僕たちはあなたの力になりますからね!」

「プッ、むりやりかっこつけたアル。あーヨロシヨロシ」

「ちょっとくらいいいじゃないか、今まで相づちばっかりだったんだから!!」

 あきもせず、言い争いを始めるその姿に、思わず苦笑する恵美。

 だけど、その心中は・・・

 

『あーもしもーし。聞こえてるー?』

 

 突如聞こえてきた。馬鹿にしたように間抜けな声。とっさに四人ともバッとあたりを見回す。

「あ、銀ちゃん!テレビネ!」

 電源の消えていたテレビ。なぜか勝手に起動し、砂嵐やノイズの混じった雑な電波を受信していた。

「なんだ、また呪いのDVDとかそんなオチか?」

「いや、どうも違うみたいですよ」

 新八の言うとおり、徐々に画面に映ってきたのは、血みどろの首つり天使などではなく。

 紫の髪、耳にピアスをした、どこか少年みたいな面影が見える顔。

「え・・・え!?」

「!知ってるアルか!?」

「・・・ウソ・・・なんで・・・?確かに死んだ、はずじゃ・・・」

 

 悪魔大元帥ルシフェル。西大陸侵略の指揮をとっていた堕天使であり、恵美がエンテ・イスラに名を広める要因となったものだ。

 

なおも、音声は続いていく。

『いやー電波ジャックも楽じゃなくてねー。もう一週間かかったかな?』

『それはあなたがゲームばかりしていたからでしょう?』

『うるさいなー武市変平太。まあいいや、いいですかみなさーん。僕らがいるのはターミナル屋上でーす。ここまで言えば分かるよね?』

『ターミナルの支配権は、いまやうちら鬼兵隊のものってことっスよ!!人質もいるっス!!』

『そーゆーこと。ついでに僕らも、ね。えーと今何時?あ、午前11時か。じゃあ午後三時に江戸全土に絨毯爆撃するから』

『適当ですねぇ・・・ざっくばらんに言えば、そういうことです。もし止めたくば、どうぞご自由に。我々はターミナルにてお待ちしておりますので・・・』

『どーせどいつもこいつも逃げ惑うだけッスよ!』

『分かった?もういいよね、ボク、コーラ飲みたい』

 ピピピ、ガガ・・・・ブチッ。

 理不尽でふざけた犯行声明は、唐突に終わりを告げた。

「・・・え、なに?急に何言ってんの?ふざけてるんだよね?なに?高杉のヤロウ、ついに妄想癖でも発症したの?ああ、もとからか。そうだな、今度お見舞いにでも」

「銀さん、現実逃避はだめですよ!!」

「つーか誰アルか、あの駄ニート」

「・・・ルシフェル。悪魔大元帥の一人よ」

「「「!!!」」」

 恵美の言葉に少なからず動揺する三人。もしそれが本当なら、今回の事件は、エンテ・イスラがらみのものとなる。

「もしかして・・・魔王のやつ・・・やっぱり・・・!!」

「おい」

「あの偽善者が、今すぐ化けの皮はいで晒し首にしてやる、ええそうよ、骨の髄までめったうちにして」

「落ちつけ恵美!!」

 ビクッと肩を震わせる恵美。それほどまでに、銀時の声に凄みがあった。

「まだアイツがらみかなんて分からねーだろ、今重要なことはなんだ?」

「・・・ごめん、銀時」

 自分自身に驚きを隠せないでいるのだろう、腕をグッと抱きしめて、そのままへたり込んでしまった。

 万事屋に、気まずい空気が流れていく。

 うつむく三人を静かに見つめていた銀時。壁に立てかけていた木刀を腰にさし、そっと玄関のドアを開けた。

 

***

 

 あのふざけた放送により、江戸中がパニックになって、数分後。

「局長、やはりターミナルの上に鬼兵隊の戦艦が!!」

「指名手配書と人相が一致しました、間違いありません!」

「ようし分かった。・・・全隊員に告ぐ!!上層部からの命令はまだ来ていない!しかしこの未曽有の危機、われら真選組が動かずして存在意義はない!!今から三十分以内に準備しろ、これは・・・局長命令だぁぁ!!」

「「「おおお!!」」」

 局長  真選組局長、近藤勲のただならぬ士気にあてられ、屯所内の温度が一気に高騰した。各々が銃を、バズーカを、アイマスクを、そして・・・刀を掴み、疾走する。

 一番隊隊員である、真奧も例外ではない。

「よっし、じゃあおれも!」

「おい真奧、ちょっといいか」

 ズコッ、と出鼻をくじかれ、前につんのめる。

「てて・・・なんですか、土方副隊長?」

「だから土方さんでいいっていってんだろが。・・・いや、用があるんでな。ついてこい」

 そう言い、有無を言わさぬ調子で奥へと歩いていく。

「・・・?」

 首をかしげていた真奧だったが、ハッと意識をとりもどし、急いで後を追った。

 

 

