はたらく魔王さま!~IN EDO~    作:ジャンヌ

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第七話 勇者と侍、始動する。

「ふむ・・・上々。ここまでうまく動いてくれると逆に不安になるのぉ」

「むしろいいではありませんか。こちらとしても無駄な気苦労をしなくて済むのですから」

 ターミナル屋上。風がやや強く吹くなか、幹部連中は目下でパニックを起こし逃げ惑う人々を見下ろしていた。

「そういや河上の奴はどうしたんスか?いないようですけど・・・」

「あー、なんか人質を見張るとか言って降りてったよー。ノイズがどーたらいってたけど」

 そう答えたのは、空中で器用にあぐらをかきながら浮かぶルシフェル。紫の髪を生やした堕天使は、いまや魔力を完全に回復し、その背に黒い翼を広げていた。

「ま、どうでもいいけどね。こっちで勝手にやらさせてもらうし」

「ちゃんと働いてくださいよ?わざわざ晋介様が春雨からあの部隊を連れてきてくださったんスから」

「そうじゃ、ときにあの兵器もメンテはすませたのか?」

「ええ、万事オッケーです。抜かりはありませんよ。もうそろそろ晋介様もここに来られることですし・・・」

 そこで一度、顔を見合わせた彼らは誰からとも言わず、クックと笑いだす。まるで、これから起きる未来に高揚感を抑えられない、ような。

「さーて、そろそろ行こっかなー。アイツラも来たみたいだし」

「・・・いま、時間は?」

「午後二時ですね」

「よーし、じゃあ行くっスよ!」

 その言葉を皮切りに、各自散開し、それぞれの目的のために動き出す。

 爆撃開始まで、あと60分   。

 

 

***

 

 ターミナル周辺では既に鬼兵隊の手の者が人、物問わず襲撃を繰り返す。

 逃げ惑う人々の顔は青ざめ、絶望一色に染まりゆく。決定的だったのは、あの放送から一時間後。正午に江戸上空に出現した数十もの軍艦だった。さらに襲撃者の中に凶暴な天人が多くを占めている。抗う術は、無い。

 オラどけよ! 痛っ、おすんじゃねえよ!!待って!!お母さんおとうさん!!た、頼む離し・・グアァ!!

 まさに、地獄絵図。

「ハハハ、人がゴミのようだな!!」

「ほーら、命乞いすりゃ助けてやるよ・・・こいつは死ぬけどな!ヒャハハ!!」

「死ね!死ね猿風情が!!」

 欲望のままに破壊活動を繰り返すさまは、

「まさにケダモノね・・・」

「あ?なんか言ったかぁ嬢ちゃんよぉ?」

 棘を含んだつぶやきに敏感にも反応した天人、頭に角を生やしている者が少女に詰め寄る。

「だから、醜くて見れたもんじゃない、って言ったのよ」

「へぇ・・・いい度胸してんじゃねえか」

 下卑た笑いは、一瞬のうちに青筋たてた憤怒へと変わる。真上まであらあらしく棍棒を振り上げ、

「だったら・・・てめぇがきたねぇ肉塊になりなぁ!!」

 オラァ!!と怒声とともに勢いよく振り下ろす。この光景をみていた者ならだれでも思うだろう、少女が頭から裂けて倒れる様を。

 だが。

「な・・・う、受け止めた!?」

 一滴の血を流すことなく、少女は片手で棍棒を受け止めていた。ググ、と力をこめようが、もはやびくともしない。

「ふーん。肉塊なんて言葉、よくパッと出てきたわね・・・でも」

 ガッと弾くや、腰の木刀に手をかけ、

 一閃。

 角の天人の腹にきれいな横薙ぎがきまり、血を吐きながらドウと倒れる。化け物め、とつぶやきながら。

「暴れるしか能がないケダモノが、くれぐれも思いあがらないことね」

 少女  遊佐恵美は、背後からの足音を感じ取り、振り返えれば万事屋三人の姿が追いついてきていた。

「たく、急に走るんじゃねーよ。俺の糖分パワーが無駄に消費されるだろ」

「すごいネ姉御!!かっこいいアル!!」

「休んでいる暇はないですよ、早く行きましょう!!」

「とか言って、いちばん遅れていたの新八くんだけどねー」

「そっ、それは・・・」

「なにドモッてるアルか、キモイネどーてーメガネ」

「ちょ、関係ないでしょそれは!!つーかそーゆーんじゃないから!!ほんとに!!」

「あのー。なんかオレ、空気になってね?マジで」

 戦場のど真ん中でそんな呑気に話しているもんだから、うっとうしくしく思う敵方が悪態を吐きながら一斉に集まってくる。

「ち、来やがったか」

「さ・・・行くわよみんな」

 まだどこか暗さが抜けきれない恵美だが、フッと息を吐き、悪漢どもの群れへと突っ込んでいく。

 その剣閃に、迷いはない。

 

***

 

「よし、今の状況は?」

「は、周辺住民の避難はほぼ完了。全部隊突撃準備も完了いたしました!!」

「ん・・・だが、総悟のやつは?あとトシも」

「は、副隊長殿と一番隊隊長殿は既に各個敵を撃破しております!!」

「うっそマジで!!早いよ少しは俺の命令を聞いてよ!!あとキミ、なんか口調が堅い!!」

「・・・いかがされますか?」

「まあ、そもそも一番隊には最前線に出てもらう予定だったからな・・・あわよくば人質奪取。まいっか、よーしみんないっちゃえ!!」

「アンタはかるいなっ!!」

 

***

 

 ターミナル、とある階において。

「ふむ・・・戦場に新たなメロディ・・・野放図なノイズに荒々しく、それでいて秩序のあるロック調、さらにどこかふざけた調子はあれど、重低音がリズム良く鳴り響く・・・なるほど、でござる」

 ベン、と手元の三味線を鳴らし、ブツブツとつぶやく。ヘッドホンをかぶっていることといい、刀をさげていることといい、サングラスといい素性を知らない人からすればかなりアブないひとである。いや、事実危険人物ではある。もうなんか人知れず浮かべてる笑みとか。

 

 河上万斉。鬼兵隊隊長の高杉晋介が直々にスカウトした、人斬り侍である。

 

「さて、今宵はどんなメロディを奏でるのか、坂田銀時・・・“白夜叉”。まあ、ターゲットは別でござるが」

 あの、ニヤリと笑って悦に入っているところ悪いのですが、今はまだ昼です。

「・・・こちらのノイズは、鳴りやんだでござるか」

 そうやって見やった先は、身柄を拘束された、数十人の女性たちが。彼らの言うところの“人質”であろう。既に涙も声も枯れ果てたのか、生気のない顔でうつむいている。

「さて・・・楽しみでござる」

 ベベン、と乾いた音色がホールに響いた。

 




 ちょっと万斉さんがナルシっぽくなってる気が。あれ、あってるのかな?

 恵美に関して、ちょっと心情について補足いたしますと、迷いを無理に押し込めて敵を斬ることのみに没頭している感じですね。

 さて次回、いよいよ各幹部とのカードが決定!誰と誰とが戦うのか?予想しながら待っていてください!!お楽しみに!!
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