 通されたのは、応接間としてよくつかわれる和室であった。二人とも、向かいあうかたちで畳に腰を下ろす。

「時間のない中、わるいな」

「い、いえお構いなく」

 土方が柄にもなくストレートに謝罪する姿に、真奧はすこし違和感を覚える。が、深く考える前に、土方が言葉を投げかけてきた。

「お前が真選組に所属してから一カ月になるわけだが・・・今回は相当な山場だな」

「・・・?はい、そうですが・・・」

 いよいよもって意図が読めない。土方の思惑が感じ取れないことに、ただならぬ不安を覚える。

「しかし・・・オマエが自分を魔王だと名乗った時は驚いた・・・思わず刀抜きそうになったぜ」

 これには、さすがに苦笑するしかない。必死に説明するも全く理解してもらえず、実際に牢獄OR病院送りにされるところだったのだ。まあ、近藤の鶴の一声で何とか納得してくれ、おまけに衣食住と仕事まで紹介してくれたのだから、近藤には感謝しても感謝しきれない。まあ、素行は・・・アレなのだが。すでにマッパは六回目撃してしまっている。どんな状況だ。

「はなしがそれたが・・・あの紫の髪の野郎、アレ、お前知っているんだろ?」

「っ!!」

 少し過去を思い出していたときに言われ、驚愕のあまり飛び上がってしまった。

「・・はー、はー、ちょ、驚かさないでくださいよ・・・」

「図星か」

 少しは意に介してください、鬼副長。

 ぐっと飲み込む真奧。

「まあ、おまえを信用していないわけじゃない・・・あの犯行声明に一番動揺していたからな」

「・・・」

「おまえはオレら真選組の隊員・・・ここからは生半可じゃ通用しない。覚悟決めろよ、真奧」

「・・・はいっ!!」

 土方の強く、ギラギラした目を真っ向から受け、力強く、確固たる意志をもって答える。

「よし・・・それじゃ、オマエは今から“魔王”ではなく“真奧”として行動する。いいな?」

 ・・・そうか、と突如として、真奧は土方の思惑を察する。

 彼の立場。エンテ・イスラのことを知っているのは近藤、土方、山崎、あとどこかから聞きつけた沖田しか知らない。だから隊の中で気まずくなることはあり得ないのだが、だからこそ。土方は真奧の意思をはっきり確認したかったのだ。戦場で、一分の迷いも生まないために。

「土方さん・・・ありがとうございます」

「フン・・・」

 対応はそっけないものの、表情はまんざらでもない様子である。

「さて、それじゃ」

「おお、こんなとこにいたのかサダオ、それにトシ!!丁度いい、話が」

「近藤さん・・・もう言ったぜ」

「え?マジでぇー?」

「土方さん、なーにサボってやがんですかい?法度違反でさぁ」

「オメーに言われたかないわ総浯ぉぉ!!」

 なにやら騒がしくなってきたが、真奧は土方の言葉をもう一度思い出す。

 嬉しかった。ただ、その気遣いが。

 改めて、人間とはいえど、彼らへの尊敬の念がこみ上げてくる。

 真奧は腰に下げた刀を、ギュッと握った。

 

***

 

『ほら、もうすぐですよ~』

 

『ほ。ほんとか・・・ウプ』

 

『ん~、もうしゃべらないほうが~、いいと思いますよ~?』

 

『わるい・・・そういや』

 

『ん?なんですか~?』

 

『エミリア・・・あいつ、大丈夫なのか?』

 

『だから言っているじゃないですか~、あのエミリアが死ぬわけないって~』

 

『だ、だよな・・・くっそオルバのやつ!!あんな出まかせを・・ウプ、』

 

『・・・あと少しですから、吐かないでくださいね~?』

 

***

 

そして、午後一時。

 

それぞれの思惑が交錯する。

 

はたして、恵美・真奧・銀時らがつかむのは、希望か  

 

それとも絶望か  

 

街のため、欲のため、己のため、そして  

 

大切な人のため  

 

命がけの決戦が、いま、幕を開ける!!

 

はたして、彼らの運命は!?

 

「なん、で・・・あなたが・・・?」

 

「ハハハ素晴らしい!!その絶望  、僕に、ささげてよ」

 

「ちぃ。クソが!!」

 

「あ、ごめん聞いてなかった」

 

「お妙さん・・・見ててください、このこんど」

 

「ルシフェルよ。魔王として・・・真選組、一番隊副隊長として、貴様を処罰する」

 

「所詮はこのていどッスかあ!?」

 

「すべては・・・わしの大いなる野望のために!!」

 

「かましてやれ、恵美、真奧・・・ぶん殴ってこい!!」

 

「いや、おまえも行けよ!?」

 

乞うご期待!!

 

 




はい、タイトルの通り、争乱編への導入回でした。なにげに恵美の家出が軽くなっていますが・・・。
 あと、最後の予告(?)っぽいもの。あえて言おう。ノリ、だと。
 ほんとにセリフが出てくるかは私にもわかりません。雰囲気だけです!
 ひどいものですが・・・さて、次回からは多大に戦闘です!!戦闘シーンです!!拙い文才を駆使して頑張ります!!あ、いやがんばんのは恵美とか銀時ですが(笑)

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